2006年第1回定例会 一般質問

都議会生活者ネットワーク
山口文江

今後の都政運営について
Q1.知事は、施政方針表明の中で、平成18年度予算について「財政の健全性の回復に全力を注ぎ、その上で、今後の新たな都政の発展を目指すことを基本に据えた」と述べています。一方、予算の内容、つまり施策の面において、「直面する課題への対応はもちろんのこと、オリンピック開催に向けた取り組みを始め、将来に対する布石もしっかり打った」と述べています。
しかし、「将来への布石」とは何か、はっきりしません。中・長期的な視点で、知事がこの東京をどうしたいのかという基本ビジョンや、そのための政策の柱が明確に示されていないからです。単年度の予算だけで将来を展望するには限界があります。
来年度から、都は全国に先駆けて、公会計に複式簿記・発生主義を導入します。すべての職員に「将来を見通して都を経営するという視点を持たせる」とか「成果主義を徹底する」などが目的と謳われています。
しかし、職員に経営感覚を求めるなら、その前に全体の「長期経営方針」が示されていなくてはなりません。また、「成果主義」を採るなら、都全体の政策目標が必要です。
2000年以降、分権の進行、人口減少など社会背景は大きく変わり、都は、それが都財政に及ぼす影響等についての研究・指針などをまとめています。これらをどのように活かすかは重要です。
知事は、10年後、20年後を見据えた「長期計画」を策定して都民の前に示すべきと考え、所見を伺います。
A1.(知事本局長)
○ 都政を取り巻く社会経済状況は大きく変化している。
○ 社会経済が構造的に変化している現在、長期的な視点から時代の潮流を捉え、将来展望を持って政策を展望することが重要。加えて、急速に変化する外部環境にも的確、柔軟に対応する必要。
○ このため、東京の将来を見据え、政策課題を明確にした上で、取り組みの方向を示し、取り組み状況と効果を検証していく新たな枠組みとして、重要施策、及び平成18年度重点事業を策定。

都有地の有効活用について
Q2.2006年度(平成18年度)の一般会計予算案は、税収が伸び、5年ぶりに6兆円を超える規模になり、隠れ借金の圧縮と基金残高確保につとめ、ほっと一息ついた感があります。基金残高が底をついた頃、都有地が相次いで売り払われたことは、財源確保策としての効果の裏側に、様々な問題を残しました。今後の少子社会では、使われない学校施設や土地が多く見込まれます。
一方、今年1月に出された「みどりの新戦略ガイドライン」では、区部のみどり率を2000年に比べ、2015年に1割、2025年には2割増加を掲げており、目標達成に向けては相当の努力が必要です。
都有地は都民の貴重な財産として、はじめに売却ありきではなく、防災拠点やみどりの確保など、各局の事業目標達成のために、一歩踏み込んだ有効活用をするべきです。都有地活用の今後のあり方について見解を伺います。
A2.(財務局長)
○ 都有地の有効活用は、都有財産利活用推進会議を設置し、各局保有財産の現況調査、施設の効率的な統廃合、新たな施策への転用などを進めている。
○ 所管局で施設の役割を終えた財産は、各局と活用について協議しており、売却を優先しているものではない。
○ 今後とも、前兆的な財産情報の共有化や活用手法の多様化を進め、都民ニーズを踏まえた効率的活用を図る。

震災対策について
Q3.昨年7月、都内で震度5強を記録した地震では、ターミナル駅は鉄道の復旧を待つ145万人もの客であふれ、都市災害の脆さを露呈しました。都心では旧耐震基準のビルが多く、倒壊の危険性のある建築物群が存在し続けています。更に、耐震基準の偽装が発覚しました。
2006年(平成18年)2月、東京都防災会議地震部会は、国の想定より詳細なデータに基づき、首都直下地震による東京の被害想定の中間報告をまとめ、区市町村別の被害を明らかにしています。東京湾北部でM7.3の地震が起こった場合、死者約4700人、建物全壊約44万棟、帰宅困難者約392万人などの被害が生じると想定しています。そこで、今後の震災対策について、知事の所見を伺います。
A3.(知事答弁)
自助、共助、公助に基づく備えを講じていくことが重要。これまで、全庁的な取り組みを強化し、実践的な訓練を積み重ね、防災力を高めてきた。優先順位を付けた震災対策の推進などに活用できるよう、マグニチュード6.9も加え、実態に即したデータを用い、被害を想定。この想定をもとに、地域防災計画を見直す。

Q4.中間報告では、震度5強の場合には鉄道等ほとんどの交通機関が停止し、外出者が約1,144万人、そのうちの約392万人が帰宅困難者になると予測しています。
ターミナル駅や繁華街を抱える大都市東京の大きな問題として、自治体や事業者との連携は、広域行政を担う都の責任であり、早急に具体的な対策が必要です。2000年(平成12年)には、震災時における昼間都民対策推進モデル地区として有楽町・日比谷・銀座地区で帰宅困難者対応マニュアル策定のためのガイドラインが策定され、この地域では現在も活動が継続されており評価しています。上野や浅草、巣鴨など観光客が多く集まる繁華街など、他の地域においてもこの成果を対策に反映すべきであると考え、見解を伺います。
A4.(総務局長)
モデル事業を実施し、混乱防止対策の基本ルールや、業種別ガイドラインをまとめた。都心区では、一時収容施設の確保などの対策を、周辺区や市町村では、沿道支援として休息所の設置などの対策を進めている。モデル事業の成果を活用した取り組みが進むよう、区市町村に対し、適切に働きかけていく。

Q5.自治体の防災計画には、組織に属さない人への対策が含まれていません。震災時における帰宅困難者対策について、都の基本原則は「組織は組織で対応する」、即ち、災害時には事業者の責任において従業員や買い物客等への対応を図り、帰宅者には安全確保に留意して順次帰宅せるとなっており、一時宿泊所や避難所、食料、水の確保について、帰宅困難者に見合う具体的な計画がありません。組織に属さない人や、帰宅困難者のための一時宿泊所や避難所、食料、水の確保が必要であり、都の今後の対策について伺います。
A5.(総務局長答弁)
都内事業者に対し、事業所防災計画の中に、帰宅困難者への情報提供や保護支援などの対策を盛り込むよう指導。区市町村に対しても、一時収容施設の確保や食料などの備蓄を働きかけている。都も、食料の備蓄や、飲料水の確保、帰宅支援ステーションの設置を実施。今後も、事業者や区市町村と連携し、帰宅困難者対策に努める。

Q6.帰宅困難者のなかでも、特に女性や障がい者は実態としての施策が不足しています。自治体の防災計画には寝たきりの高齢者を含む要援護者が位置づけられています。女性や障がい者の社会参加も進み、当然、妊娠中の女性や乳幼児を連れた人、高齢者、障がい者が帰宅困難者にも含まれ、都としての広域的な対策が急がれます。2006年度(平成18年度)中に東京都地域防災計画の見直しをすることになっていますが、要援護者を含めて計画を改定すべきであると考え、見解を伺います。
A6.(総務局長答弁)
「共助」を基本とした、災害要援護者への対策が重要。モデル事業でまとめたガイドラインを踏まえ、事業者に対し、事業所防災計画に災害要援護者の保護を盛り込むよう指導。現行の地域防災計画でも、バス等の代替輸送手段を確保。今後の地域防災計画の見直しにあたっても、災害要援護者への対応を検討。

若者の就労支援について
Q7.2003年6月に、国は「若者自立・挑戦戦略会議」のまとめとして「若者自立・挑戦プラン」を発表しました。このプランの目標として「フリーター約200万人、若年失業者・無業者が約100万人増加している現状をふまえ、当面3年間で人材対策の強化を通じ、若者の働く意欲を喚起しつつ、すべてのやる気のある若年者の職業的自立を促進し、もって若年者などの増加傾向を転換させる」としています。各自治体でもこの流れを受け、若者の就業支援は重点施策となって様々な政策が展開されました。3年経過した今、国は「若者の自立・挑戦のためのアクションプラン」の強化・推進をめざし、アクションプランの改訂が行われています。
東京都においては、2005年12月に出された雇用・就業対策審議会の答申で、ニート、フリーターといった不安定な立場におかれる者の急増を指摘し、「若年者のこのような状態が続くことにより、今後、職業能力の形成が不十分なまま年を重ね、社会経済に影響を及ぼしかねない」と報告し、さらなる対策の必要性を指摘しています。
東京都では、2004年のしごとセンターの設置において、都独自の取り組みを展開してきましたが、さらに、事業を推進させるための最大限の工夫が求められます。
都の2006年(平成18年)度重点事業には、「アクションプラン」として3ヵ年の展開が示され、「若者の働く意欲や能力を引き出す就業支援」として平成20年度までの包括的な事業計画があがっています。本来、アクションプランとは、集中的計画的に取り組みを進め、達成する目標を具体的に定め、その実施時期を定めたものとされます。特に工夫が求められる若者の就労支援は、実効性の高い施策を展開するため、検証が欠かせません。
とらえにくい成果を効果的に検証するために、まずは、数値などによる目標を設定し、事業を着実に推進することが必要です。また、事業実施にあたっては、関係局と連携した取り組みも重要と考えます。併せて見解を伺います。
A7.(産業労働局長答弁)
都は、利用者の特性に応じて相談から就業までのきめ細かな支援を、ワンストップで行うため、しごとセンターの開設や、街角カウンセリングなど、独自の工夫を加えた若年者の就業支援策を展開。高校へのカウンセラー派遣、福祉分野の就職面接会等、関係局と連携し事業を実施してきたが、この2月、庁内に推進会議を設置したところであり、連携施策の拡大と着実な事業実施を図っていく。現在、国のプランの数値目標に基づき、都独自の取り組みも加え、評価・検証を行ったうえで、事業の充実を図っている。

Q8.しごとセンターでは、若者支援事業として、街角カウンセリングなど、実態に向かい合う施策を進めてきたことは評価するものです。東京には多くの若者が集まり、一方で事業者の数、種類の多さは他に類を見ません。さらなる施策の工夫として、事業者の意識改革や受け皿づくり、職業訓練やインターンシップのあり方、どのようなマッチングが望ましいかなど、当事者の若者のニーズを、的確に受けとめていく必要があります。例えば、就労やSOHO、起業に関する情報交換が若者同士でできる拠点づくりや、若者会議など、若者の本音が聞け、人と人を結び付けられる取組みを通じたボトムアップのしくみや若者自身が支援活動に関わる方策が必要と考えますが、見解を伺います。
A8.(産業労働局長答弁)
若年者の就業支援に際しては、当事者である若者の目線に立った事業実施が効果的であると認識。このため、しごとセンターでは、利用者のアンケートやカウンセリングを通じ、若年者の声を受けとめ、事業の改善や施策に役立ててきた。平成18年度には若者自身が活動主体となっているNPO等から企画・提案を募り、必要な経費を助成する「若者による若者支援プロジェクト」を実施。さらに、技術専門校の地域に根ざした活動や、区市町村との連携を通じ、様々な若者の意見や要望についても把握することにより、事業の充実を図っていく。

男女平等参画について
Q9.国の第二次男女共同参画基本計画が昨年末に発表されました。今後一層、女性に対する間接差別をなくし、男女平等を実質的に推進するため、国及び東京都には積極的な姿勢と取り組みが求められます。
女性の政策決定など指導的地位に女性が占める参画の割合を示す2005年度国連開発計画のジェンダーエンパワメント指数によると、日本は、世界80カ国中43位です。
今年1月に発表された内閣府の審議会委員等の女性比率についての全国調査では、東京都の審議会等の委員への女性の登用率は21.7%で、全国都道府県で最下位です。鳥取県の42.3%をトップに、女性登用率が上昇する中、東京都は、平成16年までに35%とする目標値を掲げながら、年々低下してきました。このような状況について、都の見解を伺います。
A9.(生活文化局長答弁)
審議会等の委員は、その設置目的に応じて女性も含めて、適任者を選任。女性委員の任用率が低い理由は、専門分野によっては、女性が少なく、委員を委嘱できる人材が限られている。団体推薦により委員を委嘱する際に、男性が推薦される場合が多い。「付属機関等設置要綱」においても、「女性委員の積極的な登用を図ること」としており、毎年、任用計画を達成していない審議会については、各局ヒアリングを実施し、任用促進を働きかけている。現状を踏まえ、さらなる取り組みが必要。

Q10.こうした状況を全庁体制で打開し、目標達成にむけ、登用計画の明確化や具体的な方策が急務です。達成に向け、どのような取り組みと進行管理を行うのか伺います。
A10.(生活文化局長答弁)
学識経験者の委員については、女性の登用に積極的に努める。団体代表の委員については、団体の長等の役職に限定せず登用に務める、など取り組む。本年度は、「審議会等女性委員名簿」を作成し、的確な情報提供を行うとともに、団体推薦の際に、女性委員選任の検討要請を行う。18年度からは、委員改選時の名簿の提出を義務付けるなど、進行管理に徹する。

Q11.女性人口が630万人を占める東京で、人材不足を理由に、審議会等の人材確保に工夫を惜しむべきではありません。多くの審議会委員の構成が学識経験者・議員・自治体代表などで占められ、一般の市民の参画が保障されていないことも課題のひとつです。一般市民の参画は、登用率の目標値を達成する具体策のひとつであり、また都民に有益な開かれた審議会を構成するためにも、公募など多様な市民参画をめざすべきであると考えますが、見解を伺います。
A11.(総務局長答弁)
審議会は、執行機関の付属機関の一つ。「付属機関等設置運営要綱の取扱」において、「付属機関の運営に当たっては、幅広く各方面の人の意見を聴くことが求められるものであり、可能な場合は、都民からの公募を積極的に行うよう努めること」と規定。今後も、この方針に沿って審議会の運営がなされるよう努めていく。

Q12.都における男女平等参画行動計画である「チャンス&サポート東京プラン」は平成14年から18年までの5ヵ年計画です。18年度は、19年度以降の計画策定に向けた年であり、新たな計画をつくるにために、現計画の課題別の検証が重要です。策定に向けた準備は、具体的にどのように行われるのか、伺います。
A12.「チャンス&サポート東京プラン」に基づき、雇用の分野:ポジティブアクション実践プログラムの作成と活用、子育て支援:認証保育所の推進、配偶者暴力対策:配偶者暴力相談支援センターの機能充実、などに取組んできた。毎年、事業予定及び実績を把握しており、19年度以降の計画改定に向けて、これらの取り組みや実績の検証に努める。

意見:男女平等参画条例をいち早く策定した東京ですが、推進状況は道半ばの状態です。全庁での推進体制の強化と、男女平等参画審議会の常設化をもって、今後、行動計画等の検証と進行管理が着実に行われなければならないことを強く要望します。