2005年第4回定例会 一般質問

第4回定例会一般質問
大西由紀子

1 パブリックコメント制度について
Q1. 行政手続きの透明化を諮り、市民のまちづくりへの参画を進める一環としてパブリックコメント制度を導入した東京都は、平成12年作成の「提案型広報マニュアル」に基づき、各局がそれぞれの施策を決定する段階で、パブリックコメント制度で意見を求めています。
「提案型広報マニュアル」に基づき、どのような取り組みを進めてきたか、各局の具体的な取り組みの例も示してお答えください。
A1.(生活文化局長答弁)
○ 都は、従来から開かれた都政への取り組みとして「提案型広報の実施」を掲げ、政策形成過程情報の積極的な提供に努めてきた。
平成12年に作成した「提案型広報マニュアル」は、各局が提案型広報に取り組むにあたっての参考として、広報・広聴手段の活用方法や具体的な取り組み事例などをまとめたものである。
○ 各局においては、計画や施策を策定する際に、中間段階の案を公表し、都民の意見を求める提案型広報の手法が定着してきている。
○ 最近の事例としては、「情報公開・個人情報保護審議会」の中間報告や、「次世代育成支援東京都行動計画」などについて、報道発表や「広報東京都」、ホームページへの掲載などにより、都民への情報提供と意見募集を行い、最終まとめに反映している。

Q2. 全国の都道府県の大半が、パブリックコメント制度を要綱や指針で位置づけているのに比べ、私たちが調べたところ、東京都には現在これを所管する部署がありません。受付期間はまちまちで、結果の公表や最終的な決定過程が不透明な場合もあり、市民参画の保障としては十分ではありません。
都議会では前期の行財政改革基本問題特別委員会の調査報告書に、住民自治の活性化の方法としてパブリック・インボルブメントやパブリックコメントの手法をより広範囲に活用することを明記しています。
国では2005年6月行政手続法の一部を改正し、政省令などの命令等を定める際に、広く一般の意見や情報を求める手続きを定めました。
「提案型広報マニュアル」策定から5年が過ぎた今、現状分析とともに、他自治体や国および都議会特別委員会の動きを踏まえ、次のステップにつなげていくべきです。東京都は今後パブリックコメントをどのように進めるのか伺います。
A2.(総務局長答弁)
○ 平成17年6月、パブリックコメントに関して、行政手続法の一部を改正する法律が交付された。
○ 施行日が示されないなど、改正内容の詳細は明らかになっていない。
○ 都においては、これまでも各局で事業の中間段階の公表などを実施。
○ 法改正を踏まえた意見募集手続きについては、今後検討すべき課題と認識。

2 まちづくりについて
Q3. 東京都は平成9年に景観条例を制定し、多くの自治体が景観条例をつくっているにもかかわらず、十分その効果をあげているとはいえません。特に都心部においては、「都市再生」の名のもとで、規制緩和による建物の高層化・巨大化が進み、景観がないがしろにされています。
先月、景観審議会の中間まとめが公表され、今後の景観施策のあり方が示されています。改めて知事に都市再生と景観に対する認識を伺います。
A3.(知事答弁)
○ 国際競争力を備えた東京を実現していくため、都市再生を推進する中で、良好な景観形成が不可欠。
○ 今日の東京は街並みの統一感がなく、都市全体の景観に対する配慮が欠如。
○ このため、都心部の機能更新などを捉えて、景観の視点を重視した都市づくりの推進が必要。
○ 今後とも実効性ある景観施策を推進し、美しく風格ある東京を実現。

Q4. 先日私は「手をつなごう!景観市民運動ネットワーク」の設立集会に出席しました。この会は、大規模開発やマンション建設の反対運動から始まった市民の活動が、景観や環境からまちづくりを考える市民運動として手をつなぎ大きな力となることを目指したものです。
こうした市民の関心の高まりを受け、昨年6月に景観法が制定され、今こそ、建築行政や都市計画制度と景観施策を連携させていくことが必要です。
よい景観は記念碑的な建物にのみ存在するのではなく、日常生活の中で慣れ親しんでいる景観を守ることも重要な景観保全です。地域住民の景観に対する合意を高め、地域の特性に合った景観づくりを進めていくために、地元の各自治体は責任を担うべきです。
景観法の景観行政団体は、区市町村が主体的になるべきと考えますが、都の見解を伺います。
A4.(都市整備局長答弁)
○ 景観法の景観行政団体は区市町村いずれか一方が景観行政団体となり、景観法に基づく施策を実施。
○ 景観には身近な地域から広域に及ぶものまでさまざまなものがある。都全体として良好な景観を形成していくため、都と区市町村は適切な役割分担が必要。
○ 都は景観施策を効果的に実施できるよう、区市町村と十分調整し、対応していく。

Q5. 法に裏打ちされて都の景観行政が推進することを期待する一方、違法行為によって住民生活が脅かされる状況が発生していることは大変遺憾です。
耐震データ偽装マンション問題は被害者救済とあわせて、違法行為を見逃さないための見直しが、あらゆる面で必要です。建築基準を満たさない違法建築がもっとあるのではないかという不信感が広がっています。それらに対し、都はどのように対処していくのか、また都民の不安に対する相談窓口の設置などが必要だと思うが、どのような所存か合わせて伺います。
A5.
○ 建築物の安全性確保のためには、建築確認制度の適正な運用と違反建築対策を強化し、建築規制の実効性を担保することが重要。
○ 都は、建築物安全安心実施計画を策定、警察・消防との連携強化など違反建築物の総合的対策を推進。
○ 区市と連携し、毎年の違反建築防止週間で、重点的な違反建築物の取り締まりを実施。
○ 今回の問題を真摯に受け止め、工事途中のパトロールの充実など違反建築対策に積極的に取り組み、建築物の安全性を確保。
○ 相談窓口の設置については、都、区市、建築関係団体等において、専門の窓口を設置、都民からの相談に当たっている。
○ 今後とも、都民が安心できるよう、適切に対応。

Q6. 委員会質疑で明らかになったように、都の建築確認行政は年々縮小されていますが、今必要なことは建築確認制度への信頼回復です。東京都における建築確認行政の体制の強化および専門人材の育成が求められていると考えますが、見解を伺います。
○ 建築確認と検査を適切に行うことは、建築物の安全確保の上で重要。
○ 都は、建築法規や構造の知識のある職員を適正に配置し、業務を遂行。
○ 今後とも、職員の計画的な育成を図り、確認等の業務を適正に執行、安全なまちづくりに努める。

3 障害者施策について
Q7. 今年10月成立の「障害者自立支援法」について、障がい者が自立して暮らせるまちづくり、という理念は評価します。しかし、来年4月施行は未確定要素が多すぎ、当事者および関係者の不安が高まっています。
障がい者の多くが利用する小規模作業所等は、都内に約400ヶ所もあり、約8000人の障がい者がさまざまな授産活動を行っています。その多くは法律に基づかない法定外事業で、親の会などの努力でここまで築き上げてきたものですが、障害者自立支援法では、「運営主体や施設基準等について規制緩和を行った上で、新たな事業を行う」とされたため、存続が危ぶまれています。
今後、小規模作業所についても、可能な限り新しいサービス体系に移行させ、法内施設として事業に取り組むことを促進する必要があります。都の見解を伺います。
A7.(福祉保健局長答弁)
○ 多くの障害者が利用している小規模作業所は、地域で障害者の福祉的就労を支える重要な役割を果たしているが、現在は法律に基づかない事業であるため、運営の安定性の確保が課題となっている。
○ このため、障害者自立支援法に対する国会での付帯決議においては、小規模作業所について、新たな施設体系への移行がスムーズに行えるよう、必要な措置を講ずることとされている。
○ 都としても、良質なサービスを提供する小規模作業所が法内の事業へスムーズに移行することは、重要と考えており、制度の実施に向けた国の動向を見極めながら、都として、適切に対処していく。

Q8. 「障害者雇用促進法」の一部が改正され、来年度から障がい者雇用率に精神障がい者も含まれることになります。精神障がい者については、適切な医療が継続的に行われる中で就労を考える必要があり、病状を踏まえた働き方への理解を深めるなど、生活全般にわたって多くの配慮が望まれます。今後は、当事者と地域生活をつなぐケアマネジメントが、非常に重要な位置を占めると考えます。都はどのように進めていくのか伺います。
A8.(福祉保健局長答弁)
○ 障害者自立支援法においては、障害者の状況やニーズに応じた適切なサービス利用を支援するため、ケアマネジメントが制度化された。
○ 継続的な医療を必要とする精神障害者の特性を踏まえた、適切な支援を行うためには、ケアマネジメントを担う人材を確保することが重要である。
○ このため、都においては、ケアマネジメント従事者養成研修を再編・強化し、より実践的な研修とすることにより、精神障害者の地域生活を支援する人材の養成確保を図っていく。

意見 障害者自立支援法の施行を契機に、障害者基本法がその目的とする「自立と社会参加」の支援を実効性あるものにするためには、社会に根強く残る「差別と偏見」を払拭することです。いまこそ、都に「障害者差別禁止条例」を策定するべきということをあらためて申し上げておきます。

4 食の安全について
Q9. 輸入が停止されていたアメリカ産牛肉について、食品安全委員会の答申を受け、国は今月12日に輸入再開を正式決定するという報道がありました。しかし食品安全委員会の委員ですら疑問を抱いている結論の出し方や、アメリカにおける牛の飼育方法を考えると、消費者の不安は少しも解消されないどころか増すばかりです。特に飼料の不透明さや、危険部位の除去の不徹底などは、日本の厳しい対策とはかけ離れたものです。さらに20ヶ月齢以下という輸入条件を、早くも30ヶ月齢に緩和したいというアメリカの本音も聞こえます。
東京都は「食品安全条例」をもつ自治体として、都民の食の安全確保にむけ、アメリカ産輸入牛肉に対して、責任ある対応をすべきだと考えます。都の見解を伺います。
A9.(福祉保健局長答弁)
○ 国の食品安全委員会は、米国産牛肉のBSEのリスクについて検討。
○ 「20ヶ月齢以下の牛であること」および「特定部位を適切に除去すること」等の前提が遵守されれば、国産牛肉とのリスクの差は非常に小さいと、答申する見込み。
○ 輸入再開については、国の判断。
○ 都は、国の動向を注視するとともに、今後とも輸入食品の安全確保に万全を期していく。

Q10. 都は国産牛の全頭検査を堅持すべきと考えますが、見解を伺います。
A10.
○ 厚生労働省令の改正により、本年8月1日から、20ヶ月齢以下の牛は、BSE検査の対象から除外。
○ 都は、都民や事業者の不安解消のため、国産牛の全頭検査を引き続き実施。

意見 「消費者の75%はアメリカ産牛肉を食べたくない」という世論調査の結果も出ております。輸入が再開された場合には、都は消費者の選ぶ権利を保障するために、現地における対策の監視状況などの情報公開を徹底させることと、現在は義務化されていない加工食品や外食産業などの食品においても、原産国表示の義務づけを国に求めていくべきです。