2025年第1回定例会を終えて(談話)
2025年3月28日
都議会生活者ネットワーク
岩永 やす代
本日第1回定例会が閉会しました。都議会生活者ネットワークは、一般会計予算とお台場海浜公園の巨大噴水を盛り込んだ臨海地域開発事業会計予算に反対しました。
- インフラの老朽化対策とダウンサイジングへ
一般会計の予算規模は、税収の伸びを背景に4年連続過去最大となり初めて9兆円を超えました。
「首都防衛」の強靭化の名のもとに、豪雨対策として新たな調節池の事業化や貯留施設など土木工事がどんどん動き出す予定です。地下利用は調節地だけでなく道路や鉄道、そして地下街など、都内は掘りまくられています。しかし、外環工事の陥没事故やリニア新幹線工事による気泡発生など、地下工事に伴う事故が起こり、住民の知らないところで安全が脅かされています。埼玉県八潮市で起こった道路陥没事故を教訓に、新たなインフラよりも、下水道をはじめとするインフラの老朽化対策を優先すべきです。
また、都内では大規模な再開発が目白押しです。空中権の売買など地下も空も儲けの対象にして床面積が拡大を続けています。住宅総数は、すでに世帯数を大きく上回り、もはや過剰です。今後の人口減少は確実で、そのための準備を始める必要があります。超高層ビルが建ち並ぶ新宿区が容積率の緩和を見直す方針を示すなど、過剰な住宅供給を抑制する動きが出ており、都としても、高さや大きさの制限や減築などが成り立つダウンサイジングに資する制度を設けるべきです。
東京都の都市計画の大元となる「都市づくりのグランドデザイン」改定の着手が示されましたが、ダウンサイジングの発想が欠かせません。環境配慮と市民合意に基づくまちづくりが求められており、そのためにも徹底した情報公開と意見交換が必要です。
- 官製観光から生活優先へ
物価高騰が止まらず、困窮する生活者の声が高まるなか、インバウンド・観光客誘致のためのプロジェクションマッピングや巨大噴水が予算化され、公費負担に疑問の声が多く寄せられています。ODAIBAファウンテンは、26億円の予算発表後に突然噴水の水を海水から水道水に変更しました。水道料金がかかるだけでなく、環境への影響や都民の飲み水を大量に使う問題があり、そもそも都が実施すべき事業とは思えません。また、神宮外苑だけでなく都立公園での樹木伐採や夜の電飾イベントなど、浮足立つ施策が多く見受けられます。東京に暮らす人の生活を支える行政運営が肝要です。
- 少子化対策はジェンダー平等から
少子化対策として2兆円の予算が組まれました。その中で予算化された無痛分娩や卵子凍結など生殖医療への公費助成は、女性への出産圧力をさらに強めることになりかねません。
育児休業の普及や保育所の整備により、子育てしながら働き続ける環境は少しずつ整備されてきています。しかし、子育て世帯の就業女性が増えても、男性の家事・育児の時間は女性の1/4程度にとどまっており、家事や育児の負担は依然として極端に女性に偏っています。結局、男性の仕事が優先される状況は変わっていないのです。子どもを産むのも育てるのも女性の役割で、若いうちにさっさと子どもを産みなさいとばかり、婚活から生殖医療の流れは、まさに日本社会のジェンダー不平等を温存したまま、少子化の原因を女性に押しつける、根強く残る家父長的な意識の現れでもあります。
先日、同性婚訴訟で大阪高裁が、同性婚を認めないことは違憲であり、婚姻が子を持つためではないとしたことは、人権や個人の尊厳を重視し、ジェンダー平等への道しるべともなりました。
少子化対策には、多様な家族の形態を認めるジェンダー平等とともに、若者の経済状況の解決が不可欠です。多くの若者が不安定な雇用のもと、子どもを持つ未来を描きにくいのです。非正規雇用の改善や、若い子育て世代への家賃補助など、具体的な取り組みが急務です。さらに、子どもたちが生きやすい社会にすること、どんな状況で生まれた子どもでも等しく育つ権利があり、それが実現されることこそが必要であると考えます。
- 週休3日制は職場改善につながるか
今回、条例改正により、週休3日を導入することになりました。フレックスタイム制を活用して、5日間の労働時間を4日間に圧縮するということです。つまり、出勤日の労働時間は8時間から10時間になります。労働総時間を変えずに「手取り時間」を増やすとアピールしていますが、長時間労働につながりかねません。また、実際に週休3日を採用できる職員は限られており、この制度導入によって働きやすい職場になるのか、ワークライフバランスに寄与するのか、注視していきます。
- 東京アプリについて
今年度最終補正予算の東京アプリ活用「つながるキャンペーン」は、東京アプリ+マイナンバーカードの本人認証で1人7000ポイントを支給するもので、事業費は799億円に上ります。マイナンバーカード普及のために1人2万円配布、2兆円もの巨費を投じて大混乱した国の事業を思い起こします。キャッシュレスは確かに広がっており、国を挙げて何もかもをスマホでデジタルで、という流れですが、災害時や電池切れ、通信トラブルなどスマホが使えないこともあり、無理やり急速に普及させようとする姿勢には疑問を禁じ得ません。
都議会自民党の裏金問題では、議長が交代し、政治倫理条例検討委員会が発足しました。しかし、経緯の説明もなく真相解明には至っていません。条例検討だけでなく、今後も真相解明を求めていきます。
待ったなしの気候危機対策や戦後80年の平和施策、国際水準から大きく遅れている性教育や人権問題など、高齢者や障がい者、子ども、若者が生きやすい社会をつくるのは、政治に携わる者の責務です。
都議会生活者ネットワークは、持続可能な社会の実現に向けて、多様な人が暮らす東京を生活のまちにするため取り組んでいきます。みなさまからのご提案をお待ちしております。