2011年第3回定例会 一般質問

2011年9月29日
山内玲子

1、災害対策について
東日本大震災から半年が過ぎ、復興にむけて歩みはじめた被災地ですが、被災地では、まだ瓦礫の処理や液状化対策、道路、鉄道などの復旧、さらには、被災者の生活再建にむけての継続的な支援が求められています。
都は、これまで発災直後から被災3県に現地事務所を設け、被災地のニーズを汲み取りながら、的確な支援を行っており、その取り組みについては評価するものですが、被災地の現状を踏まえた今後の被災地支援のあり方について、知事のご所見を伺います。・Q1
A1:知事答弁
この半年を振り返ってみると、つくづく国は硬直的で現場を知らず、肝心なところに手が届かない。
そうした中で、東京都は、福島・仙台・盛岡に現地事務所設置し、現地のニーズを受け止め、新しいスキームを作ってきた。例えば、民間の運送事業者のノウハウを借りて滞留し倉庫に積みあがった物資を、避難所や福祉施設に確実に届ける仕組みを構築した。
今後も、インフラの本格復旧や被災地の経済再生など、山積する現地の課題に対して、それを現実に解決する具体の手立てを差しのべ、機を逸することなく、協力していかなければならない。
東京が持つ大都市としての力を奮って、一日も早く生活や経済活動の基盤を回復させるため、港湾施設や道路の整備にあたる技術職員や、子供たちに寄り添い健やかな育ちを導く教員などを長期に派遣する。
また被災地のがれきを東京で受け入れ、処理する。さらに、被災地の中小企業の受注回復に繋げるための商談会を開催するなど、被災地・被災者が、復興に向けて自ら踏み出す歩みを後押ししていく。

東日本大震災は、岩手、宮城、福島、茨城まで600キロにわたって広域な被害が発生したため、実態把握や支援が遅れました。今後、首都圏でも、東海・東南海・南海の連動地震等が起きた場合、被害想定も広域にわたり、これまでの9都県市の連携では対応しきれないことも考えられます。今回いち早く支援に動いた姉妹都市連携や、物資の供給や輸送に日頃から関係性を持つ生協などの活動が有効だったとの事例も多く聞かれていますが、広範な自治体との災害協定や支援体制の構築、及び民間事業者との連携強化などについて、見解を伺います。・・・・・Q2
A:総務局長答弁
首都直下地震の発生など広範囲に及ぶ被害が発生した場合、都県境を超えた自治体同士の相互連携が重要。
9都県市では、物資支援や職員派遣など発災時の情報連絡体制や相互連携の強化。
災害時における物資の供給や輸送は、民間事業者や業界団体などと協定を締結し連携。
先日公表した「東日本大震災における東京都の対応と教訓」に、9都県市に加え、全国知事会等との広域的な連携の重要性などを明示。
今後は、首都圏を超えた自治体や民間事業者など、多様な主体との連携を一層図る。

2、放射能対策について
放射能については、感受性の高い子供への影響を最小限に抑えるため、子供独自の基準を設け、放射能測定を継続していく必要があります。
都は都内100か所の測定を行い、線量計の貸し出しなどを行っていますが、自治体や住民が測った結果、いわゆるホットスポットが明らかになり、子どもが遊ぶ公園などに関心が高まっています。自治体が所有する公園や学校については自治体ごとに測定されていますが、都立公園では、37公園に砂場のある子どもの広場があり、砂場の放射能を気にしている保護者も多いのです。特に23区東部地域の都立公園については管理者としての都の責任において、一度は砂場の放射線量を測るべきと考えますが、見解を伺います。・Q3
A3:建設局長答弁
都内の放射線量は、6月に都立公園を含む100か所で測定した。
モニタリングポストを7か所に増設することとし、足立区の舎人公園なども含まれている。
8月に公布された特別措置法では、国では除去すべき土壌の範囲などの検討をしている。
こうした国の検討経過を注視する。

空間線量が安定してきた今、気になるのは食品に含まれる放射能ですが、これを測れる測定器は数が少なく、精度の高い測定を行うには時間もかかります。都民が安心して食材を購入し利用するためには、保健所・学校などに測定器を置き、支援する人がいれば、食材を持ち込んで自ら測定することが望ましいと考えます。チェルノブイリでは学校に測定器を置き、牛乳などを持ち込んで調べている様子をテレビで見ました。また小金井市では、チェルノブイリ事故以来測定器を設置して市民が測定できるようになっており、今回も多くの市民が利用しています。今後、長期にわたる放射能監視が必要ですが、機材購入への支援について見解をうかがいます。・・・・・・・・Q4
A4:福祉保健局長答弁
農産物等の放射性物質検査については、作付譲許いや出荷時期が把握できる生産地において出荷前に検査を実施し、安全を確認することが最も確実である。
現在、生産県では、最大限の検査を実施しており、都においても、都内産農産物等の検査を行うほか、他の生産県の検査にも協力している。
また、都の検査体制についても、検査機器の整備など、充実強化している。
区市町村が検査機器の整備を行う場合には、都が設置する東京都消費者行政活性化基金を活用できるほか、独立行政法人国民生活センターを通じて機器の貸与等を受けることが可能。

3、エネルギー政策について
今年8月、再生可能エネルギー特措法が成立し、大規模設備や商業用設備では全量買い取りとなったことから、今後、ビルやマンション等で設置が加速されることが見込まれます。環境確保条例では、一定規模の建築物に再生可能エネルギーの検討が義務づけられましたが、これまでの東京都の積極的な取り組みを踏まえて、特措法を契機に爆発的な導入促進が実現するよう、対象建築物の面積の見直しや、検討の義務づけだけでなく、導入を義務づけるソーラーオブリゲーション制度の導入について、見解を伺います。・・・Q5
A5:環境局長答弁
これまで、建築物計画諸制度による再生可能エネルギーの導入検討義務付けなどにより、
2009年度には約3割となるなど、着実な成果を上げている。
東京都環境審議会において、特定の建造物に導入義務付けなど、事例を検討。
建築物環境計画書制度の運用を図るとともに、審議会の検討状況等も踏まえつつ、再生可能エネルギーの導入促進について検討。

2009年度に始まった「東京都地球温暖化対策推進のための区市町村補助金」の提案プロジェクトは、先駆的な事業に初期経費を都が出す取り組みです。例えば、先日小金井市にこの制度を活用して、エクセルギーハウス(雨デモ風デモハウス)がオープンしました。土地を小金井市が用意し、東京都からこの補助金を受けてつくったものです。省エネタイプの建物を体験型モデルハウスとして、市民団体が運営していく取り組みは、今後の普及が期待できます。温暖化対策については、将来的には自治体の自立を促すとしても、震災でともすれば足踏みしかねないなか、不断に着実に、地域の温暖化対策が進むよう、こうした事業はもうしばらく継続すべきと考えます。そこで、区市町村補助制度について、この2年半に行った事業の成果と課題を伺います。・・・Q6
A6:環境局長答弁
この制度は、区市町村の地域特性に応じた地球温暖化対策等の取り組みの一層の推進を図ることが目的。
本制度の創設により、例えば家庭のエネルギー機器の導入に対する補助事業を実施する区市町村数が倍増するなど、地域の取り組みが着実に広がっている。
一部の自治体において事業構築のノウハウの蓄積が十分でないこと等が要因となり、区市町村ごとの取り組みに差があることが課題。

4、高齢者福祉について
団塊の世代が2025年には75歳以上に到達し、高齢者の1人暮らしも増加する状況の中で、住み慣れた地域で暮らし続けるためには、医療と介護の連携、高齢者の住まいの確保、見守りや配食など多様な生活の支援が必要であり、地域の介護力を高めていくことが求められています。都は現在、高齢者保健福祉計画を策定中ですが、この計画は、区市町村の介護保険事業計画を支援する性格も併せもっています。区市町村とも協力しながら、今後どのように地域包括ケアシステムを構築していくのか。伺います。・・・・・・・・Q7

A7:福祉保健局長答弁
高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けるためには、地域包括ケアの推進が重要。
都は、区市町村と協力し、介護サービス基盤を整備するとともに、包括補助を活用して、医療と介護の連携や地域住民が高齢者を支えあう仕組みの普及に取り組む。
こうした取り組みを踏まえ、第5期高齢者保健福祉計画の改定に併せ、区市町村を支援する方策を検討。

医療的なケアが必要な高齢者が増えており、介護現場においては、たんの吸引などの必要なケアをより安全に提供し、利用者と介護職員等の双方にとって安心できる仕組みが求められています。今回、法改正により、介護職員等は、一定の条件の下に、たんの吸引などの行為を実施することになりました。
今後、介護職員等は、たんの吸引などを行うにあたり、国が定める基準に沿った研修を受講する必要がありますが、この仕組みと現時点における都の取組状況について伺います。・・・・・・・・・Q8
A8:福祉保健局長答弁
法改正により、平成24年4月1日から医師・看護師との連携等、一定の条件の下に、、介護職員等がたんの吸引等を行うことができるようになった。
介護職員等がたんの吸引等を行うには、国のカリキュラムに沿った都道府県研修を受講することが要件の一つ。
都は、関係機関と調整しながら、研修講師の養成等の準備を進めている。

5、「社会的事業」への支援 について
社会的課題や地域課題の解決に向けては、行政の対応だけに期待するのではなく、市民が具体的な対応を生み出そうとする力を活用して行くことが重要です。特に、東京には、ソーシャルビジネスの担い手を目指す多くの人材が存在します。こうしたビジネスの機運を高め、効果的な活動を後押しするため、ソーシャルベンチャーセンターを設立して支援してきたと聞いていますが、これまで都は、ソーシャルビジネスの分野でどのような考え方で取り組みを展開してきたのか伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q9
A9:産業労働局長答弁
ソーシャル・ビジネスは、社会的な課題の解決に資するとともに、新事業の創出にもつながるため、その育成を図ることが必要である。
このため、都は、一昨年に「ソーシャルベンチャーセンター」を設置し、ソーシャル・ビジネスに関して相談業務を行うとともに、その起業に関心を持つ潜在層を対象としたセミナー等を実施している。
また、同センターでは、ソーシャル・ビジネスの事業者とその潜在層との交流を図り、両者のパートナーシップをつくり上げることができるよう支援している。

こうした社会的事業は、地域雇用の創出にもつながり、地域を元気にする新たな事業として期待されます。しかし、立ち上げ時には経営に関する知識や事業分野の専門性にも乏しいことなどから、十分な事業経費や人件費を得ることは容易ではありません。事業として継続していけるよう、さまざまな角度からの支援や社会的仕組みが墨田で始まっています。私の地元、多摩地域でも、市民が主体となった事業が芽吹いており、多摩地域への開設を要望するものです。
ソーシャル・ビジネスを展開する団体に対し、活動拠点の確保や、事業運営に必要なスキルを磨く拠点や機能を提供するような努力を、積極的に行うべきと考えますが、所見を伺います。・・・・・・・・・Q10
A10:産業労働局長答弁
創業して間もないソーシャル・ビジネスの団体が、低廉なコストで活動の拠点を確保し、事業の展開に必要な知識も学べるしくみを整備することは必要である。
そのため、都は、本年七月にソーシャル・インキュベーションオフィス・SUMIDAを設置し、創業直後のソーシャル・ビジネスの担い手に賃借料を低く抑えたスペースを貸し出し、企業経営などのノウハウを提供する専門家を配置する支援を実施している。
こうした取組により、ソーシャル・ビジネスの創業の支援を進めていく。

6、教育行政について、
このたび示された都立高校白書では、全日普通科で5・5%、定時制では38・9%の生徒が中退していることが明らかになりました。生活者ネットワーク・みらいは以前から夜間定時制高校に勤労青少年が通学する実態が1割未満であり、本来、日中学べるはずの子ども達が夜間に通わなければならない現状を指摘してきました。高校無償化により都立高校への期待がますます高まる中、経済状況など様々な困難を抱えていても、都立を希望するすべての生徒1人1人の自己実現に寄与するため、柔軟で門戸の広い高校教育を望むものです。都が進めてきた中高一貫、エンカレッジ、チャレンジ、国際科など特色のある学校を数校設置するだけでは収まりきれるものではなく、今後の都立高校の在り方について、見解を伺います。・・・・・・・・・・・・・・Q11
A11:教育長答弁
都教育委員会は、全日制・定時制を問わず、様々な学科や新しいタイプの高校を設置し、多様な生徒を受け入れてきた。
また、都立高校への進学を希望する意欲と熱意のある生徒を一人でも多く受け入れるよう、生徒数の推移や中学生の進学志望率等を考慮し、全体の募集枠を設定している。
今後とも、各都立高校の教育活動の特徴や具体的な入学者選抜方法等についての情報提供など、中学校における進路指導の支援を行うとともに、地域バランスを考慮した募集を設定し、希望する生徒を適切に受け入れていく。
以上