2012年都議会第二回定例会討論

2012年都議会第二回定例会討論

 都議会生活者ネットワーク・みらい

西崎光子

 都議会生活者ネットワーク・みらいを代表して、第134号議案「東京電力管内の原子力発電所の稼働に関する東京都民投票条例」他、知事提出議案すべてに賛成の立場から討論を行います。

 今議会の最大の議案である「原発の是非を問う都民投票条例」を求める直接請求は、法定署名数を超える32万筆余の署名を持って、5月10日に提出され、知事の反対意見を付して、今議会にかけられました。

 この議案を審議することになった総務委員会では、請求代表者8人が意見陳述を行い、その中で、これまで署名活動などには全く無縁だった一般市民の方が、「直接請求の署名活動は、名前、住所のみならず、生年月日、拇印まで求める厳しいルールがあり、街頭で会った初対面の人に、そこまで個人情報を晒すということには大きな抵抗がある人がどれだけ多くいたことか、にもかかわらす、今回法定署名数を優に超える署名を集める事が出来たということがどれだけ意味のあることか、考えてください」と訴えられました。今回の街頭署名では、福島から駆け付けた人や、若者などが活動を手伝っているのを目の当たりにして、将来を担う若者にこそ、その意思を表明する機会が必要です。

 昨年の福島第1原子力発電所の事故以来、原発が抱える途方もない危険性を肌で感じ、行動を起こさずにはいられないと立ち上がった都民の方々が真に望んでいることは、「誰もが真剣に原発に向き合い、市民が責任と権利を行使するために、互いに議論を尽くし、意思を表示するための場を設けてほしい」ということであり、それが都民投票です。

 総務委員会の審議では、40分の意見陳述は行われたものの、請求代表者の方々に対する質問は認められず、議論を深めたとは言えません。私たち議員は、政党や会派の枠を超えて、一人ひとりの議員が真摯に向き合うことをすべきです。

 開かれた都議会をめざすなら、審議のあり方ももっと時間をかけて検討されるべきだった事を申し述べておきます。

 知事は、尖閣諸島の問題は国がやらないから都が購入するのだと言っています。しかし都民にとっては原発の稼働こそが、生命にかかわる重要な課題であり、都からの発信が必要です。

 また立地地域の諸事情を考慮すべきとも言っておられますが、もともと立地地域では、国の押し付けと一部の推進派によって原発が建設されてきました。そして原発マネーは、立地地域にとってなくてはならないものになっていき、麻薬のように原発依存を強めてきたといわれています。原発事故は、科学技術の進歩や経済成長が、必ずしも人間を幸福にしないことを示しており、本当に大切なことを、真の復興を考えていかなければなりません。

 立地地域が必要としているのは原発ではなく、働く場であり、地域の産業であり、自治体の収入なのです。立地地域に新たな産業を生み出すための協力はおおいにしていくべきであり、大消費地である東京は、立地地域とともに共通課題としてこの問題に取り組んでいかなくてはなりません。

 また、専門家の知見を聞くべきという意見についても、専門家と称する人々に頼ってきた結果が、昨年の事故をまねき、未だ収束しない状況になっています。

 無関心に電力を享受してきた責任を自覚し、今後のエネルギー政策を自分たちで考えたいという都民の意思を重く受け止め、やれない理由をあれこれ述べていくのではなく、前向きに市民を信じて、民主主義を成熟させるためにも、都民投票条例が必要であると考えます。

  夏の電力需要と経済への影響を懸念して、野田首相は、大飯原発の再稼働を決定しました。福井県知事は政府が保証したからと言い、政府は地元の理解が得られたからと、相変わらずの責任の押し付け合いのように見えます。

 安全が最優先されたのではなく、民意からかけ離れたところで、原発の問題が審議されています。

 東京都は自立・分散型のエネルギーと省エネを推進していますが、都のこうした施策を進めるためには都民の参加や努力が欠かせません。原子力発電所稼動の是非を都民に問うことは、ライフスタイルの見直しを含めて、自分が使っているエネルギーについて考えることになります。これは都が実施しているさまざまな施策を後押しするものでもあります。

 知事は、所信表明で「我々がどの程度の経済成長を目指し、そのために、いかなるエネルギーを、どれだけ確保していくのか、大きなシミュレーションを行うことだ」と言っていますが、環境問題においては、もはや積み上げ方式の考え方では解決できません。多くの人が、3.11以前と以後で「時代が変わった」と感じています。今こそ、必要な将来像を描き、それに向けてロードマップをつくる手法が求められています。つまり、「原発のある社会」を選ぶのか、「原発のない社会」を選ぶのかを出発点にして、これからの都政運営にのぞむべきであることを申し上げて都議会生活者ネットワーク・みらいの討論とします。

以上