2004年度第1回定例会 一般質問

2004年3月4日

都議会生活者ネットワーク

山口 文江

●介護保険制度について伺います。

Q1 厚生労働省は、2005年の介護保険制度見直しに向けて本格的な検討を行っています。

昨年6月厚生労働省老健局長の私的研究会は「高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて」において『2015年の高齢者介護』のキーワードを「尊厳」とし、報告書の基本的理念としています。また、介護を必要とする高齢者の50%近くが、痴呆の問題を抱えていることから、介護の問題は、痴呆のケアを合せて考える必要があることも提言しています。

痴呆になっても地域で生活できる「痴呆性高齢者グループホーム」が「老いの住まい」として介護保険サービスに位置づけられ、東京都は重点事業として取り組んでいます。整備目標を高齢者人口の0.18%、約4300人とし、概ね順調に推移していると聞いています。課題としては、都内の設置状況に偏在が見られること、入居者の経済的な負担が大きいこと、また、要介護度が重くなると退所しなければならないことなどが挙げられています。住み慣れた地域で、尊厳ある自立を支えるという理想の裏で、通過施設になることが危惧されています。在宅に最も近い住まい方であるにもかかわらず、現行制度では、在宅サービスが併用できないため、住み慣れたグループホームで終末期を迎えることが、難しい状況にあります。痴呆性高齢者グループホームのターミナルケアについて、都としての認識と課題および対応策について、伺います。

A1(福祉局)住み慣れたグループホームで、いかに人生の終末を迎えるかということは、高齢者の尊厳を支えるケアという観点から、考えるべき課題と認識している。しかしながら、ターミナルケアを行う場合には、家族や他の入居者との十分な調整とともに、医療との密接な連携が重要であるが、グループホームでは、介護保険の訪問看護等医療系サービスの利用は認められていない。このことから、グループホーム利用者に対し、介護保険による医療系サービスが併給できるよう、都は国に対し提案している。

 

Q2 介護保険施設には、昨年4月からケアマネージャーの配置が義務付けられ、来年度から痴呆性高齢者グループホームの計画作成担当者はケアマネージャーとなります。今後、こうした施設のターミナルケアの課題にもその調整能力が問われることになります。一般的に施設におけるケアマネージメントは取組みが遅れているといえますが、資質向上に向けた今後の取組みの推進について伺います。

A2(福祉局)施設は、集団生活の場であることから、画一的な援助に陥りがちであるため、施設の介護支援専門員は、利用者個々人の状態に応じたケアプランを作成できる力量を身につけることが必要である。

このため都は、介護支援専門員現任研修の中に、施設におけるケアプラン作成のためのカリキュラムを設けることなど、研修の充実を図ってきた。さらに、今年度中に、施設におけるケアプランの作成から、サービス実施状況の把握、評価に至るまでの手順などを記載した手引書を作成し、施設の介護支援専門員の資質向上に努めていく。

 

Q3 一方、居宅においても、ケアプランに対する利用者の苦情や不満も多く、ケアマネージャーの資質向上は急務の課題です。都ではケアマネジメントリーダーの養成も進み、今年度、リーダーを活用してケアプランの評価を行うケアプラン指導チームの運営をモデル的に実施しました。今後、さらにリーダーを積極的に活用して、地域のケアマネージャー全体の資質向上に役立てる必要があると思われますが、考えを伺います。

A3(福祉局)ケアマネジメントリーダーは、地域の介護支援専門員の技術向上を図る指導者として、H14年度から養成を開始し、今年度末までに173名を養成する予定である。養成したリーダーは、現在、在宅介護支援センターなどで、地域の介護支援専門員に対する相談・援助や、研修の講師などの活動を行うとともに、福祉・保健・医療の連携の推進に努めている。さらに来年度からは、ケアマネジメントリーダーを中心にケアプランの評価・指導を行う「ケアプラン指導チーム運営事業」を本格実施していくこととしている。

 

●福祉サービス第三者評価制度について伺います

  Q4 福祉サービスの質を向上させるしくみとして、都は、国に先駆けて第三者評価の導入に取組み、昨年7月に本格的にスタートしました。NPOなど多様な評価機関の活用など独自性が注目されますが、利用者が自らサービスを選択していく上で、その選択に資する情報とするには、評価のばらつきや受審費用が高いこと、事業者の経営部分の評価に比重が偏りがちであることなど、解決すべき課題が多いといえます。利用者本位の評価手法が求められる中、利用者や事業者など関係者の意見を聴きながら改善すべきと考えますが、見解を伺います。

A4(福祉局)第三者評価制度は、利用者のサービス選択を助け、サービスの質の向上に向けた事業者の取組みを促すものとして極めて有効である。こうしたしくみを普及定着させていくためには、内容を常に検証し、改善を図りながらより信頼されるものとしていくことが重要である。こうした観点から、すでに都は、第三者評価を受審した事業者や利用者から意見を幅広く聴取しながら、現在「東京都福祉サービス評価推進機構」内に外部委員からなる6つのワーキング・グループを設置し、評価手法等の検討を行っている。今後ともより信頼度の高いものとなるよう努めていく。

 

Q5 痴呆性高齢者グループホームの第三者評価については、国の制度として受審が義務付けられていますが、その他の福祉サービスについては、事業者の任意となっています。第三者評価の意義を十分に理解し、積極的に受審することが求められますが、一方で事業者にさらにインセンティブをもたらすことが必要です。都としても、受審促進を図っていく必要があると考えますが、具体的な取組みについて伺います。

A5(福祉局)都は今年度、第三者評価制度の本格実施にあたって、より多くの事業者が、制度の意義を理解し、積極的に受審するよう、事業者向け説明会40回以上にわたり開催するとともに、第三者評価を受審した事業者に対し、評価費用の一部を補助している。今後は、評価結果の活用事例などの紹介を通じて、第三者評価の意義を啓発するシンポジウムの開催や補助制度の拡充等により、受審促進に努めていく。

 

Q6 また、評価の対象についても、現行の施設系の福祉サービス中心から、在宅系のサービスにも拡げる必要があるかと思いますが、見解を伺います。

A6(福祉局)都は、今年度から、特別養護老人ホームなど35の福祉サービスを対象に、第三者評価制度を実施している。来年度は、乳児院や精神障害者ホームヘルプサービスなど、新たに10のサービスを加え、45のサービスまで対象を拡大するとともに、訪問看護など在宅系を中心とする10のサービスについても、評価項目等の検討を行っていく。

 

●都立公園における市民との協働について伺います。

Q7 昨年6月東京都公園審議会から「都立公園の整備と管理のあり方について」が答申されました。この答申の中には都民・NPOなどとの協働と連携が提言されており、現在、NPOや市民団体を対象に「都立公園の維持管理に関する都民協働アンケート」が行われています。指定管理者制度の流れもあり、地域住民のパートナーシップが期待される地域資源活用として、都立公園の新たな方向が模索されていると考えます。

都立公園は、規模が大きい故に保護者の目が行き届かないなどの理由で、子どもだけで遊びに行かせるには安全面に不安があるという声をよくききます。2004年度は、次世代育成支援対策推進法の行動計画策定の年にあたり、中高生を含め子どもの居場所が、地域で求められている中で、都立公園の役割としてどのような見解をお持ちか、知事に伺います。

A7(知事)今、東京では、子どもが自然に触れあう機会が少なくなるとともに、身近な遊び場が減少し、子どもが集団で遊ぶ姿もほとんど見られない。都立公園は、子どもが自然を学び、心身を鍛え、仲間との遊びを通じて社会性を身につける場所として極めて重要である。ところが、一方で現況を見ると都心の公園の中には一部が事実上、ホームレスに占拠されているものが見られる。こうした現状を是正しなければ、子どもの遊び場として機能するはずがない。都は、区とも協力しながら、ホームレス自身の自立への努力を支援し、同時に、都立公園の適正利用を実現する取組みに、条例改正を含めて着手していく。子どもが元気に安心して遊べる魅力ある公園づくりに努めていく。

 

Q8 今の子どもたちの遊びの環境は空間も時間も仲間も乏しく、子ども時代に子どもらしい遊びを充分に体験できないことも、心身の発達や発育に歪みをもたらしていると思われます。また、子どもを対象とした犯罪が多発するなか、親が安心して外遊びをさせることができないため、屋内での遊びや習い事を余儀なくされ、子ども時代ならではの創造的で自由な遊びの体験から培われる『集中力、忍耐力、協調性』などを体得する機会が妨げられているのではないでしょうか。

 こうした現状を変えていくために、世田谷の羽根木プレイパークをはじめ全国で展開されている「冒険遊び場」を、都立公園内に設けることは、問題解消のひとつの有効手段であると思われます。冒険遊び場は、プレイリーダーが常駐していても「自分の責任であそぶ」遊び場であり、禁止事項がないため、中高生や大人にも魅力があります。「冒険遊び場」に類似した活動は、すでに都立戸山公園でも実施されています。昨年、市民団体が、都立光が丘公園を利用して「一日冒険遊び場」を開催したところ、1300人もの親子連れが集まったと聞いています。区立公園とは規模も違い、敷地の利用の工夫では、他の利用者とすみ分けられる点でも都立公園は適切かと思われます。またプレイリーダーや、地域住民が中心となった遊び場の運営が可能であれば、大人の目が行き届き、公園内の犯罪、非行などの抑止力に地域の力が生かせます。

市民との協働については、管理・運営だけではなく子どもの居場所づくりへの取組みが期待されますが、今後「冒険遊び場」としての都立公園の活用についての考え方を伺います。

A8(建設局)「冒険遊び場」は、通常、公園ではできない遊びについて、子どもが自分の責任で自由に出来る場所。運営に当たっては、プレイリーダーの配置や、ボランティアの協力が必要であり、地元からの発意と十分な態勢づくりが重要である。実験的に実施している戸山公園や光が丘公園での運営状況を踏まえ、地元区市とも連携しながら、都立公園での導入を検討していく。

 

●男女平等施策について伺います。

Q9 ドメスティック・バイオレンス防止法が、2001年に制定され、配偶者暴力相談支援センターや警視庁で受けたDV相談は2002年で8204件、市区町村では8113件、DV被害者の一時保護件数はDV相談支援センター開設前の1.4倍となり、被害の掘り起こしが進んできたといえます。2月には、DV法改正案骨子がまとまり、地方公共団体の責務として、暴力防止とともに、被害者の自立支援を含め、適切な保護を図ることを規定しています。また防止と保護のために、都道府県は、基本計画を定めることとし、DV相談支援センターは、DV被害者支援などの活動を行う民間団体との連携に努めるべきことを規定しています。今回の法改正作業における最大の特徴は、NGOとの連携、当事者参画であり、実効性がいかに求められているかがわかります。

都が1997年に実施したDV調査は画期的であり、DVを表面化させた取組みとして評価するものです。さらに昨年3月から東京都男女平等参画審議会では、「配偶者からの暴力対策の状況について」の取組みをすすめ、実態調査と暴力加害者の対策について意見聴取を重ねたとも聞きます。

被害者支援の一環として重要な加害者対策については2002年から国も検討を重ねてきた経緯がありますが、都の加害者対策に向けた現在の取組みと方向性について伺います。

A9(生活文化局)被害者の支援のためには、加害者対策が大切であると認識している。これまでも、東京ウィメンズプラザで、加害者からの相談に応ずるとともに、配偶者暴力防止に向けた普及啓発に取組んできた。現在、配偶者暴力対策については、男女平等参画審議会でご審議いただいているところであるが、被害者の安全の確保とともに、更なる被害の発生を防止する視点から、加害者対策も重要な課題の一つとして今後のあり方を検討して参りたい。

 

Q10 DV防止と被害者の生活再建、自立に向けた取組みには、一貫したコーディネートと支援活動を行うNGOなど民間団体との連携が不可欠です。都の責務として被害者支援策の体系化の必要性と民間団体との協働について、考え方を伺います。

A10(生活文化局)配偶者暴力の被害者の支援に当たっては、被害の早期発見から、被害者や子どもの心のケアなどを含め、自立に向けた総合的な支援を継続的に実施していくことが必要であると認識している。このため、福祉事務所をはじめとする関係機関だけでなく、一時保護や付き添いなど、様々な活動を行っている民間団体との連携を進めていく。

 

Q11 DV防止については、抜本的な解決として若い世代からの教育が重要です。アメリカでは若い人の間のDVを「デートDV」といい、防止プログラムが実施され効果をあげています。各局間連携として全庁的な「家庭等における暴力問題対策連絡会議」が開設されていますが、教育庁のDV防止に対する認識および、子どもたちを将来のDV加害者・被害者にしないための、学校教育や社会教育における積極的な取組みを求めて、考えを伺います。

A11(教育庁)都教育委員会では、人権尊重の理念を広く社会に定着させ、あらゆる偏見や差別をなくすためには、教育のはたす役割が極めて重要であるとの認識に立って、人権教育を推進している。学校教育においては、教育活動全体を通して、人権尊重の理念についての正しい理解や実践する態度を育て、男女が互いの人格を尊重し、望ましい人間関係を築く教育を推進している。そのために、公立学校の全教員に人権課題にかかわる指導事例を掲載した「人権教育プログラム(学校教育編)」を配布したり、男女平等教育推進のための研修会等を開催したりしている。

社会教育においては、都区市町村の社会教育関係職員およびPTAをはじめとする社会教育関係団体指導者が、様々な人権課題についての理解と認識を深めるために人権啓発資料の作成や研修を実施している。DVについては、学習資料や教材ビデオ、社会教育関係職員研修で取り上げている。都教育委員会は、今後とも、人権尊重の精神を基調とした人権教育を推進する。

以上