2007年第4回定例会 一般質問

2007年12月12日
山口文江

低所得者生活安定化プログラムについて
Q1.石原知事は都知事選の公約として掲げた低所得者の都民税軽減策を取り下げ、進化したものとして、低所得者生活安定化プログラム~緊急総合対策3ヵ年事業を発表しました。改選直後の公約取り下げは、公約違反という批判は免れないにしても、低所得者に対するセーフティネットの機能の必要性を認識しての政策と歓迎するものです。そこで、この3ヵ年プランを提示するに至った基本的な知事の見解を伺います。
A1.
現在わが国では、額に汗して懸命に働いているにもかかわらず低所得の状況から抜け出せない人々や、就職氷河期を経験した世代を中心として、職にも恵まれず住居の確保もままならない人々が存在している。今回のプログラムは、真に困っている都民一人ひとりに手を差し伸べ、将来に向かって明るい展望が開けるよう多様な施策を重層的に講じるものである。この取り組みによって、こうした方々が自ら生活安定への道を切り開き、社会を支える力となることにより、より豊かで活力ある東京を実現していく。

高校進学希望者への対応について
Q2.このプランでは、若年層・母子家庭・中高年・住居不安定就労者などを対象としています。所得の格差が教育の格差を生み出し、差別化が促進されているといわれています。高校への進学率は高い水準を示してますが、進学希望者が進学できなかったり、希望する学校に入れず中退してしまう子どももいます。教育庁では教育相談センターで「リスタートプレイス」を設置し、相談業務やチャレンジスクールへの説明会を開催しているということです。しかし、チャレンジスクールへの希望が多く、受験生の半数は入学できない状況です。再チャレンジの意欲を持つ子どもへの救済を何らかの形で行なうべきです。こうした生徒や中途退学者に対する進路相談の受け皿の充実が求められています。所見を伺います。
A2.
高校を不合格になった生徒や中途退学者からの相談についてであるが、生徒一人ひとりの将来の希望の実現を図るために、相談事業を充実することは、極めて重要である。現在、教育庁内に「都立高校入試相談コーナー」を開設し、常時、相談を受け付けている。また、都教育相談センターでは、電話や来所等による「高校進級・進路・入学相談」や、中途退学者への支援を図る「青少年リスタートプレイス」、「進路相談会」などにおいて相談を受けている。今後とも、都教育委員会は、これらの相談窓口をパンフレットやホームページ等により周知するとともに、生徒が自らの生き方について考え、主体的に進路選択ができるよう、これらの相談事業の充実を図っていく。

路上生活者支援について
Q3.東京都は2000年からホームレスの自立支援システムを立ち上げ、支援事業を展開しています。テント生活から地域生活への移行を目標に、公園での面接相談からスタートし、民間宿泊所~借り上げ住居への入居~一般生活への段階的な支援を示し、23区の協力を得て展開しています。新システムへの移行を示し、アパート借り上げ自立に向けての準備にリアリティをもたせている点、自立後も巡回しながら相談に応じるバックアップ部門の強化、という点で評価します。しかし、路上生活者は減少しているとはいえ、路上生活の長期化、高齢化に伴い、就労意欲の減少が見られ、支援の内容が問われています。この現状を捉え、今後の対策について伺います。
A3.
都は、これまでも特別区と共同で、自立支援システムや地域生活移行支援事業において、就業や住宅に関する相談などを行い、地域での自立した生活への支援を推進してきた。その結果、本年8月の23区内の路上生活者数は、調査開始以来、最も少ない約3,200人まで減少した。今後とも、これまでの事業の評価・検証を踏まえ、利用者の状況に応じた支援に努めていく。

住宅政策について
Q4.現在進行している貧困は、様々な事件に象徴されるように、深刻な段階にきています。共通でかつ重要な対策は、住宅政策と考えます。住まいの保障こそ、基本的人権の保障につながります。都市整備局は住宅政策におけるセーフティネットの展開をどのように考えているのか、伺います。
A4.
住宅に困窮する都民に対しては、都はこれまでも、都営住宅において高齢者や子育て世帯等に対する優先入居などを実施するとともに、入居制限を行なわない民間賃貸住宅の供給促進などに取り組んできた。今後とも、都営住宅などの公共住宅に加え、民間住宅も含めた重層的な住宅セーフティネット機能の確保に向けて取り組んでいく。

消費者行政について
Q5.食品表示の偽装や耐震偽装、高齢者を狙った詐欺、子どもの安全を脅かす商品など、生活への安心・安全を脅かす問題が次々と起きています。しかし、国は、2003年に独立行政法人となった国民生活センターの機能縮小を提案しており、大きな問題となっています。最近の報道によれば、直接相談窓口の廃止は、消費者団体等の強い反対で撤回したものの、商品テストの一部外部委託化の方針は依然として変えていません。
福田首相は所信表明で、消費者保護のための行政機能の強化に取り組むと明言しており、直接相談窓口も拡充してしかるべきです。自治体の中には消費者行政に充分手が回らないところもあり、国が、消費者に直接関わる組織を縮小すれば、消費者の権利が侵されかねない状況を招きます。
こうした中で、これまでも日本の消費生活行政をリードしてきた東京都は、まかり間違っても消費者保護のための行政機能を低下させてはなりません。消費者被害の未然防止、拡大防止を一層図るため、東京都消費生活総合センターの機能強化を図るべきだと考えますが、見解を伺います。
A5.
都は、これまでも、急増する架空・不当請求や深刻化する高齢者の消費者被害に対応するため、「架空請求110番」や「高齢者被害110番」を開設し、専任相談員を配置して、相談体制を整備してきた。また、悪質・巧妙な手口による消費者被害に適切に対応するために、住民に身近な区市町村の相談部門との連携強化がきわめて重要であることから、被害の傾向や相談処理に関する幅広い情報を積極的に提供するとともに、区市町村の相談員の資質向上に役立つよう、各研修を実施している。今後とも、消費者被害を未然に防ぎ、被害の拡大を抑えるため、消費生活総合センターの機能強化に努めていく。

Q6.東京都消費生活条例は消費者の権利をうたった画期的なもので、この条例に基づき1997年2月、東京都消費生活基本計画を策定しました。策定後10年たち、消費者を取り巻く状況も大きく変わり、消費生活基本計画の改定を行なうべきだと考えますが、見解を伺います。
A6.
ご指摘のように、近年、詐欺的商法が横行し、表示の偽装が相次ぐなど、消費生活を取り巻く環境は大きく変化してきており、都の消費生活基本計画もこうした変化に的確に対応できるよう、改定する必要があると考えている。このため、本年7月の消費生活対策審議会において、「消費生活基本計画改定に向けての考え方」を示し、2008年(平成20年)を初年度とする5ヵ年の計画期間とするなど、計画の基本的事項について了解をいただいている。現在、都の消費生活関連施策にて、関係各局のヒアリングを行なっており、今後、審議会に対し、来年度の早い時期に基本計画改定の諮問ができるよう、準備を進めていく。

食料自給問題について
Q7.今年は、不二家からスタートし、老舗メーカーや有名メーカーによる、食品偽装問題が次々と発覚し、消費者の食への不安・不信が後を絶ちません。食の安全には、食料自給率を高めることが不可欠です。しかし、日本の食料自給率は、今や、カロリーベースで39%です。経済のグローバル化で日本の農業、私たちの食料はどうなっていくのか、農業従事者はもとより、多くの人が不安に感じています。「食糧自給ができない国は、常に国際的圧力と危険にさらされている国である」とは、アメリカのブッシュ大統領の発言ですが、石原知事も、都内において有害物質が検出された輸入食品が多く流通している事態に対して憂慮し、食の安全確保は都政の重要な役割であると明言されています。大消費地・東京の知事として食料問題をどう捉えているのか、見解を伺います。
A7.
今、世界的に、食糧危機が叫ばれている中、わが国の食糧自給率は、主要先進国の中でも最低レベルにあり、国家としての基本的な不安要因となっている。食糧の確保とそれを支える農業の再生は、わが国にとって、極めて重要である。しかし、東京の農業を見ると、その基盤である都市農地は相続等により年々減少し続けている。東京農業は、全国に誇れる農産物が多く、また、大消費地に近接した有利性も持っている。さらに、農業、農地は、食糧の生産だけでなく、食文化の伝承や、緑の保全、災害時の避難場所の確保、憩いの場の提供などの側面からも大切である。都は、農業を重要な産業と位置づけ、今後とも都市農地の保全と農業の振興に努めていく。

都市農業について
Q8.東京には、小松菜やウド、キャベツ、アシタバなどの特産野菜、島しょで生産されるレザーファンなどの花き・観葉植物のように産地化され市場出荷されている品目が多くあります。市街化区域では、果実や鉢花、多品目の野菜の直売など、都市農業が健闘しています。都は、2001年「東京農業振興プラン」を策定しました。現在「都市農業検討委員会」を設置し、「東京農業振興プラン」の改定を目指していますが、東京における都市農業の課題と展望について伺います。
A8.
東京の都市農業は、都民に新鮮で安全な農産物を供給するだけでなく、生産活動を通じて貴重な緑地空間やレクリエーションの場などを提供している。しかし、都市農地は、毎年減少が続いており、これらを保全することが大きな課題となっている。このため、都市農地の保全に必要な相続税等の制度改善を国に継続して要望するとともに、高齢や労働力不足により耕作が困難な農家を支援する農作業受委託推進事業など、都独自の取り組みを進めている。今後とも、大消費地をかかえる東京農業の特性や優位性を活かした多様なり取組みにより、都民や農業者にとって魅力と活力あふれる都市農業の実現に取り組んでいく。

Q9.都内の農地の約6割が市街化区域にあり、貴重な緑地空間として、ヒートアイランド現象の緩和や災害時の避難場所、子どもたちの食育の場となるなど、都市農地ならではの役割を持っています。
2005年度に行った都政モニターアンケートでも、「東京に農業・農地を残したいと思う人」は81%、「農作業の体験をしたいと思う人」が61%に上っており、都民の都市農業に対する関心と、農地保全に対する期待は大きいものです。
人口減少時代の到来などにより、農地の宅地化を前提とするまちづくりは終焉とすべき社会状況になっています。都市農業の継続を危うくする要因に相続税等の問題があり、国の対応が待たれますが、国の農業政策が農村を基調としているのは当然としても、大消費地・東京においては、生産面から捉えた農業のあり方だけでは充分とはいえません。東京における農地は、都市の生活者にとって公共性を持つものとも考えられ、独自の「都市農業推進条例」を検討すべき時期に来ています。
大都市・東京では、都市農業をきちんと位置づけた上での施策が必要と考えておりますが、都では、現在どのように施策展開を図っているのか伺います。
A9.
都では、東京の農業振興の方向性を明らかにするとともに、計画的に施策を推進するため、2001年(平成13年)に「東京農業振興プラン」を策定した。また、2006年(平成18年)度には、社会情勢の変化を受け、このプランの個別施策の検証を行い、重点的に取り組むべき課題や地域の特性を踏まえたきめ細かい施策に取り組んでいる。今後とも、時代の変化に対応しながら、「東京農業振興プラン」に基づいた都市農業の振興策を着実に進めていく。

プレイパークについて
Q10.子どもの育ちが社会問題として取り上げられるようになって久しくなります。子どもが思いっきり遊ぶ空間と時間、そして仲間が失われて、子ども自身が生き生きできる環境が奪われています。こうした現状に気づいた大人が、大人の規制により管理されて遊ぶのではなく、子どもたちが想像力で工夫して遊びを作り出し、自分の責任で自由に遊ぶことができる冒険遊び場・プレイパークを始めました。1979年東京都世田谷区の羽根木プレイパークを皮切りに、この運動が拡がっています。このプレイパークを都立公園において実施したいという市民の声に応えて、戸山公園をはじめ、石神井公園、光が丘公園、東村山中央公園など6公園で行われていますが、現在の活動状況について伺います。
A10.
プレイパークは、焚き火、穴掘りなど、公園では通常できない遊びを、子どもたちが自分の責任で自由に行なえる場であり、子どもたちの健全な育成に寄与するとともに、公園利用の活性化の面からも有意義であると考える。こうしたことから、都立公園では、2004年(平成16年)度から活動の場を提供しており、ボランティア団体が地元自治体の支援を得ながら様々な活動を行なっている。現在、プレイパークを開設している戸山公園や光が丘公園など6公園では、焼き芋づくり、泥遊びや樹木を利用したロープ遊びなど、工夫を凝らした遊びが盛んに行なわれており、利用日数は、2005年(17年)度に延べ約213日、2006年(18年)度には約379日となっている。

Q11.プレイパークの活動は、遊びを通して発見や創造する喜びが味わえ、子どもが自分の人生を切り開いていく力、すなわち生きる力をつけていく場でもありますが、親が主体的に活動に関わることによって親たちの育ちの場にもなっているという声が届いています。しかし、この活動は、親やボランティアの負担が大きく、少しでも軽減できるように、子育て支援を担当する地元区市はもとより、都も公園管理者として、親やボランティアの声に積極的に耳を傾け、活動支援をしていく必要があると思いますが、見解をうかがいます。
A11.
都立公園におけるプレイパーク活動への支援は、基本的には地元自治体が、子育て支援や社会教育活動の一環として行なうべきものであると考える。都としては、公園管理者として、積極的に場の提供を行なうとともに、用具の貸し出しなどの支援に努めてきた。今後とも、ボランティアが地元自治体と行なう意見交換の場などに参画し、親やボランティアの声の把握に努めるとともに、地元自治体と連携して、公園管理者として可能な支援を行なっていく。

(意見)
今や国を挙げて「子どもの居場所づくり」が進められていますが、子どもたちが生活している、それぞれの地域にあった子どもの目線の施策が大切であり、都としても、プレイパーク活動の啓発にも努めていただくよう要望します。