2024年度予算案発表にあたって(談話)

2024年度予算案発表にあたって(談話)

2024年1月26日
都議会生活者ネットワーク 岩永やす代

 本日、2024年度予算案が発表されました。
 一般会計の予算規模は、前年度に比べて5.1%増の8兆4530億円、3年連続過去最大になりました。都税収入も前年度に比べて3.0%増で6兆3865億円となっています。
 知事は、2024年度予算について、「変化する社会情勢の中、東京・日本の輝かしい未来を切り拓くため、産業や経済、社会の構造転換に挑み、一人ひとりが輝く明るい『未来の東京』を実現する予算」と位置づけ編成したとしています。国際競争力の強化や都市の強靭化を推進することを重点にしていますが、東京に生活する都民が暮らしやすい都市にすることを第一に考える必要があります。

 新年早々能登半島を襲った地震は、対策の困難さをあらためて認識することとなりました。都は、昨年12月出した強靭化プロジェクトアップグレードⅠに基づき、地震や豪雨への対策として道路や河川などハード整備を次々に進めようとしています。ところが、計画が発表されるやいなや、住民から反対意見が出され、膠着化し住民の不信感が募る事態も起こっています。事業決定のプロセスに透明性も説明も足りないことが大きな原因です。解決には、情報公開の徹底と住民合意が欠かせません。住民とともに地域の将来像を描き、必要性の議論から始めるという姿勢が必要です。

 まさに「地球沸騰化」となった2023年は、これまで以上の酷暑が続き、東京でも秋がありませんでした。農作物にも影響が出ているだけでなく、海でも海流の位置が変わり、海産物への影響も目に見えて大きくなっており、世界だけでなく、いよいよ日本の食料確保が脅かされる事態です。気候危機に対して国の無策が続くなかでも、都は自らをゼロカーボンシティへ着実に変貌させなければなりません。能登地震であらためてリスクが明らかになった原発からの脱却と脱炭素を進めるためにも、再エネ・省エネは重要な政策です。都有施設のZEB化はもちろんですが、既存建物の長寿命化や断熱など、ライフサイクル全体の環境負荷を減らし、ゼロエミッションに資することが必要です。
 また、緑保全も重要です。 都は、「東京グリーンビズ」を掲げ、緑を守り創出するとしていますが、神宮外苑をはじめ、都立公園、街路樹など、人々に親しまれている都心の貴重な緑が何千本も失われる事態を招いており、「開発」から発想の転換が求められます。

 学校の教員不足が引き続き深刻な問題になっています。教員配置の抜本的な改善は喫緊の課題です。
 少子化が進むなかで、子どもが増えている地域もあり、35人学級の導入に伴う教室不足は、一刻も早く解決しなければなりません。暑さ対策としての学校断熱の取り組みもあわせて学校の施設整備に都の支援が必要です。
 学校給食の無償化に向けて国に先駆けて都が支援を行うことに関心が集まっています。多摩地域では実施が難しい状況もあり、都の全額支援が求められています。大都市東京の食を支える視点からも、学校給食を通して地場産野菜を食べ支えて都市農業を応援し、地産地消の推進と、食の安全など質の向上を求めていきます。

 歌舞伎町「トー横」に集まる若者や悪質ホストクラブが問題になっています。行き場を失った若者が犯罪や巧妙な性搾取の罠に陥ることは、取り締まりだけで防ぐことはできず、解決の糸口さえ示せていません。若者たちに寄り添い信頼を得ながら支援することが重要であり、新年度設置予定の相談窓口は、実績ある民間団体との連携が求められます。

 戦争や円安の影響で、日常生活に欠かせない必需品の値上げが続き、市民生活を直撃しています。急激な物価高騰は、特に女性や若者の貧困をさらに深刻化させ、働き方改革や人手不足も言われながら、正規雇用には程遠く、とりわけ若年層に厳しい状況になっています。国会はまたもや「政治とカネ」の問題で揺れており、市民生活に重要な問題を解決すべき政治や議会がきちんと議論し機能することが必要です。
 混迷が続く世界のなかで、多くの若者が気候危機や人権侵害に対して声をあげ行動を始めていることは、唯一の希望であり、政治は、その声に応えていく責任があります。

 都議会生活者ネットワークは、困難な時代を切り開き、高齢者や障がい者、外国人など多様な市民が暮らす東京で、信頼を基盤にした寛容な社会をめざし、だれもが安心して暮らせる持続可能な都市を実現するため、生活者の視点でチェックしていきます。