2010年3月28日
西崎光子
都議会生活ネットワーク・みらいは、予算特別委員会に付託された第20号議案中央卸売市場会計予算案に反対し、その他のすべての予算案に賛成の立場から討論を行います。
築地市場移転問題はこの予算特別委員会の最大の争点となりました。築地市場の今後のあり方については、これまで豊洲移転ありきで議論されてきましたが、ここに来て築地再整備について、新たに検討する可能性が出てきたことは選択肢が拡がり、歓迎するものです。しかし、土壌汚染の実証実験では、実験の傾向がつかめたものの、豊洲新市場予定地の土壌汚染が解決されたわけではありません。地下水の汚染については、2年間の経過観察が必要なことなど、汚染地が無害化されたと確認されるには、長い年月が掛かることが明らかになり、少なくとも汚染対策が万全でないままの用地取得を含む予算をこのまま認めることはできません。
豊洲新市場予定地では、土壌汚染が発覚したことで、安全確保ばかりが問題になっていますが、さらに重要なことは、東京都が関わる市場はどうあるべきかという根本的な議論が、都民の耳に聞こえて来ないことです。少子高齢化・市場外流通・魚ばなれが進む中で、築地の水産・青果の取扱量は、この20年でおよそ3割も減少しています。豊洲新市場予定地は現在の築地市場の23haの1.7倍もの広さですが、広くなったからといって取扱量が1.7倍以上になる保障はありません。またその必要があるとも思えません。
狭隘化・老朽化した築地市場をいかに再生させていくかを考えたとき、都民の消費動向や流通形態の変化をしっかりと捉えて、これからの市場の規模や業務内容を構築する必要があります。こうした観点からこれまでにつくられた市場計画を時のアセスにかけることも検討すべきと考えます。
また質疑の中で盛んに過去の現地再整備の失敗が答弁されてきましたが、現在の技術を使えば汚染の除去が可能であるといわれるのと同様に、現地再整備での工事方法なども新しい技術が出てくる可能性も否定できません。
土壌汚染対策についても、「安全です」「大丈夫です」を繰り返す東京都の姿勢は、新銀行東京の時と同様であり、付帯決議のむなしさも思い起こされます。食の安全への都民の期待に答えるためにも、事業者の生活安定のためにも、議会としても、納得のいく議論をしていかなくてはなりません。
次ぎに平成22年度の一般会計予算については、前年に比べて5.1%減の6兆2640億円で、昨年から引き続き規模を減少することとなりましたが、投資的経費は6年連続の増加となっています。
国が現在中止や凍結としている八ッ場ダムや外郭環状道路は、国の動向をにらんで、負担金等の請求があった時には直ちに支出できるように予算計上されていますが、その中には生活再建のための費用や、調査費等も含まれているところから、全額否定はいたしませんが、予算執行時には議会への事前の説明を行うことを強く求めます。
税収回復に期待がもてない中、新銀行東京やオリンピック招致活動の総括など、都民の前に明らかにしなくてはならない課題はまだ議論の道半ばです。都財政を圧迫する不安要素は、早急に解決しなければなりません。
また、喫緊の課題である景気対策は、もはや一時しのぎでは済まされず、産業構造の大変革を前提に、人材育成施策を進めることが重要であり、ワークライフ・バランスなどの働き方を推進することが求められています。
子育てを取り巻く環境は、保育や医療の環境整備が進む一方で、児童虐待による子ども達の被害が深刻になってきました。学校でも家庭でも、子どもの権利を守る視点から、困難な状況にある子ども達の救済のため、区市の家庭支援センターの対応力を強化し、児童相談所や学校の連携を図り、早期発見にむけた取組を進めていく必要があります。
たまゆらの火災から1年、医療や介護のサービスを受けながら安定的に暮らせる住居や施設が、都内では絶対的に不足している現状が明らかになりましたが、ひとり暮らしの高齢者が、急速に増えている中、これからの住まいの在り方は、どの地域でも深刻な問題として、その支援策を講じていかなければなりません。ホームヘルプや相談、給食など今ある地域の人的資源を活用した自立生活支援も同時に進め、障がい者・若者の自立支援や、医療の充実・食の安全・住まいの確保などでセフティーネットを構築し、環境・福祉重視の生活都市づくりへ、都民合意を高めながら、進めていくことを求めます。
私たち都議会生活者ネットワーク・みらいは、都民の多様な暮らしに、安全と安心を創り出す、未来への責任ある予算執行を要望し、討論とします。