足立新田高校・足立東高校(エンカレッジスクール)訪問

新井美沙子

 東京都では様々な都立高校改革がすすめられています。9月11日、都議会超党派の女性議員8人で足立新田高校と足立東高校を訪問しました。ともに中途退学者が多いといわれていましたが、校長初め先生方の努力と地域の協力で改革されてきた学校として注目されています。

足立新田高校

平成6年から3年間定員割れが続き、中途退学者も50%前後という状況でしたが、平成10年から校長の強いリーダーシップで、「特色ある学校」「地域に開かれた学校」を目指し、14年度には退学率3.6%と素晴らしい成果をあげています。

☆ 特色ある学校づくり

魅力あるカリキュラム :普通科目以外に「スポーツ健康系」「福祉教養系」「情報ビジネス系」の3つの科目群から1つを選択する選択科目制を導入。
創意工夫の授業 :中途退学の多い1年次に、生徒が関心を持って楽しく学習できるよう、実践的で体験的な学習形態にした「総合現代」「総合人間科学」を設置。チームティーチングによる授業を実施。
多様な選抜方法の導入 :分割募集の制度を導入。学力だけでなく、面接や運動能力テスト、パーソナルプレゼーションテストを採用した。H16年からは文化・スポーツ特別推薦(相撲・陸上 都立で唯一相撲部を持ち、校庭に土俵が作ってある)を実施予定。
選べる制服 :5種類のブレザー、スカート、スラックスから選び、組み合わせて着用する制服を採用。
心を癒す校内美化活動 :校長自らペンキ塗り、清掃に取り組み、校内美化委員会を活性化した。

☆ 地域に開かれた学校づくり

中学生体験入学・学校紹介 :学校紹介VTRを政策し、地域の中学を訪問。年間10回を超える体験入学を実施。
メディア対応 :メディアに学校情報を提供し、授業撮影も含めて公開。学校の閉鎖性に風穴を開けた。
学校運営連絡会の設置 :H11年度から試行で実施。地域の声を聞くことで教職員の意識改革に繋がった。
市民講師の任用 :スポーツ系では地元のゴルフ場でプロの指導を受け、情報系・福祉系も市民講師を任用し、専門的知識・技能の習得を通して意欲を高めている。
インターンシップ推進校の取り組み :地元のゴルフ場、保育園、高齢者介護施設などへの派遣で就業体験を兼ねた学習を行う。
学校間の連携と交流 :専門学校を中心に近隣の学校での単位の一部履修などで学校間の連携・交流を行う。
主な改革点は以上ですが、当日生徒達が男女を問わず、私たちに「こんにちは~!」と明るく気持ちよく挨拶をしてくれたのが印象的でした。
名物校長の努力で改革が進んだこともあり、この路線を継承するためにも共に改革に取り組んだ教頭先生が校長となって、退学率0%目指しているそうです。

足立東高校(エンカレッジスクール)

新田高校が改善されてきたため、H13年度の中途退学率が24%と一番高い学校になってしまいました。とても荒れた高校で、以前は地域から「廃校にして欲しい」という請願が出たぐらいだと言います。しかし、改善されてきたため、地域が一丸となって、良い高校にしようと協力してくれるようになった、ということです。

☆ 主な取り組み

30分授業で集中して学び、午後は体験学習
習熟度別・少人数の「わかる授業」
毎週1回のキャリアガイダンスで「働く」ことの考えを深めていく
自分を見つめ将来を考えるカリキュラム
体験学習Ⅰ:文化的・体育的体験学習として地域の市民講師により、和太鼓、お花、お茶、園芸、軽音楽、スポーツなどを学習
体験学習Ⅱ:ボランティア、就業体験、資格取得の学習など、校外に出ての学習。地域の事業者を先生達が回って行き先を見つける。自動車整備専門学校、スーパー、美容院、福祉施設、などでの体験学習や英語・漢字の検定などに取り組む
1クラス2人担任制
「やる気」評価の入学選抜学力検査はなく、面接や小論文、実技検査などで受験生のやる気と熱意を評価して選考する。パーソナルプレゼンテーションも導入。

☆ 課題

エンカレッジスクールの指定が1学年だけ
予算がつかなければ1学年2担任制や習熟度別授業ができなくなり、努力が水の泡となる。引き続きの予算が必須。
体験学習の受け入れ先を見つけるのが大変
先生方が地域の事業者やお店を片っ端から訪問して見つけているが、生徒が増えていくので、受け入れ先が足りない。
入試でのやる気を見定めるのが困難
10%は失敗してしまう。選抜の目を養わなければならない。
特にスポーツ体験の場所の確保が出来ない
訪問時、校庭の一角の農園では近隣の農家の方が10名ほど、生徒達を指導しながら一緒に農作業にとりくんでいらっしゃいました。校長先生が「なんだか皆さん、来ちゃうんですよ」とおっしゃっていましたが、校庭に小さな裸足の足跡が書かれており、近くの保育園の子どもたちのお散歩コースになっているなど、その開かれた姿勢が地域の皆さんを呼んでいるのでは、と思いました。
自動車整備専門学校にも行きましたが、付き添いの先生が、「学校では反抗的で、挨拶もしてくれない生徒が、車を前にすると目が輝き、専門学校の生徒と一緒になってまじめに取り組み、生活態度も一変したので感激した。」と話してくれました。