2010年第3回定例会 一般質問

2010年9月29日
西崎光子

1,自然との共生について

この10月、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が、名古屋市で開催されます。
東京都は、大都市でありながら多摩や島しょまで、多様な自然環境に恵まれており、こうした自然を保全し、共生していくことは、都民全体で取り組むべき課題です。都は子どもたちを巻き込んだ生き物調査を行うなど様々な情報発信をしていますが、一過性のものに終わることなく、取り組みを進めていく必要があります。
Q1)そこで、小笠原の自然保護などにも関心の高い石原知事に、東京における多種多様な生き物をはぐくむ自然との共生について、見解を伺います。

A1)(知事)東京における自然との共生については、いかなる地域であろうと,人間は自然との共生なくして存在し得ない。東京には奥多摩や小笠原のような動植物豊かな大自然がある一方、都心の公園や緑地にも、野鳥や昆虫などの生き物が生息するなど、多彩な自然が存在。都はこれまでも、世界にも類のない小笠原の貴重な自然環境の保全、多摩の森林再生と里山の保全、また海の森の創出、街路樹の倍増、校庭の芝生化など、東京の多彩な自然を守り,新たに創出するための取り組みを進めてきた。今後とも、人間と自然とが共生し続けられる東京を実現し、これを将来世代に伝えていきたい。

2,雇用問題について

次ぎに雇用問題について伺います。これまで女性が出産を契機に離職することや、子育て世代の男性の労働時間の長さなど、子育てと仕事の両立が困難な状況が続いてきており、ワークライフバランスを推進し、安心して子育てができる環境整備が求められています。この夏、都は、社会全体で生活と仕事のあり方について考え、実践するために、新たに「東京しごとの日」を設けました。企業などでは、家族を職場に招待し,お互いの理解を深めようと取り組みを進めていますが、当日は、夏休み中のお子さんと家族をつれた都庁の職員の姿も見かけられました。このような取組を評価するとともに、今後も企業と連携し、広く社会に発信することにより、ワークライフ・バランス推進にむけた社会的気運を高めていくことが重要です。
Q2)そこで、本年度の取組とその成果をどのように社会に発信していくのか伺います。

A2)(産業労働局長)本事業は、少子化打破緊急対策の一環として、企業や個人をはじめ社会全体で、ワークライフバランスについて考え、実践するきっかけとなるよう、今回新たに実施。本年度は8月6日を「東京しごとの日」とし、都庁舎において、セミナーやパネルディスカッション、企業の取り組みの紹介等を内容とするイベントを開催し、5000人を超え来場。約50の企業・団体および都庁において、8月6日を中心に、従業員の家族の職場訪問を受け入れる「ファミリーデー」を実施し、従業員とその家族を合わせ、約8000人が参加。参加企業からは、「従業員に大事な家庭があることを再認識し、仕事と生活が両立しやすい職場づくりの契機となった」という意見が多く寄せられ、社員からも「自身のワークライフバランスについて改めて考えた」との声が聞かれた。
これらの内容と成果については、都のホームページで公表しているほか、新聞への広告掲載や、来年2月に開催するワークライフバランスフェスタなど、様々な機会を活用し,広く社会に発信していく。

この6月から施行された「育児・介護休業法」は、父親も子育てが出来る働き方を実現するために改正されました。男性の育児休業の取得はやや増加しているものの、その取得率は低い水準にあります。いくら制度があっても男性が「使える制度」になるかどうかは、管理職をはじめ現場の意識や支援体制にかかっており、企業自らが、職場における両立支援のための仕組みづくりや利用促進を図ることが求められます。
Q3)そこで、男性の育児休業の取得実態はどのようになっているのか、また都として、男性の育児休業の取得促進にむけ、どのように取り組んでいるのか、伺います。

A3)(産業労働局長)国の調査では、育児休業制度を利用したい男性は約3割、育児休業取得率は約1.2%、取得期間は1ヶ月未満が半数以上。国は制度を利用したいと思っているが実際は利用していない男性がいると指摘。背景には、育児休業中の賃金保障の低さや育児休業者の代替要員確保の困難さなどがあると考えられる。都は、平成18年度から、雇用保険法に基づく育児休業給付の支給率の引き上げについて国に提案要求。
平成19年度には、育児休業者の代替要員確保を支援するため「育児休業応援助成金」を創設。その助成条件の中で、男性については1ヶ月以上の育児休業を対象とし、取得を促進。平成20年度から、両立支援に関する優れた取組を行っている中小企業を東京ワークライフバランス企業として認定し、男性の育児休業や子育て参加に関する具体的取組事例も発信。今後とも、こうした施策により希望する男性の育児休業取得促進が進むよう務める。

有効求人倍率の低下など労働市場が停滞する中で、ひとり親家庭を取り巻く雇用環境も厳しさを増しています。子育てをしながら家計を維持していくためには、安定的で長期雇用が可能になる資格の取得は、重要です。
高等技能訓練促進費事業は、都内では、看護師や介護福祉等の資格修得のため、2年以上養成期間で修業する場合に支給されています。この制度は、母子世帯の母に対する就労支援としては、もっとも効果があがっており、希望者も多いと聞きました。昨年度は、促進費の金額拡大や支給期間の延長により、利用しやすくなりましたが、この制度拡充は、安心こども基金がある平成23年までの入学者のみに適用される時限的措置です。
Q4)そこで、高等技能訓練促進費事業の制度拡充を今後も継続して実施するべきと考えますが、都の見解を伺います。

A4)(福祉保健局長)高等技能訓練促進費事業は、母子家庭の母が、看護師や保育士など、経済的な自立に効果的な資格を取得するため、訓練を受けている期間において、訓練促進費を支給する事業であり、昨年度、促進費の増額や支給期間の延長が行われた。
この制度拡充は平成23年度までの時限措置となっていることから、都は他の自治体と連携し、平成24年度以降も制度拡充を継続するよう、国に要望している。

厳しい経済状況の中、東京都の高等学校卒業者の就職率は平成20年度92.7%から平成21年度91.3%と、1.4ポイントの減少となりました。生活者ネットワーク・みらいはこれまでも、新卒で派遣・フリーターに陥ることを防ぐために、都は新卒時の雇用を確保するとともに、卒業後も切れ目なく相談できるような学校の相談・支援の強化を行うべきと主張してきましたが、知事の所信表明で、高校生および高校を卒業したものを含めた就職支援の方向性が示されたことは歓迎するものです。
Q5)そこでこれを受け止め、教育委員会としては今後どのような就労支援を行っていくのか見解を伺います。

A5)(教育長)厳しい雇用情勢の中、就職を希望するすべての生徒の進路実現を図るための支援を行うことは、喫緊の課題であると認識している。都教育委員会は、各学校が就職を希望する生徒を対象に面接指導や小論文指導などの就職指導を行うとともに、高校生向けの求職活動支援セミナーや就職ガイダンスなど産業労働局や東京労働局が実施する就労支援の取組を活用するよう指導してきた。今後とも、これらの取組を一層充実させ、就職を希望する生徒の支援に努めるとともに、希望していながら就職できずに卒業した生徒に対しても引き続き、きめ細かく相談等に応じるよう学校を指導していく。

3,有害物の適正処理について

現在、特別委員会で審議されている築地市場の再整備の検討の中では、課題の一つにアスベストの問題が挙げられています。参考人招致の中で、そもそもアスベスト問題を再整備の課題とするべきではないこと、また都側が資料として作成したアスベスト残存施設図および残存量が実態と違っているという指摘がされましたが、都が急遽行ったプレス発表は懸念を払拭するものではありませんでした。市場内には民間所有の大型冷蔵庫・冷凍庫がありますが、そのアスベスト実態も明らかになっていません。
Q6)改めて市場内のアスベストの実態把握をすべきと考えますが、見解を伺います。

A6)(築地市場長)中央卸売市場では、昭和63年度以降、都が定めたアスベストに関する対応方針に基づき、都有施設を対象として、室内外に露出している吹きつけアスベスト等の有無を調査し、除去が必要な者はすでに処理してきた。また、市場事業者が所有する大型冷蔵庫等についても、都の施設と並行して、直接露出している吹きつけアスベスト等の有無を調査したが、これまで発見されていない。現在、都で行っている空気中のアスベスト濃度の測定に基づく監視を継続するとともに、今後は、場内施設について、都と市場関係業者が協力して、アスベスト含有建材の劣化状況等を随時点検することで、アスベストの実態把握に努めていく。

いつ起きても不思議ではない首都直下型地震の東京の被害想定が報告されていますが、都民の台所である市場の安全確保は重要です。公共施設であり、食品を扱う市場のアスベスト対策が、移転を見越して足踏みしているとすれば、あってはならないことと考えます。都はこれまでも、食品を扱い多くの市場関係者が働く場であることを考慮して、リスクコミュニケーションに基づく、除去工事が進められてきたと伺いました.
Q7)移転か再整備かに関わらず、一刻もはやく計画的に除去対策をすすめ、都民の不安を解消する必要があると考えますが、見解を伺います。

A7)(中央市場長)築地市場では、都の対応方針に基づき、室内外に露出している吹き付けアスベスト等を、市場関係業者の協力を得ながら、これまでに約32,000㎡除去してきた。現在、残されたアスベストは、状態が安定しているものや隠蔽されたもので、空中に飛散する危険性が低いため、都の対応方針からも、直ちに除去する必要はないとされている。また場内では、空気中のアスベスト濃度の測定を定期的に実施しており、飛散していないことを確認している。築地市場で営業しながら残されたアスベストを除去する場合は、その分布範囲が広く、業務に密接な区域にあるため、工事において売り場や通路等が大幅に分断されるほか、店舗や駐車場等の仮移転先が確保できなくなるなど、市場業務に重大な支障が生じる。従って、残されたアスベストの除去についても、都の対応方針に基づき、施設が撤去される新市場建設の際に除去することが、市場業務への影響や市場関係業者にかける負担が最も少なくなるため、合理的である。
なお、新市場建設による施設撤去の前であっても、アスベストを含む建材の劣化等が生じて、飛散のおそれがある場合や、施設の改修等を行う際にアスベストが確認された場合は、これまで通り市場関係業者の協力を得ながら、必要な箇所のアスベストのり除去等を行っていく。

埼玉の市民団体の調査で、埼玉県、東京都、神奈川県などの133カ所で道路工事をはじめとする公共工事や駐車場などにアスベストを含む再生砕石が使われていることが報道されました。豊洲予定地では、盛り土についても、汚染が問題になっていますが、アスベストについても、工事の際に仮設用の通路や一時的な作業帯などで地盤を固めるためにまかれた砕石に、アスベストが混入した再生砕石が混じっている疑いを払拭できません。
Q8)アスベストの含有についての調査を求めるものですが、見解を伺います。

A8)(都市整備局長)豊洲地区の仮設道路等に使用している再生砕石は、区画整理事業地内に残っていた建物の床や基礎部分のコンクリートを、現場内に設置した専用の破砕機により破砕して、再利用が可能な材料としたものである。こうしたことから、調査を行う必要はない。

今年9月、足立清掃工場をはじめとして、23区の4清掃工場で相次いで排ガス中に高濃度の水銀が観測され、焼却炉が停止しました。一方、昨年12月には、稲城、狛江、府中、国立の4市で構成している多摩川衛生組合で、水銀を含む蛍光灯と乾電池を、「効率化と経費削減のため」という名目で焼却実験をしたことが、地域の生活者ネットワークの調査で明らかになりました。
Q9)こうした事態を受け、東京都は、有害物質である水銀を含む廃棄物について、どのように認識し、どのように処理すべきと考えているのか伺います。

A9)(環境局長)水銀は、有害物質であり、焼却すると気化することから、環境への放出を防止するためには、焼却処理は適切ではない。各区市町村では、水銀を含む蛍光管や血圧計、体温計は、有害ゴミまたは不燃ゴミとして処理し、焼却を行わないよう、ルールを定めている。今後、都は、区市町村と連携し、都民や事業者に対し、改めて水銀を含むゴミの正しい出し方を周知するなど、清掃工場への不適切な搬入の防止対策に努める。

一般廃棄物に含まれる水銀については、法令に基づく処理基準や都条例はなく、23区の清掃工場の排ガス中の維持管理項目として自主基準値を設定しているだけです。
私たちの生活では,電池や蛍光灯、エアゾール缶等に水銀などの有害な金属や様々な化学物質が使われています。このような家庭用品は、廃棄時点での安全かつ効率的な管理システムをつくり、できるだけリサイクルし、焼却しないことが重要です。
Q10)一般廃棄物の処理は区市町村の責務とはいえ、「製造事業者による回収・再資源化等の仕組みづくり」は、区市町村単位では限界があります。広域自治体としての東京都の責務はどのように考えるのか伺います。

A10)(環境局長)有害物も含め、廃棄物については、製品の生産、使用、廃棄までを一貫したライフサイクルとして捉え、拡大生産者責任の考え方に基づく対策を進めることが重要と認識している。都はこれまでも、国や関係業界に働きかけ、環境と安全に配慮した製品開発や、製造事業者等による自己回収を促進してきた。今後も、一般廃棄物の処理をになう区市町村と連携して、品目に応じた適正なリサイクルを推進していく。

4,高齢者福祉について

介護保険制度は、平成24年に大きな制度改正が行われます。
生活者ネットワークは、介護保険に関して地域で調査を行いましたが、地域包括支援センターの機能拡充や強化を求める意見が多く寄せられました。地域包括支援センターは、住み慣れた地域で暮らし続けられるための拠点として、その機能が期待されてきました。しかし、現実は、予防プラン作成に追われ、本来事業である総合相談、権利擁護への取り組みはやっと着手されたばかりで、地域のネットワークづくりは、まだ今後の課題です。
Q11)在宅高齢者が、今後ますます増加する中で、地域包括支援センターの機能強化は重要な課題と考えますが、制度改正に向けて、都の見解をお聞かせ下さい。

A11)(福祉保健局長)地域包括支援センターは、高齢者や家族からの相談に応じるとともに、関係者の連絡調整を行う機関である。しかし、一部の業務に多くの時間を割かれ、地域のネットワークづくりなどの役割を充分に果たせていない。介護予防ケアプランの作成については、委託件数が制限されているため、業務負担の軽減につながっていない。そのため都は、センターが地域の拠点として機能を発揮できるよう、制限の撤廃を国に緊急提言している。

以上