本会議討論
2012年10月4日
星 裕子
都議会生活者ネットワーク・みらいを代表し、今議会に上程された知事提案の全ての議案と、議員提案の2件に賛成の立場から討論を行います。
まず、国の地域主権改革一括法に関連して6件の新設条例と一部を改正する条例1件についてです。これらは地方自治体の自主性を強化し、自由度の拡大を図るため、国から 地方への義務付けや枠付けを見直し、条例制定権を拡大するものとして期待してまいりました。しかし今回の条例案は、国の省令で定められた基準が、そのまま都の基準として明文化され、実態を追認するものとなっています。自治体の自由度を拡大するという法の趣旨からは、大都市東京としての課題を解決するべく、独自の見直しがもっとされるべきではなかったかと思います。
特に、都営住宅条例改正については、安価な住宅が不足し、生活費の高い東京では、都営住宅が果たす役割は重要です。これまでの入居収入基準や裁量階層が見直されないままでは、ますます入居者が固定化され、コミュニティの再生やソーシャルミックスの実現は困難です。また入居収入基準に合致していても都営住宅に入れず、民間住宅に入居せざるを得ない都民に対しては、家賃補助を求めてきましたが、都営住宅の新設をしないのであれば、例えば民間住宅に住む低所得の子育て世帯向けに、都営住宅家賃との差額を補助する制度などを創設すべきです。今後の検討を求めます。
議員提案第11号「東京都犯罪被害者等基本条例」については、予期せぬ犯罪に巻き込まれた被害者に対し、身近な市区町村の相談窓口や医療機関、NPOや民間支援団体との連携強化で、医療・就労・居住の安定などの生活支援を進めることは重要であり、都としても積極的に取り組むべきです。生活者ネットワーク・みらいは、この条例の持つ理念に賛同し、都の計画をさらに推進させ、都民への人権意識の熟成を図るものと考え、賛成します。また地方議会改革において、議員の条例提案は、当然進めるべきであり、議会を活性化させるものです。議員提案の手法の未熟さや時に行政側の反発もあろうかとは思いますが、より良い条例をつくるため、意見を出し合い、時には修正案を提示するなどして、立法の府である議会の責任を果たしていくべきです。
次に一般質問でも取り上げた障がい者就労の拡大について申し上げます。
現在都庁の清掃業務の一部で知的障がい者が働いており、財務局は知的障がい者が働くためのマニュアルをつくりました。今年6月ハート購入法が成立し、来年4月に施行されますが、これによって、障がい者の就労が具体的に拡大することが期待されます。財務省と厚生労働省は、サービス提供業務を障がい者施設に随意契約できるようにしていく方針だと報じられています。印刷の発注や清掃業務の委託などは、障がい者施設が受け負いやすい仕事です。都が持っている公共施設は大小さまざまなものがあり、その清掃事業をはじめとして、障がい者施設に業務委託するなど、障がい者の就労の場をつくり出すことが重要です。東京都でも今後調達方針を策定することになりますが、担当局を決めた上で関係局と連携し、目標を立てて実施していくよう求めます。
今議会で多く質疑された自転車の問題について一言申し上げます。
自転車はCO2を排出しない、有酸素運動による健康な体づくり、移動における低コスト等、環境、医療、経済などの問題を解決する一助となり、持続可能な社会を目指すための重要な交通政策であると考えます。ヨーロッパやアメリカ、韓国、台湾等の世界主要都市で、成熟した都市の交通政策として位置づけられる中、東京は、いまだに利用者の高まるニーズに自転車政策が追いついていない現状です。これまで自動車を中心とした道路整備をすすめ、歩道や自転車道の整備が後回しになってきたことも大きな問題です。
都は自転車の「安全利用にかかわる条例」を今後、検討されると言う事です。マナー・モラルの低下に対する規制や取り締まりの強化、安全教育の徹底、ナンバープレート制、デポジット制の導入など、社会問題解決のための自転車対策だけでは十分ではありません。
自転車は今後の東京のまちづくりにおける重要課題と位置づけ、走行空間や環境の整備などで、さらに利用が促進されるよう、ビジョンを描き、各局連携した取り組みを強く要望するものです。
最後にオリンピック招致についてですが、ロンドンではアスリートの熱い戦いに大いに盛り上がりました。しかし、ロンドン開催の経費は当初の予算の4倍にも上ったという報道があり、浮かれている場合ではありません。東京は4000億円の基金があることで財政的優位を誇っていますが、今後施設整備やインフラ整備が予想以上に膨らむ可能性は大いに考えられます。日本経済がやや上向きになってきた矢先、尖閣問題を引き金に日中関係は冷え込み、貿易のみならず民間交流までもが先行き不透明になり、都の税収も影響を受けるのではないかと思います。9月からは家庭の電気料金が値上りし、自治体でも保育料や国保料などの値上げが相次いでおり、都民の暮らし向きは一層厳しさが増しています。それに対して、都の基金残高は、オリンピック基金を除けば24年度末には4300億円余となる見込みで、決して十分なものではありません。今は、震災からの復興や都民の生活を守ることを最優先にすべきであり、来年度予算編成に向けて、慎重な検討を求めて討論を終わります。
以上