2012年都議会第一回定例会 一般質問
2012年3月1日
西崎光子
●地球温暖化対策について
知事の所信表明でも触れられておりましたが、CO2削減に向けた世界の枠組みを決める国際会議、COP17が昨年末、南アフリカで開催されました。しかしその結論は、削減に向けた枠組み作りおよびその実行を、大幅に先送りするというものです。COP17における国際的な枠組作りそのものは、EU諸国の奮闘によってどうにか破綻を避けることができましたが、このような結果となったことは、地球温暖化に対する危機感が薄れてきたような気がしてなりません。
地球温暖化対策を怠ることは、将来に禍根を残すことです。CO2を確実に削減し、地球温暖化の危機を回避していくには、強い決意を持って地球温暖化対策を貫徹していくことが不可欠と考えますが、知事の見解を伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q1
A1≪知事答弁≫
・地球環境の異変は深刻の度を増しており、例えば、北極圏における海氷の面積は、近年、急激に減少しているだけではなく、氷そのものも薄くなりつつある。シベリアの永久凍土も解け始めるなど,ティッピング・ポイントは目前。
・人類が滅亡の淵にあるにもかかわらず、京都議定書から離脱するなど、一向に実効性ある温暖化対策を講じようとしない我が国政府の振る舞いは、将来世代に対する背信であり、裏切りである。
・我が国には、あまたの優れた環境技術があり、これを十二分に活用することで、世界の温暖化対策を牽引。国はCO2の高い削減目標を放棄することなく諸外国に対してもリーダーシップを発揮し、未来への責任を果たすべき。
・都は、今後とも都市型キャップ・アンド・トレードなどこれまで導入してきた温暖化対策を、民間と共同し、強力に推し進めていくとともに、国に対しても、その責任を果たすよう求めていく。
●エネルギー対策について
3・11の地震や原発事故をきっかけに、現在、原子力発電所のほとんどが稼働を停止しています。電気を使う側が、省エネに取り組むことはもとより、電気をつくることについても、太陽光や風力などの再生可能エネルギー・自然エネルギーの促進や、スマートシティの実現にむけた取組が、今後期待されます。
こうした状況の中、東京都は、電力の安定供給に直接貢献する、インフラ整備のための官民連携のファンドの創設を発表しました。このファンドは、民間資金の呼び水として都が出資をし、総額数百億円のファンドを創設。民間金融機関の融資などと合わせて、1千億円規模の事業費をめざすものと聞いておりますが、官民連携インフラファンドを、東京都が創設する意義について、伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q2
A2≪知事本局長≫
・東日本大震災以降、国は電力安定供給の解決策を示せていない。
・電力の大消費地である東京として、都民生活などを守るため、電力供給の安定化に取り組む必要がある。
・課題解決の一方策として、官民連携インフラファンドを創設し、発電事業等に投資を予定している。
・モデルを示し、国などを先導する役割も果たす。
ファンドの主な投資先は、「首都圏を中心に10~30万kW級の発電事業に集中投資」する他、「再生可能エネルギー事業や、首都圏以外の事業も対象」とのことです。都内の電力の安定供給のためには、どの程度の発電が必要であり、このファンドでどの位を見込むのか、また、官民連携インフラファンドの想定する規模の出資が集まるのかなど、市場調査等を踏まえて発電事業のニーズをきちんと把握することが必要です。投資を始めるにあたり、発電事業の見通しをどう捉えているのか、伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q3
A3≪知事本局長≫
・自治体や民間企業では、東電の値上げに対し、PPSに切り替える動きが加速している。
・PPSはニーズに対応する供給能力がなく、新たな設備投資が必要となっている。
・当ファンドが投資先として想定する発電事業には資金需要がある。
・再生可能エネルギーの発電事業については投資対象とするが、国の買い取り価格の動向に左右される。
このファンド創設にあたり、都は予算案に30億円の出資金を計上しており、その運用を、これから公募するファンドマネージャーに託すことになります。ファンドという性格上、元本は保証されません。
そこで、インフラファンドが電力の安定供給に有効活用されているかどうか、情報を公開し、都民に対する説明責任を果たすことが求められることをまず申し上げておきます。そのうえで、このファンドの運用状況など、都はしっかりと監視するべきと考えますが、見解を伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q4
A4≪知事本局長≫
・資金の運用はファンド運営者の責任で行う。
・都は出資者の一人として、出資目的に沿った運営が行われているかという観点で適切にチェックする。
●放射能対策について
未曾有の大震災から間もなく1年が経過します。大震災による福島第一原子力発電所からの放射能の影響は、都内においても食品、水、廃棄物などさまざまな分野に及び、不安に感じる都民も少なくありません。こうした中、都は3月から宮城県女川町の震災がれきを受け入れるため、一部事務組合や区市町村と合同で住民説明会を行っています。説明会の場では受け入れた災害廃棄物による放射能汚染を心配する声があり、説明会の場所や回数についても区市町村の求めに応じて開催していくことが必要です。
震災がれきの受け入れ中も、こうした不安の声に応えて、受け入れに対する理解を求めていく必要があります。都として今後どう対応していくのか伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q5
A5≪環境局長≫
・都は区市町村および一部事務組合と共同で、2月~約30回の住民説明会を開催中。
・説明会では、被災地での選別内容や都内での処分方法のほか、放射能については、清掃工場の排ガスから検出されず、敷地境界の空間放射線量率は試験焼却中とその前後で変化がないなど、問題がないことを説明。
・明日から本格搬入が始まる女川町の災害廃棄物の放射能測定結果も、逐次、公表するととも に、区市町村と連携し、住民の疑問や不安の声に一つ一つ丁寧に対応し、理解を求めていく。
放射能汚染の心配は、がれきだけではありません。国や都は、大気や水、土壌など、さまざまなモニタリングを行っていますが、環境に放出され降り積もった放射性物質についても不安がぬぐえません。2012年2月の環境審議会の答申によれば、「放射性物質のリスクについてさまざまな意見があり、また、さまざまな情報が飛び交っている」とされています。放射能対策は、長期間にわたる対応が必要であり、都は、科学的根拠に基づいた丁寧な説明に努めるべきと考えますが、見解を伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q6
A6≪環境局長≫
・放射性物質については、知識や情報の不足により、無用な混乱を招く恐れもあることから、都民に正確な知識を普及することが大切。
・とは本年1月、環境局HPの「事故由来放射性物質」のコーナーに、都内における放射性物質の状況や局所的汚染と面的汚染に関するリスクの違いなどを分かりやすく掲載したところ。
・環境審議会答申を踏まえ、HPに放射線お時間的な減衰調査結果を掲載し、内容を充実させるなど、放射性物質に係る正しい知識や情報を継続的に提供。
東京都は、環境確保条例に基づき、水質、土壌、大気等の汚染防止対策に取り組んできました。最近では、土壌汚染対策やディーゼル車規制、温暖化対策など、国に先駆けて取り組みを進めています。一方、現行の条例には、放射性物質対策については、特段の規定はありません。今回の事態を受けて、今後、放射性物質への対策についても条例に具体的な規定を設けることを検討すべきではないでしょうか。見解を伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q7
A7≪環境局長≫
・国は、放射性物質による汚染を環境基本法の適用除外としている現状を改めるため、今国会に改正法を提出。
・一方、都の環境基本条例及び環境確保条例は、公害の範囲として大気汚染等いわゆる典型7公害に加え、放射性物質による汚染のように、未だ公害としての理解が定着していない問題についても、条例制定当時から適用除外とはしていない。
・したがって、条例改正が必要な状況にはないと理解。
子どもたちが毎日食べる学校給食の測定が地域の自治体で始まっています。特に、牛乳については、生活者ネットワーク・みらいもこれまで測定と結果の公表を求めてきました。東京学乳協議会が学校給食用牛乳の放射性物質の自主検査を行い、その結果を公表したことは1歩前進と考えます。しかし、検査結果は測定下限値以下で、その下限値は50ベクレルというものでした。現在の暫定規制値は200ベクレルですが、4月から適用される新基準が50ベクレルとなることを考えると、測定下限値を引き下げ、より詳細に調べるとともに、数値を公表すべきと考えますが、所見を伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q8
A8≪教育長≫
・都教育委員会は、昨年12月、学校給食の安全・安心の確保及び保護者の不安払拭に向けて、東京学乳協議会に対し、学校給食用牛乳供給事業者の自主検査を公表するよう要請。
・この要請に応じ、同協議会は、各供給事業者から学校給食用牛乳の提供を受けて自主検査を行い、その結果を公表。
・今後の自主検査については、基準値等の変更を踏まえ、同協議会において適切に対応されるものと認識。
4月からの給食の放射能検査は、新基準を踏まえて実施することになります。東京都教育委員会は、国の補助を受けて測定機器を購入し、区市町村では、独自事業のほか、地方消費者行政活性化基金を使って機器購入や検査委託をしたり、国民生活センターの機器貸与を使うなどして、検査を実施しています。
今後長きにわたって検査を続ける必要がありますが、その体制づくりをどうするのか伺います ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q9
A9≪教育庁≫
・都教育委員会は、学校給食に対する保護者の不安払拭のため、食品の放射線検査機器を購入し、都内公立学校を対象に1校あたり年間3回程度、調理前の給食食材を前日までに検査できる体制を整備。
・なお、各区市町村における検査は、それぞれ独自の考え方で実施されているものと認識。
放射能問題はごみや大気、水、食べものなど、多岐にわたり、また短期間で解決する問題ではありません。自ら放射能測定を行う市民団体も各地に発足しておりますが、適正な検査を行える人材の育成や研修なども重要になってまいります。都としても、継続して取り組むため、局を越えて放射能専門の部署を設けることを提案しておきます。
●ワークライフバランスの推進について
男女雇用機会均等法が施行されて25年が経過し、働く女性が増加した一方で、長時間労働を避けられず、家事や育児に追われる中で、仕事と家庭の両立を諦めてしまう人は、少なくありません。働きながら子どもを産み育てやすい環境づくりが求められています。
また、大震災による交通機関の混乱や原子力発電事故に伴う電力不足や節電対策等の面からも在宅勤務の導入や長時間労働の削減など、これまでの働き方を見直す企業も見受けられました。このような働き方を見直す動きは、ワークライフ・バランスを定着させるきっかけともなるものです。
都は、これまで仕事と生活の調和の取れた社会の実現をめざし、企業の労働環境整備を支援するための様々な取組を進めてきましたが、今後はなお一層積極的な取組が求められます。都の見解をお聞かせ下さい。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q10
A10≪産業労働局長≫
・労働者がいきいきと働きながら、子育てなど家庭における役割を果たすためには、仕事と家庭生活の両立が可能となる雇用環境を整備することが重要。
・とはこれまで、「中小企業両立支援助成事業」により社内体制の整備などの経費の一部を助成することで両立支援に取り組む企業を支援してきた。
・また、優れた取り組みを進める中小企業を認定するほか、働き方を見直す先進的な企業の取り組みを「東京モデル事業」により支援し、ワークライフバランスの推進に向けた社会的気運の醸成を図ってきた。
・今後とも、こうした事業を着実に実施するとともに、認定企業等の取り組みの成果を広く発信し、ワークライフバランスの一層の推進を図っていく。
女性の社会参加が活発になり、近年、勤労者世帯の過半数が共働き世帯になるなど、生き方、働き方や価値観も多様化していますが、仕事や子育てなどをめぐる社会基盤は、必ずしもこうした変化に柔軟に対応しているとはいえない状況です。
一方、介護との両立が必要となるのは、企業においては中核となる役割を担っている世代が多く、育児に比べると男性の比率が高くなる傾向があります。介護のために働きざかりの従業員が退職せざる得ない状況になることは、企業にとっても深刻な問題です。
安心して子育てや介護と仕事の両立ができる社会をつくるためには、ワークライフ・バランスの推進に取り組んでいくことが極めて重要です。
「男女平等参画のための東京都行動計画」の改定に関する東京都男女平等参画審議会の答申では、ワークライフ・バランスの推進について、どのように提言し、今後どのように取組を進めていくのか伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q11
A11≪生活文化局長≫
・都は、平成23年度内を目途に行動計画の改定作業を実施。
・本年1月の審議会答申では、柔軟で多様な働き方が選択できるように企業の取り組みの促進や、働く人が主体的に働き方を見直すための啓発活動など、「仕事と生活の調和の推進に重点的に取り組むことを提言。
・今後、答申を踏まえて行動計画を改定し、男女平等参画の推進に向けて、関係各局等と連携し、「仕事と生活の調和」の実現を図っていく。
●配慮が必要な子どもへの支援について
杉並区内の養育家庭に委託していた児童が死亡し、里母が傷害致死容疑で逮捕される事件がありました。
この事件をうけて、都ではこれまで検証結果や再発防止策がまとめられ「児童虐待死亡ゼロを目指した支援のあり方」として審議会の提言が出されました。
養育家庭制度は、児童が家庭的な環境の中で、特定の大人との愛着関係を築きながら、基本的な信頼関係を獲得し、健やかに育つ子どもができる社会的な養護の仕組みですが、様々な問題を抱えた子どもを地域の中で育てていくためには、児童相談所の職員を増員するだけでは限界があります。
養育家庭が抱える諸課題にきめ細かく対応するためには、多様なサービスを展開することが必要であり、NPO法人などによる地域の子育てネットワークを活かしたサポートシステムが求められます。都の所見を伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q12
A12≪福祉保健局長≫
・虐待を受けた児童などを早期に発見し適切に保護するため、区市町村では、地域の関係機関が連携する要保護児童対策地域協議会を設置し、情報を共有。
・養育家庭について、このネットワークを活用し、これまで以上に情報共有を図り、地域全体で支援していく取組を進めていくこととしている。
・区市町村が、ネットワークにおいて、地域で子育て支援に関する取り組みを実施しているNPOやボランティア団体等都連携することは、養育家庭への支援の一助になると考える。
養育家庭に登録していても、児童の委託を受けない期間ができる場合もあります。また、過去に里親の経験を持っていても、現在は養育家庭の登録はしていない人もいます。板橋区では、ひとり親や支援の必要な親に対して、養育家庭の経験を有する人を活用していると聞いており、子育てに悩む親にとって貴重な取組となっております。こうした取組を養育家庭による子育て支援に広げることも重要だと考えますが、都の所見を伺います。・・・・・・・・・・Q13
A13≪福祉保健局長≫
・区市町村は、子育て家庭を支援するため、子ども家庭支援センターで相談に応じるほか、子育て広場や一時預かりなど、多様な取組を実施。
・これらの中では、子育て経験者が子育て家庭を支援する取り組み等も行われており、板橋区における養育家庭の経験を活かした取り組みもその一例。
・都は、区市町村が行う子育て支援策を、包括補助事業により支援。今後も区市町村の創意工夫を生かした取り組みを促進。
長引く景気低迷と貧困層の拡大、生活保護受給世帯・要支援家庭の増加などが、子どもの生活面だけでなく、学習面などにも影響を及ぼし、切実な問題になっています。区市町村の現場では、貧困世帯の子どもに対してさまざまな学習支援が実施されています。先日報道された荒川区や足立区などの例は、学校も関わった施策です。都は、福祉分野で生活保護世帯への塾代助成や保護世帯以外への受験料・塾代貸付を実施していますが、利用実績は増加しています。しかし、教育委員会には、貧困世帯への学習支援というメニューがなく、区市町村で実施している事業への支援もありません。学校現場では困難を抱える子どもたちへのサポートが模索されていますが、東京都教育委員会でもそれを認識し、教育と福祉の連携で子どもの視点に立った支援が求められています。
そこで、貧困世帯の子どもへの学習支援等が必要だと考えますが、教育委員会の認識を伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q14
A14≪教育長≫
・子どもたちは、様々な課題を抱えている。経済的に課題のある世帯には、就学援助や生活保護などの様々な公的支援が、その目的に応じて行われている。
・学力に課題のある子どもには、家庭の経済状況には関係なく、補習授業や取り出し授業、少人数指導を行っている。
・都教育委員会は、家庭の経済状況によって子どもの課題を決めつけることなく、子どもの教育上の課題に応じて支援を行っていく。
以上