2009年1月16日
都議会生活者ネットワーク
幹事長 大西由紀子
本日発表された平成21年度予算原案は、前年度に比べ3.8%減の6兆5.980億円で、5年ぶりの減となっています。好景気に支えられて財政再建にひと息ついたのもつかの間、金融破たんにより世界を駆け巡る経済不況と法人事業税の暫定措置によって、都税収入は前年度比13.6%減の4兆7.577億円と、単年度過去最大の下げ幅を示し、3年ぶりに5兆円を下回りました。
予算規模が減に転ずる中で、「都民へ『安心』をもたらし、『希望』を指し示す予算」として、緊急雇用対策、中小企業支援、周産期医療・新型インフルエンザ対策や温暖化対策、耐震化などの都市づくり、インフラ整備など、都が取り組むべき課題への対応に財源を重点的に振り向けたとしていますが、歳出の内訳では、投資的経費が4.8%増と5年連続増加しており、従来型の景気対策に依存しているように見えます。骨格幹線道路整備などの都市基盤整備は、交通量予測の減少、若者に顕著な車志向減少が指し示すように、脱クルマ社会への転換をはかり、経済最優先の国際都市から、環境・生活重視の都市づくりを目指すべき時を迎えています。
税収回復の見通しが立たない中で、都財政が抱える重大な不安要素として、金融庁から改善命令が出された新銀行東京、築地市場の移転問題、オリンピック招致などがあり、今後の都政運営はさらにきびしいものになるといわざるを得ません。
緊急雇用対策においては、学校・社会福祉施設等の耐震化など、災害への備えと雇用確保を結びつけた新たな取組は一定の評価をしますが、小手先の景気対策に終わらせないためには、一次産業や社会的企業などを基調とする産業構造の大変革を前提に、働き続けることのできる技術を身につけるなど、人材として育成する施策が重要です。また、ワーク・ライフ・バランス、ワークシェアなど、働き方を見直すことで新たな雇用体制の構築にのぞむ契機にしなければなりません。さらに、職とともに住居を失うといった現象はもってのほかであり、若者や低所得者への民間家賃補助などを創設し、住まいの確保をセーフティネットのひとつと位置づけて東京から発信すべきだと考えます。
わが国のように資源の乏しい国では、「人こそ資源」です。これまでのスピード重視・効率重視の人間の尊厳を無視した働き手ではなく、働くことに喜びと希望の持てる人間を育てる教育には投資を惜しんではなりません。
この国特有の「お互いさま」の精神で分ちあうという、連帯感のもてる生活都市東京へとチェンジできる具体的な提案こそが求められていると考えるものです。
生活者ネットワークは、以上の視点を踏まえ、平成21年度予算原案を精査し、復活要望や予算審議を通して見極め、市民の提案が生かされるよう、活動を展開していきます。