2003年第3回定例会 代表質問

都議会生活者ネットワーク
山口文江

Q1,日本経済の低迷の中で、一向に将来展望のもてるビジョンが示せない政府の姿勢が、企業経営や雇用環境の悪化を招き、社会不安を増大させています。少子高齢の逆ピラミッドの人口構成時に必要な制度、新しい働き方や将来の社会保障制度のビジョンが示されなければならないと考えます。すなわち次世代を担う若者が将来についての夢を描けるような可能性や環境を作り出し、意欲ある人がチャレンジできる社会システムの構築が必要です。
知事は、「苗を開花させるために」都政の仕組みを根本から見直すとして、第二次財政再建推進プラン、16年度重点事業、都庁改革アクションプランを提示するとしています。財政再建プランや都庁改革アクションプランはあくまでも施策を実現させるためのツールであると考えます。財源不足だから「身の丈に合わせて」行こうという消極的な姿勢では改革は望めません。アドバルーン的な発想だけではなく、一つの提案が社会構造を変えていくような、息の長い政策を掲げることが重要と考えます。勿論重要施策の中でもすぐに実現できるものと中・長期の展望にたったものとがありますが、夢をもてる社会づくりの基礎となるような計画でなければなりません。社会状況の変化の中で、知事は選挙公約以外の都政のビジョンを示していません。こうしたビジョンを提示したうえで改革プランを示すべきではないでしょうか、見解を伺います。
A1,(知事本部長答弁)
昨年策定した重要施策は、従来のビジョンとは性格を変え、二つの狙いにより策定した。第一は、都政の取組の方向を戦略的に示すこと、第二に、課題の解決に向けて都庁全体で横断的・総合的に取り組むことである。現在のような社会的な変革の時代にあっては、こうした取組が必要かつ有効である。今年は、都庁全体で改革の目標と危機意識を共有し、一体的に改革に取り組むため、「都政の構造改革の視点と方向」を示した。今後、この「視点と方向」に基づき各プランを策定していく。

Q2,また、都は財政構造改革のために地方分権を進めるにあたって三位一体の改革を国へ強く求めています。しかし将来的には、都域内の分権の推進こそが財政構造改革の基本課題と考えます。このような中で、都の第二次地方分権推進計画は停滞し、明確な分権の方向が見えない状況にあります。都においても都と市区町村との役割分担を明確にし、市区町村への分権改革が進められなければならないはずです。知事に見解を伺います。
A2.(知事答弁)
明治以来の中央集権システムを変革し、地方主権を確立するためには、権限委譲を行なうとともに、国が税財源を地方に移譲を地方に移譲し、地方自治体の行財政基盤を強化すべき。区市町村は住民生活への責任を果たすため、自主的に権限委譲に取り組むことが必要。都としては、これまでも国に財源移譲を求めてきたが、今後とも、国や区市町村への働きかけを行い、都議会の協力も得ながら、分権改革の推進に取り組んでいく。

Q3,次に食品の安全についてですが、5月に「食品安全基本法」が成立し、都においては「食品安全基本条例」を制定することになっています。都は基本的考え方の中で条例の特徴は「未然防止」を盛り込んだこととしています。全国への影響が大きな大消費地東京としては、国を上回るものを期待するところですが、食品安全基本条例の基本的考え方を検討する中で、消費生活条例にも明記されている消費者の権利についてはどのように検討されたのでしょうか。
A3,(健康局長答弁)
食品の安全確保は、都民が健康で豊かな生活を営む上で欠かせないもの。このため、「基本的な考え方」の理念として、都民・事業者・行政がそれぞれの役割を踏まえ、一体となった取組を進めることにより、食品の安全を確保することを揚げている。この理念を実践することが、条例の目的である現在及び将来の都民の健康を守ることにつながり、消費者を含む都民の権利は尊重されると考える。

Q4,また、これまで私たちが提案してきた未然防止原則に基づき、「化学物質子どもガイドライン室内空気編」が作成されています。成長期にある子どもたちの健康への影響を未然に防止していくためには、食における子ども基準についても食品安全条例に反映されることを期待するものです。健康局が子どもと大人という個体差に焦点を当てて実施した、14年度の食事由来の化学物質曝露量推計調査結果によると、内分泌攪乱物質やダイオキシンの暴露量は、1日体重1㎏あたり幼児は大人の約2倍にもなっています。また、その他の調査結果によるとダイオキシン類の総曝露量の9割以上が食事から摂取されるというデータが公表されています。この結果からも、食事由来の「子どもガイドライン」の作成がぜひとも必要と考えますが、見解を伺います。
A4,(健康局長答弁)
次世代を担う子どもたちを、化学物質によるリスクから守ることは重要な課題。昨年度は幼児食に引き続き、今年度は離乳食について化学物質の曝露量推計調査を実施中。これらの調査結果をもとに専門家の意見を踏まえ、化学物質の子どもガイドラインを策定。

Q5,次に、遺伝子組み換えについてですが、日本に輸入されるアメリカ大豆の約75%が遺伝子組み換え食品となって、日々私たちの食卓に押し寄せてきています。また、遺伝子組み換え大豆の種子とノウハウを独占しているモンサント社は、日本国内でも除草剤耐性大豆を本格的に栽培させようとしています。
全国最大の大豆産地である北海道などでの試験栽培は、モンサント社と農水省が一体となってすすめています。もしも日本国内において本格的栽培として組み換え大豆の作付けを許せば、昆虫や風などによる花粉飛散が起こり、非組換え大豆畑でも交雑がすすみ、遺伝子汚染は際限なく広がっていくことになります。
こうした危惧の増大の中で、滋賀県では、行政、市民、地元JAの合意のもとで植え付けられようとした組み換え大豆は土壌に鋤込まれるとともに、知事は「次世代に責任を持つために、県内での栽培は控えてもらう」として、本年度中に組み換え作物栽培規制への独自指針を策定し、条例化をも検討していくとのことです。
この間の国の見解は、有機農産物と組み換え作物を併存可能なものとして、有機農産物の価値を低くするものであり、農家の努力を無にしようとしています。作物の安全の是非はともかく、国の怠慢によって交雑防止の定めがない中で、自治体が創意工夫することは評価すべきであり、未然防止の観点から、都にあっても同様の態度を積極的に検討すべきと考えますが、知事に見解を伺います。
A5,(知事答弁)
この安全性の確認は、難しい問題であり、徹底した分析研究が必要。国の安全性評価は、隔離した環境の中でのみ行なわれており、通常の農地での生態系への影響評価が不十分。こうした中で、国は、一定の農作物の栽培を承認しているが、通常の農地での生態系への影響評価が不十分。こうした中で、国は、一定の農作物の栽培を承認しているが、都民の多くは依然として遺伝子組み換え農作物に不安。国に対し、生態系などの周辺環境への安全性評価の調査研究を充実するよう要請。また、生産農家に対しては、国の動向を注視しながら指導。

Q6,次に、東京都では、「安全で安心な農産物」を供給する「有機農業」を推進するためモデル生産団地を指定し有機農産物を含め、農薬や化学肥料をできるだけ使わない農産物の生産・振興を行なってきました。さらに、環境に調和した農業生産の方法や食の安全性を求める都民の要望に応え、都内産のこれら農産物について、生産過程を確認し認証する「東京都特別栽培農産物認証制度」を進めてきています。これは、安全で安心かつ環境に調和した農業生産の方法を推進するための制度として、大変評価できるものであると考えます。今後も、都民の食の安全確保に向け特別栽培農産物の生産を一層推進していくべきであると考えますが、見解を伺います。
A6,(産業労働局長答弁)
都は、平成6年に栽培指針に定め、たい肥等による土づくりを基本とし、農薬と化学肥料を通常の5割以上減らした農産物を特別栽培農産物として振興してきた。また、平成9年度からは、有機農業の拡大と消費者の信頼を高めるため、この基準に合致した農産物を確証する「東京都特別栽培農産物認証制度」を設けている。今日、「食の安全・安心」に多くの都民の関心が集まる中、都としても、この制度の対象品目の拡大などを通じて、特別栽培農産物などの生産振興に一層努めていく。

Q7,次に、TokyoXについて伺います。東京のブランド豚であるTokyoXについては、平成8年に、東京都の養豚農家が高品質豚生産出荷組合を設立し、飼育方法、飼料等を指定し、販売ルートの統一などを行って取り組んでいます。飼養方法では、飼育する環境や与える飼料などを具体的に取り決めた飼育マニュアルを提示するなど、東京都の消費者に対して畜産物の安全性の確保対策を行っています。
飼料については、安全安心に向け、豚の健康状態を良好に保ち、病気への感染を防ぐよう努め、肥育期間には抗菌性物質を含まない指定飼料を使用しているとのことです。また、指定飼料の中のトウモロコシと大豆は非遺伝子組み換え作物で、収穫後の農薬を使用しないポストハーベストフリーのものとされています。このような取り組みは、大変評価できるものであり、今後も東京X豚生産における指定飼料についての変更はないものと考えますが、いかがでしょうか。
A7,(産業労働局長答弁)
トウキョウXは、平成9年の販売当初のものから、飼料を指定し、一頭ごとに生産者や飼育方法を公開して、飼料の安全性やトレーサビリティなど、食の安全対策を、いち早く取り入れ、ブランド化してきたものである。こうした安全安心対策は、多くの都民から支持を得ており、生産組合では、トウキョウXの生産における指定飼料について、今後とも変更することはないとの方針を示している。都においても、こうした生産者の取り組みを、引き続き支援していく。

Q8,次に、障がい者の就労支援についてですが、「障害者の雇用の促進等に関する法律」では「障害者雇用率制度」が設けられ、常用労働者数が56 人以上の民間の事業主は、1.8 %以上の障害者を雇用しなければならないことになっています。そして、重度障害者に限り、短時間労働者も雇用率に1人としてカウントできることになっており、また、重度障害者については、1人を2人に相当するものとしてカウントされています。しかし、全国的には法定雇用率を下回っている現状です。
昨年10月、東京都雇用・就業対策審議会は、知事から「東京を再生させる雇用就業施策について」諮問を受け、本年7月に答申が出されました。その中でも、厳しい立場におかれる障がい者の雇用の実態を踏まえ、障がい者の能力を最大限に引き出していくため、事業主の理解促進、障がい者の職業能力の向上を図るとしています。
また、東京都庁舎等を活用したオフィス体験実習を実施し、知的障害者の事務系職域の拡大に向けた普及啓発を図るとされています。既に、大阪府高槻市や枚方市では体験実習のみならず雇用にまで結びつける先進的な取組を行なっています。都においては、まずは、障害者の安定した就業体制に向け、障害者の実習の場の確保が必要と考えますが、見解を伺います。
A8,(産業労働局長答弁)
実際の職場で訓練をすることは就職を促進する上で効果的な方法と考えている。このため、中・重度の身体障害者および軽度の知的障害者を対象とした東京障害者職業能力開発校では、訓練生の職場実習を企業の協力を得て実施しており、本年1月には都庁事務室内でオフィス体験実習を試行した。また、重度の身体障害者及び軽・中度の知的障害者を対象としている東京都心身障害者職能開発センターでも、同様に職場体験実習を行なっている。今後とも、実習の場の確保に向け、取り組んでいく。

Q9,非自発的失業者が増加し、完全失業率がかつて経験したことのない高水準で推移しているといった厳しい雇用情勢は、障害者雇用の領域にも大きな影響を与え、会社倒産や事業縮小等に伴って解雇された障害者は、急増しています。厚生労働省が今年4月からトライアル雇用事業を始めました。民間企業等にトライアル期間として三ヶ月間就業し、その後に雇用契約に移行するシステムですが、障がいをもつ人にとっては有効であることからも、今後も継続していく必要があると考えますが、見解を伺います。
A9,この制度は、障害者自身の職場適応を図るとともに、事業主の障害者雇用に対する理解を深め、雇用促進に有効と考えており、今後とも継続されるものと認識している。

Q10,今後、この答申に基づき施策を実施するにあたり、局間連携は不可欠です。特に障がい者の雇用・就業促進には、就労環境や生活環境全般にわたりトータルなサポート体制が必要です。さまざまな障がいに応じるためには、当事者の意見を広く聴きながら福祉・保健・医療、教育など局を越えた連携をさらに進めることが求められていると考えますが、見解を伺います。
A10,(産業労働局長答弁)
都では、障害者の雇用の促進および安定、地域での就業支援など、障害者就業対策を円滑に進めるため、重度障害者就業対策連絡会を設置し、関係部局や国等と連携を図っている。今後とも、この連絡会を効果的に活用し、雇用促進に努めていく。

Q11,次に、本年7月「次世代育成支援対策推進法」と子育て支援の強化を図るため「児童福祉法の一部を改正する法律」が成立しました。次世代育成支援推進法は、第二次エンゼルプランに続く少子化対策プラスワンをもって男性を含めた働き方の見直しを求めたものの出生率の向上が展望できない中、総合支援として期待されるものであり、少子化問題を次世代問題として位置づけた点には共感できるものです。次世代を担う子ども問題として、日本をどのような国にしていくのか、私たちがすむ自治体がどのような地域になるのかという視点で少子化問題を捉え、その具体的な施策を計画して推進していくということは重要です。市区町村及び都道府県、さらに事業主に行動計画策定が義務付けられています。
計画策定段階の住民の意見反映とプロセス等情報公開は行政の責務として実施されることと思います。次世代育成支援推進法には、地方公共団体が地域の協議会を設置できるとしています。そこで、住民の意見を反映させるに当たり、現役の子育て世代やこれからの子育てを担う若い世代の意見を取り入れるべきであると考えます。都としては、計画づくりを行なうに当たり、こうした世代の参加を含めた協議会を設けるべきであると考えますが、見解を伺います。
A11,(福祉局長答弁)
行動計画の策定にあたっては、子どもと家庭を取り巻く環境についての現状分析と子育て支援ニーズの把握、現在子育て中の方の声や、これまで子どもを育ててきた方の意見などをくみ上げていくことが、重要と考えている。こうした観点から、若い世代から子育て経験豊かな世代まで、幅広く意見を聴取する場を設けることを検討していく。

Q12,また、行動計画策定においては、策定に関する基本的な視点の第一とし、子育て支援サービス等により影響を受けるのは多くは子ども自身であることから、次世代育成支援対策の推進においては、子どもの幸せを第一に考え、子どもの最善の利益が最大限に尊重されるよう配慮することが求められています。子育て支援策については、子育て家庭の多様化を踏まえ、個々の子どもや家庭のニーズに即したきめ細やかな対応や年齢に応じた施策が必要です。しかし、これまでのエンゼルプランを踏襲したような調査項目の提示が中心であること、住民としての18歳未満の子どもの参加保障が無いという問題点があります。都としては、策定にあたって18歳未満の子どもの意見反映をすべきと考えますが見解を伺います。
A12,(福祉局長答弁)
計画策定にあたっては、ご提案の世代を含め、幅広くパブリックコメントを求めていくことを検討していく。

Q13,次に外環道計画について伺います。
7月15日、国土交通省と東京都は、大深度の地下式トンネル構造を対象に環境アセスメントの方法書の公告・縦覧を発表しました。マスコミ先行型の発表は今回が初めてではありませんが、あまりにも唐突な発表であり、あたかも外環が事業化されたかのような印象を与えたことは遺憾に思います。こうした国と都のやり方に対して、7月24日のPI外環沿線協議会では一部の協議員が抗議書を提出し、抗議の退席をされ、以来、PI協議会はストップしています。この様な事態を引き起こした責任を、進行役である東京都はどのようにとらえているのでしょうか。
国は、この外環PIを新たな道路計画の合意形成のモデルと考えているようですが、PIプロセスのチェック・進行管理のためには、中立の立場で論点を整理しながら議論を前にすすめる進行役・ファシリテーターの役割が重要であり、協議を開始するにあたり、第三者機関を設置しなかったことは、今後の市民参加方式のあり方に課題を残したといえるでしょう。
今回の環境影響評価に関して、本定例会の所信表明で知事は、「事業着手に向けて一歩踏み出した」と述べていますが、PI外環沿線協議会で合意され、広報等で周知されている内容との整合性について、あらためて確認を求めます。
A13,(都市計画局長答弁)
「検討の熟度を高めるためには、より詳細な環境へのデータを示すべき」との意見も頂いている。計画内容の固まらない早い段階で、制度として確立している環境影響評価法の仕組みを活用し手続きに着手した。事業着手に向けて一歩踏み出したと認識している。今後も幅広く意見を伺いながら、早期の実現を目指す。

Q14,次に、都立の新しい大学の構想についてです。内容は評価できる部分もありますが、都立新大学設立準備委員会が突然廃止されるなど、その構想がまとめられる経過は不透明で、現場に混乱を来しています。さらに、学生や教職員の声が十分に反映されたとは言い難く、都民の税で設置運営される大学であるにもかかわらず、都民の声を活かす機会は設けられませんでした。都民参加の政策作りが主流でなければならいにもかかわらず、非常に残念なことです。平成13年11月に策定された「大学改革大綱」は今回の構想ではどのように見直されたのか、伺います。
A14,(大学本部長答弁)
新しい大学の使命を「大都市における人間社会の理想像の追求」と明確化し、具体的な教育研究の目標として、「都市環境の向上」「ダイナミックな産業構造をもつ高度な知的社会の構築」「活力ある長寿社会の実現」の3つを設定し、合わせて学部構成も再編した。
キャンパスについては、工業等制限法の廃止等、大学改革大綱策定後の状況変化を受け、大都市東京全体をキャンパスとする考え方に立ち、都心方面へのキャンパス配置を検討することとした。

Q15,また、これから構想を具体化するにあたって、学生、教職員、都民の声を反映する機会を作る必要があると思いますが、見解を伺います。
A15,(大学本部長答弁)
工業制限法の廃止など社会状況の変化を受け、外部の専門家を中心に検討を行った。その過程では、学生を受け入れる立場の企業経営者や学生等の意見を聞くなどして、取りまとめを行った。今後の検討は、授業科目や入試方法などのより専門的な内容となるので、引き続き専門家や大学の教員を中心に検討。現在、新しい大学の名称について都民から募集しており、必要に応じて都民の声を聞いていく。