2015年第3回定例会 一般質問

2015年第3定例会一般質問

2015年9月30日

都議会生活者ネットワーク

西崎 光子

 

  • まずはじめに、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会について質問します。

2011年に日本オリンピック委員会竹田恆和会長が「五輪を震災復興のシンボル」としたいと発言、招致活動の旗印になりました。震災復興をオリンピック・パラリンピックの明確な目標に掲げたことが、2013年9月のIOC総会で東京開催の決定につながっています。

ところが、先ごろ行った新聞社の調査によれば、岩手、宮城、福島3県42市町村の首長の6割弱が、震災復興のシンボルとする開催理念も薄れていると回答しています。さらに8割強が、大会開催の建設需要の高まりによって、被災地の復興工事への影響を懸念していると答えています。実際に、東京で工事が増加する影響で、建築資材や労働者の不足と高騰が起こっており、復興工事の障害となる事態です。被災地からはオリンピック・パラリンピックへの期待よりも醒めた声や苛立ちの声が聞こえてきます。これでは、開催意義の根幹が揺らいでいるのではないでしょうか。

東京大会の開催が5年後に迫っている中で、改めて開催都市の知事として、震災復興の後押しや世界に向けたアピールの原動力になるよう、被災地の人々が参画し、被災地への支援となるよう「復興五輪」の理念を打ち出しいくべきと考えますが、知事の所見を伺います。……Q1

A1(知事):2020年大会は、全ての日本人が力を合わせ、東日本大震災を克服するための明確な目標となり、また、スポーツの持つ力により、困難に直面した人々を励まし勇気づけるものである。だからこそ、大会と被災地復興を切り離すことはできず、被災地の復興なくして、大会の成功はない。

都は、震災直後からいち早く、職員の派遣、都内避難者への支援など、総力を挙げて支援してきた。

また、スポーツの力で被災地復興を支援する、1000㎞縦断リレーや子どもたちとのスポーツ交流など、さまざまな事業も継続して実施してきた。

都は、「復興五輪」という理念を常に念頭に置き、こうした取り組みを継続し、復興を後押しするとともに、大会におけるさまざまなプロセスにおいて復興に向かう姿を発信し、大会成功に全力で邁進していく。

 

  • 子どもの貧困対策について

子どもたちを取り巻く社会状況は、物質的に豊かになっても地域との関係が希薄になり、孤立し、別の意味で悲惨さが増しています。

国の調査によれば、日本の子どもの貧困率の状況は先進国の中で厳しく、教育を受けられない子どもたちや家庭が崩壊して親の愛情を十分に受けられないで成長してきた子どもたちが増加しています。幼少期における困難や逆境は、その後の成長や大人になってからの生活に多大な負の遺産をもたらすため、子どもの貧困の解決に向けた取り組みが求められます。

そこで、子どもの貧困の撲滅に向けた対策を重要な政策の一つとして位置づけるべきと考えますが、知事の見解を伺います。Q2

A2(知事):都はこれまで、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されないよう、教育支援、生活支援、保護者に対する就労支援、経済的支援の4つを柱に、生活保護世帯や生活困窮者世帯、ひとり親世帯、社会的養護の下で生活する子どもたちに対する支援を実施。

昨年策定した長期ビジョンにおいても、安心して産み育てられ、子どもたちが健やかに成長できるまちの実現を政策指針の一つに位置づけている。

全ての子どもは、日本の未来であり宝。今後とも、次代を担う子どもたちの健やかな育ちを支えるため、子どもや保護者に対するさまざまな施策を展開。

 

児童養護施設に入所している児童は、その子の能力にかかわらず18歳という年齢がくると社会に出て自立していかなければなりません。しかし、退所後は、社会の中でさまざまな壁にぶつかり、大学や専門学校等に進みたくても学費や生活費が工面できず断念したり、就職しても継続できなかったりする場合もあり、自立への道は非常に厳しい状況です。

先日、世田谷区内で、社会的養護に関するパネルデスカッションが開催され、児童養護施設退所者へのさまざまな支援について議論されました。世田谷区長からは住居の支援として、区営住宅を安く提供することを検討しているという報告がありました。

これまで生活者ネットワークは、社会的養護については、18歳からの施設退所後のアフターケアに力をいれていくべきだと発言してきましたが、今後は、区市町村とも連携して、NPOや地域の社会資源を活用した支援策を進めていくべきと考えます。

そこで、都が実施している児童養護施設を退所した児童の自立支援策について、現状の取組み内容と進捗状況について伺います。……Q3

A3(福祉保健局長):都は、施設を退所した児童が、自立し安定した生活を送ることができるよう、入所中はもとより、退所後も継続して生活や就労に関する相談支援等を行う自立支援コーディネーターを専任で配置する取り組みを行っており、現在、53施設で実施。

また、NPO等と連携し、施設を退所した児童が気軽に集まり交流ができ、専任のスタッフが生活や就労上の悩みや相談にも応える、ふらっとホーム事業を都内2か所で実施するほか、施設退所者等が働きやすい職場の開拓や就職後の職場訪問等を行う就業支援事業を実施。

今後もこうした取り組みを進め、社会的養護の下で育つ子どもたちの自立を支援。

 

都は、この4月に社会的養護施策推進計画を策定し、この中で社会的養護に占める家庭的養護の割合を概ね6割とするよう進めていくことになっています。

国においては、特別養子縁組成立前の試験養育期間中の里親に育児休業を認めるべきとする報告書が出され、来年の通常国会で育児・介護休業法の改正案が提出される見込みですが、国の動きに先んじて、千葉市や三重県など、職員が特別養子縁組する場合の育児休業を認めている自治体も出てきています。法改正がされない中で、現行制度では給料等の手当てが出せないといった課題もあり、都にはこうした制度はありませんが、職員の中には養育家庭が19家庭、特別養子縁組里親が8家庭と実績があり、さらに職員が取り組みやすくなるよう、環境整備を要望するものです。

このような中で、より多くの家庭が養育家庭に登録できるよう、国に対し、養子縁組里親だけでなく養育家庭についても育児休業を利用できるよう働きかけ、養育家庭への委託を促進していくべきと考えますが、見解を伺います。……Q4

A4(福祉保健局長):本年8月、国の研究会が取りまとめた報告書では、育児休業の対象となる子どもの範囲は、法律上の親子関係に準じる関係であるか否かという観点から検討することが適当とし、特別養子縁組の監護期間は、法律上の親子関係の形成をめざしていることから、育児休業の対象となる子どもの範囲に含めることを検討すべきとしている。

一方、養育家庭については、社会的養護の制度であり、里親手当も支給されているなど、関係性が異なるという意見があったことにも留意しつつ検討すべきとしている。

都は、より多くの家庭が登録できるよう、養育家庭の育児休業制度の利用についても、国に提案要求しており、今後も、家庭的養護の推進に向け、必要な働きかけを行う。

 

  • プラスチックごみ減量について

今年3月出された「持続可能な資源利用」に向けた取組方針の中で、資源の消費量を抑制していくために、資源ロスの削減、エコマテリアルの利用・選択、廃棄物の循環利用を3つの柱としています。これらは、持続可能な社会づくりのために重要な視点だと思います。

私の地元世田谷区のごみの組成分析を見ると、昨年度は可燃ごみの16.6%、不燃ごみの5.1%がプラスチックです。そして、世田谷清掃工場はダイオキシン濃度の上昇で1月から操業停止になっています。

ごみ減量を進めるためには、さらなるプラスチックごみの削減やリサイクルを行う必要があると考えますが、都の取り組みを伺います。……Q5

A5(環境局長):都は、持続可能な資源利用の推進に向けて、資源ロスの削減や廃棄物の循環利用の促進等を施策の柱とする「持続可能な資源利用に向けた取組方針」を策定。

その中で、プラスチックについては、レジ袋のさらなる削減や事業系廃棄物のリサイクルのルールづくりにより、減量化や分別、再利用の促進に向けて取り組むこととしている。

今後とも、区市町村と連携し、より効率的なプラスチックごみのリサイクル等を進めていく。

 

プラスチックが海に流れ出ると、波や紫外線などで細分化され5ミリ以下のマイクロプラスチックとなり、それに引き寄せられる毒性成分によって海洋汚染が深刻な問題になっています。さらに、プラスチックを鳥や魚が食べることで、海の生態系に影響を与えています。プラスチックによる汚染には、化粧品や歯磨き粉などに含まれている非常に微細なマイクロビーズの問題もあります。下水道でも処理できないマイクロビーズは、アメリカではすでに規制が始まっていますが、日本ではまだ知られておらず、何の対策もとられていないのが現状です。発生抑制という観点からプラスチック製品や容器の総量を減らし、海に流れ出ることを防ぐことが重要です。

マイクロビーズを含めて、海洋におけるプラスチックごみの発生抑制について、どのように取り組んでいくのか伺います。…Q6

A6(環境局長):海洋におけるプラスチックごみの発生原因は、海洋や河川へのごみの投棄、また、陸域で捨てられたごみの海洋への流出等、さまざま。

そのため、都は、引き続き、プラスチックの再資源化への取り組みを支援するとともに、ごみのポイ捨て禁止に関する普及啓発や水域における清掃の着実な実施等により、ごみの発生抑制や適正処理に取り組んでいく。

 

  • 老朽マンションの建て替え等支援について

都内ではマンションの老朽化が進み、特に東日本大震災以後、耐震性の問題など、住民の防災意識も高まっています。旧耐震基準のマンションは約36万戸と推計されており、建て替えや耐震化の必要性が出ています。老朽マンションを放置し続ければ、いずれスラム化を引き起こし、マンションの居住環境の悪化だけでなく、治安や景観など、地域社会への悪影響も危惧されます。マンション住民には不安が広がっていますが、高齢化により管理組合もきちんと機能していないところも多く、対策を検討するにしても、相談窓口の情報も届いておらず、実際にどこから手をつけたらいいのか途方に暮れているという相談を聞いています。

都は、地元自治体と連携して建て替えに向けた支援を行っていくべきと考えますが、見解を伺います。……Q7

A7(技監):都は、相談窓口を案内するパンフレットを作成し、セミナー等の機会を捉えて広く周知しているほか、建築士等をアドバイザーとして派遣する制度を設けている。

建て替え事業に対する助成や仮住居の提供を行うとともに、まちづくりと連携してマンションの再生を支援する新たな制度の構築に向け、先行モデル事業に取り組んでいる。

今後とも、老朽マンションの建て替えを支援し、良好な市街地環境の形成を図っていく。

 

老朽マンションの中には、「郊外に立地し、駅からも遠い」、「敷地が狭く、容積率にも余裕がない」など、不動産としての価値が低く、資金的余裕がないため建て替えが難しい場合もあります。このようなマンションに住み続けるためには、居住環境をニーズに合わせて改修し、グレードアップすることも必要になってきます。

今後は、建て替えに加え、改修に対しても支援を行うべきと考えますが、見解を伺います。……Q8

A8(技監):住宅政策審議会の答申では、安全で良質な住宅ストックを形成し、市街地環境の改善を図るため、改修による老朽マンションの再生も重要な選択肢の一つとされている。

都は、答申を踏まえ、効果的な支援のあり方について検討していく。

以上