2016年第1回東京都議会定例会 討論

2016年第1回定例会 討論 

2016年3月25日

西崎 光子

 

都議会生活者ネットワークを代表して、第25号議案、第39号議案に反対、その他の知事提出のすべての議案に賛成の立場から討論を行います。

  • 第1号議案「東京都一般会計予算」について

23年ぶりに7兆円台となった2016年度一般会計予算は、潤沢な税収を背景に、オリンピック・パラリンピック開催のためのハード整備を中心とした巨額投資がいよいよ本格化し、また、福祉関連予算は過去最高の1兆1668億円となりました。

東京の最大の課題は、2025年問題に象徴される高齢者対策であり、これから高齢者数の爆発的な増加が予測されています。現在すでに一人暮らし高齢者の増加と同時に空き家が増えており、超高齢社会に対処する仕組みづくりは待ったなしです。

  • 高齢者福祉について

認知症高齢者が急増する中で、本人や家族が住み慣れた地域で安心して暮らし続けるためには、地域づくりが重要となります。認知症サポーターの養成や民間事業者等の連携によるネットワークの構築など、今後も地域社会での見守りの体制整備が進むよう、区市町村を支援していくことを要望します。

終末期を地域で暮らし続けたいという希望に対応できるよう、地域に根ざし、地域に開かれた多様な看取りの場として「ホームホスピス」のような小規模な施設整備は、今後、必要となってくると考えます。地域の病院やかかりつけ医との連携も進め、緩和ケアのあり方についても検討し、「人生の最期をどのように迎えたいのか」本人や家族が、在宅か施設かというだけではなく、医療や介護についても選択できる環境の整備に取り組んでいくことを求めます。

  • 障害者差別解消法の施行に向けて

この4月から障害者差別解消法および改正障害者雇用促進法が施行され、障がい者への合理的配慮が求められます。都では、職員への説明会や普及用のハンドブック作成などを進めているということですが、まずは、職員の採用や職場環境における合理的配慮が必要です。例えば、採用試験でこれまで一部でしか認められなかった点字などのニーズに応えることや、当事者が職場で働きやすい環境を本人と協議しながら整えることが必要です。これからの共生社会に向けた取り組みを期待します。

  • 学校の安全

今年になって、都教育委員会は「体育的活動における安全対策検討委員会」を設置し、組み体操などの安全対策について、3回の議論を経て対応方針が出されました。組み体操については禁止などの規定を設ける自治体が増えていますが、検討委員会では他のさまざまな体育的活動にも危険が伴うことが指摘されました。

子どもの事故は体育だけではありません。文部科学省の有識者会議が先ごろ、学校での子どもの死亡事故について、学校や自治体の対応を定めた指針案をまとめましたが、柔道の授業や部活動など、学校の管理の下で行われる活動に関して、包括的な安全のためのしくみを構築する必要があると思います。

  • 夜間定時制高校の廃止について

夜間定時制高校の廃止について、多くの市民やノーベル賞受賞者の大村智氏をはじめとする学者・文化人が反対の声を上げ、都議会にも存続を求める請願・陳情が相次いで提出されたのは、夜間中学出身者や多国籍の生徒が学べる場としての、最後のセーフティーネットがなくなってしまうという不安がいかに大きいかということです。これらの学校は、それぞれの地域性に応じた取り組みによって、これまで地域の中でかけがえのない存在として教育にあたってきた歴史があります。チャレンジスクールや昼夜間定時制高校などの他の施設がこれに代わることはできません。日本語の能力が十分でない、あるいは他の学校では受け入れられなかった、多様な人たちに学びを保障する、貴重な取り組みはぜひとも存続させていくべきと考えます。教育委員会の再考を強く求めます。

  • 環境基本計画について

東京都は、2030年までに、温室効果ガス排出量を2000年比30%削減する新たな目標値を出しました。都の先駆的な取り組みであるキャップ&トレード制度が温暖化対策に大きく寄与していますが、先ごろ発表された第一計画期間最終年にあたる2014年度の削減実績はマイナス25%で、第一期だけでなく、今年度から始まった第二期目標の15~17%をも大きく上回りました。始まる前から目標を達成しているため、生活者ネットワークは、目標値をもっと高くするよう求めてきたところです。昨年12月採択されたCOP21「パリ協定」には、今世紀後半には実質的にゼロにするよう削減することも盛り込まれています。長期的な視野に立ち、キャップ&トレードをはじめ、省エネや再生可能エネルギーの拡大を積極的に進めていただきたいと思います。

  • 女性の活躍推進について

国は、女性の活躍推進を掲げていますが、国連の女性差別撤廃委員会の勧告が出されたように、いまだに多くのバリアが残っています。働く女性は増加しているものの、非正規が多く、男女の賃金格差はむしろ広がる傾向にあります。男性の育児休暇取得率は、低い数字にとどまり、今回の「東京都女性活躍白書」からもわかるように、性別による役割分担の意識は根強く残っています。

それに対して、世界経済フォーラム一位のアイスランドでは、国の子育て支援策として、母親、父親がそれぞれ3ヶ月間育児休暇を取得することができ、さらにその後の3ヶ月は、両親のどちらか望む方が、育児休暇を取得できることになっており、その間の給与は80%支給されています。そのため、子どもがいる母親の8割が、何らかの仕事をもち、男性の7割が子育てに参加しており、旧来の男女の役割観を変化させ、仕事と育児の両立をはかりやすい環境整備ができています。

都も、知事が先頭に立って、男性や企業に対して意識改革を進め、さまざまな施策に取り組むとともに、国に対して「パパクォータ制度」の導入等、抜本的な改革を行うよう働きかけることを要望します。

  • LGBTについて

最後にLGBTへの支援について申し述べます。

LGBTに関する課題は多く、その解決が急がれますが、LGBT当事者や支援者たちが年1回、集まって盛大に繰りひろげられる祭典「レインボーパレード」に東京都が後援し、知事がメッセージを寄せることを当事者や関係者たちが強く希望しています。4月末から5月にかけて催されるこの祭典は、オリンピック開催年である今年、国際都市・東京が、多様性を認める人権都市であることをアピールできる絶好の機会と考えます。ぜひ暖かい応援を送っていただけるよう要望します。

都議会生活者ネットワークは、持続可能な社会、あらゆる人の人権が尊重される社会、環境・福祉優先の東京のまちを多くの都民とともにつくっていくことを求め、討論といたします。