2011年第1回定例会 討論

2011年3月11日

山内玲子

都議会生活者ネットワーク・みらいを代表し、本議会に提案された知事提出の、第19号議案「東京都中央卸売市場会計予算」及び第26号議案「東京都水道事業会計予算」に反対し、その他の議案には賛成の立場から、討論を行ないます。

 

●第19号議案「東京都中央卸売市場会計予算」について

市場のコンセプトで最も大事なことは、「食の安全」です。消費者の視点に立てば、食品を扱う施設として、環境基準はクリアできても、都民の不信はクリアできません。さらに、直下型地震による液状化や地盤沈下も心配されるなど、東京都が設置する中央卸売市場の立地として、豊洲は適切とはいえません。よって、豊洲への移転を進める予算が計上されている平成23年度中央卸売市場会計予算には、反対いたします。

 

●第26号議案「東京都水道事業会計予算」について

請願が採択された水需要予測の見直しがされないまま、八ッ場ダム建設に係る費用が組み込まれた予算については、残念ながら認めることはできません。過大な水需要予測は水の無駄遣いを止めることにつながらないのです。私たちは豊かな水に囲まれ、いつでも安全でおいしい水を意識することもなく使っていますが、世界の各地で水不足や汚れた水しか手に入らない人々がたくさんいることに思いを寄せる必要があります。水道局は安全でおいしい水を安定的に供給するため、日夜努力し、その高い技術力を持って、飲み水にも事欠く国の人々のために貢献することは評価しますが、その地域の人々の文化や暮らし方を尊重し、現地の人たちが自立していけるようパートナーシップに基づいた国際協力となるよう申し述べておきます。

 

●平成23年度の一般会計予算について

都税収入の伸びが期待できない中、事業評価の取り組みを強化し、無駄をなくして財源を確保し、堅実な予算編成を行ったとされています。しかし、都の予算配分は地域自治体の事業に大きく関わるものであり、地域や利用者の声を事業評価に反映することや、多様な都民ニーズに的確に応えていくために、職員が意欲的に職務に取り組めるよう「人」を大切にした都政運営が求められます。

また、都民に最も身近な市区町村が主体的で独自性あふれる事業を行っていくために、さまざまな包括補助金が設けられています。本来の目的である分権の視点や新たなニーズに応える積極的な取り組みが進むよう、サービスの利用者である都民にも、補助事業の趣旨、事例等を広くPRし、分権時代にふさわしい参画、協働のまちづくりのへの一助とすることを要望します。

 

都は、来年度から医療の中断などにより、地域での安定した生活が困難な精神障がい者に対し、精神保健センターの医師、保健師等の多職種チームで訪問型の支援事業を取り組みますが、精神障がい者が安定した地域生活を送れるよう、区市町村とも連携するとともに、地域の支援力の向上を図っていく必要があります。また、退院促進支援や訪問型支援の取組と合わせて、精神障がい者が安心できる相談支援の取組を充実させていくことを要望します。

4人に1人が高齢者になる超高齢化社会が目の前に迫ってきて、住みなれた家で過ごしたいと在宅療養を希望しながらも、家族への負担や急変時の対応に不安を抱く人が増えています。24時間365日切れ目のないサービスを提供するためには、在宅療養診療所を中心に訪問看護師など多職種の人々との連携が必要です。さらに、脳卒中の後遺症や神経障がい等によって起きる摂食・嚥下障がいに対して適切な指導を行うことによって、高齢者の生活の質を高かめていくことが可能です。こうしたきめ細かな指導が関係者間の連携でさらに充実することを要望します。

 

自転車は、環境面、健康面、経済面から多くのメリットがあり、子どもから高齢者まで幅広く利用できる日常的な乗り物として注目されています。しかし、これまでの自転車政策は、利用者にルール・マナーの強化、遵守を求めるばかりで、安心して利用できる走行空間の整備は全く進んでいません。

公共交通が充実し、交通アクセスがよく、若者のクルマ離れも進んでいる今日、東京こそ、クルマより自転車を優先する脱クルマのまちづくりに方向転換すべきと考えます。ロンドン、ニューヨーク、ソウルでも、自転車政策を推進しており、自転車の車道走行の徹底や、交差点での自転車ルートの表示、自転車停止線を設けるなどで、事故は急減しているということです。都においても、全庁的にハード・ソフト両面から総合的な自転車政策を立ち上げ、早急に取り組むことを要望します。

 

都立高校の図書館の管理運営業務が民間委託される方針が示されました。

民間委託となる司書の業務は、委託先の業者を介し、現場の学校や教師から直接指示や指導を受けることができません。生徒とかかわる問題が生じても、速やかに対応することができなくなります。授業との連携やレファレンス、生徒や教師との密な会話による選書など、教育課程における学校司書は重要な存在であり、継続した活動が求められています。猪瀬副知事は、「言葉の力」再生プロジェクトで若者の活字離れによる言語力低下を指摘し、読書の大切さを訴えておられますが、都教育庁の司書の民間委託は若者の活字離れ対策に逆行するものです。また、委託業者に雇われる司書の雇用は不安定であり、新たな官製ワーキングプアとなる危険性も指摘しておきます。

 

最後に、これからの都政を展望し、一言申し上げます。若者が安定した職業に就けない、また、高齢の一人暮らしが増えるなど、大都市東京においても大きな課題を抱えています。今、こうした政治・経済をなんとか転換しようと機運が高まる中、これからの東京都の役割をしっかりと見据え、持続可能な都市に変えていくためのビジョンを描くことが必要です。私たち生活者ネットワーク・みらいは、真に自治と協働のまちをつくる新しい知事の誕生に期待し、討論を終わります。

以上