2025年度予算案発表にあたって談話を発表しました。

2025年度予算案発表にあたって(談話)

 

2025年1月31日

都議会生活者ネットワーク 岩永やす代

 

 本日、2025年度予算案が発表されました。

 一般会計の予算規模は、前年度に比べて8.3%増の9兆1580億円、またもや過去最大になりました。都税収入も8.5%増の6兆9296億円となっています。

 知事は、2025年度予算について、「不確実性が高まる社会情勢の中、『成長』と『成熟』が両立した持続可能な都市の実現に向けて、全ての人が輝く東京の未来を切り拓く予算」と位置づけ編成したとしており、「首都防衛」を図り、「世界で一番の都市・東京」の実現に向けた施策展開としています。

 「首都防衛」の強靭化の名のもとに、豪雨対策として新たな調節池の事業化や貯留施設など土木工事がどんどん動き出す予定です。しかし、善福寺川上流地下調節池では、計画の情報が届いていなかったことを発端に、住民の間で反発が強まっています。地下工事では、外環工事の陥没事故やリニア新幹線工事による気泡発生など、住民の知らないところで安全が脅かされています。公共工事は、市民合意を図るために、徹底した情報公開と意見交換が必要です。

 また、都内では大規模な再開発が目白押しで、床面積が拡大を続けています。住宅総数は、すでに世帯数を大きく上回り、もはや過剰です。今後の人口減少は確実で、そのための準備を始める必要があります。現状を見直し、高さや大きさの制限や減築などが成り立つダウンサイジングに資する制度を設けるべきです。環境配慮と市民合意に基づくまちづくりが求められています。

 猛暑や記録的な豪雨の頻発など、気候危機は未来の話ではなく現実です。対策は最優先課題です。失われていく自然を回復し、原発に頼らない「エネルギー自立都市」をめざして脱炭素社会を実現しなければなりません。プラスチックの総量削減や人工芝の中止、有害化学物質の監視と規制、サーキュラーエコノミーへの誘導など、環境施策を総動員してゼロエミッションを達成することが重要です。

 アメリカのトランプ大統領就任に世界中が戦々恐々、国際協調の声に耳も貸さず自国第一主義に走る国の広がりに歯止めがかかるのか、正念場を迎えています。大統領による多様性の否定、マイノリティの排除が始まりました。日本にもそれが波及し、寛容性が失われネット空間のフェイク情報とも相まって、ヘイトスピーチを助長し、差別と分断がさらに深まることを懸念します。

 社会を構成するさまざまな人は、意見や習慣が違ったり、年齢やジェンダー、民族、障がいなど、差異を挙げたらきりがありません。そのだれもが人権をないがしろにされることなく、地域でともに生活していけることが重要です。いまこそ、差別のないインクルーシブな社会づくりへの一層の努力が必要です。

 物価高騰が続き、生活苦を訴える声が高まっています。年収の壁対策が大きな議論を呼んでいます。緊急対策の重要性は論を俟ちませんが、男女の賃金格差や非正規雇用問題、配偶者控除や社会保障など、ジェンダーの視点で、抜本的な見直し議論が必要です。

 東京都は婚活をエスカレートさせており、新年度予算には、「出会い・結婚、妊娠・出産、子育てをシームレスに支援」と謳っています。少子化対策の文脈で都が実施する婚活には危うさを拭えません。結婚は個人の選択です。生き方の選択を狭めることにつながるのではないかと懸念します。少子化対策ではむしろ、子どもたちが生きやすい社会にすること、多様な家族の形態を認め、どんな状況で生まれた子どもでも等しく育つ権利があり、それが実現されることこそが必要であると考えます。

 子どもの自殺が昨年最多を更新しました。特に小中学生が増えており、多くの子どもや若者が生きづらさを抱えています。不登校の子どもは10年間で3倍にもなりました。失敗してもいい、いつでもやり直しができる、自分は大切にされていると思える学校へと、学校自身が大きく変わる必要があります。正規教員の配置を増やし、複数担任制とするなどの抜本的な改革が急務です。学び直しができるしくみや、家庭・学校以外に安心して話をしたり自由に過ごせる居場所など、多様な選択肢が必要です。そして、子どもに寄り添い、子どもをエンパワーするとともに制度改善の勧告をする公的な第三者機関、子どもオンブズやコミッショナーを東京都にこそ設置すべきです。

 今年は終戦80年、広島・長崎に原爆が投下されて80年の年です。昨年被団協がノーベル平和賞を受賞しました。核兵器廃絶を訴え続けてきた被団協の活動に世界から注目が集まりました。戦争の終結が見通せず分断と緊張が厳しさを増す世界情勢だからこそ、受賞を希望につなげなければなりません。しかし、日本政府の姿勢は核抑止論であり核兵器禁止条約にも背を向けたままです。「武力ではなく対話を」。平和と核廃絶を求める市民の活動は、世代を超え国境を越えて交流からすすめています。東京から世界に平和を発信し、広げていくことが必要です。

 市民活動をベースに、参加と自治の政治をつなげてきた生活者ネットワークは、政治を市民の手に取り戻そうと活動してきました。高齢者や障がい者、外国人など多様な市民が暮らす東京で、当事者に寄り添い信頼を得ながら、ひとを大切にし、多様な個性が息づく地域をつくることに力を注いでいます。

 都議会生活者ネットワークは、困難な時代を切り開き、信頼を基盤にした寛容な社会をめざし、だれもが安心して暮らせる持続可能な都市を実現するため、生活者の視点でチェックしていきます。

地下調節池を建設する石神井川見学会に参加
2024年5月25日