2016年第1回東京都議会定例会 一般質問
2016年2月25日
山内 れい子
- 緑施策について
ドイツのベルリンでは、個人の土地に企業が建物を建てる際に幹回り60センチ以上の木を切る場合1本につき10万円を支払い、その資金をもとに市が別の土地を緑化しています。都は公園や街路樹など新たな緑の創出に努めていますが、マンション開発や道路建設により自然や緑地が失われる例は、枚挙にいとまがありません。地価の高い東京でも、新たな公共の緑を生み出す方策が必要です。
多摩地域では、農地の宅地化が進むなか、都市計画道路の第四次事業化計画案で緑地を分断する計画が盛り込まれるなど、緑の喪失の危機に瀕しています。多くの市民は、自然の豊かさに魅力を感じており、樹林地や農地、歴史街道沿いの緑、屋敷林、水辺と一体となった緑など、現在残っている緑の保全を強く望んでいます。
都は、新たな緑の創出とともに、今ある緑の保全にも取り組み、東京をより一層緑豊かな都市へと転換していくことが重要と考えますが、知事の見解をうかがいます。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q1
A1(知事):緑は、人々に潤いや安らぎを与えるだけでなく、都市の風格を形づくる重要な要素。こうした都市における緑の重要性に鑑み、都は、市街地の雑木林や丘陵地の里山を保全するとともに、海の森や都市公園の整備を進めるなど、緑の保全と創出を推進。これに加え、近年、国際的に意識が高まっている生物多様性の保全という視点から、在来種の植栽を推進するなど、緑の質を高める施策を実施。今後とも、都内に残された貴重な緑の保全に努めるとともに、再開発等に際して、良好な緑の創出を誘導するなど、緑の量と質を確保する施策を総合的に展開し、快適で潤いのある都市東京を実現。
- 情報バリアフリーの推進について
自分が見ている色は、誰もが同じように見えていると思いがちですが、実際にはさまざまな色覚を持つ人がいます。いわゆる色弱の人は色の見え方が異なり、大変苦労していると聞きます。印刷物や案内サインで、文字や背景の色の組み合わせに配慮しないと、文字が読めなくなることもあります。特に、LED型信号機や点滅信号は識別しにくく命に関わる重大事故も起きており、カラーユニバーサルデザインを普及させることが重要です。
同時に、聴覚障がい者も視覚によって情報を受け取るため、駅や空港等における運行状況の提供や、ハザードマップなど、必要な情報を目でわかるようにし適切な行動が取れるようにすることが必要です。
色弱者や障がい者に配慮した情報面での取り組みを進めるなど、すべての人に対して情報面でのバリアを解消する、情報バリアフリーのより一層の推進が必要と考えますが、都の見解をうかがいます。・・・・・・・・・・・・・Q2
A2(福祉保健局長):都はこれまで、カラーユニバーサルデザインを学ぶ学習会の開催や、障がい者に配慮した音声機能付きの案内サインの整備、災害時等に周囲の人に支援を求めるツールであるヘルプカードの普及など、情報面でのバリアフリーの推進に取り組む区市町村を包括補助で支援。来月策定する情報バリアフリーのガイドラインでは、全ての人が必要な情報を容易に入手できる環境が整備されるよう、障がい特性等に応じた配慮、点字や手話等さまざまな手段で情報提供する際の留意点、効果的な取り組みの実例等を盛り込む。今後も、区市町村や事業者等と連携しながら、情報面でのバリアフリーをより一層推進。
- ユニバーサルデザインタクシーの普及について
高齢者や障がい者からは、移動手段の確保として、ユニバーサルデザインタクシーや福祉輸送サービスの充実が求められています。しかし現状ではUDタクシーは都内には53台しかなく、専用のタクシー乗り場もようやく羽田空港国際線と東京駅八重洲口の2箇所に設置されたのみです。ユニバーサルデザインのタクシーが増えることは高齢者や障がい者を含め移動の利便性が高まることにつながります。
都が新たに創設する補助制度はユニバーサルデザインに加えて、環境性能も要件としています。そこでユニバーサルデザインタクシーの導入理由についてうかがいます。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q3
A3(環境局長):都内では、自動車から排出されるCO2は、全体の2割。なかでもタクシーは、一日の走行距離が長いため、燃費性能の優れた車両への転換はCO2削減に大きく寄与また、パラリンピック東京大会成功のためには、誰もが快適に移動できる東京の実現も不可欠。このため都は、ハイブリッド車等にスロープまたはリフトを装備したユニバーサルデザイン・タクシーを新たに1万台増やすため、総額でも61億円の補助制度を創設し、今後5年間にわたりタクシー事業者を支援。
- 認知症対策について
認知症の人が地域で暮らすためには正しい知識や付き合い方への理解と協力が必要ですが、まだまだ十分に広がっているとは言えません。
これまで、各区市町村では、認知症の人を地域で暖かく見守り応援する「認知症サポーター」の養成に取り組んでいます。都としてもサポーターの養成がより一層広がるような取り組みが必要と考えますが、見解を伺います。・・Q4
A4(福祉保健局長):都はこれまで、認知症の方を地域で支えるため、認知症サポーターの養成に取り組む区市町村を包括補助により支援。また、今年度は、より多くの都民に認知症を理解していただくために毎年開催している認知症シンポジウムの中で、サポーター養成講座を盛り込み、参加者にサポーターになっていただく試みを実施。さらに、大学生向けの講座を実施したり、警視庁や消防庁の職員向け講座の実施を支援しており、今後とも、広くさまざまな対象へ働きかけ。
認知症への支援は、老老介護だけでなく、特に孤立しがちな息子が介護者である2人暮らし世帯への見守りなども必要になっています。介護される本人や家族の困りごとなど、気軽に相談でき、適切な支援を行う人材が必要です。
今後、高齢化の進展とともに、認知症の人の急増が見込まれる中で、各区市町村において、認知症の人とその家族等からの相談に対して、適切に支援できる人材を確保し、その育成を図っていくことが重要であると考えますが、見解を伺います。・・・・Q5
A5(福祉保健局長):都は2013年度より、区市町村に保健師等の認知症支援コーディネーターを配置し、認知症の方の家族等からの相談を受け、訪問支援等により適切な医療、介護サービスにつなげる取り組みを実施。また、区市町村単位での設置を進めている認知症疾患医療センターには、精神保健福祉士等の相談員を複数配置しており、住民や関係機関からのさまざまな相談に対応。今年度からは新たに、認知症支援コーディネーターと認知症疾患医療センター相談員のスキルアップを図るための研修会を開始。
- 女性の就業支援について
女性が活躍できる社会を実現するためには、働き続けることのできる環境整備を進めるとともに、結婚や出産等を理由に離職しても、希望すれば再び働くことが出来るよう支援していくことが重要です。
都は、女性の再就職をサポートする専門の窓口として、2年前、しごとセンターに「女性しごと応援テラス」を開設しています。このテラスを有効活用し、子育てしながら働きたい女性が気軽に利用できるよう、サービスの充実や子育てに関する保育情報などの提供を、きめ細かく行っていくことが必要です。
そこで、女性の再就職を支援するために、都としてどのように取り組んでいくのか伺います。・・・・・・・・・・・・Q6
A6(産業労働局長):都は、再就職をめざす女性を支援するため、しごとセンターに設置した女性しごと応援テラスにおいて、専任のアドバイザーを配置し、相談からセミナー、職業紹介までワンストップでサービスを提供。また、仕事と家庭の両立に理解のある企業の求人を独自に開拓するとともに、都内の保育サービスや子育て支援に関する情報提供なども実施。こうした取り組みに加え、地元自治体と連携したセミナーや女性就業に関するイベントを通じた啓発などにより、女性の再就職を後押し。
先日発表された「東京都女性活躍白書」によれば、男性は仕事、女性は家事・子育てを担当している家庭の割合は、42.8%で、最も多い回答でした。次に多かったのは、男女とも仕事をし、家事・子育ては主に女性が担当している家庭で、この2つを合わせると約7割に上ります。一方、男女とも仕事をし、家事・子育ても男女で分担しているのは、15.5%にとどまり、家事や育児の負担を主に女性が担っている状況がいまだに続いています。
都では、ワークライフバランスフェスタを開催し、育児や介護と仕事の両立推進、長時間労働の削減など優れた取り組みを行う中小企業をワークライフバランス認定企業として紹介しています。今年で8回目を迎え、都民や企業関係者の関心も高く、認定企業も90社になりました。認定企業は、いずれも経営者がワークライフバランスに対する理解と問題意識を持っていることが共通しています。
中小企業においてワークライフバランスを進めていくためには、こうした優れた企業の経営トップの姿勢を発信するなど、積極的な普及啓発に努めていくことが重要と考えますが、都の見解を伺います。・・・・・・・・・・・・Q7
A7(産業労働局長):ワークライフバランスフェスタにおいて、優れた取り組みを行ったとして都が認定した企業の経営者等が、取り組みを進めた動機やその効果等を披露するとともに、パネルディスカッションやミニセミナーにも登壇し、制度導入や風土づくりなど具体的な進め方を発表。また、経営者の考え方などを広く発信するため、認定企業を紹介する動画を作成し、フェスタの会場で放映するほか、ホームページにも掲載。
- LGBTについて
先日、アメリカ大使館主催の講演会があり、同性婚が合法となったアメリカの連邦最高裁判所の判決が世界の人権擁護に利益をもたらすという報告がされました。都庁内でも1月27日、LGBT当事者や支援者が、都政における課題の解決をめざして行政各局と意見交換を行う「市民と行政の協議会」を開催したところ、200人以上もの参加者が集まり熱気ある議論が交わされました。
当事者が訴えているのは、LGBTの約7割が死にたいという気持ちを抱き、そのピークは小学校高学年から中高生だといいます。学校でいじめや暴力を受け、不登校になった事例も約3割あるということでした。当事者の多くは、小学生のときすでに性別違和感や性的指向を自覚し悩んでいます。子どものLGBTへの対応が非常に重要です。
都は、さまざまな悩みを抱える子どもからの相談に応じるため、電話相談を実施しています。LGBTを含む相談に必要な知識や情報を持ち対応できるよう、相談員のスキルアップが重要と考えますが、見解をうかがいます。・・・・Q8
A8(福祉保健局長):現在、都においては、福祉、教育、警察等の各分野で相談窓口を設け、子どもからのさまざまな相談に応じている。18歳未満の子どもに関する相談に対応している児童相談センターでは、フリーダイヤルの電話相談を実施しており、虐待やいじめなど子どもの悩みを、相談員が直接受け、内容に応じて、子どもとの面接を行うほか、専門機関の支援にもつなげている。電話相談員に対しては、電話でのコミュニケーション方法や、事例を用いた対応方法などの実践的な研修を実施するほか、定期的に行う人権に関する研修の中で、性同一性障害や性の多様性についても取り上げており、今後とも、相談員のスキルの向上に努め、子どもから寄せられるさまざまな悩みや相談に適切に対応。
学校は、特に子どもが長時間すごすことから、こうした悩みを受け止める場が必要です。自分の性別違和や性的指向に関して悩みを抱えている児童・生徒が相談しやすい環境を整えるべきと考えますが、都教育委員会の見解をうかがいます。・・・・・Q9
A9(教育長):都教育委員会は、担任による定期的な面接や養護教諭による個別相談、スクールカウンセラーによる全員面接など、学校全体で児童・生徒が相談できような環境づくりに向けた取組みを推進。都教育相談センターでは、電話等により相談に応じる体制を整備し、心理の専門家等が助言。
東京都人権施策推進指針が昨年、15年ぶりに見直され、新たな人権課題として性的マイノリティも加わりました。都教育委員会が作成している「人権教育プログラム」も、これを受けて改訂する必要があります。人権教育プログラムの中に、LGBTに関する内容を掲載するべきと考えますが、教育委員会の見解をうかがいます。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q10
A10(教育長):東京都人権施策推進指針等に基づき、人権教育の実践的な手引きである「人権教育プログラム」を毎年作成し、都内公立学校の全教員に配布。2016年3月発行予定の「人権教育プログラム」には、昨年8月に策定された東京都人権施策推進指針等を踏まえ、性同一性障害に関する法律や文部科学省が発出した通知文などを掲載予定。教員がこれらの資料を活用して適切に指導することができるよう、校内研修の例を掲載予定。
- アスベスト対策について
アスベストは使用禁止となっていますが、過去に使用された多くの建物が更新時期を迎え、解体時の飛散防止とリスク管理の徹底が求められています。
2013年の大気汚染防止法の改正に伴い、都も環境確保条例を改正し、届出義務者を施工者から発注者に変更しました。ビルのオーナーである発注者の中にはアスベストの知識に乏しい人が多く、対策の必要性を理解し実施するよう促す啓発が不可欠です。一方、施工者には、事前調査と発注者への報告が義務付けられましたが、これには罰則がありません。費用がかかるアスベスト対策をきちんと行わせるために、アスベストの知見や除去作業の経験を有する施工者にも発注者とともに連帯責任を課すべきだったと考えます。さらに、立ち入り権限も強化されましたが、調査する人員を増加しなければ、その実効性が懸念されます。
法改正によって、届出違反を減らすことができているのか、都は、法改正の効果と課題についてどのようにとらえているのか伺います。・・・・・・・Q11
A11(環境局長):改正大気汚染防止法では、飛散防止の責任を明確化し、アスベストの調査や工事が適正な価格で発注されることを目的に、届出義務者を施工者から工事発注者に変更。また、施工者には、工事現場にアスベストの有無の掲示を義務付けしたことで、周辺住民がアスベストの存在を知ることができるよう。さらに、監督権限を有する行政機関はすべての工事現場への立入り検査が可能になったことから、住民からの通報に速やかに対応できるように。一方、都や区市の立入り検査では、アスベストの調査や適切な掲示が行われていない事例が散見。引き続き、立入り検査や事業者への講習会などを実施。アスベストの飛散防止を徹底。
アスベストの有無の把握は、建設リサイクル法の解体工事届出でも行われており、その提出先は、自治体の規模等により区市の建築部局や都の都市整備局となっています。大気汚染防止法の届出を受理する環境局では、この建設リサイクル法の届出と照合することによって、解体時のアスベスト除去工事現場がより多く把握できていると聞いています。
アスベスト対策をさらに強化するためには、環境局は、都市整備局と、また出先事務所や自治体との連携を緊密に行うことが有効と考えますが、見解を伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q12
A12(環境局長):環境局では、都市整備局や区市の建設リサイクル法所管部署との合同パトロール、労働基準監督署と協力して解体工事現場への立入り検査を実施。区市からの依頼に基づき、都はアスベストの知識を有する専門職員を工事現場に派遣、アスベストの飛散防止のための手法や監視等に関する技術的助言を区市職員に行うほか、アスベストの分析を実施。引き続き、関係機関や区市と連携し、解体工事現場への立入り指導を強化。
都市整備局が取りまとめている1000㎡以上の建築物のアスベスト調査の回答率は、都道府県別ランキングを見ると、東京都が最下位です。発注者責任の強化に併せ、ビル所有者のアスベストの危険性の自覚を高めるためにも、回答率を高めるなど、実態の把握をどのように行っていくのか、見解をうかがいます。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q13
A13(技監):この調査は、民間の建物所有者等に対して、吹き付けアスベストの使用についての自主点検や必要な改修を促すため、国の要請に基づき、都と区市が実施。都は、毎年、建物所有者に対して、報告を求めてきたが、回答率は7割弱。2014年度からは、建築基準法の定期報告の情報も活用、所管する建築物の8割以上について実態把握。今後、このような都の取り組みについて、区市にも促すとともに、都と区市が連携し、未回答の建物所有者等に働きかけ、引き続き実態把握に努める。
東日本大震災では倒壊した建物のがれき処理にかかわる人のアスベスト被害が問題となりました。東京でも、地震災害対策として、倒壊する可能性のある建物ごとに、アスベストの存在を把握することが、被災建築物の解体工事の従事者や復興作業のボランティアなどの健康被害防止に役立つ情報となります。都市整備局が取りまとめている1000㎡以上の建築物のアスベスト調査について、大気汚染防止法の規制の所管である環境局や関係局と、積極的な情報共有をはかるべきと考えますが、見解をうかがいます。・・・・・・・・・・・Q14
A14(技監):東日本大震災の教訓から、建築物におけるアスベスト使用の実態を把握し、被災した場合に解体や補修が円滑に進められるよう、平時より備えておくことが重要。こうした認識の下、現在、既存建築物のアスベスト調査において、建物所有者への働きかけに加え定期報告を活用し、情報の把握に努め、災害時に対応できるよう、情報を関係局等と共有。
以上