2016年第3回東京都議会定例会 一般質問
2016年10月5日
小松 久子
- 情報公開について
小池知事は所信表明で、「東京大改革」を推進する肝は「都政の透明化、つまり、見える化、わかる化の徹底」であるとして、都政改革本部に情報公開調査チームを立ち上げた。しかし、豊洲の一連の問題において「誰が、いつ、どこで何を決めたのか」さえ解明することはできなかった。今回のような不祥事を2度と起こさないためにも、都政の信頼を回復するためにも徹底した調査が必要である。
都政の意思形成過程の情報を公開していくことは、極めて重要と考えるが、知事はどのように進めていくべきと考えるか所見を伺う。・・・・・・・・・Q1
A1(知事):都政の透明化を進める上で何よりも重要なことは、情報公開の推進。そのためには、都庁全体の意識改革が必要。そこで、今般の都政改革本部の模様をインターネットで中継し、会議資料を迅速に公表するなど、都政の課題についての検討過程を透明化。また、各局においても、審議会のさらなる公開など、積極的な情報発信に向けた自律改革を進める。
また、情報公開を進めるためには、その基盤となる公文書管理のあり方も重要。豊洲問題で、組織的に使われたメモなど公文書として管理し公開すれば、責任の所在がより明らかになるはずだった。都は文書管理規則に基づいて管理しているが、保存期間や都民のアクセスしやすさに配慮するなど、改善の検討が必要だと考えるが、見解を伺う。・・・・・Q2
A2(総務局長):都が保有する文書は、行政活動を行う上で基本的かつ不可欠であり、適切な文書管理は、情報公開制度とあいまって、都民にとって、都政への参加を進めるために重要である。また、文書管理規則等に基づき、各局において、重要度等を考慮して文書の保存期間を設定し、必要があるときは、期間経過後も当該文書を保存することができる制度としている。さらに、文書の公開件名、保存期間等の情報は、情報公開の検索システムを通して都民に提供してきた。今後とも、都民が必要な情報を迅速かつ容易に得ることができるよう、文書管理のしくみを適切に運用するとともに、必要な改善を検討していく。
- 豊洲新市場問題について
一連の豊洲新市場問題の内部調査では、なぜ間違った説明がまかり通っていたのか究明されず、「空気のように決まっていった」という生ぬるい報告だった。都政への信頼を失墜させた歴代の市場長や管理職の責任は免れない。都議会のチェックの甘さも厳しく問われている。議会として百条委員会を設置し、真相を明らかにしていく必要がある。
先般モニタリングポストから有害物質が検出された。土壌汚染に関する安全性について、都は水質や空気中の化学物質を調べているが、知事は専門家会議を復活、さらにプロジェクトチームも立ち上げ検討するとのことだ。
では、最終的に安全性の確認は、だれがどのように判断するのか。・・・・・・Q3
Q3(中央市場長):地下水モニタリングで基準超過を確認したことや、盛り土がなされていなかった問題について、一つひとつ確実に検証していくことが重要である。このため、専門家会議や市場問題プロジェクトチームにおいて、これらの問題について調査、検証していただく。その結果をもって、知事が総合的に判断することとなる。
豊洲新市場計画の環境アセスメントは、2011年7月、すでに盛り土なしの工事が発注された時期に環境影響評価書が出されている。ところが評価書には盛り土することが明記された。これは虚偽記載と言わざるを得ない。都のアセス条例によれば、虚偽の報告をしたときは、当該事業者を公表する規定がある。今回の問題発覚によって、今後どのように対応するのか、見解を伺う。Q4
A4(環境局長):盛り土に関する変更届が提出されていないことから、環境影響評価条例第91条第1項第1号における「手続きの全部又は一部を行わなかったとき」として、同条に定める事業者の氏名等の公表の規定が適用される可能性。中央市場からは、すでに変更届提出の意向。事業者の氏名等の公表により手続きの確実な遂行を担保しようとする条例の趣旨に照らせば、本条を適用する必要性は乏しい。
千客万来施設は、市場敷地内に併設する民間施設だが、その用地は、土壌汚染対策工事の発注時の図面では、6.5mまでの盛り土があるのに、完了確認の報告では盛り土がなく、さらに民間への引き渡し条件は、盛り土があるものとされ、二転三転している。ここは地下2階建ての計画がされているが、その建設仕様・設計については、土地の履歴からの制約がおのずからあるはずで、地下は使用しない制約のもとで建設計画がなされるよう、都は説明する責任があったのではないか。建設工事にかかる現在の地盤高はどうなっているのか、それを掘って地下室を2階分つくることになるのか伺う。・・・・・・・・・・Q5
A5(中央卸売市場長):敷地の引き渡し地盤高は、AP6.2メートル程度。また、千客万来施設は、公募時の施設整備条件としては、生鮮食料品を取り扱う市場とは異なる民間商業施設であることから、土壌汚染対策法等に基づき適切に処理すること、市場に隣接していることから地下水管理システムの設置・維持管理を妨げることのない方法とすることなどとしていた。公募時に、事業者からは、地下2階を有する施設計画が提案。現在、事業者が設計を進めており、都と事業者の間で具体的な内容に関する協議を行っている。
なぜ盛り土ではなく、地下空間となったのか。その理由には都市計画道路補助315号線の存在があると考える。この道路があるがために、水産卸売場棟と水産仲卸売場棟の2つの街区が分断され、道路の高さによる制約があって、盛り土を設ける余裕はなく、かろうじて市場施設にターレのための連絡通路が設置されたものである。
道路は1993年に都市計画決定されたが、その時点で豊洲に市場計画はなかった。2001年、石原知事が豊洲への移転を決め、2003年には新市場基本構想を出したが、補助315号線は計画だけでまだ影も形もなく、都市計画を見直せるチャンスだった。
中央卸売市場の重要性を考えると、道路計画自体を見直し、敷地全体が有効に使えるようにすべきであったと考える。市場と道路との関係は、どのように検討されたのか。・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q6
A6(中央卸市場長):補助第315号線は、豊洲地区と有明地区を連絡する広域幹線道路であり、産地や買い出し人の車両等をスムーズに市場に導くためにも重要な役割を果たすものである。市場の施設計画の検討にあたっては、補助第315号線の一部を高架道路とし、高架下に水産卸売場棟と水産仲卸売場棟とを結ぶ連絡通路を設けることで、閉鎖型市場による高度な衛生管理を実現するなど、市場としての一体性を確保している。
- 子育て支援について
知事の提唱する「ライフ・ワーク・バランス」は、長時間労働を見直し男性も育児や家事に参加できるよう、働き方の意識や仕事の進め方の改革を求めており賛同するところだが、今年2月にまとめられた「東京都女性活躍白書」によれば、性別役割分担の意識は根強く残っており、男性の育児休業取得率は、低い数字にとどまっている。
北欧では、「パパクオータ制度」が導入されていることもあって、母親、父親がそれぞれ育児休業を取得し、仕事と育児の両立を図りやすい環境整備ができている。
都においても、男性の育児休業制度の利用を促すなど生活と仕事の両立が可能となるよう、企業における働き方の改革を進めていくべきと考えるが、知事の見解を伺う。・・・・・・Q7
A7(知事):東京が次世代に向けて持続的に発展していくためには、生活と仕事を両立できる調和のとれた社会を実現していかなければならない。人生、生活をもっと大切にし、男性が日常的に子どもと触れ合う、あるいは女性と家事を分担する時間を増やせば、女性も男性もいきいきと生活し活躍することにつながる。そのためには、深夜に及ぶ残業は当たり前という価値観を転換し、働き方の改革を進めていかなければならない。都は今年度から、長時間労働の削減など働き方の見直しや育児のための休暇制度の充実、男性の育児休業の取得促進など、生活と仕事の両立に向け取り組む企業を支援。今後とも、企業における働き方の改革を推進し、ライフ・ワーク・バランスの実現をめざす。
待機児童対策に関する補正予算案には、保育の質の確保を図る観点から、認可外保育施設への指導監督の強化が盛り込まれている。
都内では、今年3月に死亡事故が発生するなど、認可外保育施設に対する質の確保に向けた取り組みが求められていた。今回の巡回指導の強化は、自治体を応援する形で進めていただきたい。
指導監督権限は都道府県にあるが、巡回に際しては、ぜひ、保育の実施主体である区市町村とともに訪問するなど、連携を密にして取り組むべきと考える。こうした視点も踏まえ、認可外保育施設に対する指導監督の取り組みについて、都の所見を伺う。Q8
A8(福祉保健局長):都は児童福祉法等に基づき、認可外保育施設に対して書面による報告徴収、立ち入り調査、巡回指導等の指導監督を行っている。指導監督にあたっては、立ち入り調査等に、区市町村が立ち会うほか、指導内容の情報を共有するなど、保育の実施主体である区市町村と連携を図っている。今回の補正予算案では、認可外保育施設の保育サービスの質の向上を図り、児童の安全と保護者の安心を確保するため、巡回指導チームを編成し、指導体制を強化することとしており、来年度には、全ての施設に年1回、巡回指導できる体制に拡充する。今後とも、区市町村と連携しながら、法令等に基づき、指導監督を実施していく。
多くの待機児を抱える自治体にとって、保育園を増やすためにいちばん困っているのは、土地の確保である。
各局等が所有する都有地については、それぞれの行政目的で活用されていることは承知するところだが、待機児童対策の緊急性に鑑みて、このような土地の中でも、少しでも活用可能性のあるものについては、区市町村に情報提供、周知することが必要だと考えるが、見解を伺う。・・・Q9
A9(財務局長):都は、都有地を活用した保育所の整備を一層推進するため、副知事をトップとする「都有地活用推進本部」を先月開催。その中で、財務局所管の都有地に加え、各局等の都有地についても洗い出し。今後、こうした取り組みを踏まえ、区市町村に対し、適切に都有地の情報を提供。
- 道路計画への市民参加
知事は8月の定例記者会見で、武蔵野の緑豊かな国分寺崖線を通る小金井3・4・1号線と小金井3・4・11号線の優先整備2路線に関して、今回の都知事選の際に候補者として回答したアンケートにからめた質問に対し、「いったん立ち止まって、これは本当にいいのかどうかということを判断する」と答え、また現地視察についても「できるだけ、あちこち行きたい」と発言している。
知事には、地元の声を受けて、現地視察とともに、ぜひ市民の声を直接聞く機会を設けていただきたいと考えるが、知事の見解を伺う。・・・・Q10
A10(知事):都市計画道路は、交通・物流機能の向上による経済の活性化のみならず、日々の生活を支えるとともに、災害時には救急救援活動を担う重要な都市基盤である。小金井市の2路線は、広域避難場所へのアクセス向上や生活道路への通過交通抑制による地域の安全性向上などに資する重要な路線である。あわせて、環境に配慮することも重要であり、現地の地形状況や景観を踏まえた検討が必要である。この道路整備にあたっては、さまざまな意見があることは承知しており、今後、道路の果たす役割や機能、そして環境にどう配慮するかについて、市民との意見交換の場を設け、一つひとつ丁寧に対応を行うよう指示したところである。現場視察については、状況を踏まえて判断する。
- 八ッ場ダムの基本計画変更について
今回の基本計画変更は1986年以降、5回目である。当初は、2000年度に完成、事業費2110億円だったものが、計画変更で工期延長と事業費増額を繰り返し、今回は720億円増額し5320億円、都の負担分の増額は99億円にものぼる。
そもそも、八ッ場ダムを建設する根拠は、水道水源が足りないというもの。しかし、水需要は20年以上減少しているのに、都はまだ水需要が増える予測を出し、実績とのかい離はどんどん開いている。また、治水の面でも利根川・江戸川における八ッ場ダムの効果は非常に小さいだけでなく、東京の水害は、ゲリラ豪雨による内水氾濫ばかりであり、局地的な豪雨に八ッ場ダムは全く役に立たない。
八ッ場ダムは、これほど必要性がないにもかかわらず事業費が膨らみ続け、まさに小さく生んで大きく育てる無駄な公共事業の典型と言える。
今後現地地質の脆弱性による地すべり対策や本体工事の遅れなどで、さらなる事業費の増額や工期の延長が予想されるが、見解を伺う。・・Q11
A11(都市整備局長):八ッ場ダムは、利水、治水に必要不可欠な施設。利水面では、この夏の渇水に対して、八ッ場ダムがあれば、取水制限は行わずに済んだと推計されている。治水面でも、台風などの広域的な豪雨への備えを強化し、首都東京の治水安全度の向上を図る上で、重要な施設。地すべり対策などの残事業もおおむね確定し、工事は終盤を迎えており、国は、今回の基本計画の変更に際して、今後想定し得る事業費の増要因を十分に考慮し、2019年度完了に向けた工程の精査も行っている。都は、引き続き、国に対して、工期の厳守と徹底したコスト縮減を強く求め、八ッ場ダムの一日も早い完成を確実なものにしていく。