2010年12月8日
山内玲子
1.温暖化対策について
地球規模でのCO2削減は、2012年の京都議定書の目標年が迫る中で、悲観的な見通しが明らかになってきました。都は、大規模事業所にCO2削減義務を課し、排出量取引制度をつくり、中小規模の事業所の省エネ対策を促進する制度を実施するなど、国をも先導する多様な温暖化対策の取り組みを進めてきており、評価するものです。
Q1)このような先進的な取り組みを定着させ、CO2削減を着実に実現させるためには、強い決意を持って取り組んでいく必要があると思いますが、知事の決意をうかがいます。
A1)(知事)国においては、抜本的なCO2削減対策の導入が一向に実現せず、政府の取り組みは、地球の未来の対する危機感が欠落している。地球温暖化は、一刻の猶予も許されない状況にあり、対策を行う意思と能力をもった地方政府が先行して取組を進めることが必要。
都が、本年4月から開始した、世界初の都市型キャップ・アンド・トレード制度は国内のみならず、海外の多くの国家政府、地方政府からも、他に例のない先駆的で大胆な施策として注目を集めている。こうした都の施策に呼応し、大幅なCO2削減の取組を開始している東京の多くの企業との協働により、低炭素型都市への転換をいち早く実現していくことで、歩みの遅い国の取組を先導していく。
(参考)
台湾政府・・・招聘を受け、講演(9月)
フィンランド環境省・・・来庁(10月)
ケベック州政府・・・・・来庁(10月)
ドイツ環境省・・・招聘を受け、講演(11月)
COP10で公表された世界銀行の報告書・・都制度を「企業行動を劇的に変える強力な施策」として紹介
家庭部門からのCO2排出量は、都全体の約1/4を占めており、増加傾向にあります。削減対策として住宅の省エネ改修や太陽エネルギー機器の利用促進への支援が行われており、エコポイント制度なども相まって、省エネ型の家電製品への買い替えも進んでいると聞いています。盛んな消費行動も、誘導策が終了すると、一過性のものになってしまうことが懸念されます。こうした家庭でのCO2削減の動きを継続させていくためには、地球温暖化対策への一層の理解を深める普及・啓発が重要であると思います。
Q2)そこで、地球温暖化対策に関する普及・啓発の取り組みについて伺います。
A2)(環境局長)家庭部門のCO2削減に向けては、都民一人ひとりの意識の醸成が不可欠。都では、都民に身近な区市町村が主体となって実施する先駆性があり、波及効果が期待できる地球温暖化対策事業に対して、補助制度を設け支援。この補助制度を活用することによって、住民や事業者の方々が、エアコンの設定温度の変更などの具体的な省エネ対策を実践することを宣言し、さらに地域全体の行動として広げていく取組など、特色ある事業が開始されている。
今後とも、こうした取組を通じて、地球温暖化対策の普及・啓発を推進していく。
2. 障がい者福祉について
高次脳機能障がいは、脳卒中や交通事故などで脳の一部が傷をうけ、記憶障がいや注意障がいなどが起こり、日常生活に大きな支障をきたします。都は、今年度症状に合った専門的なリハビリの普及のためのモデル事業を区西南部と西多摩の2つの二次保健医療圏で開始しました。先日、モデル地域になっている世田谷区で、高次脳機能障がいのリハビリに長年取り組んでいる長谷川幹先生に、お話を伺ったところ「脳の症状は、人によって様々だが、患者が主体的にリハビリを長期的に続けることで回復する場合もあり、最後まであきらめないことが大切」と、話されました。そのためには、症状や生活のニーズに合った適切なリハビリを、身近な地域で受けられることが必要です。
Q3)モデル事業では、高次脳機能障がいに対し、医療と福祉の連携により、効果的なリハビリが提供されるための、地域の支援体制の充実をどのように進めていくのか、伺います。
A3)(福祉保健局長)都は、今年度から、二つの二次保健医療圏で、高次脳機能障がいに対応したリハビリテーションの普及モデル事業を実施している。この事業では、高次脳機能障がい者のリハビリテーションを担う中核病院が、専門スタッフを配置し、地域の福祉サービス事業所等に対する技術的助言などを実施するほか、医療と福祉の連携強化のための連絡会や症例検討会を行っている。
こうした取組により、リハビリテーション技術の普及や人材育成を進めるとともに、関係機関の連携を促進し、地域における高次脳機能障がい者に対する支援体制の充実をめざしていく。
高次脳機能障がいは、他の障がいに比べると、身体の障がいがみられず、外見上障がいが目立たないために、周囲に理解されにくいケースが多く、家族の苦労や不安も大きく、そのような家族の相談に的確に対応できる窓口が身近な地域に必要です。新宿区は、都の補助事業を活用し、NPOと協働し相談事業を行っています。高次脳機能障がい者支援の充実は、家族の訴えを聞き、新しい生活に向けて何が必要かできることから取り組み、サービスを構築していくことが求められています。
Q4)そこで、都としても、より多くの区市町村が相談体制の整備を進めるよう、積極的に支援すべきと考えますが、都の見解を伺います。
A4)(福祉保健局長)高次脳機能障がい者やその家族を支援していくためには、身近な地域で相談できる体制を整備する事が重要である。このため、都は、平成19年度から、「区市町村高次脳機能障害者支援促進事業」を開始し、相談支援等を行う区市町村への財政支援を実施してきた。また、心身障害者福祉センターにおいて、従来から行っている専門相談に加え、平成21年度から、当事者及び家族が相談員となる、ピアカウンセリング事業を実施しており、同様の取組を行う区市町村についても、包括補助事業により支援している。
今後とも、こうした取組を強化し、区市町村における相談体制の整備を促進していく。
都議会生活者ネットワーク・みらいでは、先月、日野市にある「東電ハミングワーク株式会社」を視察しました。平成22年6月1日現在の都内の民間企業の障がい者雇用率は、1.63%となり、大企業が牽引役となって8年連続して上昇していますが、中小企業では依然と厳しく、全国でも低い状況です。
一方、地域では、障がい者も健常者も一緒になって働ける職場を確保するため、従来の補助金にたよるのではなく、市民との協働による社会的事業所などの新たな働き方も始まっています。障がい者が働き続けるためには、住み慣れた地域に職場があり、障がい者も健常者も一緒に働くことができる多様な職場作りが必要であり、その担い手としてのNPO等の多様な主体の存在が欠かせません。近年、地域において雇用に限定されない多様な働き方をめざす人も増えていることから、こうした方々の主体的な取組を都としても積極的に支援していくべきです。
Q5)そこで、多様な働き方を広めるための都の取組について伺います。
A5)(産業労働局長)多様な働き方を広げるための取組についてであるが、近年、NPO、ボランティア、起業・創業など、都民の働き方は多様化してきている。このため、都はこれまでも、東京しごとセンターにおいて、多様な働き方セミナーやNPO等での就業体験の場の提供等を行うとともに、雇用以外のさまざまな働き方についての専門相談窓口を設置し、アドバイザーが相談や情報提供に応じている。
引き続き、これらの取組を通じ、多様な働き方をめざす人の主体的な取組を支援していく。
3. 家庭的保育事業について
保育待機児について、自治体では考えられる限りの様々な手法で、必死に解消に努めています。
待機児童数が都内一多い世田谷区では、改正児童福祉法に家庭的保育事業が位置づけられたことに伴い、認可保育園を運営する社会福祉法人が、家庭的保育のモデル事業に今年の6月から取り組み、マンション1階の4室、別のマンション2室を借り、保育ママ6人を雇用して30人の保育を始めました。従来の保育ママの課題であった密室性や保育の質の確保、保育者の休暇の保障、定員が埋まらないことによる収入の不安定さなどを改善し、預ける側も預けられる側も安心して保育できるようになったと聞きます。
一方、この間、同一建物で複数の保育ママが事業を行うことへのオーナーや近隣住人の理解、都市部の実情に合わせた家賃補助、専任支援員の確保、など新たな課題も明らかになっており、こうした問題を解決しながら、さらに事業を推進していく必要があります。
家庭的保育事業は、待機児童の大半を占める3歳未満の子供を対象としており、今後、待機児童の解消を図る上では、こうした小規模で家庭的な保育を拡充していくことも有効です。
Q6)都は、家庭的保育事業について、どのように取り組み、区市町村を支援しているのか伺います。
A6)(福祉保健局長)家庭的保育事業は、家庭的な雰囲気のもと、少人数の乳幼児に対し、同一の保育者によるきめ細かな個別保育を提供するものであり、本年9月現在、約1900人の乳幼児が利用している。事業のさらなる推進に当たっては、基本的に自宅等で一人で保育を行うという事業の性格を踏まえ、より安定した保育を確保し、安心して利用できる環境の整備を支援する必要がある。このため、今年度から、保育者の休暇取得時に代替の保育の場を確保することへの支援や、複数の保育者が共同して保育を行うモデル事業を開始した。
都は今後ともこうした取組により、区市町村が家庭的保育事業を推進できるよう支援していく。
4. 都立高校における日本史必修化について
知事は今議会の所信表明で、今の若者は先人の足跡を知らず、豊穣さや便利さに溺れて芯が虚弱であり、他者との摩擦・相克への耐性不足で議論ができないという現代若者観を示し、若者たちを目覚めさせるためにも、日本の近現代史を必須化していくということを表明されました。
日本史必修化に向けて、東京都教育委員会は教科書に準拠した「江戸から東京へ」という教本を作成していると聞きました。江戸の経済、まちづくり、文化、教育を客観的な事実として学ぶことは否定しませんが、歴史に刻まれている戦争や人権問題などについては、その方面の多くの識者だけでなく、それぞれの当事者の生きてきた証によって事実の捉え方は様々です。
生活者ネットワーク・みらいは、国と国の友好関係を築き、将来の平和を構築するために、歴史を学ぶということは価値があり、開かれた議論を行うことが重要と考えます。開発を進めている独自教科書について、進捗状況や策定委員や監修者等がまったく明らかにされないことは問題であり、開かれた進め方をしていくべきです。
Q7)作成にあたってのスケジュール、完成するまでにどのような形で様々な意見を聴取していくのか、ご所見を伺い、質問を終わります。
A7)(教育長)東京都独自科目「江戸から東京へ」の教科書の作成に当たっては、本年3月に日本史必修化検討委員会を立ち上げ、これまで4回の検討委員会、6回の作業部会を開き、検討を重ねてきた。教科書「江戸から東京へ」については、高等学校学習指導要領地理歴史科の目標を踏まえ、事実の正確な理解に導くために、相異なる価値観や対立する立場の一方に偏らないよう客観的かつ公正な記述に留意する必要がある。このため、高い専門性を持ち、豊富な授業経験を有する都立高校の日本史等の教員7名が執筆したものに、日本史と歴史教育に造詣が深い有識者である3名の検討委員等の意見を取り入れながら、本年度末の発行を目途に作成中である。
作成した教科書については、平成23年4月から日本史必修化協力校等において、実際に1年間の授業で活用してもらい、教員・生徒・保護者の意見を聞くとともに、都教育委員会のホームページに掲載するなどして、広く都民からも意見を聴取していく。
都教育委員会は、こうした意見を参考にするとともに、学習指導要領に則り、必要があれば改定するなど、平成24年度からの本格実施に対応していく。
以上