2014年第3回都議会定例会一般質問

2014年第3回都議会定例会一般質問

2014年9月25日

山内 玲子

 ●長期ビジョンについて

東京は今年の夏も猛暑が続きました。東京の夏の暑さはすさまじく、ヒートアイランドの解決が不可欠です。都はその対策として、海の森や河川・道路の緑化など、海からの風を都心に導く風の道の確保を進めてきました。人工的につくったエネルギー浪費型の都市から、環境負荷の少ないまちづくりを進め、水や緑などを使って快適性を生み出すパッシブデザインの都市をつくりあげていくことが必要だと思います。大都市東京の中で自然を取り入れていく難しさはありますが、街なかを涼しい風が通る快適な東京が、生活しやすさにつながります。

先日発表された長期ビジョンの中間報告にも「水と緑のネットワークを形成」することが示されており、持続可能なまちづくりが必要だと考えますが、知事の見解を伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q1

A1(知事):まとまった緑や循環する水は、ヒートアイランド現象の緩和や温室効果ガスの吸収など、都市の環境負荷の低減を図る上で大切な役割を果たしている。これまでも、公園・緑地の整備や、道路・河川沿いの緑化、崖線や丘陵地の緑の保全などとともに、都市再生にあわせた緑やオープンスペースの拡大に取り組んできた。今後も、こうした都市づくりを積極的に進め、オリンピック・パラリンピックの開催の舞台にふさわしい、環境にも優れた世界一の都市東京の実現をめざしていく。

●女性が輝ける社会の実現について

先日行われた「女性が輝くまち・東京シンポジウム」では、女性が働くことによる社会全体の活力や多様な働き方を進めるために、ワーク・ライフ・バランスの意義や重要性について議論されました。

舛添知事は、このシンポジウムの中で、都庁内の女性管理職を2020年までに20%にする数値目標を掲げる方針を示され、その前向きな姿勢は評価するものです。社会の意識を変革していくには東京都が、知事のもと、社会を牽引していける取組みが求められます。

女性が輝ける社会の実現にむけて、まずは、都庁における女性の活躍推進についてどのように取り組まれるのか、知事の決意を伺います。・・・・・・Q2

A2(知事):女性がいきいきと輝ける、活力ある東京を実現するためには、まずは都庁自らが、職員の約4割を占める女性の意欲や能力を最大限に引き出すことが重要。都では、仕事と育児等の両立支援とともに、性別にとらわれない、能力や業績に基づく、厳格な選考により、職員が、自らの選択で幹部職員にチャレンジできる仕組みを整備。その結果、都の女性管理職の割合は、国や民間企業を大きく上回る。今後とも、実力本位の選考を行う中で、女性管理職の割合を高めることはもとより、都庁の幅広い分野で、意欲と能力のある女性職員が一層活躍できるよう、計画的な育成や支援に取り組む。

男女平等参画社会の実現は、国際的にも大きな課題でありますが、その中でも、社会の価値観を変えていくために、次世代の育成が重要だと指摘されています。日本の社会では、結婚・出産を機に、6割の女性が退職をするなど、女性の方が、選択に迫られる機会が多いと言われています。

若い世代の人達が、いきいきと働いていける社会をつくりだしていくためにも、大学生に向けたワーク・ライフ・バランスの啓発が必要と考えますが、都の取り組みを伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q3

A3(生活文化局長):誰もが意欲に応じて能力を十分に発揮し、活躍していくためには、将来、社会の担い手となる若者がワーク・ライフ・バランスの意義や重要性を認識し、長期的な視野で人生を考えていくことが重要。このため、大学生が、結婚、出産を見すえたキャリア形成に向けて、職業生活のあり方やワーク・ライフ・バランスの重要性を学ぶことができるよう、今年度、指導教材に活用できる情報を大学に対して提供。

日本労働組合総連合会が、2014年6月に行った「女性のための労働相談」では、産休・育休復帰から嫌がらせを受けたり、妊娠を告げたら退職するように求められた、と言った妊娠・出産に関する相談のほか、昇格などにおける男女差別や処遇への不満が寄せられています。

東京労働局が発表した2013年度男女雇用機会均等法などに関する、労働者からの相談内容では「セクシュアルハラスメント」に次いで、「妊娠・出産等を理由とする不利益な取り扱い」が多くなっています。また、近年、職場における人権侵害として、パワーハラスメントについては、業務上の指導との線引きが難しいという側面もありますが、セクシュアルハラスメントと同様、社会的に許されない行為であることを認識させるための取組みが必要です。そこで、都は、職場におけるハラスメントの防止について、どのように取り組んでいるのか、伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q4

A4(産業労働局長):セクシュアルハラスメントなどを含めた職場の嫌がらせは、労働者の尊厳を傷つけるばかりでなく、職場環境の悪化にもつながるものである。このため都は、様々なハラスメントの防止に関するセミナーや、関連法令を解説した冊子の配布等により、事業主に対して必要な知識の普及啓発を行っている。また、労働相談情報センターにおいて、退職強要や職場の嫌がらせなどに関する相談にも対応している。今後もこうした取り組みにより、働きやすい職場環境の確保を進めていく。

都として、ワーク・ライフ・バランスの推進を含めた男女平等参画社会を実現していくためには、企業の自主的な取り組みを後押しする仕組みの構築が必要です。そのために、都の入札契約手続きの中で、企業の社会的な取り組みを評価する視点を取り入れることも、有効な手段の一つであると考えます。

今後、都が発注する業務委託などにおいて、総合評価を実施するに当たっては、男女平等参画を推進する観点での評価をさらに充実していくべきと考えますが、所見を伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q5

A5(財務局長):環境や福祉などの政策目的をサポートする手段の一つとして、公正性や透明性、競争性や品質の確保の観点に配慮しながら、入札契約制度を活用することは有効。都はこれまでも、各局の施策を促進していくことを目的として、総合評価に政策的な評価項目を設定しており、ワーク・ライフ・バランスの項目を盛り込んでいる。都の全体方針等を踏まえつつ、公共調達の発注者として、総合評価の活用など、女性の活躍を促す仕組みの充実に向け検討を進めていく。

●子ども・子育て支援新制度について

来年4月から実施予定の子ども・子育て支援新制度では、質の高い幼児教育と保育を総合的に提供することが目的のひとつに掲げられました。子どもの育ちを第一優先に考えれば、幼保一体化の法的整備は望ましいことであり、その意味で新制度には期待を寄せてきました。ところが、国の財政基盤が未確定であるうえ制度設計が未熟であるため、目玉施策とされる認定こども園は、新制度では補助金が減るという理由で認定返上の動きが広がり、普及拡大が難航している状況です。幼と保が共存したままで新たな事業が盛り込まれたため、全体が複雑でわかりにくい設計になってしまいました。ただ、新たに利用者支援を打ち出したことは評価しています。利用者にとっては、たとえば、身近な地域で、子育て支援にかかわる情報が一元的に提供されるワンストップサービスのような支援が求められます。

都は、区市町村による利用者支援の取組みを促すため、必要な支援を行うべきと考えますが、都の見解を伺います。・・Q6

A6(福祉保健局長):サービスの利用を希望する保護者が、多様なサービスの中からニーズに合ったメニューを選択し、円滑に利用できるよう、区市町村が身近な場所で相談を受け、情報提供や支援を行う利用者支援の取り組みは、待機児童の解消を図る上でも重要である。都は、こうした取り組みを昨年度から支援しており、今年度は、13区市で実施を予定している。

また、今年度から新たに、相談業務に必要なノウハウに関する都独自の研修も開始し、利用者への支援を担う職員のスキルアップを図っている。

今後とも、区市町村における利用者支援の取り組みが進むよう、積極的に支援していく。

新制度では、教育・保育の質の向上が期待されています。「質」を評価する要素がさまざまある中で、子どもにとって遊びの大切さを考えると、外で走り回れる広い空間は成長に欠かせないものであり、園庭は重要です。本来、必置が望ましいと考えます。

しかしながら、園庭のない保育施設が増え、多くのグループがひとつの公園を同時に使用しているケースも少なくない中、自治体ではすでに小学校の校庭を使っている事例があります。都立高校の校庭など都施設の一部を保育所の園庭に代わる空間として使用できるよう、協力を求めるものです。

今回、新たな幼保連携型認定こども園の認可基準に係る条例案も提案されています。この、保育の質の根幹である基準は、新制度施行後も、適正な運営が確保されるよう、徹底して遵守されなければなりません。

新制度における規準遵守のための仕組みについて伺います。・・・・・・Q7

A7(福祉保健局長):新制度では、都道府県が幼稚園、保育所、幼保連携型認定こども園の認可権限を有し、小規模保育、家族的保育、居宅訪問型保育、事業所内保育の4サービスは、新たに区市町村が認可権限を持つことになる。

それに伴い、施設設備や人員配置など、認可に関する指導監督権限は、都道府県と区市町村それぞれに与えられる。

また、新制度の実施主体である区市町村は、保育サービスに関する運営基準を条例で定めるとともに、施設型給付や地域型保育給付の対象として確認をした場合には、認可権限の有無にかかわらず、運営基準に関する指導監督を区市町村が行うこととなっている。

●精神障がい者の地域移行支援について

日本の精神病院の入院者数は世界で突出して多く、しかもその65%が1年以上の長期入院で、精神病院の閉鎖性が社会的な問題となっています。2004年国は「精神保健医療福祉の改革ビジョン」を策定し、入院医療中心から地域生活中心への改革を10年間で進めることとしました。東京都は国に先駆けて精神障がい者の地域移行を進めてきていますが、2012年では、都内の精神科病院には未だに11,760人が長期に入院している状況です。

「東京都障害者計画・第3期東京都障害福祉計画」においては、長期入院者の地域移行を目標に掲げていますが、目標達成に向け精神障がい者の地域移行支援にどのように取り組んでいるか伺います。・・・・・・・・・・・・・Q8

A8(福祉保健局長):都は現計画において、1年以上の長期入院者の退院率29%以上と目標値を定めている。相談支援事業所にコーディネーターを配置し、入院中の精神障がい者や病院職員に対する退院に向けた働きかけ等を実施。こうした取り組みにより、長期入院者の地域移行が円滑に進むよう支援。

長期入院していると生活力を失い、病院生活へ依存し地域生活への復帰を諦めてしまうと聞いています。その人らしい地域での生活をイメージできるように支援し、地域移行・地域定着するには、病院と地域との調整をするコーディネーターや、自らも入院経験をもち地域で暮らすピアサポーターによる働きかけは、大きな効果があります。

そこで、地域移行におけるピアサポーターの活動について伺います。・・Q9

A9(福祉保健局長):長期入院者の地域生活に対する不安の解消や、退院に向けた意欲を高めるため、ピアサポーターによる支援等を実施。今後も、ピアサポーターによる活動を活かし、長期入院者の地域移行を進める。

 

都内には精神科病床のある病院は115。そのうち1年以上の入院者がいる病院は、民間約70病院と都立松沢病院と聞いています。都立松沢病院は、都における精神科医療の中核的役割を果たしており、新しい病棟の開設にあたり、精神科救急や精神科身体合併症など一般の病院では対応が困難な精神科医療機能を強化したということです。そのような中において、あわせて入院患者の地域生活への移行に向けた取り組みをどのように行っているのか伺います。・・・Q10

A10(病院経営本部長):適切な入院医療の提供とともに、退院後に地域の中で安心した生活を送れるよう支援することは重要。このため、入院時から退院に向けた生活相談を実施。退院後は、必要に応じ、看護師が自宅を訪問し、体調の確認や服薬指導を実施。また、社会生活に必要な機能の回復を目指し、デイケアを実施。入院期間が1年を超える患者については、多職種のチームが情報を共有し、病状や家族の状況に応じた退院先の選定を行うなど、早期退院を支援。

今後とも、関係機関と連携を図りながら、患者の社会復帰と地域での生活を支援。

以上