2010年第2回定例会 一般質問

2010年6月9日
星 裕子

1.都政運営について

2000年の分権改革では、機関委任事務を廃止し、国と地方を「上下・主従」の関係から「対等・協力」の関係に変え、自治体の権限を拡大したとされています。しかし現状はこれまでどおりの縦型の関係を払拭しきれていないように見えます。
地方分権はもとより国から一方的に与えられるものではなく、地域がイニシアティブを発揮することこそが重要です。都は、これまでディーゼル車の排出ガス規制など、先駆的な環境政策を打ち出し、全国の自治体に先駆けて都独自の取組を実践してきていることは評価します。
現在、国は地域主権戦略会議において、区市町村への権限委譲、法令による義務付けなどの見直しや出先機関改革などについて検討を行い、地域主権戦略大綱の策定、地域主権推進一括法の制定に向けた取り組みを進めようとしているところです。
Q1)地方分権を進めるためには、国が地域の声を聞き、地域の実情に応じ、その意見を尊重すべきです。そこで国に先駆けて、様々な施策を展開している都として、国の地方分権改革への取組について、知事のご見解を伺います。

A1)(知事)政府は、国と地方の役割分担に関する根本的な議論を行っていない。国が地方を縛ってきた義務付け・枠付けの見直しなど、未だに不十分なままである。さらに、用途地域の権限などを、機械的に基礎自治体へ移譲しようとしている。地方の意向や実情を無視して、一方的に考えを押しつけようとする姿勢こそ、中央集権的である。今後とも、知事として、必要なものは、国に建言していく。

2.市民参画について

地域の実情に応じた施策を構築するためには、都政への市民参画をさらに促進することが重要です。しかし都政における市民参加は基礎自治体よりもかなり遅れているといわざるを得ません。都政モニターや見学会など都民の参加の場面は拡大されてきていますが、これだけでは参画としては不十分です。
そこで参画の場として審議会等への公募委員の登用について伺います。
Q2)知事の諮問機関である審議会等は、法律や条例により、その制度を適正に運用していくために必要として設置されているものであり、都民目線での議論が求められます。今回、改めて一般都民の参画を調べてみると、公募で委員を募っている審議会等はあまりに少ないことがわかりました。都は一般都民の公募についてどのように考えているのか、また公募に応じて審議会等に参加した都民委員が発言しやすい会議運営ルールをつくるなど、公募委員の積極的活用を進めるべきと考えますが、見解を伺います。また、いわゆる当て職の団体代表や特定の学識経験者を多用する審議会のあり方は再検討すべきであり、次代を担う若者の政治への関心を高めるためにも、青少年の参画機会を増やすことを強く要望します。

A2)(総務局長)都は、「付属機関設置運営要綱の取り扱い」において、付属機関の運営に当っては、「幅広く各方面の意見を聞くことが求められるものであり、可能な場合は、都民からの公募を積極的に行うように務めること」と定めている。この方針に基づき、審議会等の性格に応じて公募委員を任命し、積極的なご意見を頂いているところである。今後も、この方針の考え方に沿って、審議会の適正な運営がなされるよう努めていく。

3.都立高校の現状と課題について

我が国においては、今日、経済格差と学力格差、不登校、ニートなど、子ども・若者をめぐる問題が山積しています。
そこで東京都の若者支援について、都立高校の現状と課題から質問します。
Q3)東京都教育委員会は、3月26日の定時制二次募集試験で、300人以上の不合格者が出たことによる緊急の措置として、4月に入ってさらなる追加募集を行いました。しかし、今回の追加募集は普通科、専門学科合わせて10校、各30人ずつという限られたものであり、特に不合格者が多かった多摩地区では商業科の1校しか追加募集がありませんでした。この結果、募集定員300人のところ、応募者は136人(半数)で、志願者のニーズとのミスマッチは明らかです。
今後、経済不況、高校無償化などにより、都立高校は全日制・定時制とも志望者が増える可能性があります。来年度はどうしていくのか、ご所見をお聞かせください。

A3)(教育長)都立高校は、生徒の多様な適性や能力に対応できるよう全日制・定時制を問わず様々な学科やコースを設置している。又、進学を希望する意欲と熱意のある生徒を1人でも多く受け入れるよう、地域バランスを考慮して十分な募集枠を設定している。都教育委員会は、各都立高校の教育活動の特徴や具体的な入学者選抜方法等について情報提供を行い、生徒の適性や能力にあった適切な進路選択を支援するとともに、生徒数の推移や中学生の志望傾向等を踏まえて、希望する生徒を適切に受け入れるよう努めていく。

Q4)今日の定時制高校は全日制を希望しても入れなかった生徒、不登校で学校生活になじめなかった生徒など、勤労青少年だけでない様々な若者の受け皿となっています。さらに障がいを持つ子ども達が少なからず在籍していると聞いています。こうした特別の支援が必要な生徒がいる定時制高校に対して、都教委はどのような支援を行っているのか、お聞きします。

A4)(教育長)都教育委員会は、特別支援教育コーディネーターの指名、特別支援教育に関わる委員会の設置を各学校に指導。学校の申請に応じて、必要な非常勤講師の時数を平成22年5月現在、定時制20校に措置。

Q5)高校無償化が実現した今、高校は希望すれば誰もが学べる場でなくてはなりません。障がいのある子どもや不登校気味の子ども、さらにはいったん退学しても再び学びたいという意欲を持った人へのやり直しを応援する、そうした学校は定時制だけではなく、多様な受け皿が求められています。教育庁は5年ごとに「都立高校に関する都民意識調査」を行っています。
今後、高校改革の検証には社会の変化や都民意識の要望を取り入れるべきと考えますが、見解を伺います。

A5)(教育長)都教育委員会は、都立高校に学ぶ生徒の多様化や、社会の変化を充分に把握した上で、都民に信頼される魅力ある都立高校の実現をめざすため、平成9年、都立高校改革推進計画を策定し、これまで、進学指導重点校やエンカレッジスクールを指定するとともに、チャレンジスクールをはじめとする新しいタイプの学校を設置してきた。その結果、都立高校における、大学進学実績の向上や中途退学者、進路未決定者の減少をはじめとする成果があがっている。今後とも、都教育委員会は、都立高校改革推進計画の成果検証を着実に進めながら、社会状況や生徒・保護者をはじめとする都民ニーズの変化を把握し、都民の期待に応える高校づくりを推進していく。

4.精神保健医療について

イギリスでは、家族やユーザーの求めているサービスの開発に積極的に投資をし、早期介入サービス、危機対応サービス、家族支援サービスが政策として具現化してきました。そのために、専門家の養成に多くの予算をつけ、精神看護士、心理療法士、医師などチームで支援にかかわり、医療中心のシステムから精神保健を重点とした政策へと転換し、地域で生活する精神障がい者を支えています。
Q6)都としても、精神障がい者が地域で安心して生活できるよう、地域における対応力向上のための人材育成に力を入れていく必要がありますが、見解を伺います。

A6)(福祉保健局長)精神保健福祉センターでは、区市町村や地域活動支援センター等において、相談支援などに携わる職員を対象とした,スキルアップのための研修を実施している。また、今年度から実施している「アウトリーチ支援モデル事業」では、精神保健福祉センターの医師、保健師等の専門職チームが、区市町村や保健所との密接な連携のもと、地域に出向き、精神障がい者に対する支援を行うとともに、地域の対応力を強化するため、困難事例に適切に対応できる人材の育成を進めていくこととしている。

Q7)また、精神疾患の方は、病気に罹ってから治療を開始するまでの未治療期間が一般的に長いと言われていますが、発症から早期に治療を開始することにより、かなり改善することがイギリスの取組からも分かってきています。
統合失調症の場合などは、子どもや青年が、最初から精神科に来ることは少なく、早期に適切な医療機関に繋げることにより、未治療期間を短くすることが非常に大切です。今後の取り組みの方向性としては、精神の不調に気づいた方が、速やかに適切な支援や治療を受けるための仕組みをつくっていくべきと考えますが、都の所見を伺います。

A7)(福祉保健局長): 区市町村、保健所、精神保健福祉センターでは、精神保健福祉相談を実施し、医療機関の受診等について助言、指導を行っている。また、困難事例についても、早期の受診につなげられるよう、関係機関による事例検討会を開催している。現在「東京都地方精神保健福祉審議会」において、精神疾患の早期発見・早期支援に向けた効果的な取組についても検討を行っている。引き続き、早期に適切な支援につながるよう努めていく。