昨年、コロナ真っ盛りの中で強行された2020東京大会は、図らずも、巨大イベント「オリンピック」の矛盾や問題が露呈する結果となった。生活者ネットワークは、当初から商業主義のオリンピックに反対してきたが、これほど欺瞞が渦巻いているとは思っていなかった。
不祥事の嵐
東京オリンピックが終わって1年、またもや不祥事が発覚、組織委員会をめぐる受託収賄容疑の捜査が始まっている。オリンピック招致に関わる贈賄疑惑も解明されたとは言えず、組織委員会が解散した今も問題はそのままだ。
2013年9月に東京開催が決定してからも、金がかかりすぎると異議が噴出し見直しになった新国立競技場や盗作疑惑で再公募された公式エンブレム、そしてコロナパンデミックによる1年延期、さらには組織委員会会長の女性蔑視発言、開会式の演出や作曲担当者の差別発言発覚による解任など、オリンピックをめぐる不祥事は枚挙にいとまがない。
6月に組織委員会が取りまとめた大会経費の最終報告では、オリンピック・パラリンピック東京大会経費が1兆4238億円となった。一時は2兆円から3兆円と言われていた経費が批判を浴びて圧縮、2021年12月の最終見通しでは1兆4530億円としたものの、結果的には招致時見積もり7340億円の2倍で終了した。だが、都の21年度予算では大会経費と大会関連経費合計の東京都負担額が1兆4500億円となっており、オリンピックには、競技会場だけでなく道路整備や輸送インフラ、選手村の基盤整備に莫大な予算がつぎ込まれたことがわかる。競技会場が負のレガシーとなるのではないかという指摘も多い。
また、オリンピックと冠すれば「なんでもあり」とばかりに、大会終了後の今になって動き出したのが神宮外苑の再開発だ。国立競技場建て替えの大騒ぎで終わりではなかった。100年かけて育った都心の貴重な緑が失われることに多くの反対意見が示されている。
何がなんでも中止させない
「東日本大震災からの復興」を理念としコンパクトな大会を掲げて招致した東京大会は、コロナによって中止ではなく延期になり、「コロナに打ち勝った証し」に理念を変えた。金まみれのIOCは、爆発的な感染拡大のなか批判を浴びておじける日本政府やJOC、組織委員会、東京都から中止の選択肢を封じ、多くの都民が中止を求めたにもかかわらず無観客で開催を強行した。
感動を呼ぶスポーツ本来の価値と、商業主義の欺瞞に満ちたオリンピックは別物であることをはっきりと認識した大会の総括はまだ終わっていない。