2006年第3回定例会 一般質問

都議会生活者ネットワーク
大西由紀子

(質問部分抜粋)
景観行政とこれからのまちづくりについて
Q1.2016年オリンピックの国内立候補地として東京が決定しました。10年後の都市像や、都市の価値は、省エネ・省資源の最先端の都市であることや、印象に残る都市景観にあります。
「東京に都市計画はない」が口癖の無為無策の知事への批判はもとより、このままでは世界から訪れた観光客に、成熟した都市に相応しい魅力的なまちを印象付けられるかと心配です。
まずは、時代遅れの開発主義から決別することです。人口が減少する時代だからこそ、発想の転換が必要です。たとえは、建物の高さを競うのではなく、住む人や働く人がコミュニケーションを取りやすい低層か、中層の建物にすることです。地震対策上も、エレベーターに頼らない建物が有効です。経済効率のみを求めず、生活する都民が豊かさを実感できる水辺やみどりの潤いのあるまちづくりをめざすべきです。
今回景観法に対応した景観条例の改正案が上程されていますが、知事は条例を改正することによって、どのような景観を重視した都市づくりを進めようとしているのか伺います。

A1.知事答弁
・ 今日の東京は、都市全体の美しさが感じられない。
・ このため、法的な強制力も行使できるよう、景観条例を改正し、あらたに実効性のある景観計画を策定する。
・ たとえば、建築物や工作物の色彩に対する変更命令
屋上設置の公告物などを禁止する区域の指定
景観配慮を条件とする大規模開発の許認可
・ オリンピックの開催は、成熟したとしにふさわしい東京の姿を世界に示す、絶好の機会であり、美しく、風格のある首都東京に再生していく。

Q2.都は1999年(平成11年)以来、順次景観基本軸を定め、区域内で行われる大規模な計画には届出を必要としてきました。しかし、区や市が届出を義務づける条例を定めた場合には、景観の誘導が区や市の条例等にゆだねられ、基本軸全体としての調和や景観誘導につながっていません。景観基本軸の多くは自治体の区域を越えています。国分寺崖線景観基本軸など、区市町村の区域を越えた広域的な景観施策について、東京都の取り組みを伺います。

A2.都市整備局長答弁
・ 東京では崖線や丘陵地など特色ある自然が、行政界を越えて、景観の骨格を形成している。
・ このため、都は区市町村と連携して、施策を展開していく必要がある。
・ 都が定める景観計画では、景観形成の方針などを明らかにする。
・ また、国分寺崖線など、景観基本軸についても、引き続き計画に位置づけていく。
・ 都は、都民や区市町村などの協力も得ながら、景観計画に基づく施策に取り組み、東京全体として、良好な景観形成を積極的に進めていく。

Q3.「国分寺崖線景観基本軸」の区域は、貴重な自然環境と地域の原風景というべき景観が残っています。国分寺市はまちづくり条例を制定し、崖線区域内の高さを15mに規制しています。このたび同じ景観軸内の府中市側に都立府中病院が、57mの高さで建てられる計画が明らかになりました。
府中市には高さ制限はありませんが、都は景観基本軸に連続した緑の景観を維持することをうたっており、国分寺市民から反対の声が上がるのは当然です。
また今回の府中病院は都立病院としては初めてのPFIで行われる事業であり、都の責任において直接行う公共事業同様の厳しい景観配慮が求められます。PFI事業を含む大規模建築物の景観誘導についてはどのように考えるのか、伺います。

A3.都市整備局長答弁
・ 大規模な建築物は、周辺の町並みなどに大きな影響を与えることから、景観への配慮を誘導することが重要である。
・ このため、条例の改正を提案し、都市計画決定などに基づき建築される大規模建築物等を対象に、事前協議制度を導入することとしている。
・ 今後、都は、PFIを活用するか否かに関わらず、事前協議制度を適用し、良好な景観形成を誘導していく。

消費者の命を守る消費者行政
Q4.今年3月、生活文化局は市販されている金属製アクセサリー類に有害な鉛が含まれていることが明らかになったとし、未然防止を図るために国への緊急提案を行い、消費者への注意喚起と製品回収を行っています。この機敏な動きを大いに評価し、子どもや高齢者の被害の未然防止の立場に立った消費者行政がさらに充実していくことを望むものです。
さて、パロマのガス湯沸かし器によるガス中毒死、シュレッダーによる幼児の指の切断事故、浴室乾燥暖房機による火災発生など、製品事故はあとを絶ちません。
国民生活センターや消費者生活センターに寄せられた消費者からの苦情・相談は、オンラインでデータベースに蓄積されていますが、登録に平均58日を要すうえに、消費者が情報を直にとれる状況ではないなどが、システム上の問題点として指摘されています。
数多く寄せられる情報から広域性を判断し、経過をいち早く市民に知らせるための庁内体制と市民への広報など、今後の対応についてお聞かせください。

A4.生活文化局長答弁
都の消費生活センターに都民から寄せられた商品・サービスに関する危害・危険情報に
ついては速やかに集約し、緊急対応が必要と判断されるものについて、直ちに、調査等を行っている。
またその結果については、新聞、テレビ等への発表や、都のホームページである「くらしの安全情報サイト」への掲載を通じて都民に情報提供している。
今後とも、都民の安全安心のために、迅速かつ的確な対応に努めていく。

Q5.電動シュレッダーのみならず、種々の電動器具が販売され、業務用の製品が家庭で使用される事例が増えています。これらを使用する際の思いがけない事故を想定し、商品テストを充実させる必要があります。テスト結果を公表し、「子ども・お年寄りへのガイドライン」を策定すべきと考えますがいかがですか。

A5.生活文化局長答弁
都は、技術職員等で構成する「危害防止対策検討会」において、相談情報や事故情報について専門的な分析を行っており、その結果に基づき、子どもやお年寄りの安全確保の観点も含め、必要な商品テストを実施している。
これらの結果については、たとえば、「高齢者の事故防止マニュアル」など絵や図表を使った分かりやすい内容にまとめて、都民に配布し、危険防止を呼びかけている。
また、事業者や業界団体、国や関係機関等にも情報を提供し、商品の改善や安全基準、ガイドラインの策定等に役立てるよう要望している。

Q6.六本木ヒルズで起きた自動回転ドアの事故を契機に、消防庁は日常生活における子どもの安全確保及び事故防止対策が急務であるとして検討委員会を設置し、今年3月事故情報や安全対策情報の提供や普及啓発方法などに課題があるという報告書をまとめています。消防・警察、病院などとの連携で、より多くの事故を防げると考えます。市民生活を守る有効な手段として、現場との連携を検討すべきであると考えます。見解をお聞かせください。

A6:生活文化局長答弁
商品・サービスの危害危険情報を広く収集するためには、消費生活総合センターのほか、
事故情報が集中する消防や病院等の関係機関との連携が必要と考えている。
本年4月には東京消防庁との連携により、「商品等事故情報連絡会」を設置し、定期的に
事故情報の収集や情報交換を行っている。
また、病院等との連携については、都立病院等のリスクマネージャーを通じて、病院で使用しているベッドや来るアイスなどの商品に関する事故情報収集の取り組みを進めている。
今後とも、幅広く危害・危険情報を収集し、商品・サービスに起因する事故の未然防止
に努めていく。

ホームレス対策について
Q7.2002年に制定された「ホームレス自立支援特別措置法」は、10年間の時限立法で、これを受けて都も2004年にホームレスの自立支援等に関する実施計画を策定しました。都は以前から特別区と共同で、「自立支援システム」による路上生活者対策事業を実施してきましたが、2004年度からはさらに地域生活移行支援事業を開始しました。この事業は、公園等に起居しているホームレスに、低家賃住宅を貸付け、NPO法人などとの協働により、就労及び生活面での支援を組み合わせることにより、地域での自立した生活を目指すものです。
今年8月で、地域生活移行支援事業が開始から2年になりますが、その検証を含め、路上生活者対策について、課題と今後の取り組みへの姿勢を伺います。

A7.福祉保健局長答弁
これまで都は、特別区と協働し、緊急一次保護センター及び自立支援センターによる自立支援システムを構築。2004年(平成16年)度にはホームレス地域生活移行支援事業を開始し、2年間で都内の5公園から計1,190人が借上げ住居への移行を実現しました。
こうした取り組みで就労し、地域で自立した人もいる一方で、日雇いしか経験がない、また技能が身についていないなどにより、常用雇用に容易に結びつかず、自立が困難な状況があるのも事実。
今後は、就労支援を一層きめ細かく実施し、一人でも多くのホームレスが自立できるよう、特別区と協力しながら、ホームレス対策を着実に推進していく。

Q8.地域での自立した生活を可能にするためには、都民や民間企業等の理解と協力に根ざした就労支援対策の充実が重要です。今後の取り組みについて伺います。

A8:福祉保健局長答弁
都はこれまで、当面の生活資金を賄うための臨時就労の提供のほか、個別面談により把握した本人の適性・経験に応じて、求人を紹介。
今後、ホームレスの自立を一層促進するためには、安定的、継続的な就労が極めて重要。昨年度、民間団体と連携して設置した協議会を充実し、就職セミナーの開催、技能講習を実施するほか、職業分野を広げて独自に開拓した求人情報を提供。また、必要に応じて採用面接に同行するとともに、就職定着指導も強化。
こうしたことにより、就職件数も徐々に増加しているが、今後も就労に向けて、一人ひとの特性に応じた就労支援をきめ細欠く継続的に実施していく。

Q9.ホームレス対策を着実に推進していくためには、公園や道路や河川等に起居するホームレスを訪問し、路上生活者対策事業の紹介や斡旋をすることが必要であり、何より、実態の把握と生活再建に向けた丁寧な相談やカウンセリングに力を尽くすことが重要です。「巡回相談センター事業」の工夫と充実が求められます。今後の取り組みについて伺います。

A9.福祉保健局長答弁
巡回相談事業は、23区に5箇所設置した緊急一時保護センターに、「巡回相談ブロックセンター」を併設し、ホームレス対策にノウハウのある社会福祉法人に委託し、本年度から新たに実施している。
センターに配置した相談員が、公園や河川等に起居するホームレスを定期的に訪問し、健康や生活面での状況を把握した上で、路上生活者対策事業の紹介等を行う一方、就労して自立支援センターを退所した者に対して、再び路上生活に戻ることがないよう、アフターケアにも精力的に取り組み開始。
今後は緊急一時保護センター職員と綿密に連携し、実施するなど、工夫を凝らしながら、特別区と協働し、巡回相談を充実していく。

これからの教員の任用制度について
Q10.団塊世代の大量退職時期を控え、教員の数と質の確保はますます重要です。
生活者ネットが行った教育に関する調査では、保護者からは、公立学校への不安や不信、特に教員への不満が多く寄せられ、教員は子どもや親の意識の急激な変化に対応しきれず、若年退職や病気休職になる事例が見えてきました。
なかでも新規採用者は昨日まで学生だった若者が、即日先生と呼ばれる立場になる場合が多く、即戦力として力を発揮するには不安が大きいのは当然のことです。子どもたちの教育に当たるという職の重要性を考えれば、この状態を放置しておくことは問題です。一般企業であれば、新規採用者に対しては正式採用前に一定の研修期間を設置するなど、さまざまな工夫がされており、自治体でも教員養成機関を設置し、独自の採用に踏み切るところも出てきています。都としても緊急に対策を講じる必要があると思いますが、お考えを伺います。

A10:教育長答弁
新規採用教員は、4月当初から教壇に立ち、児童・生徒に対して、直接指導することになる。このため、教員の採用選考に当たっては、具体的な指導計画を作成させ、場面指導による個人面接を行うなど、実践的な指導力を重視している。
また、採用選考の合格発表後においては、採用予定者に対して、事前に採用説明会を開催するとともに、その中で相談コーナーを設けるなど対応をしているところである。
新規採用者がより円滑に教員生活に入れるよう、採用前の段階からガイダンス等の取り組みを行うことは重要であると認識しており、今後、その一層の充実について検討していく。

(意見)
9月21日、日の丸・君が代の強要は違憲だとする東京地裁の判決が出され、都は控訴する方針を明らかにしました。学級崩壊や不登校など、教育現場の混乱を考えると、「日の丸」「君が代」の強制を持って帰属意識を高めようとすることはあまりに空虚な教育哲学であり、東京都教育委員会の画一的な姿勢こそが問題です。
今、最も重要なことは、教育行政と教師との間の信頼関係であり、協力関係を築くことであると申し上げて質問を終わります。