2011年都議会第3回定例会討論

2011年10月7日

都議会生活者ネットワーク・みらい

西崎光子 

 私は、都議会生活者ネットワーク・みらいを代表し、知事提出案件のすべてに賛成の立場から討論します。 

 3・11の東日本大震災への対応もめどが立たないまま、8月以降、相次ぐ大型台風の到来で各地に多大な被害が発生し、自然の猛威を改めて見せつけられた1年となりました。被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。 

 さて、第134号議案「東京都立学校設置条例の一部を改正する条例」については、特別支援教育の振興を図るため、都立練馬特別支援学校、都立府中けやきの森学園、都立武蔵台学園を新しく設置するものですが、「東京都特別支援教育推進計画」の「第2次実施計画」によって、特別支援学校の多くが再編・統合され、併置による大規模化が顕著になりました。これによって、多くの保護者から、大規模校では「刺激が強すぎる」「ひとりひとりにじっくり関われない」「人的にも施設的にも不足が生じている」などの不安の声が寄せられています。特別支援教育こそ、「一人一人のニーズに対応できる教育」という視点から、保護者や生徒たちからの声に耳を傾け、これまでの推進計画の検証を行うことを要望します。 

 次に災害対策についてですが、この度「東京都防災対応指針」策定に向けて、「東日本大震災における東京都の対応と教訓」が示されました。今回の震災では、震源から遠く離れた都内においても、液状化や大量の帰宅困難者の発生といった直接的な被害に加え、放射能物質の拡散、電力供給不足に伴う計画停電の実施などにより、大きな混乱が生じました。

 また、被災地への支援をする中で、災害時の要援護者への対応、避難所運営や被災者の救護などさまざまな課題が浮き彫りになりました。特に、過酷な避難所暮らしで疲弊していく状況の中で、高齢者や子どもを抱えた母親、病人、障害者など困難な状況に置かれやすい人々へのきめ細かい支援が求められています。

 被災者に寄り添った支援を行うため、地域で生活をしている女性の視点で地域防災計画の見直しを行うよう要望します。 

 福島原発事故による放射能汚染問題については、一般質問でも取り上げましたが、子どもをもつ若い家族にとって今もっとも深刻な課題です。子どもが育つためには「空間・時間・仲間」の三つの「間」が必要といわれますが、被爆を最小限にするために、子どもらしくかくれんぼをするような場所や、のびのび自由に過ごせる時間を奪われ、さらにはこれまで一緒に遊んだ友達もあちこちに引っ越して、仲間まで奪われてしまったのです。

 生活者ネットワークはチェルノブイリ原発事故以来、放射能の子ども基準の必要性を訴えてきました。今回の事故で放出された放射性物質が存在する環境の中で、子どもたちはこれからも長期にわたって生活していかなくてはならず、子どもへの影響を最小限にするための基準が求められます。

 これからは、誰もが正確な放射能の数値とその意味を理解して、自分の意思で選択・判断していけるようにすることが重要ですが、放射能に関する教育は、原子力の安全神話のもとで、これまでほとんどされてきませんでした。改めて放射能の基礎知識や健康への影響を正確に伝えていくとともに、放射能測定結果などの情報の速やかな公表が求められます。

 都は、都民の健康を守り、食の安全を確保するために、都の責任において都有地および都有施設の放射能測定を行うとともに、空間線量測定や食品に含まれる放射能測定を都民が自ら行えるよう、機器の設置への補助や専門家配置などを改めて要望します。 

次に八ッ場ダムについて一言申し上げます。

 相次ぐ台風による被害では、水害への備えが必要であることも、あらためて思い知らされました。都は都市型洪水への対策を考えていますが、近年の雨の降り方は、局地的に短時間で大量の雨が降ったり、累積雨量が非常に多くなるなど、これまでと変わってきています。今年の台風では、ダムの効果が限定的であるばかりか、ダム放流によって下流の被害が増大することも報道されました。

 八ッ場ダムの現地では、今年8月の集中豪雨で沢水が土砂といっしょに流れ下り、川原湯温泉駅まで押し寄せました。先月都議会生活者ネットワーク・みらいは現地を見に行きましたが、国交省相談センターの壁には土砂に埋まった痕跡があり、駅前には土のうが積まれているなど、その爪あとが生々しく残っていました。

 知事は、9月26日他県の知事とともに、八ッ場ダムを早期に着工するよう国交大臣に申し入れましたが、八ッ場ダムは、治水効果がほとんどなく、現地は地盤が脆弱で地すべり地帯です。現在造成されている代替地は危険性が指摘されており、法面の崩落や落石事故も起こっています。ダムができて水を貯めると、さらに危険性が増すと専門家は言っています。治水上も利水上も不要なだけでなく危険性の高い八ッ場ダムは中止すべきです。 

 2020年オリンピックについては7月16日、知事は開催都市として正式に立候補を申し出て、招致に向けた活動に踏み出しました。本日、都議会としても、招致の決議が提案されましたが、生活者ネットワーク・みらいは第2回定例会でも表明した通り、東京に再びオリンピックを招致することに賛同することはできません。

 特に、東日本大震災とそれに続く原発事故後の放射能対策にも先が見えない状況の中で、震災復興という名目で、大規模イベントを開催し、都市再生や求心力を高めようとする考え方は、世界の中で通用するものではないと考えます。

 今、大都市東京として、最優先にすべきことは、被災地の復興に向けた支援であり、都市の生活の在り方を根本から見直し、安全なエネルギーへシフトすることを世界に示すことではないかと考えます。よって今回のオリンピック招致に関する決議に反対します。 

最後に、特別委員会についてです。

 2009年の都議会議員選挙において、「新銀行東京」、「築地市場の移転」問題が都政の課題として有権者から大きな批判の声があがり、2009年第3回定例会において、「株式会社新銀行東京に関する特別委員会」「東京都中央卸売市場築地市場の移転・再整備に関する特別委員会」が、賛成多数で設置されたものです。

 「新銀行東京」については、経営が安定方向に向かったとされていますが、これまで、参考人招致も実現しておらず、巨額の累積赤字を計上するに至った原因やその経営責任、都の責任については、何ら明らかになっていません。

 また、築地市場移転問題についても、予定地の土壌汚染や液状化の不安を払しょくするには至っておりません。

 第2回定例会で二つの特別委員会の存続が問われましたが、都議会生活者ネットワーク・みらいは、特別委員会の廃止は、議会としての調査権や、都民への説明責任をも放棄するものであると主張し、継続が決定しました。その後、状況は何も変わっておらず、特別委員会は当然継続すべきと考えます。 

 最後に、今回の都民不在の議会の混乱は、議会への信頼を大きく損なうものとなってしまいました。この先、都議会は、決算審査・予算審議と重要な役割が続きますが、大震災からの復興、生活課題の解決に、真摯に取り組むことで、信頼回復の一歩としていきたいとおもいます。

以上