2006年第4回定例会 一般質問

第四回定例会一般質問

都議会生活者ネットワーク
山口文江

(質問部分抜粋)
都政運営について
Q1.知事は、今後明らかにする「2016年の東京の都市像」を都市戦略と位置づけ、「平成19年度重点事業」を、この長期的な都市戦略の基点としています。これまでの8年間、知事は目差す都市像を示さず、政策の総合的・体系的な展開が弱いと指摘されてきました。オリンピック招致にあたりようやく長期構想の必要性を認識されたようですが、オリンピックに向けた環境対策や都市基盤整備だけでなく、未来を担う子どもたちが希望を持って生きられるよう、子育て・教育などにも、オリンピックに取り組むと同様の強い意欲を持って、全局あげて取り組んでいただきたいと思います。
重点事業に掲げられた各事業は、1つの局だけで対応できるものは、ほとんどありません。環境問題や子育て支援など、求められている都政の課題は、1つの局、1つの分野、更にいえば行政だけでは解決できないことは明らかです。
都民の視点にたって、行政の縦割りを乗り越えた政策展開が必要です。知事の見解を伺います。

A1.知事答弁
縦割りの弊害を打ち破り、機動的・戦略的な行政運営のできる執行体制を構築するため、知事本局を設置した。「CO2半減都市モデル」を目指す環境対策、仕事と子育ての両立をはじめとする子育て対策など重点事業は、組織の壁を越え、複合的・重層的に政策展開を図るためのもの。今後とも、現場を持つ強みを活かして、局をまたぎ、あらゆる分野で効果的な政策を展開していく。

Q2.重点事業は、市民と行政のパートナーシップで取り組む必要があります。都民の都政への関心を高めるように、行政施策の実施結果を都民に示しながら、施策を推進すべきと考えます。所見を伺います。

A2.知事本局長答弁
重点事業は、昨年、いわゆるPDCAサイクルを強化するため、3か年の展開をアクションプランとして示し、毎年度、検証を経て改定することとした。平成19年度重点事業のうち、可能なものについて検証を行い、実績と評価を明らかにした。都としては、引き続き、全庁的な視点に立って進行管理を行うとともに、こうした仕組みを更に充実し、重点事業を着実に推進していく。

認定こども園について
Q3.就学前の子どもには、幼稚園と保育園の2つの施策体系がありますが、幼保一元化・幼保一体化の長い議論を経て、2003年、「地域のニーズに応じ、就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設の設置を検討する」という方向が示されました。この構想を具体化し、法制化されたものが、認定こども園です。
少子化問題、就労形態の多様化、待機児童への対策、幼稚園の定員割れ、子育て不安といった社会現象への対策として、都はすでに認証保育所を独自の補助制度で実施し、待機児を減らすことには一定の効果を挙げています。しかし、保育の質・保育料の適正化等については、十分な理解を得られていません。保育の場の充足だけでなく、子どもの最善の利益を優先し、子ども自身が育つ力を引き出すための教育・保育のあり方について根本的な議論が必要です。
都は、就学前の保育・教育を提供する認定こども園についてどのように考え、取り組もうとしているのか、所見を伺います。

A3.福祉保健局長答弁
認定こども園は、就学前の子どもに対する教育及び保育の一体的な提供や、地域の子育て支援の機能を担うもの。地域の多様な保育・教育ニーズに柔軟に対応するなどが期待される。

いじめと子どもの権利擁護について
Q4.いじめが原因と思われる子どもの自殺が相次ぎ、大きな社会問題となりました。
東京都教育委員会では今回の自殺予告に対して、緊急措置として24時間受付の専用電話を設置しましたが、多数の相談や情報が寄せられ、幸い、自殺にいたる事例が生じませんでした。その後、教育相談センターでの電話相談に移行しましたが、残念ながら時間も短く、フリーダイヤルではありません。
民間では1998年ごろからチャイルドラインなどの電話相談が始まり、全国に広がっています。悩みをもつ子どもに、多様な相談窓口は必要で、子ども自らが相談するには、無料が望ましいと考えます。
福祉保健局では、1998年から子どもの権利擁護専門相談事業を実施しています。小中学生をはじめとして、年間の相談件数もかなりの数で実績を上げているときいおり、このような機関を常設してきた都の姿勢は高く評価されるものであり、今後、電話回線や電話相談員をふやすなど、機能を強化し、総合的に子どもの権利を守るオンブズマンとして、その活動をもっとPRするべきであると考えます。
これまでの子どもの権利擁護専門相談事業についての成果と、今後の活動についての見解を伺います。

A4.福祉保健局長
子どもの権利擁護専門相談事業では、子どもや親からの悩みや訴えを、相談員がいわゆるフリーダイヤルで直接受ける。いじめや体罰などの深刻な相談に対しては、専門員が個別の支援を行う。相談件数は、平成10年度の事業開始以来、約1万2000件にのぼっており、その約八割は子ども本人からの相談。全ての相談のうち、専門員が実際に家庭や学校への訪問等を行い、問題解決にあたった困難ケースは、約300件。都では、毎年、都内の小学校高学年から中学生・高校生を対象に、事業を紹介したPRカードを配布。学校や関係機関へリーフレットを送付するなど、積極的な周知に努めている。

Q5.政府の教育再生会議の緊急提言では、「いじめを放置した教員は懲戒処分」「加害者側には登校停止や社会奉仕」などが上げられていますが、こんなものでいいのか、という印象です。子ども自身が解決する力をつけない限り、いじめによる自殺を防ぐことは難しいことです。イギリスなどでは中高生がピアカウンセリングを行い、いじめ防止に有効といわれています。同年代の若者が相談にのる立場に立つことで、他人の気持ちを理解し、共感する力がついていくと考えられます。
生活者ネットワークは子ども自身が身を守る方法を身につけたり、いやだという意思表示をするトレーニングのシステムを取り入れるよう提案してきましたが、大阪府教育委員会は来年度からいじめ防止対策として、暴力から身を守る力を引き出す教育プログラム「子どもエンパワメント支援指導」の導入を決めたということです。
いじめによる自殺などの痛ましい犠牲者をなくすためには、対症療法だけではなく、根本的ないじめ未然防止対策が必要です。都の取り組みを伺います。

A5.教育長答弁
いじめは、決して許されないことであるが、どの学校でも起こりうるものであるという前提に立ち、学校教育に携わるすべての関係者一人一人が改めてこの問題の重大性を認識し、日頃からいじめの兆候をいち早く把握し、迅速に対応していくことが重要である。11月8日から12日まで実施した「いじめ等問題対策室」の緊急電話相談では、子どもや保護者からの相談の他に、教職員の不適切な対応、家庭の教育力の向上の必要性等、様々な意見が寄せられた。今後、これまでの都教育委員会が蓄積してきたいじめ問題の解決の方策に加え、緊急相談の新たな相談内容等を整理、分析して、資料にまとめ、いじめの未然防止に向けて、教員研修だけではなく、保護者会等でも活用するよう働きかけていく。

エイズ対策について
Q6.先進国といわれている国々では、HIV感染者が減少しているにもかかわらず、日本では感染者が年々増加しています。特に10代後半から20代前半の若者の感染が拡大しています。昨年報告された感染者及び患者の報告数1199件の約35%(417件)が東京の件数です。早急な対応が求められ、東京都の役割は重要です。
しかし、エイズ対策にかかる都の予算はここ数年減少しています。これまで都は、ポスター、パンフレットなどの配布やインターネットによる情報提供などを行なっていますが、10代などの若い世代を対象とした感染予防の取り組みが求められます。
NPOなどの民間団体との協働で、繁華街でのイベントや街角相談、マスコミを利用したPRなどのキャンペーンが必要と考え、見解を伺います。

A6.福祉保健局長
エイズの感染拡大を防止するため、感染報告が増加している若い世代を対象とした普及啓発が重要である。そのため、10代・20代の若者がエイズに対する理解を深め合うピア・エデュケーションやエイズ予防月間を中心としたキャンペーンなどを実施している。今年度は、6月から8月まで、池袋に若者を対象とした普及啓発の拠点を設置し、NPOなどと協力して事業を行った。今後とも、拠点の充実を図るとともに、予防に関する情報発信を繁華街で実施するなど、若者を対象とした、一層効果的な普及に努めていく。

Q7.東京では23区の全保健所、南新宿検査・相談室、多摩地域では3保健所で、HIV感染の検査と相談に対応しており、検査件数、相談数も年々増えていています。病院での検査とは違い、匿名での無料検査のため多く利用されています。
しかし、匿名ゆえに、判定が陽性となった人へのフォローができず、感染ルートの判明や感染防止ができない恐れがあります。陽性者への告知の際には、二次感染を防ぐための対応、生活および健康管理の支援が必要です。見解を伺います。

A7.福祉保健局長答弁
HIV検査では、結果告知の際、医師と保健師がカウンセリングを実施している。感染が明らかになった方には、不安を和らげるよう、治療方法や二次感染の防止を含めた生活上の注意等、きめ細かく対応するとともに、医療機関への受診につなげるための支援や相談機関に関する情報提供をしている。今後とも、個々人の状況に応じた助言・指導を適切に行い、HIVの感染拡大防止と感染者の健康管理を支援していく。

Q8.都議会では、「行き過ぎた性教育」という名のもと、政治が教育現場に介入し、教育現場において必要な最低限の性教育を萎縮させてしまいました。若者のHIV感染者が増えているのは、正しい性の知識がないまま成長している子どもの現状を浮き彫りにしています。中学・高校での性教育が最も必要であり、エイズ対策の現場である福祉保健局との連携を深め、効果的なエイズ対策を進めるべきです。
教育庁では、性感染症・エイズ予防の一貫として、都立高校での新たな取り組みを実施していると聞いています。この実施状況と今後の福祉保健局との連携も含めた対策について伺い、生活者ネットワークの質問を終わります。

A8.教育長答弁
学校における性教育は、学習指導要領に基づき、発達段階に即して、性に関する基礎的な学習内容を正しく理解させ、適切な意思決定や行動選択ができるよう充実していくことが重要である。都教育委員会は、若年層のHIV感染者が増加している現状を踏まえ、福祉保健局の協力を得て「性教育の手引き」や「エイズ理解・予防に関するパンフレット」を作成・配布し、性教育・エイズ教育の充実を図ってきた。また、平成17年度から東京都医師会、東京産婦人科医会の協力のもと、希望する都立高校に産婦人科医を派遣しているところであるが、今後も引き続き、この事業を推進するとともに、今年度、新たに、保健所と都立高校との連絡会を地区別に開催するなど、地域保健機関との連携を強化した取り組みを進めていく。