2017年第1回東京都議会定例会 一般質問

2017年第1回東京都議会定例会 一般質問

2017年3月2日

山内 れい子

 

  • エネルギーの地産地消について

パリ協定が発効し締約国会議も開催されたが、日本政府の取り組みは、動きが鈍い。温暖化対策は喫緊の課題であり、再生可能エネルギーをもっと増やし、東京でもエネルギーの地産地消を推進する必要がある。都は早くから温暖化対策に取り組み、省エネやエネルギーをつくり出す創エネについてさまざまな事業を実施している。市民の動きも活発で、都内でも発電所づくりを進めている。福島原発事故後、固定価格買い取り制度FITができたため、市民がお金を集め、太陽光発電を設置・運営する市民共同発電所が各地に生まれている。行政や民間事業者、そして市民が再エネをつくり出し、省エネもあわせて原発にたよらないエネルギーシフトをめざすことが重要と考える。

知事は、温暖化対策やエネルギー問題に積極的に取り組んでいるが、再生可能エネルギーの推進について、知事の方針を伺う。・・・・・・・・・・・・・・・Q1

A1:低炭素社会をめざす上で、再エネ活用は、重要。実行プランで、再エネ電力利用割合を2020年度15%程度とする目標を策定。これまで、住宅等への太陽光発電の導入促進や、事業者向け自家消費型再エネ設備補助等を実施。キャップ&トレード制度で低炭素電力選択のしくみを導入し、再エネ供給拡大を促進。来年度は、バス停へのソーラーパネルの設置を通じ、再エネを身近に感じる機会を増やす。需給両面からの取り組みで、再エネの普及拡大、スマートエネルギー都市の実現を図る。

新年度予算には、島しょでの電気自動車のモデル事業が盛り込まれた。島しょならではの活用があると思う。この「島しょ地域における電気自動車普及モデル事業」のねらいについて伺う。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q2

A2:電気自動車は、自然環境への負荷が小さく、かつ、ランニングコストが安いなどの特徴がある。特に、燃料価格が高い島しょ地域において、普及によるメリットは大きい。このため、都は、本事業により、電気事業者普及のモデルケースを構築するとともに、再生可能エネルギーの活用など、島しょ地域の特性を活かしつつ、環境への負荷も軽減し、自然豊かな島しょの魅力向上にもつなげる。

電気自動車は蓄電池としても使えるため、エネルギーの自給率を上げるという点でも期待される。再エネを増やし、FIT以外でも利用拡大を進めることができると思う。

島しょ地域は、八丈島の地熱発電など再エネの普及拡大をめざしているが、島しょにおける再生可能エネルギーの導入拡大に向けた取り組みについて伺う。・・・・・・Q3

A3:島しょ地域は、太陽光や風力、海洋エネルギーなど、多様な再生可能エネルギーのポテンシャルを有している。都はこれまで、八丈島の地熱発電の利用拡大や、新島の実証事業の取り組みを支援。一方、島しょ地域は電力系統の規模が小さく、多量の再生可能エネルギーの導入には課題。こうした課題も踏まえながら、今後とも、各島の地域特性に応じた取り組みを支援。

  • やさしい日本語について

2015年第2回定例会の一般質問で、「やさしい日本語」を取り上げ、情報弱者になりがちな外国人などが情報を得るためのツールとして使うよう提案した。「やさしい日本語」とは、小学校3年生程度の表現を使い、普通の日本語よりも簡単で、外国人もわかりやすい日本語のことである。緊急時には、災害情報を多言語に翻訳している時間はない。例えば、「避難」は「逃げる」、「余震」は「後で来る地震」、「給水車」は「水を配る車」と表す。来日1年の外国人を対象とした実験では、9割が内容を正しく理解できたという。

都でも、昨年7月にオリンピック・パラリンピック大会に向けた多言語対応セミナーで、「やさしい日本語」についての講演があった。この間、「やさしい日本語」への理解と取り組みが広がり、多くの自治体で防災情報などを「やさしい日本語」で提供している。

都が作成している「防災ポケットガイド」などのパンフレットを「やさしい日本語」で作成するなど、東京に滞在する外国人に対し、防災・減災に関わる情報をよりわかりやすく着実に提供し、災害時の適切な行動や、事前の災害対策に取り組むことが重要と考えるが、見解を伺う。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q4

A4(総務局長):外国人自らが事前の備えに取り組み、災害時に適切に行動するためには、防災情報の多言語化はもとより、よりわかりやすい日本語での情報提供が重要。都は、防災ブック「東京防災」や「防災ポケットガイド」の英語版・中国語版・韓国語版を作成するなど、多言語による普及啓発を推進。東京都国際交流委員会が「やさしい日本語」により作成した、緊急災害時の対応方法等の紹介を行っており、防災ホームページや防災ツイッターも活用して広く周知。こうした取り組みを通じ、外国人に対し、より伝わりやすく効果的に、防災情報を提供。

NHKは、ニュース・ウェブ・イージーで、「やさしい日本語」によるニュースを配信しています。都の防災ホームページには「キッズ向け防災」があり、子どもが理解しやすい言葉づかいになっています。防災だけでなく、都庁総合ホームページからも「やさしい日本語」のページにたどり着きやすく、外国人などにもわかるように情報提供することを提案しますが、見解を伺います。・・Q5

A5(生活文化局長):都庁総合ホームページは、4か国語(日・英・中・韓)で情報提供。これら4か国語を理解できない在住外国人も存在。東京都国際交流委員会が運営するホームページでは、「やさしい日本語」による情報提供を実施。今後、都庁総合ホームページの言語選択メニューに「やさしい日本語」を追加し、こうしたページへのアクセスを容易に。

 

  • 暮らしの場における看取り支援について

2015年度都が行った「高齢者施策に関する都民意識調査」によれば、最期のときをせめて家庭的な雰囲気で迎えたいと希望している人は、4割おりますが、約7割の方が病院で亡くなっています。最期まで自分らしく暮らし続けるためには、在宅療養に関するしくみについて理解するとともに、日頃から人生の最期について考え、また、家族と話し合っておくことが必要ではないかと考えます。

そのためには、都は、都民の看取りに対する理解促進のために、普及啓発を行う必要がありますが、どのように取り組みを進めてきているのか、所見を伺います。・・Q6

A6(福祉保健局長):誰もが住み慣れた地域でその人らしく暮らし、希望に沿った最期を迎えられるようにするためには、都民一人ひとりが看取りについて日ごろから考えておくことが重要。都は、人生の最期の過ごし方を考え、家族などと話し合うことの重要性や、在宅療養の取り組み等を盛り込んだリーフレットを作成し、来週から都民に配布。また、看取りについて考える機会となるよう、看取りを経験したご家族等による都民向け講習会を開催。今後とも、区市町村等と連携しながら、看取りに関する都民の視界促進を図っていく。

昨年の9月、都議会生活者ネットワークは、宮崎県にあるホームホスピス「かあさんの家」を視察するとともに、お話を伺ってきました。ここは、古い民家を利用して、施設でもない自宅でもない「もうひとつの居場所」として、医療機関やさまざまな職種の専門家や地域の人たちが支えています。

都内においても、家庭的な雰囲気の中で、高齢者が安心して暮らせる住まいを住み慣れた地域で根付かせていくことが重要です。しかし、こうした施設の運営主体は、規模が零細で経営基盤や人員体制がぜい弱な中、より良いサービス提供に向けて、身を切りながら日夜努力していると聞いています。

暮らしの場における看取りに対応する小規模施設の支援などについて、都は補助対象とすべき小規模施設の要件などの課題を整理した上で、事業を進めていくと聞いていますが、これまでの進捗状況と今後の取り組みについて伺います。・・Q7

A7(福祉保健局長):都は、昨年6月から、医療・介護関係者などからなる検討会で、暮らしの場における看取りの支援について議論。地域に開かれた運営により、家庭的な雰囲気の中で質の高いケアが提供されるよう、地域のボランティアを受け入れること、定員は9人以下とすること、24時間対応可能な在宅医等との連携を確保することなど、補助事業の要件を設定。昨年12月には、施設整備費や運営費の補助事業を開始しており、来年度は、運営費補助の事業規模を拡大。今月、地域で医療・介護に従事する専門職を対象に看取りに関する基礎的な内容の研修を実施する予定であり、来年度はカリキュラムに事例検討を加えるなど、より実践的な内容で実施。

 

  • 農福連携について

障がい者が農業に従事することは、心身のリハビリ効果や生きがいが高まると言われ、受け入れ側にとっても、多様な労働力が確保できるメリットが挙げられています。

国は、厚生労働省と農林水産省が農業分野での障がい者就労を進めようと、農業と福祉の連携「農福連携」の取り組みが実施されています。福祉施設が直接農園を経営する場合や、福祉団体が担い手不足の農場の作業を請け負う、また農業者が研修を受け入れるなど、さまざまな方法が模索されています。東京の市街化区域内農地では、これまで実施が困難と言われていましたが、新年度予算案で提案されている「東京の将来に向けた農地活用事業」をきっかけにして、障がい者が農作業に従事できるようになることを期待しています。

新しい事業では、農地を買い取り、モデル農園として活用するということですが、福祉との連携ではどのようなことを想定しているか伺います。・・Q8

A8(産業労働局長):近年、高齢者や障がい者の農作業への参加が増加しており、都内の農家でも、高齢者のボランティアや精神障がい者の方々が農作業に従事。農業と福祉との連携は、高齢者等の社会参加の促進や、心身の健康の回復に加えて、農家にとっても農作業の補助など、双方にメリットがあることから、今後、一層の拡大が期待。都が来年開始する「東京の将来に向けた農地活用事業」においては、福祉との連携についても十分に考慮し、高齢者や障がい者をはじめ、多くの都民が農作業を体験できるモデル農園を設置。

 

  • 障がい者の就労支援について

障がい者差別解消法や雇用促進法改正によって、民間企業で障がい者が働く環境への合理的配慮が義務付けられました。例えば、聴覚障がい者への手話通訳や視覚障がい者に点字・音声でのコミュニケーションなどのサポートをすることで、その人が持っている能力を発揮できるようになります。こうした取り組みを企業の「投資」と考え、積極的に雇用を進めていく会社も実際にあります。都としても、積極的に企業の状況を把握し合理的配慮を促すような施策が必要であると考えます。民間企業の職場で障がい者がともに働くために、都が実施している企業への支援について伺います。・・Q9

A9(産業労働局長):都はこれまで、昨年施行された改正障害者雇用促進法で定める合理的配慮の普及啓発に向け、国と連携してセミナーを実施。また、障がい者の方が職場に定着し、能力を発揮できるよう、今年度から、障がい者とともに働く社員の方等を、職場内障がい者サポーターとして養成する事業や、障がい者の安定雇用や処遇改善を行う事業主に対する奨励金事業を開始。障がい者が職場でいきいきと活躍できるよう企業における職場環境の整備を後押し。

また、都では、ようやく点字による職員の採用試験も始まりました。今後さまざまな障がい者がともに働くことになります。都の職場における合理的配慮はどのように進んだのか伺います。・・Q10

A10(総務局長):昨年4月の改正法の施行を受け、都においても、従来にも増して、合理的配慮を行うことが必要。職員研修や対応事例集の周知により、職場で働くすべての職員の理解を深化。各所属の管理職を窓口とした相談体制を整備。定期的に職員の意向把握、読み上げソフトの導入や手話通訳による支援など、対応を充実。今後とも、障がいのある職員がこれまで以上に、安心して働ける職場環境を確保。

生活者ネットワークは、インクルーシブな社会の実現に向けて、かねてから、「社会的事業所」の創設を提案しています。社会的事業所は、障がい者をはじめ、就労が困難な人たちを30%以上含み、社会的目的を持った非営利の社会的企業です。日本では、一般就労と福祉的就労の中間的な場として、滋賀県や三重県などに単独の支援制度があります。公的な補助を受けながら、障がいのある人もない人も対等で一緒に働いています。作り出す製品は品質がよく、チーズやワインなど、グレードの高さで知られている人気の事業所もあります。

こうした社会的企業に向けた取り組みを支援し、ソーシャルファームを実現することを期待していますが、知事の見解を伺います。・・Q11

A11(知事):ソーシャルファームは、ヨーロッパで1970年頃に生まれたもので、現在では、1万人を超える団体が活動。ソーシャルファームは、障がい者やシングルマザーなど、労働市場で不利な立場にある人に働く場を提供することを目的とした社会的企業であり、一般企業と同じマーケットでビジネスを行い、企業的手法で経営。こうしたソーシャルファームの取り組みをこの東京にも広げ、障がい者が、社会の担い手としての自信やプライドを持てる社会を作っていきたい。このため、まず、来年度予算案には、福祉施設と企業のCSR活動とのマッチングを促進する事業を盛り込んだ。この事業は、福祉施設の運営に企業のノウハウを活用することや、企業が障がい者の視点で商品開発を行うなどさまざまな連携を進めることが目的。また、ソーシャルファームの考えに立って、障がい者雇用に取り組む企業を表彰する事業も創設。今後、ソーシャルファームの取り組みを一層支援し、障がい者が、それぞれの能力や適性に応じて働く場を提供していきたい。

 

子どもの安全は社会全体で守ることが重要です。まず、

  • 子どもの交通事故対策について伺います。

警視庁の2016年の小学生の交通人身事故発生状況によると、歩行中の交通事故の死傷者は小学1年生が際立って多く、「急な飛び出し」「通学時間帯」「自宅から1キロ圏内]などの特徴があります。都は、教育委員会や警視庁と連携し、通学路の安全対策や啓発活動により、交通事故は減少傾向となっていますが、小学1年生が最も多い傾向は変わりません。

交通心理学の専門家は、「小学1年生くらいまでは興味のあるものに集中してしまい、大人にとって思いがけない動きをする傾向がある。危険を認知する力もまだ乏しい。子どもの特性をドライバーがしっかり理解できるように、教習所などで教えることが重要だ」と指摘しています。運転手に子どもの行動の特性を学んでもらうため、免許の取得時や更新時にドライブシミュレターなどを使った講習を検討すべきと考えますが、見解を伺います。・・Q12

A12(警視総監):現在、普通免許等の運転免許を取得する場合には、自動車教習所の教習課程において、運転シミュレーターを活用するなどして「子どもの飛び出し」等の子どもの行動の特性を踏まえた教習を実施している。また、運転免許更新時の講習においては、DVDを活用するなどして、実際の交通事故事例を基に、子どもの行動の特性を踏まえた講習を実施している。更新時講習への運転シミュレーターの導入については、講習時間等の問題もあり、現時点では実施困難だが、引き続き、子どもの交通事故を1件でも減らすべく各種対策を講じていく。

また、歩道を歩いている子どもたちが、歩道が狭いためにふらっと車道に出てしまったり、ひとりが走り出すとつられて走り出したりすることがあります。自転車でも、先頭を走る保護者が信号を無視して渡ったために子どもが戸惑っている様子をよく見かけます。子どもの行動特性を知り、大人こそが交通ルールを守ることが重要です。

そこで、子ども自身が、どんな行動が道路上において危険か学んでいくために、入学シーズンを中心に、親子で自宅周辺や通学路の危険を確認できるよう、保護者及び学校関係者等に対する交通情報発信に積極的に取り組むべきと考えますが、所見を伺います。・・Q13

A13(警視総監):2016年中における小学生の歩行中の交通事故死傷者数を見ると、学年別では小学1年生の被害が最も多く、全体の約3割を占めている。警視庁では、こうした特徴を踏まえ、新入学の時期を中心に、模擬交差点等を用いた交通安全教育を実施している。また、保護者に対しても、保護者会等を通じて、家庭での交通安全教育についてもお願いしている。学校に対しては、都教育委員会等を通じて、子どもの交通事故の発生状況や特徴、交通事故防止のため注意すべきポイントなどについて、情報提供を行っている。今後も、都をはじめとする関係機関・団体と連携を図り、保護者や学校に対するタイムリーな情報発信等を通じて、子どもの交通事故防止対策に努めていく。

 

次に

  • 子どもに安全な製品づくりについてです。

子どもに安全な製品づくり等に関する指針となる国際文書にISO/IECガイド50があります。この「ガイド50」が、昨年末、日本国内基準のJIS(日本工業規格)にも採用されました。子どもの特性や成長に合わせた、大人とは別の安全対策であり、メーカーだけではなく消費者にも参考になる内容となっています。子どもの事故は、親の責任あるいは子ども自身の不注意とみなされることがありますが、科学的に分析し対策を講ずれば予防が可能であり、社会全体で情報共有すべきとしています。

都は、東京都商品等安全対策協議会において、使い捨てライターやひも付き子ども服のデザイン、ブラインドのひも、抱っこひもなどによる危害・危険防止に取り組み、具体的な安全対策につなげてきました。

先日、東京都商品等安全対策協議会報告が出され、子どもに対する歯ブラシの安全対策の提言がありましたが、この提言に至った経緯、また、どのような注意喚起を行うのか伺います。・・Q14

A14(生活文化局長):歯ブラシの事故による子どもの受信事例が多発し、入院もあり。都は、商品等安全対策協議会に検討を依頼し、提言を受け、規格の改定や歯ブラシの改良等を国等に要望。消費者向けには、リーフレットを作成。イベントや健診等の機会を活用して周知。

都がこれまで提言してきた商品の注意喚起を、例えば、小池知事提案の「メリハリをつけた予算」のような小冊子にして妊婦健診や乳幼児健診の際に配布したり、データ化したりして、子どもの安全の情報がすぐにわかるようにするべきと考えますが、知事の見解を伺います。・・Q15

A15(知事):子どもたちの生命・身体を守ることは、都の重要な責務。日常生活における子どもの安全対策は、行政、事業者、消費者が一体となって取り組むことが必要。消費者に対しては、事故の未然防止のための情報提供をきめ細かに実施。今後は、子どもの事故防止に関する情報を取りまとめ、効果的に提供。