2012年都議会第一回定例会 討論

2012年都議会第一回定例会討論

2012年3月29日

都議会生活者ネットワーク・みらい

山内 玲子

 都議会生活者ネットワーク・みらいを代表し、本議会に提案された知事提出の、第18号議案、第25号議案、および第81号議案に反対し、その他の議案には賛成の立場から、討論を行ないます。

 ●「東京都中央卸売市場会計予算」について

 築地市場移転問題については、これまでもさまざまな問題点を指摘してきましたが、昨年の討論で述べた直下型地震による液状化や地盤沈下の心配は、東日本大震災で現実のものとなり、豊洲新市場予定地はさらなる対策が迫られています。市場関係者の合意が進んだとしても、消費者にとっては、市場のコンセプトで最も大事なものは「食の安全」です。「食の安全」への信頼を取り戻すために、直下型地震への備えや汚染対策にどれだけ税金をつぎ込むことになるのか先が見えない状況であり、豊洲新市場に関わる予算案には賛成できません。

 ●「東京都水道事業会計予算」について

 水道局ではこれからの100年を見据えた「東京都水道施設再構築基本構想」を策定しました。将来の水道需要の見通しは、一日最大配水量をピーク時に「概ね600万㎥になる可能性がある」としています。原発事故後の電力供給不安を経験した私たちは、過大な需要予測と過小な供給予測は、事業者の意図的な数値であったことを知ることになりました。

 今回出された予測は、八ッ場ダム事業に参画する理由が必要なために、何がなんでも600万㎥の数字をつくり上げたものだと言わざるをえません。水需要だけでなく、構想全体を貫く「新たな安全度」は、20世紀型の多消費社会を踏襲するものにほかなりません。

 漏水対策や安全な水を供給しようという水道局の努力には敬意を払うものですが、このような理由から、残念ながら水道事業会計に反対します。

 ●「東京都立看護専門学校条例の一部を改正する条例」について

 急激に進む高齢社会の中で、在宅医療や介護保険関係事業での看護師の需要はさらに増しています。都は平成12年以降、都立看護専門学校を再編した結果、養成人数はかなり絞られてきました。昨年策定された東京都看護職員需給見通しでは、需要を十分満たしきれるのか、疑問であり、都立看護学校の役割はますます重要と考えます。都立看護学校の授業料は、5年前の改定で、212,600円となっており、近隣県などの公立の授業料と比較しても、もっとも高額であるにも拘らず、今回5万円を超える大幅値上げが提案されていることは問題です。

 「2020年の東京」でも、医療人材の育成・確保は喫緊の課題となっており、看護を志す若い人材の芽を摘むことのないよう、授業料の大幅値上げに反対します。

 ●平成24年度東京都一般会計予算について

 都税収入が落ち込み、先行き不透明な経済状況下で、一般歳出を抑制する一方、投資的経費は8年連続増額し、前年度に比べても0.2%増としています。しかし、下水道や橋の老朽化に見られるように、社会資本整備の面からも、新たなものを造るのではなく、メンテナンスや再整備に大きくシフトしなければならない時代に入っています。このような中で、2020年のオリンピック招致をはじめ、八ッ場ダムや外環など、無駄な公共事業に取り組んでいる場合ではありません。

 歳出の中では「福祉と保健」分野の予算が増額されていることは評価できますが、最近の高齢者世帯や母子家庭における孤立死、子どもの虐待の増加などを考えると、まだまだ施策の行き届かない分野があると言わざるを得ません。予算の高だけでなく、制度のはざまに陥っている人がいないか、制度の運用にも自治体と連携して十分な目を注ぐことを要望します。

 ●福祉施設の設備及び運営に関する条例について

 4人に1人が高齢者になる超高齢化社会が目の前に迫ってきて、住みなれた家で過ごしたいと在宅療養を希望しながらも、家族への負担や急変時の対応に不安を抱く人が増えています。そのため、特別養護老人ホームなどの施設には入所待ちの人々が絶えません。都内では有料老人ホームは着々と増えていますが、低所得者でも入所できる特養の整備はなかなか進まず、今回、整備を促進するため、国基準を緩和した設備基準を示す条例が提案されました。誰もが人としての尊厳が保てるためには、個室が大前提であることを肝に銘じて、整備を進めることを強く求めるものです。そして最終的には施設に頼るのではなく、住み慣れた家で最後まで生活できるよう、24時間365日切れ目のないサービスを提供するための在宅療養診療所を中心とした訪問看護ステーションなど、多職種連携が重要です。

 また保育所の面積基準については、年度途中に限り、満2歳未満の基準を緩和したことは、待機児対策としてやむを得ないものと受け止めますが、子どもの成長にとってはもっと広い面積が望ましいことは言うまでもありません。

 特養・保育所のどちらにとっても、基準の緩和によって、利用者へのサービスが低下することがないよう、都の指導強化を求めるものです。

 ●がん対策について

 今回、がん対策推進条例を議員提案として共同提出しましたが、委員会では、全会派の賛同が得られなかったことは残念です。がんは都民の主要死因の第1位であり、全死因の約3割を占めています。さらに働き盛りの30代・40代での発症の増加は、仕事の継続や家庭生活への影響など、新たな課題を提示しています。国においてはがん対策推進基本計画が策定されていますが、都もさらなるがん対策が必要であり、条例化は必至であると考えます。今回議員提案として執行条例を出すこと自体への議論もあったようですが、立法、すなわち条例提案こそ議員の権能の強化であり、今後も大いに勉強して真に都民のためになる条例づくりを促進していくべきと考えます。

 ●放射能対策について

 原発事故から1年が経過しても被災地の復興はあまりに広域・甚大な被害ゆえに遅々として進まず、瓦礫の処理や生活再建にむけた取組が急がれます。一方、放射能の問題は、日を追うにつれて規模や拡がりが明らかになり、収束に向けて長い年月が必要なこととあいまって、都民にとっても、のどに刺さった小骨のように気がかりな問題です。都は、大気や水・農水産物などの放射能測定を行い、結果を公表してきましたが、4月からの新基準施行を機に、検査体制の一層の充実と的確な情報提供を行うととともに、市民が取り組む放射能測定への支援や、適正な検査を行える人材の育成・研修なども重要です。

 現在の都の放射能測定は、空間線量は環境局、農水産物等は産業労働局、食品は福祉保健局、給食は教育庁と多くの部局に分かれています。今後長期にわたって追跡調査を行い、科学的根拠に基づいた丁寧な情報公開を行うためには、横断的な専門部局を設ける必要があることを再度提案します。

  3月26日に、柏崎刈羽6号機が停止し、東電管内では原発からの電力供給はゼロになり、北海道の泊3号機も5月5日に検査に入るため、日本中から原発による発電がなくなります。夏の電力不足を懸念し、再稼働を求める声がありますが、その必要はありません。昨年夏の節電は、都がつくったキャップ&トレードのしくみによって、効果的なはたらきかけや把握ができたため、大口事業者が目標以上の成果を上げました。原発に頼らない生活は可能であり、むしろ原発ゼロを前提にエネルギーの使い方を考えるべきです。

  東日本大震災と原発事故によって、これまでの生活スタイルや価値観の転換が迫られていることを都民の多くが実感しています。パラダイムシフトの必要性が、今ほど現実味を帯びて語られることはありません。エネルギーをはじめ、これまでの20世紀型経済社会から脱却し、若者が安定した職業に就ける施策や、高齢者や障がい者へのきめ細かい対応など、誰もが安心して暮らせる持続可能な社会を作り出していくための新たな都政運営を求め、討論といたします。

以上