2008年第3回定例会 討論

2008年10月6日
西崎光子

 私は、生活者ネットワークを代表して、知事提出の第157号議案、第158号議案に反対、その他の全議案に賛成の立場から討論を行ないます。

今回の 935億円の補正予算案のうち、540億円は新銀行東京の減資対応です。新銀行には400億円の追加出資を実施したばかりであり、その後の経過報告をすべきであるにもかかわらず、金融庁の検査の結果を見て報告するとしていた3月答弁から一転して検査結果は非公開と答えるなど、責任を感じているようには受け止められません。付帯決議で求めた監視体制の強化も充分機能しているとは言えません。現在いる240人の行員で1万件以上の不良債権の回収は不可能であり、再建の見込みもないことが、今議会でさらに明らかになった以上、知事は1日も早く店じまいすることを、英断すべきです。
補正予算で示された中小企業向け支援・雇用対策、新型インフルエンザや震災対策等は、その必要性を認めますが、新銀行に関しては緊急性が認められず、この時期に、しかも、一括して出してくることには、ごまかしの意図が見え見えです。このまま、都民の血税が無駄に消えていくことに加担することはできないので、補正予算に反対せざるを得ません。

一般質問でも触れましたが、八王子の土砂災害は多くの教訓を残しました。この開発地域の状況、特に住宅地裏山の状況は八王子気象区始まって以来の豪雨とは言え、土砂災害は起こるべくして起きたといわざるを得ません。一年前、がけ崩れが起きてその危険な兆候は現れており、地元の人の危ないという市や都への訴えに、きちんと対応しなかったことは行政の怠慢であり、人災であると思います。土砂防止法に基づく警戒地域や土砂災害危険箇所の情報を持っている建設局と、開発許可の窓口で宅地造成工事規制区域などを所管する都市整備局との縦割りの関係を乗り越える連携強化を要望します。

土砂災害に関連して、八ッ場ダムについて申し上げます。
9月の初め、1都5県議員でつくる「八ッ場ダム計画を考える会」で国土交通省の案内で現地を視察しました。吾妻渓谷や山々が連なり、貴重な動植物が生息している場所が水没予定地であることは心が痛みます。さらに、この地域は地すべり多発地帯であり、吾妻川に注ぐ沢のひとつひとつに幾重にも防災ダムを設け、山を切り崩した場所にアンカーを大量に打ち込むなどの付帯工事が進められています。もろい地質というこの地域の特殊性が予想をはるかに上回る事業費増額の大きな要因となっています。現在、国道の付け替え工事を行っていますが、その工事の途中でも表層崩壊を起こし、工事がストップしました。奈良県の大滝ダムでは、ダム本体完成し、試験貯水を始めたところ、ダム湖に面する白屋地区で地すべりによる多数の亀裂が見つかり、住民が仮設住宅に移転を余儀なくされて、訴訟事件となるとともに、地すべり対策で完成の遅れと事業費増大を招いています。
八ッ場ダムにおいても、住民が移転する代替地の山側は土石流危険地帯に指定されており、安全が担保されているとはいえません。
半世紀も前に構想された八ッ場ダム計画は、治水上も利水上もすでに意味を持たなくなっており、まさに無駄な公共事業です。国が決めたから、国の事業だから、止められないというのは無責任です。この計画こそ「時のアセス」の対象とすべきものであると申し上げておきます。

今議会に出されたあきる野市の都道建設計画に関する陳情に関連して申し上げます。
道路建設や開発事業に当たっては、自然保護や景観・人々の暮らしまで様々な角度から、その影響を考慮して進めることが求められています。
東京都の環境影響評価制度は、平成14年の改正で全国に先駆け、一定規模以上の事業計画に対し、計画段階における影響評価実施を義務付けています。しかし、様々な場面で市民による事業への問題提起がなされ、環境を守るための制度が、事業を進めるための手続きとして使われているという指摘がされています。事業規模を小規模にして環境影響評価の対象外とするなどで、これまでわずか2例しか計画アセスの対象になっていません。時代の要請にあった環境評価制度の再構築が必要ではないでしょうか。特に市民の信頼を得るためにも計画段階での環境評価の充実は課題です。政策が立ち上がったときに広範な市民との意見交換を行い、選択肢に「事業をしない」を入れ、当初の環境評価と違ったときの対応のルールを入れ込むべきだと考えます。

最後に食の安全についてです。
表示の偽装、売れ残りの再利用、輸入冷凍食品の農薬汚染など、食品を取り巻く不正が相次ぐなか、さらに今回の事故米の不正流通です。わが国で唯一自給できる米を、ミニマム・アクセス米として必要以上に大量に輸入した挙句、カビの発生や農薬の検出で、食用としては使えなくなったにもかかわらず、返品も廃棄もせず、食用米の販売会社に売り、汚染米が保育園や病院などにまで流れてしまったのです。この事件は事業者の犯罪であると同時に、見過ごしてきた農水省の責任が問われることは当然です。
都内でも学校給食用の食材に混入していたことが明らかとなり、不安が広がっています。安全な食品を食べることは消費者の権利です。「混入が微量だから」とか「死ななければいい」とかいうものでは決してありません。特に成長期の子どもについては、何より未然防止の原則に立って、安全確保に努めるべきです。
今回、事故米の不正流通に対して、大消費地東京の議会から国に対して意見書を上げられなかったことは、はなはだ残念なことといわざるを得ません。
いかに国政選挙が近いからとはいえ、行政も議会も都民・消費者の立場に立って、その役割を果たすべきであることを申し上げて、生活者ネットワークの討論とします。

以上