2010年第4回定例会 討論

2010年12月15日
星 ひろ子

私は、都議会生活者ネットワーク・みらいを代表し、第156号議案「青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」に反対、他、知事提出議案に賛成の立場から討論を行います。

まず、第156号議案「青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」についてですが、この条例案が会派に示されたのは、開会のわずか8日前の11月22日でした。この間、都は出版業界との協議もせず、青少年の意見を聞くこともしないまま、議会へ再提案とした姿勢は非常に問題があると言わざるを得ません。子どもの権利条約第12条では意見表明権を保障し、第13条では表現の自由が明記されていますが、都の対応は条例の対象である青少年の存在を大切にしたものとはいえません。
今回、多くの漫画を愛好する青少年をはじめ、表現規制を危惧する人々などが全国からあらゆる情報媒体を使って声を寄せたことは、決して忘れてはいけないことだと思います。
生活者ネットワーク・みらいは、子どもをめぐる性の暴力、児童ポルノに見られる性の商品化など子どもへの人権侵害は絶対に許されるものではないと考えます。過激な漫画を子どもたちの目に触れさせたくないという保護者の思いにも全く共感するものですが、そのためのルール作りと運用を行政の手にゆだねることには問題があると考えます。
様々なツールを駆使する情報社会において、いかがわしいもの、悪しきものから完全に子どもを遠ざけることは不可能であり、今、子どもたちに真に必要なことは、悪質で俗悪な映像や出版物などを遠ざけ、隠すのでなく、目にしても、きちんと批判できるように、保護者、地域、学校が力を合わせ、性教育に取り組み、子どもの成長の後押しをすることです。
さらにいえば、女性を蔑視する発言を繰り返したり、セクシャルマイノリティを否定するような態度をとる政治家や社会的地位のある男性、それを大目に見ている大人達が作り上げている社会の在り方そのものが問題なのです。
そもそも青少年健全育成条例は、1964年に制定されて以来すでに46年を経過し、制定された当時とは社会状況は大きく変わってきております。
生活者ネットワーク・みらいは、つぎはぎだらけで時代の要請に応えなくなった青少年健全育成条例は、撤廃し、子どもの命と健康、尊厳を守る視点を大切にしたいと考え、子どもの権利条例を都に制定することを求めます。よって、第156議案、青少年健全育成条例改正に反対の立場を明らかにするものです。

次に、各委員会で審議された指定管理者選定について申し上げます。指定管理者制度が都に本格導入されて、ほぼ4年が経過し、見直しが行われました。今後進めていく上で、都民サービスの向上、選定にあたっての公平性、透明性の確保が重要です。今回、指定管理者制度により管理する公の施設については、政策連動性、管理運営の特殊性が高い施設に係る指定管理者として、監理団体を特命で選定することになりました。監理団体を活用していくには、今まで以上に経営の透明性を向上させ、都民への説明責任を果たすよう求めるものです。

次に、文教委員会で報告のあった特別支援教育推進計画第三次実施計画について一言申し上げます。第三次計画でこの間順次減らしてきた寄宿舎について最終的には五校まで絞り込むことを改めて示しました。削減する理由としてはスクールバスの増車などによる交通アクセスの改善、子ども・家庭をめぐる様々な福祉サービスの充実を挙げています。通学困難の問題はこの間、統廃合、拠点化、大規模化などにより、児童・生徒の学校へのアクセスの問題は一層深刻化しています。都教育委員会は長くても通学バスで60分圏内ということを目安としていますが、バス停までにさらに時間や介助が必要な子ども達もいるのが現実であり、今後はバスの小型化や移送サービス、福祉タクシーなどへの助成なども合わせて改善していくべきと要望します。各種福祉サービスの充実ですが、これも1人1人の様々な事情にきめ細かく即応できているとは言い難く、この間、寄宿舎が学びの場と同時に、複雑で深刻な事情を抱える子育て家庭の生活支援になっている現実は否定できません。どの子もどんな境遇・環境にあっても教育が受けられるということが大前提であると考えるならば、教育機関、福祉の分野と切り離して考えていくことは大人の都合であり、子どもの学びの場は多様であっていいと考えます。寄宿舎の廃止に対しては利用者の実態を細かく把握し、都が責任をもって市区町村と支援策を講じることを強く要望します。

築地市場移転問題について
22年度東京都中央卸売市場会計予算は、「議会として現在地再整備の可能性について、大方の事業者の合意形成に向け検討し、一定期間内に検討結果をまとめるものとする。知事は議会における検討結果を尊重すること」など3項目による付帯決議が付きようやく可決しました。議会では、築地市場の移転・再整備に関する特別委員会小委員会において、現在地整備の可能性について、多くの時間を費やし審議が行われてきました。9月定例都議会において、更に、現在地整備案について、業界の意向調査を行うなど議論を深めることが賛成多数で可決され、特別委員会は継続されました。
ところが、10月22日の定例記者会見において、石原知事は、現在地再整備の工期に10年以上の時間がかかることを大きな理由に、予算の全額を執行すると発言しました。
議会の継続審議を無視し、都政の重要課題をマスコミ先行で発表するやりかたであり、生活者ネットワーク・みらいは強く抗議するものです。知事は、「いたずらの対立は良くない」「都民の利益を考える」と発言しましたが、「いたずらの対立」こそ知事がつくりだしたものであり、土壌汚染の解決不能な豊洲へ移転をすることが都民の最善の利益とは考えられません。
今定例会の所信表明でも、業界の大多数が豊洲移転を望んでいる、再整備には10年の歳月がかかるという当初からの主張をくり返すものであり、知事の言う「いたずらの対立」を回避するためには、市場事業者の総代選挙結果、中央区の要望、及び特別委員会の審議など真摯に受け止め、強引な移転を行わないことを強く要望し、生活者ネットワーク・みらいの討論とします。