都議会生活者ネットワーク 山口文江
私は、都議会生活者ネットワークを代表して、本議会に提案された第164号議案「東京都組織条例の一部を改正する条例」、第183号議案及び第184号議案「再生手続開始申立事件において東京都が有する債権の取扱いについて」に反対、その他の知事提出議案に賛成する立場から討論を行います。
多くの新人議員を迎えて改選後はじめての本議会は、新しい議会の方向性を示す重要な場として注目されるものです。今回、都議会では、「都道府県議会制度の充実強化に関する意見書」を採択しましたが、地方分権を推進し、議会と首長の二元代表制を一層発展させ、議会制度を充実させることを国に求めるものです。
しかし、内なる議会改革に取り組む議会自らの姿勢は、知事発言および政務調査費をめぐっての態度の不透明さにいみじくも現れたと言わざるを得ません。
まずは、本会議の場における知事の不適切な一連の発言をただすことのできない議会運営について、申し上げます。
これまでも知事は、無責任、不適切な発言を再三繰り返してきました。ことに緊迫した国際状況の中で、「三国人発言」や今議会における国連憲章および国連を否定する発言は、いたずらに外交上の混乱を招くばかりでなく、議会を軽視する知事の姿勢そのものであり、「言葉狩り」などでは到底ありません。そして同時に、議会の場でのあるまじき暴言をただすことのできない議会運営こそが、大きな問題ではないかと申し上げておきます。
次に、政務調査費の交付に関する条例について、申し上げます。
生活者ネットワークは、一貫して領収書添付の義務づけを主張してきました。しかしながら、これまで幾度も議会で議論されながら条例改正にはいたりませんでした。今年の7月の都議会議員選挙前に有権者を対象とした新聞社の調査では「領収書を添付すべき」が87.5%に、また、候補者アンケートでは、当選した都議の6割を占める75人が「領収書添付をすべき」と回答しました。今議会には2つの条例改正案について議会運営委員会の中で議論され、ようやく「政務調査費の使途について透明化するべきである」ことについて全会派の意見が一致しました。今後は、具体的な方策及び検討体制等について、協議していくことが確認されましたが、情報公開は、何よりも有権者に求められていることを議会として真摯に受け止め、この条例改正が単なるパフォーマンスやアリバイづくりに終わらぬ、議会として納税者である都民に対する説明責任を果たすべきことを申し上げます。
さて、東京都の組織条例の一部を改正する条例についてですが、「青少年育成及び治安対策に係わる事業を一体的、総合的に推進するため、組織を整備する必要がある」とした青少年・治安対策本部設置の趣旨ですが、子どもの成長の一時期である青少年に特化して治安対策を進める意図とみることから、今回の組織条例の一部改正を危惧するものです。子ども、青少年は次世代を担うパートナーとして、その主体である子どもの権利に基づき、子どもを取り巻く閉塞感から、子ども自身の育つ力を応援する取り組みこそが、早急に求められています。例えば、性教育や実践的な職業教育など、自立をサポートする課題に対し、横断的に真摯に取り組むべきです。監視し、隔離するという考え方では、子どもの成長・発達の権利までも排除してしまいかねません。治安対策を優先し、保護、管理に走ることは、本質的な育成にはなり得ず、本提案に反対するものです。
次に、都の第三セクターである東京ファッションタウンとタイム24の破綻処理に対する議案について申し上げます。そもそもこの臨海開発の問題は、地下の巨大な共同溝に象徴的なように、一挙に巨額の投資をして、また一挙に「まちづくり」をすすめようとしたことです。バブル崩壊とともに、その矛盾は露呈しはじめ、ついに今回の2社の破綻として表面化しました。生活者ネットワークはこれまでも、臨海開発には、これ以上負担を広げるべきではないという観点から抜本的な見直しを再三求めてきました。17年度予算特別委員会でも、事業計画の見直しと同時に、民事再生処理を実施すべきであると指摘しました。
知事は「バブル期に都も国に載せられてつっ込んだ結果」と答弁されましたが、知事就任以降の都市政策も、都心部の規制緩和によって丸の内や汐留、秋葉原、六本木などに高層ビルを誘導し再開発を進めてしまったことで、臨海副都心計画の破綻にさらに追い討ちをかけました。
民事再生法を適用するため、都の所有する債権である土地賃貸料の未納金と遅延損害金の約35億円を、2社の経営を再建し、臨海副都心計画の安定的発展のためとして免除し、東京都の出資金49億円とともに、計84億円を放棄するというものです。民事再生法の適用に関してはテナントや周辺への影響を極力避けるという理由から今までの2社の役割が継続的に担保されますが、事実上貸しビル業と化した2社へなぜ公的支援が必要なのか、都民に説明する責任があります。同じような状況を二度と起こさないためにも、臨海副都心計画の見直しは急務であり、破綻処理のみの対処で終わらせてはならないことから、議案に反対せざるを得ません。
「オリンピック招致」が正式に発表され、10月早々に準備室が立ち上げられました。
知事は「前回の東京オリンピックから40年余りが経過し、この間に成熟した都市の姿を世界に示し、改めて日本の存在をアピールする絶好の機会である」と招致の理由を述べています。40年前の東京オリンピックの時には東海道新幹線・環状道路や首都高速・国立競技場や日本武道館の建設などが行われ、無計画な突貫工事の中で、東京は大きく変わってしまいました。今回もオリンピック開催を契機に、再び、緑の多い神宮の森の破壊、外環道促進、臨海副都心の開発誘導など、東京全体の都市再生に拍車がかけられることには大きな懸念を抱かざるを得ません。さらに招致運動やテロ対策などの安全確保にかかる経費も含め、国と都の巨額の税金が投入されることを考えると、この時期に東京でオリンピックを開催する、ということに対して、生活者ネットワークは慎重な議論を求めるものです。
最後に、食の安全の確保について、一言申し上げます。BSE確認以降、輸入停止となっていたアメリカ、カナダの牛肉の輸入再開が国の食品安全委員会専門調査会で大筋合意されたとの報道がありました。東京都は、食の安全確保として、国産牛の全頭検査を率先して行ってきた経過があります。今後も、未然防止の観点を最優先し、さらなる安全確保を行っていただくよう、強く求めます。
以上をもって、都議会生活者ネットワークの討論といたします。