2013年第3回都議会定例会一般質問
2013年9月26日
小松久子
1、今後の都政運営について
東京は、「安心・安全・安定」を強調してついにオリンピック開催を手に入れた。しかし、福島原発について「状況は完全に制御されている」という安倍首相の発言はどう見ても無理がある。その後、東京電力も、猪瀬知事も「今は必ずしも制御されていない」と修正発言をしているが、「復興五輪」を掲げ、それまでに被災地を復興させることを内外に約束したからには、都としても放射能対策や復興支援への責任を国だけに押し付けるわけにはいかない。
オリンピック開催決定で、老朽化したインフラや建築物の更新需要が一気に加速することは確実で、人手や資材不足の問題はすでに発生しており、被災地の復興の遅れが懸念される。オリンピック開催に合わせた様々な施設やインフラ整備が、将来世代に過大な負担とならないよう、環境・省エネ・障がい者や高齢者にやさしいまちづくりを実現するチャンスととらえ、限られた財源の中で、優先課題を明確にし、不要不急の事業にまで着手しないことが重要である。「復興五輪」を掲げた東京の知事として、改めてこれからの都政運営について決意を伺う。・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q1
A1(知事)
生活者ネットワークはオリンピックに反対しているのか、賛成しているのか、どっちなのか。注文をつけるだけではしょうがないではないか。招致のためにみんながどれだけ汗を流してきたのかそういうことの前提がなくて注文を付けるだけではおかしい。共産党だってIOC総会の決定を尊重すると言っている。それが公党というものだ、ネットも公党であればちゃんとそういってから質問してほしい。
安倍総理はIOC総会で、福島第一原発の汚染水対策について、政府として責任を持って取り組むという本気の覚悟を示された。帰国後さっそく福島第一原発の現場にも赴かれた。470億円の国費を新たに投入することになっているが、この問題は政府と東電の責任でしっかり対応すべきである。
インフラ整備については、大会開催及びその先において、必要な事業とそうではない便乗組とは峻別するのは当然である。必要なインフラを整備しながら、既存のインフラの効果を最大限発揮させて、東京のインフラを組み立て直すつもりだ。
パラリンピック開催都市にふさわしく、電線地中化を進め、駅のエレベーターを整備するなど、東京をユニバーサルデザインのまちに改良していく。来年度開通予定の中央環状品川線をはじめ、三環状道路を整備して、交通の流れを変えることで、首都高1号羽田線のような老朽化した高速道路を維持更新しやすい環境を整えていく。
横田基地の軍民共用化も、増大する首都圏の航空需要に対応するために、今ある資源を最大限使うという意味である。被災地の復興についても引き続き徹底して支援していく。
人手不足の話も出たが都は退職した東京の職員や民間の技術者を任期付で採用し、被災地に派遣している。高齢化、人手不足、被災地支援、こうした課題を個々ではなく、構造として捉えればそこには新しい答えがある。団塊世代の意欲ある高齢者、熟練の技術者が被災地の復興に貢献することは、その方々の新しい生き甲斐にもなるのではないかと思う。
これまで述べてきた考えも盛り込みながら、少子高齢化社会、これからの人口減少社会を見据えた新たな長期ビジョンも年内を目途に策定する。
被災地に聖火ランナーが走る、宮城でサッカーの試合もやる、スポーツの力で明日への希望をつくりながら、日本の空を、我々の心をさらに明るく日本晴れにしていきたい。
生活者ネットワークの皆さんも2020年大会に向けて頑張ろう。
2、八ッ場ダムと治水対策について
近年「ゲリラ豪雨」が多くなっており、今年も都内で浸水被害が発生した。東京で起こっている浸水被害は、遠くの山に降った雨が中流域・下流域であふれて起こすのではなく、都内の狭いエリアで短時間に大量の雨が降り、河川や下水道の流化能力を超えるため、起こっているのが特徴である。実際に、東京の利根川水系の河川である江戸川と綾瀬川および中川は、ここ何十年もあふれたことはない。こうした現実を考えると、八ッ場ダムやスーパー堤防は、今必要な治水対策とは思えない。優先すべきは豪雨による洪水対策であると考えるが、見解を伺う。・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q2
A2(都市整備局長)
人口や都市機能が集積する東京で、水害から都民の生命と財産を守るためには、局所的集中豪雨などによる都市型水害対策と、利根川のような広域的な河川の洪水対策とを併せて進めることが重要である。
このため都では、都市型水害への対応として、豪雨対策基本方針を策定し、中小河川や下水道の整備、雨水貯留施設の設置等の対策を総合的に進めている。
一方、利根川水系において、江東デルタなどゼロメートル地帯を含む東部低地帯の治水安全度を高めるためには、八ッ場ダムやスーパー堤防等の整備は極めて重要である。
今後とも、これらの取組を積極的に進めることにより、東京の安全・安心を確保していく。
3、子宮頸がんワクチンについて
今年4月から、小学6年生から高校1年生までの女子を対象にHPVワクチン、いわゆる子宮頸がんワクチンが法定接種化された。しかしそれ以前の、ワクチン接種緊急促進事業による接種で深刻な副反応被害が全国で起きていることから、6月14日に開かれた厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会は、「国民に適切な情報提供ができるまでの間」との限定つきで積極的勧奨の中止を決めた。
今年3月、杉並区で副反応被害が明るみに出たことを発端に設立された被害者連絡会には、「頭をガンガン殴られるような、スプーンで目の奥をえぐられるような痛み、まっすぐ歩けない、立てない、自分でコントロールできない不随意運動、失神を繰り返す、生理が止まる、記憶障害、計算障害、時計や漢字も読めない、書けない、細かい作業ができない、視力障害、光がまぶしい、などなど・・。 毎日のこともあれば、突然出現することもあり、痛みが身体中移動し、日により時間により変わる」と、症状を訴える声が、全国から700件も寄せられている。
さらに、症状が接種直後に起きるとは限らないため、本人も医者も、ワクチン接種の因果関係の可能性に思い至らないケースが非常に多い。
文科省が行った昨年度の全国の中学・高校における、ワクチン接種に関連した欠席などの状況調査では、全国で171人の該当者が確認され、そのうち約4割は症状の改善が見られないことが報告されている。しかしこの調査は「学校が把握している範囲」であり、実態を正確にとらえきれていない。
都としても、緊急促進事業で接種を受けた全員に調査をかけ、被害の実態把握をすることを強く要望する。
また、接種後の体の痛みなどを訴える多くの被害者に、適切な医療を提供することも必要である。このような少女たちを救済するため、都として、国に対し、このワクチン接種による副反応についての詳細な検証と国民や医師への情報提供を行うとともに、被害者たちへの支援を行う体制を整えるよう求めていくべきと考えるが、見解を伺う。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q3
A3(福祉保健局長)
現在、国は、HPVワクチンの接種後に長時間続く痛みに関し、その病態や、ワクチンおよび注射との関係の分析とともに、専門医療を行える拠点病院等で、適切な医療の提供を行うための調査研究を実施。
国は、この調査結果等を踏まえ、今後、接種を積極的に進めることを再開するかどうか改めて判断。
都は、国に対し、副反応に関する国民及び関係者への情報提供を行うとともに、痛みを訴える患者への専門医療の提供など、国民が安心して予防接種を受けられる体制を整備するよう提案要求。
4、消費者教育推進計画について
8月に消費者教育推進計画が策定され、平成25年度には、若者や高齢者の被害防止、子どもの安全など、ライフステージごとのきめ細かい取組が計画されていることは評価するが、24年度に実施された消費者教育に関する実施状況調査では、小・中・高のいずれの学校でも、年間1~2時間の授業しかなく、とても十分とは言えない。課題として「他の優先課題があり、取組めない」が最も多く、「活用できる教材」「教員のスキルアップ」の必要性も挙げられている。子どものころから、金銭管理や食品表示・情報化への対応などの基本的な消費者教育こそ、もっと力を入れるべきである。東京都教育庁はこの推進計画を踏まえ、どのように取り組んでいくのか、伺う。・・・・・・Q4
A4(教育長)
変化の激しい社会にあって、自立した生活を営む消費者として、子どもたちが主体的に生きていくためには、発達段階に応じた実践的な消費者教育を行うことが重要である。
このため、各学校では学習指導要領に基づき、小・中学校の社会科や技術・家庭科、高等学校の公民化や家庭科の授業で、の授業で実身近な消費生活を題材に、経済活動の意義の理解や、生活に必要な品物やサービスの適切な選択、購入および活用についての学習活動などを行っている。
今後も、東京都教育委員会は、東京都消費者教育推進計画を踏まえ、区市町村教育委員会や関係機関と連携し、消費生活総合センターが作成した教材や、外部講師を活用した優れた実践事例の紹介などの取組を通して、学校における消費者教育を進めていく
学校における消費者教育を充実するためには、多忙な教員に替わって、消費者教育を行う仕組みが必要。都は、消費生活アドバイザーや消費生活コンサルタントなど、各種団体が認定した資格を持つ「東京都消費者啓発員(コンシューマー・エイド)」を講師として学校に派遣している。より多くの学校に派遣するなど、学校における消費者教育への支援を充実すべきと考えるが、見解を伺う。・・・・・・・・・・・・・・・Q5
A5(生活文化局長)
東京都消費生活総合センターでは、東京都や私学団体と連携しながら、教員を対象として、消費者教育の実践に役立つ講座の開催や実践事例に関する情報提供、教材および指導用資料の作成・提供等を行っている。
また、消費生活相談に携わった経験者などを、研修により養成した上で、「東京都消費者啓発員(コンシューマー・エイド)」として学校に派遣して授業を行うなど、学校現場への支援積極的に進めている。
今後とも、より多くの学校で消費者教育が実施されるよう、これらの取組の周知を図っていく。
5、障がい者施策について
これまで、高齢者、障がい者、子どもという枠組みの壁に阻まれて、ひとつの施設を複合的に使うことができなかったが、今回の条例改正で、高齢者施設に障がいのある子どもが通うことができるようになる。生活者ネットワークは、かねてから地域で「ともに過ごす」場づくりを提案し、高齢者と障がいのある子どもが一緒に過ごす富山での先駆的な取組を高く評価してきた。今回、制度の壁に風穴が開けられたことの意義は、非常に大きいと歓迎している。
放課後デイサービスの施設は増えているものの、ニーズは多く、地域の小規模多機能施設に通うことで解決できるケースも考えられ、今後このしくみが活用されることを期待している。しかし、高齢者と障がい児という枠を越えた制度改正の情報は、縦割り行政の中で必要なところに届かない懸念がある。
都として、積極的に情報を提供し、実現するよう自治体とともに進めていくべきだが、見解を伺う。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q6
A6(福祉保健局長)
今回の条例改正は、国の省令改正に伴うものであり、地域において児童発達支援、放課後等デイサービスが提供されておらず、サービスを利用することが困難な障がい児に対して、一定の要件を満たした指定小規模多機能居宅支援事業所がサービスを提供できる、とするものである。
都内では、児童発達支援は152か所、放課後等デイサービスは240か所でサービスを提供しており、障がい児の受け入れを予定している小規模多機能型居宅介護事業所はない。
条例改正の内容については区市町村へ情報提供を行うとともに、区市町村から事業実施に関する相談等があった場合は適切に対応していく。
今年4月から障害者優先調達推進法が施行され、都でも法に基づく調達方針を策定した。方針では、障がい者就労施設等からの調達を推進するため、施設が提供する物品や役務の情報を提供することや、施設の受注機会増大に向け、例えば分離分割発注を行うなど、発注方法や履行期限、発注量を考慮すること等が示されている。都の各局は、この方針に沿って、施設が受注しやすいよう配慮しながら、発注拡大に取り組んでいく必要がある。
また、法は、施設が連携、共同して物品等の供給の円滑化に努める、いわゆる「共同受注」にも言及しており、小規模な施設がグループで共同受注することで、受注拡大をめざすことも重要である。
そこで、障害者就労施設等への発注を検討する庁内各局や、地域における施設の共同受注体制構築の取り組みを、どのように支援していくのか伺う。・・・・・・Q7
A7(福祉保健局長)
都は本年7月に調達方針を策定し、説明会を通じて庁内各局に、個々の施設が供給できる物品や役務の内容、受注実績等について情報提供を行うとともに、発注方法や発注量、履行期間なども考慮して、物品等の調達を積極的に進めるよう依頼を行っている。
また、障がい者就労施設等の受注拡大を図るため、地域の施設のネットワークを構築し、て、受注先開拓や共同受注に取り組む区市町村を、包括補助により支援している。
今後も、関係局や区市町村と連携しながら、こうした取組を一層進め、施設の受注機会拡大を図っていく。
実際の受注にあたっては、小規模な団体や共同受注に対応する契約方法の周知を進める必要があるが、取り組み状況について伺う。・・・・・・・・・・・・・・Q8
A8(財務局長)
本年7月に策定した調達方針では、地方自治法施行令に定める随意契約を積極的に活用するとともに、都からの発注にあたっては、障がい者就労施設等の受注能力に配慮しつつ、可能な限り分離分割発注に努めること、履行期間及び発注量についても考慮すること、性能、規格等必要な事項について十分な説明に努めることなどを規定した。
この方針に基づいて、庁内各局が障害者就労施設等から円滑に物品等を調達することができるよう、契約関連の庁内会議等を通じて周知を図るとともに、8月には各局の契約実務担当者を集めての説明会を実施し、法及び調達方針の周知並びに受注可能な団体に関する情報提供など、障がい者施設等からの円滑な調達に向けて取り組んでいる。
以上