2024年第1回定例会を終えて(談話)

2024年第1回定例会を終えて(談話)             
 2024年3月28日
都議会生活者ネットワーク  岩永 やす代

 本日第1回定例会が閉会しました。
●東京を生活優先の都市へ
 一般会計の予算規模は、都税収入増加を受けて3年連続で過去最大になりました。潤沢な税収を背景に、地震や豪雨への対策「強靭化プロジェクト」を名目に、道路や河川などハード整備を次々に進めようとしていますが、新たにムダな公共事業となるのではないかと懸念するものです。事前に市民への説明がまったくなされず、計画が発表されるやいなや、驚いた住民から反対意見が出され、かたくなな対応により事態は膠着化、住民の不信感が募ります。事業決定のプロセスに透明性も説明も足りないことが都政の失敗を招いています。真に都民に必要な施策ならばこそ、情報公開の徹底と住民合意を大切にしなければなりません。住民とともに地域の将来像を描き、必要性の議論から始めるという都の姿勢が求められています。

 国家戦略特区や金融・資産運用特区に手を挙げ国際金融都市をめざし、イノベーションやスタートアップなど、都が担う仕事なのかと疑問視される事業にも手を広げています。そこに都内各所で進む再開発が重なります。新しいオフィスビルに拠点を移したり、テレワークの定着でオフィス需要に陰りが出るなど不動産状況が変化するなか、マンションの価格は円安も手伝って投機目的による高騰に歯止めがきかずマネーゲームが続いています。貧富の格差は開く一方で、一般都民が住まいを購入できない事態は本末転倒です。

 東京は1400万人の人が暮らす都市です。生活都市として、だれもが暮らしやすくしていくことが重要です。高齢単身女性の貧困が報道され、ようやく注目されるようになりました。女性の非正規労働の多さや賃金格差がこの事態を招いており、制度設計のモデルとしてきた家族形態のひずみが明らかになったものです。高齢者や女性、若者、障がい者や外国人など多様な人の生活が続くように、長期的な視点に立って行政サービス提供のしくみをつくるべきです。地に足の着いた都政運営が求められます。

●グリーンビズの矛盾
 明治神宮外苑をはじめ日比谷公園、葛西臨海水族園などで樹木の大量伐採に加えて、無電柱化するために街路樹を伐採するなど、今わかっている計画だけでも数千本の樹木が伐採されます。都は「東京グリーンビズ」を掲げ、緑を「まもり・育て・活かす」と言っています。多くの樹木は、東京の街に根付き木陰や涼風の流れをつくり、緑の連続により生物多様性を守ってきました。東京に潤いをもたらしてきた大木を切り倒し、どのような緑環境を描こうとするのか。緑を創出すると言っていますが、都はさまざまな規制緩和を図り民間の超高層ビルや再開発を推し進めており、東京を吹く風はさらに熱さを増して絶望的な状況です。今ある貴重な緑を守るよう早急に方向転換すべきです。

●教育現場の改革
 教員不足が止まらず学校現場から悲鳴が上がっています。クラス運営にも影響するほどですが、都はエデュケーション・アシスタントやスクール・サポート・スタッフ、支援員など非正規の職種と人数を増やすだけで、その場しのぎの継ぎ接ぎにすぎず、抜本的な改革が必要です。いじめや不登校など、課題が山積する学校現場で、子どもに向き合う教員や専門職が、非正規として位置づけられていること自体が大きな問題です。
 東京都の教員に人気がないのは、校長権限を強化し学校が上意下達の場になっていることが原因です。今回スクールカウンセラーが任用更新されない問題が起こっていますが、学校で活動するスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの専門家も非正規であり、学校内でその知見を活かし職員同士の闊達な議論ができるようにはなっていません。その意味でも民主的な学校運営が必要です。教育現場を風通しよくし、抜本的に改革すべきです。

 ウクライナの戦争もパレスチナ・ガザ地区への攻撃も終わりが見えず、難民問題、物価高騰など世界情勢の不安定化は増すばかりです。こうしたなかで、日本政府は、またもや噴出した政治とカネの問題にも向き合わないいっぽうで、きちんとした説明もなく国会議論さえ無力化して、武器輸出を決め原発推進などの政策をごり押ししています。

 7月には都知事選挙があります。東京を多様な人々が安心して生活できるまちにするため、困難な時代にあっても、都議会生活者ネットワークは、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいきます。みなさまからのご提案をお待ちしております。