2015年第1回定例会 討論

2015年第1回定例会 討論

 

2015年3月27日

山内 れい子

 

都議会生活者ネットワークを代表して、第25号議案、第42号議案に反対、その他の知事提出のすべての議案に賛成の立場から討論を行います。

 

  • 第1号議案「東京都一般会計予算」について

「東京都長期ビジョン」の多くが2020年度までの完成を目標にしており、2015年度予算は、オリンピック・パラリンピック開催を念頭においた「都市機能を進化させるインフラ整備」や「災害に強い都市づくりの推進」など、投資的経費に傾斜した予算となっています。しかし、道路や橋梁などの都市インフラは、維持管理の時代に入っており、将来にわたる持続可能性という観点からメンテナンスや延命化、更新を優先させる必要があります。

 

超高齢社会の波が押し寄せている都において、これから20年、30年を展望した時、「福祉先進都市」が実現できるのかどうかは最大の課題であると考えます。現在すでに一人暮らし高齢者が増加し、認知症の人が住み慣れた地域で安心して生活できる体制づくり、人生の終末期を在宅で穏やかに迎えるために在宅療養など、取り組みをすすめていくべきです。

国は、空き家対策の指針で、空き家を地域の集会所や交流サロンなどに活用することを示しました。実際に、空き家をコミュニティの拠点や高齢者・子どもの居場所などに使いたいという声が寄せられており、そこでNPOがソーシャルビジネスを展開することも始まっています。自治体が取り組む住宅以外の活用への支援を要望します。

 

都の環境政策としては、脱原発と地球温暖化対策をすすめることが重要です。そのために、都としては省エネ技術開発の推進や自治体の再生可能エネルギー導入等の支援を拡大していくべきです。東京都は、キャップ&トレード制度を国に先駆けて導入し、温室効果ガスの排出を削減していますが、温暖化対策は待ったなしであり、さらなる努力が必要です。長期的な高い目標を掲げエネルギーのグリーン化をすすめるとともに、2020年開催のオリンピック・パラリンピックは、CO2ゼロのカーボンニュートラル大会とするよう要望します。

 

働く人の3人に1人は非正規雇用者であり、女性と若者が多いという現状があります。今期、ようやく業績の上がった大手企業はベースアップを果たしましたがほんの一部であり、非正規雇用者への待遇改善には手が届いていません。正規雇用となっても低収入や劣悪な労働環境に置かれ、「名ばかり管理職」や「ブラック企業」といった課題が増えています。今年度予算の目玉になっている「正規雇用化」施策が、若者の自立に着実につながるように、一人ひとりに継続的に支援するパーソナルサポートのしくみをつくることを求めます。

 

女性の活躍推進が言われていますが、ストーカーやDVなど性犯罪が増加し、多くの女性が被害者となっています。生活者ネットワークはこれまでも被害者支援の充実を求めてきました。都は、2015年度から性犯罪被害者の安全確保のため、ホテルなどの宿泊費用の一部補助と7月には24時間対応可能なワンストップ支援体制を構築します。性犯罪は、被害者の心身に大きなダメージを与えるため、医療的支援や精神的なケアの重要性は極めて高く、性犯罪被害者が立ち直り自立できるまで、継続的に被害者に寄り添った支援を求めます。

 

人権施策推進指針の見直しに向けた有識者懇談会の提言は、今日的な人権課題があまねく捉えられており評価できるものです。とりわけ、性的指向をふくむLGBT(性的マイノリティー)の問題は、早急に取り組むべき重要な課題と考えます。自分の性への違和感に悩み苦しむLGBTの当事者は、相対的に自己肯定感が低く、自殺の比率が一般の6倍にものぼる深刻な状況であり、当事者や保護者からは、義務教育の場において、気づきや理解を深める取り組みを求められています。都教育委員会は、市民活動団体と連携し、この問題を教育課題として取り組むよう要望します。

 

  • 第86号議案「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例の一部を改正する条例」(環境確保条例改正)について

子どもの声を「数値規制から、受忍限度で判断する規制」に改正することで、受忍限度というあいまいな基準で判断をすることになるため、直接の窓口である区市町村が対応にさらに苦慮するのではないか懸念しています。子どもの最善の利益の実現のために、大人たちが合意形成をできるよう、保育所を設置する事業者に対して、都として、近隣住民への説明を義務付けるなどの工夫が必要です。

 

  • 地方教育行政法改正に伴う条例改正について

大津市でおきた中学生のいじめ自殺問題をきっかけに、教育行政のあり方が見直されました。今回の法改正により、国は、教育委員会における責任の所在が明確化され臨機応変の対応が可能になり、いじめ問題が解決すると期待しているようですが、一方で教育現場への首長の権限が強化されることを危惧する声も聞かれます。今後、総合教育会議が設置されることになりますが、徹底した情報公開を求めるものです。

生活者ネットワークは、かねてより教育の分権こそ必要だと考えてきましたが、学習指導要領や、教科書の検定や採択など、文科省が画一的に進めることで、学校の自主性がますます損なわれています。

学校は本来、そこで学び育つ子どもが主役となるべきです。文科省が教育委員会を通じて指導や助言という方法で学校現場への管理を強化するようなあり方ではなく、子どもと地域が学校の運営に関われるようなしくみをつくることこそ、いまの学校をめぐるさまざまな問題の解決にもっとも必要であると考えます。

 

  • 第25号議案「水道事業会計予算」について

昨年4月、水道局は「東京水道施設整備マスタープラン」を策定、年末の長期ビジョンを踏まえて今年2月には改訂版を出しました。施設の老朽化や耐震対策に取り組むことは重要ですが、水需要はすでに減り続けており、将来人口減少に伴ってさらに減っていくことが確実であるにもかかわらず、過大な水需要予測に基づいて施設整備をすすめることになっています。ダウンサイジングを踏まえた施設の再構築が必要であり、八ッ場ダムをはじめとする無駄な水源開発や過剰な施設整備をすすめていく水道事業会計予算には反対です。

 

  • 最後に、都議会5会派が議員提案した費用弁償見直しの条例について申し上げます。

都議会議員には議員報酬のほかに、本会議や委員会に出席するたびに、別途費用弁償が支払われており、2013年度の費用弁償総額は5200万円となっています。この「費用弁償」をめぐっては、実際にかかる交通費よりも高額であることから、税金の二重取りとも批判されてきました。

 

費用弁償のあり方については、2001年の「議会のあり方検討委員会」の報告書には、「今後「費用弁償のあり方」について再検討することを提案することで、全委員の意見が一致した」と書かれており、すでに問題意識が共有されています。その上、都民からも費用弁償の廃止などを求める陳情が再三出されたにもかかわらず、是正されないまま今日に至っています。

生活者ネットワークは、これまで、議会のあり方検討会や議会運営委員会のなかで、会議出席に伴う「費用弁償」は廃止すべきと主張してきましたが、今回、議会改革にはより多くの会派の合意が重要であり、交通費を実費支給する条例改正案を共同提案するものです。

全国の自治体議会では、廃止や実費支給に変えているところが増えています。都議会としてこの問題を放置したままでは、有権者の理解は得られません。今こそ、議会改革に取り組むべきと申し上げ、生活者ネットワークの討論とします。

以上