2015年第2回定例会 討論

2015年第2回定例会 討論

 

2015年6月24日

西崎 光子

 

都議会生活者ネットワークを代表して、損害賠償請求事件の控訴に関する専決処分に反対、その他の知事提出のすべての議案に賛成の立場から討論を行います。

  • 損害賠償請求事件の控訴に関する専決処分について

生活者ネットワークはそもそも、学校行事等における君が代斉唱時の起立・斉唱等を義務付けた「10.23通達」に対し、思想・表現の自由を基本的人権として認めた憲法に抵触するものと考え、反対してきました。この裁判の契機となった職務命令違反は、体罰やいじめ、性的行為などの悪質さとは違い、子どもの尊厳を傷つけるなどの実害はなく、犯罪にも該当しません。ひとりの人間がみずからの思想信条や良心にもとづいて行った、憲法に保障された基本的人権にかかわる行為であると考えます。教育をつかさどる行政機関が過剰な制裁を科すことにどのような意味があるのか、理解に苦しみます。東京地裁が5月25日、都教委に対し「裁量権の範囲の逸脱またはその濫用に当たる」と指摘した判決は、市民感覚にてらしても極めて妥当な判断と考えます。

この通達に基づき都教委が人の自由と権利を抑圧してきたことで、どんなに公教育に対する信頼を損ねてきたか、猛省を促すものです。今回の控訴は認めることができないため、専決処分については反対です。

 

  • 131号議案「安全安心まちづくり条例」の改正について

今回の条例改正では、危険ドラッグ対策が盛り込まれました。危険薬物の濫用の根絶に向けた取り組みをめざすものですが、インターネットを使って、簡単に安く買えることもあり、しかも薬物依存症に陥る率が高いと、専門家は指摘しています。

「わかっていてもやめられない」という薬物依存症の根源的な治療が重要にもかかわらず、専門の医療施設や当事者および家族の相談窓口が少ないのが現状です。危険ドラッグ対策には、地域の中での支援体制の整備を要望します。

 

  • 国立競技場について

2020年オリンピック・パラリンピック東京大会のメイン会場となる新国立競技場については、旧競技場を跡形もなく取り壊したタイミングで、国が都に500億円の費用負担を求めてきたことは遺憾です。

生活者ネットワークは、かねてから「巨大な国立競技場は本当に必要か」と疑問を呈してきました。今日の新聞報道では、建設費が当初予定よりも大きく膨らむとされていますが、都議会には何の説明もありません。このデザインについては、多くの専門家から批判を浴び見直しが求められています。知事は、開催都市としての責任を果すため、国に対して、あらためて費用負担についての情報公開を求めるともに、負の遺産にしないよう、計画の全面的見直しを求めることを要望します。

 

  • 新銀行東京について

新銀行東京と東京TYフィナンシャルグループが経営統合すると発表されました。「石原都政の負の遺産」と言われる新銀行東京をどのように処理するかは、この間の課題となってきました。今回の経営統合で、追加出資分の400億円は毀損させない方針を示していますが、回収できるかどうかは不透明です。2005年1000億円を出資し設立したにもかかわらず、わずか3年で経営危機に陥りました。これは、1日1億円をドブに捨てていたようなものです。

生活者ネットワークは、設立時点から一貫して反対し、400億円追加出資にも反対してきました。すでに1400億円の税金がつぎ込まれており、今後の教訓にするために、これまでの経緯と失敗の責任をきちんと明らかにすることを求めます。

 

  • 未受診妊婦への支援について

妊婦健診を受けないまま出産に至る未受診妊婦が社会問題となっています。119番通報で周産期母子医療センターに搬送される事例の約4割を占め、胎児と母体にとってハイリスクであるばかりか、妊娠出産に対する意識が低いために出産後、児童虐待にもつながりかねないこともわかってきました。未受診妊婦は若年が多く、パートナーや家族の支援を受けられず、経済的理由などの問題を抱え孤立しています。大阪では、5年にもわたって未受診妊婦調査を行い、「にんしんSOS」のネットワーク化にも積極的に取り組んでいます。都も、アウトリーチを含めて本人に寄り添う支援体制を早急につくる必要があり、そのためにも未受診妊婦の実態調査を行うことを求めます。

 

  • 憲法議論の意見書について

本日、「国会における憲法議論の推進と広く国民的議論の喚起を求める意見書」が上程されようとしています。意見書については、全会一致をめざすべきであり、すでに委員会において調整がつかないとされたにもかかわらず、採決によって諮られようとするのは、遺憾です。憲法については、国民の議論が2分されるものであり、慎重に審議されなければなりません。現政権では、安保法制に関する法案が審議されていますが、衆議院憲法審査会の参考人質疑では、参考人3人の全員が、この法案は「違憲」だと発言している中で、政府に対する不信感を多くの国民がもっています。

むしろ、国に対して提出すべき意見書は、「安保関連法制の廃案を求める意見書」であると考えます。よって、今回の意見書に反対するものです。

 

最後に、費用弁償の見直しについて一言申し上げます。

1定の議会で超党派による議員提案をしましたが、継続審議となり、これまで議論されていません。また、昨年のセクハラ野次問題についても、男女共同参画社会推進議連が立ち上がっただけで、その後動きもありません。都議会の議会改革が求められており、議会のあり方検討委員会を次の定例会までに立ち上げ、都議会一丸となって議会改革にしっかり取り組んでいくことを求め、都議会生活者ネットワークの討論を終わります。