2013年都議会第1回定例会一般質問

2013年都議会第1回定例会一般質問

2013年2月28日

山内れい子

1、知事の施政方針について

 猪瀬知事の施政方針では、多岐にわたって都政の課題に触れられたが、子ども、女性、障がい者などへの思いが今一つ具体的に伝わってこないと感じ、知事ご自身の率直な思いを伺いたい。

 いじめ・虐待・体罰など子どもが生きにくい社会が日々報道されているが、競争ばかりに追い立てられるのではなく、じっくりものごとを捉え、問題解決の道を自ら見出していく力がつくような環境が求められる。その意味で独立機関である教育委員会の役割は重要。

今回、教育委員に若く現場の教育経験のある人を迎えることは大いに期待するが、子どもの生きる力を育む教育は学校教育の中だけで十分とは言えず、遊びや文化・スポーツなどを通じて全人格を形成していくものと考える。

これからの時代を生きる子どもたちにとって、子ども自身が体験の中から、生きる力を身につけていくことが重要と思うが、知事の所見を問う。・・・・・・・・・・・・Q1

 A1:知事

・現代の若者は、限られた世界に閉じこもり、無難な生活を送ることを好むなど、心理的な鎖国状態に陥っている。

・人は、未体験のものや情報等に出会ったとき、まず、否定的な反応を示すが、最初から拒絶すると、新しいものを正しく評価できず、固定観念に縛られたまま。

・パラリンピック・アルペンスキー金メダリストの大日方邦子さんは、チェアスキーを見かけ、「障がい者にスキーはできない」という先入観を持たず、挑戦し結果に結びつけた。

・これからの厳しい時代を生きていく子どもたちには、否定的な固定観念にとらわれず、経験のない課題に対しても、挑戦し続ける力が必要。

・来年度、高校生の海外留学支援の拡充や、全都立高校における1泊2日の宿泊防災訓練の充実により、子どもたちに様々な分野に挑戦する意欲や、共助の意識を高める経験を積ませる。

・今後とも、次代を切り開いていく人間を東京から育てていく。

 厚生労働省の調査によると、2012年、賃金の伸び率は女性が男性を上回り、男女間の賃金格差も過去最少に縮まったと報告された。2000年の介護保険導入以来、地域に介護を中心としたコミュニテイ事業などが続々と生まれ、女性も様々な働き方を選択することが可能になってきた。

しかし、出産等で離職せざるを得なくなることや、いったん仕事を離れた後なかなか職に就けないなど、有能な人材が社会で活躍できないケースが少なからずある。

IMFのラガルド専務理事からも「日本には未活用のよく教育された女性労働力という

すごい潜在成長力があり、女性の活用でGDPを押し上げることが可能である」と言われている。

これからの少子高齢社会においては、女性が存分に力を発揮できる就労こそが社会の発展を支えるカギになると考えるが、知事の見解を伺う。・・・・・・・・・・・・・・Q2

 A2:知事

・我が国には、結婚や出産を機に多くの女性が離職している現実があり、その中には、高

い専門性を持ち、能力のある女性が多数存在。

・急速に進む少子高齢化により、我が国の産業を支える人材不足が確実視される中、それ

ぞれの能力に応じた活躍の場を提供することが、東京が本来持ちながら埋もれていた力

を引き出す鍵。

・女性が、結婚や出産後も仕事を続けられるよう、社会全体で支えていく仕組みが重要。

東京都では、仕事と生活の両立支援を行う企業などの優れた取り組みを認定し、そのノ

ウハウを広く発信。

・またいったん離職した女性に対しても、東京仕事センターにおいて、就職に直結する実

践的な知識の習得を支援するプログラムを実施。

・今後とも、情勢が自らの能力を十分に発揮できる環境を整え、東京の活力の一翼を担う

女性の就業を支援。

 2、住宅政策について 

 2009年3月に、群馬県の未届有料老人ホーム「たまゆら」で火災が発生し、入居者10人が死亡するという痛ましい事故があった。犠牲になった方のうち6人は、23区内で生活保護費を受給している高齢者であり、この事件を契機に、都外の有料老人ホームや未届施設で生活している実態が浮き彫りになった。

この事件については、先月、施設事業者に対して有罪判決が出され、一定の区切りがついたが、一方、新聞では、いまだ高齢の生活保護受給者が都外で暮らしている実態があり、増加しているという報道があった。

そこで、まず都外の有料老人ホームや未届施設などを利用している生活保護受給者の現状はどのようになっているのか、伺う。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q3

 A3:福祉保健局長

・都は、有料老人ホーム等に入所している生活保護受給者の利用実態を把握するため、平成21年と平成22年に調査を実施。

・調査によると、都外の有料老人ホーム等を利用している方は、平成21年は765人、平成22年は1,093人。

・この調査は今年度も実施しており、現在集計・分析中。

・都は区市に対し、受給者が施設に入所する際に施設の状況を確認するとともに、入所後も定期的に生活状況を確認するよう指導。

 この事件後、都内では、所得の低い高齢者も利用できる「都市型軽費老人ホーム」の整備が進められてきた。しかし、現状としては十分に対応できるだけの受け皿は用意されていない。知事も施政方針の演説の中で、「利用者の所得水準にも配慮した都市型軽費老人ホームについて、なかなか整備が進まない現状があり、区市町村と連携して整備を加速する」と述べており、今後一層の整備促進が求められる。そこで、現在の整備状況と今後の都の取り組みについて伺う。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q4

 A4:福祉保健局長

・本年2月1日現在、16カ所、271人分が開設。開設を予定している施設が19カ所、305人分。

・自ら建物を整備し運営事業者に賃貸する土地所有者への補助や都有地の活用など、独自の支援を実施、来年度は、整備費の補助単価を増額。

・今後も事業者や土地所有者の団体に対し、PRするとともに、区市へも働きかけ、整備を促進。

 東京の高齢化は急速に進み、高齢者の単身世帯は、2030年には約90万世帯に達し、総世帯数の14,2%に増加することが予想される。高齢者がひとりでも地域の中で安心して暮らしていくためには、住まいとなる住宅の整備に留まらず、地域で見守り支える取組を推進していく必要がある。都の見解を問う。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q5

 A5:福祉保健局長

・都は、高齢者の見守りを行う区市町村に対しても、包括補助を通じて支援し、シルバー交番設置事業により、見守る拠点を充実。

・今年度は見守りの担い手を中心に構成する会議を設置し、効果的な見守りについて検討。

・この成果も活用しながら、高齢者も見守り支える取り組みが一層進むよう支援。

 2012年3月に改定された東京都住宅マスタープランは、時節柄、防災機能強化や省エネなどが緊急のテーマになっているが、中長期的な課題は高齢化対策ではないかと思う。

特に、都営住宅の名義人は65歳以上が58%を超えて、まさに高齢者住宅となっており、自治会や防災などの活動に支障をきたしている例も少なくない。都営住宅が集中している地域では、学校や商店が閉鎖されるなど、町そのものがコミュニテイの機能を失うことにもつながっている。

都営住宅は年間3000戸余りを建替えているが、従前の居住者の戻り入居を前提として間取りを設定するため、必然的に高齢者・単身者用が増えることになる。コミュニテイがその役割を果たしていくためには、様々な世代の、多様な暮らし方をする人々が協力し合うことが重要。

 一方、都内には民間アパートの空き室が増加しており、都も空き家対策事業を開始したが、需給のミスマッチから、まだ制度活用に至っていない。そこで公営住宅に中所得者を対象とした家賃設定の住戸をある程度設け、その家賃差額を、低所得者が空いている民間アパートを借りる時の家賃補助に充てるなどで、多様な人々が住むまちへ一歩近づける、と提案しているNPOもある。

昨年4月施行の改正公営住宅法では、入居基準を自治体に委任できることとなったが、少子高齢社会の進行は必然的であり、住宅政策もそれにこたえるものでなくてはならない。都営住宅におけるソーシャルミックスへの取り組みについて伺う。・・・・・・・・Q6

 A6:都市整備局長

・都営住宅のソーシャルミックスは、公営住宅施策の目的の範囲内で、可能な限り配慮が重要。

・入居者募集では、子育て世帯向けの当選倍率の優遇、若年ファミリー世帯向けの期限付き入居を実施。若い世代の入居を促進。

・建て替え時には、世帯構成に応じた間取りの住戸を整備。さまざまな世帯の入居に取り組み。

・今後とも、こうした取り組みを通じて、バランスのとれたコミュニテイの形成に努力。

 3、自転車対策について

 今議会に「東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」が提案されている。これに先立ち、都は、昨年10月に道路整備を示した「東京都自転車走行空間整備推進計画」を策定した。条例は、マナーだけでなく自転車の走行空間や駐輪場などハード面の整備を後押しするものでなければならない。

走行空間整備推進計画は、2020年までに新たに100キロメートルの走行空間を整備するとしており、整備手法や優先区間も示されている。

しかし、現実には多くの自転車が、幹線道路だけでなく生活道路を通行しており、区市町村道との接続等が必要である。また、自転車走行空間の整備は、比較的新しい取り組みであり、区市町村が整備する際には、都としても技術的なサポートを行っていく必要があるが、地域自治体との連携についてどう考えるか。・・・・・・・・・・・・・・・Q7

 A7:建設局長(東京都技監)

・都は昨年策定した「東京都自転車走行空間整備推進計画」に基づき整備を進めるとともに、安全性や利便性をより高めるために、区市町村との連携に努めている。

・例えば東八道路では、沿線市等とともに協議会を設け、都道と市道が連続した自転車走行空間の整備を行うとともに、案内標識や路面表示の統一などに取り組んでいる。

・また、区市町村に対して整備手法の選定などについて、技術的な支援も行っている。

・今後とも、区市町村と連携を図りながら、誰もが安心して利用できる自転車走行空間の整備を推進していく。

  条例では、自転車通勤の従業員が駐輪場を確保していることを、雇用者側が確認しなければならないとしているが、駅周辺の駐輪場が不足している現状では、自転車を利用できなくなるのではないか。駐輪場不足に困っている自治体は多く、鉄道事業者に働きかけてもなかなか協力を得られない。そんな中で、小田急電鉄は自治体の強い要望を受けて、高架化に伴い、自前で有料駐輪場をつくった。その結果、放置自転車が劇的に減り、収益にもつながるという、鉄道事業者、利用者、区の三者ともにメリットのある取り組みとなった。東京駅周辺でも放置自転車が問題となっているが、都内各所の駅で関係者が集まるこうした取り組みを進めるべきではないか。

自治体が必要としている駅の駐輪場設置に関して、都は自治体側の立場に立って、交渉を強化すべきと考えるが、見解を伺う。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q8

 A8:青少年・治安対策本部長

・駅周辺における駐輪場の整備については、鉄道事業者、区市町村等の関係者が、地域の実情に応じて取り組む必要。

・条例案に、自転車の利用環境を整備するための協議会の設置について盛り込んだ。

・東京駅の周辺における放置自転車問題について、都はJR東日本にも働きかけ、本年1月から、関係区、鉄道事業者、地域商店会等を集めて、対策を検討する会議を開催。

・今後も区市町村に対して、情報の提供、協議会の設置等の必要な協力を行う。

 

4、被災者支援について

昨年6月、放射能の影響を受けやすい子どもに特に配慮する「子ども・被災者生活支援法」が国会で全会一致で制定された。しかし、法制定から半年以上が過ぎてもいまだ基本方針が策定されていない。子どもとともに震災復興支援に取り組む「東日本大震災子ども支援ネットワーク」や、「つながろう!放射能から避難したママネット」等からも、この法を踏まえて、都の施策がさらに進むよう求められている。特に、福島では小児甲状腺がんが見つかったという報道があり、原発事故との因果関係は肯定も否定もできない中で、子どもをもつ親の不安は高まるばかりである。

被災者や支援者からは、住まいや就労問題、子どもの健康相談や学習支援、障がいや心のケアなど、避難生活の長期化や二重生活によって生じる切実な要望が寄せられている。避難生活の長期化が見込まれる中で、各種の相談窓口での対応における連携や、避難者支援を行っている団体への支援など、避難者に寄り添った息の長い支援が求められていると考えるが、都の見解をうかがう。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q9

A9:総務局長

・総合相談窓口の設置や情報の定期的提供、孤立化防止への支援などきめ細かな取組を実施。

・避難生活の長期化に伴い、避難者が抱える悩みも、複雑・多様化。

・都としては、引き続き各局や関係機関、民間団体等と十分に連携し、生活支援に積極的に取り組む。

・避難者の今後の生活再建に役立つよう、避難元自治体との連携も一層強化して避難者支援の更なる充実に努める。

5、食の安全について

放射能が人の健康に及ぼす影響は科学的に十分に解明されていないため、特に子どもの将来の健康影響を心配する都民も少なくない。中には子どもを対象とした健康調査の実施を求める声も寄せられている。こうした都民の不安に、都はどのように対応するのか。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q10

 A10:福祉保健局長

・都は、都内8カ所のモニタリングポストで空間放射線量を測定。現在は事故発生前の範囲内。

・食品は、都独自で都内流通食品のモニタリング検査を実施。基準値を超えたものはなし。

・測定結果はホームページで速やかに公表。シンポジウムや電話相談を実施。

・今後も取組を継続、都民の安全・安心を確保。

  2001年9月に国内で初めてのBSE感染牛が確認されたことから国内ではスクリーニング検査が行われるようになり、東京都も全頭検査を実施してきた。2005年法改正で、21か月齢未満の牛に対する検査の義務付けはなくなったが、全頭検査は継続されてきた。しかし、飼料規制等の対策の結果、それ以降に生まれた牛では新たな感染の発生がなく、対策開始から10年が経過したのを機に国の食品安全委員会で見直しの検討が行われ、国産牛については検査対象を30カ月齢を超えるものに引き上げ、4月1日から実施することになった。

食の安全を第一と考える消費者にとって、都の対応は大いに気になるところだが、見解を伺う。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q11

 

A11:福祉保健局長

・国は、食品安全委員会の科学的評価を踏まえ、本年4月1日からBSE の検査対象を30カ月超える牛に引き上げ。

・都内で屠畜される牛の約半数は30カ月を超えており、この新基準が適用されれば、半数の牛はBSEの検査対象から外れ、残りの半数は検査対象となる。

・こうした取り扱いは、流通現場の混乱を招くおそれが高く、全頭検査を継続してほしいとの声も存在。

・都は、4月以降も引き続き,BSEの全頭検査を実施。

・今後とも、国の動向を踏まえながら、適切に対応していく。 

6、小水力発電について

 知事は、東京電力だけに頼らないエネルギー政策を進めており、再生可能エネルギーの普及拡大にも取り組んでいくとしている。生活者ネットワークはかねてから再生可能エネルギーの拡大と節電によるエネルギーシフトを求めてきた。太陽光発電はすでに市場流通が拡大しており、先進事例をつくってきた都は、今こそ未利用の再生可能エネルギーに目を向けて、誘導・推進すべきである。そこで今回は小水力発電について伺う。小水力発電については、これまで河川の利用に関する水利権の取り扱いが課題で推進のさまたげとなっているため、今年、手続きを簡素化する河川法施行令が改正され、4月施行となった。

まず都内における小水力発電のポテンシャルはどれくらいあるのか。・・・・・・Q12

 

A12:環境局長

・小水力発電が事業として成立するには、一定の流量や流速の確保とともに、送電網が近くまで整備されているなどの条件が必要。

・環境省の調査によれば、都内では奥多摩町が、小水力発電のポテンシャルが最も高いと見込み。

・奥多摩町の河川については、町が都の補助制度を活用して3年前に現地調査を行い、その結果、10キロワット程度の発電が期待できる地点が3か所認識。

 全国では、自治体やNPO、民間事業者によって小水力発電が進められており、都内でも来年度、江東区が小水力発電に取り組む予定と聞いている。また、都内事業者が開発した水車が京都で開催された「節電・発電大賞」の優秀賞に選ばれたという事例もあり、ノウハウの蓄積が期待される。都としても、相談を受けるなどのサポートが必要だと思うが、所見を伺う。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q13

 

A13:環境局長

・昨年7月に開始された固定価格買取制度では、小水力発電についても事業採算性を考慮した買取価格の設定がなされており、都内でも適地においては事業化が図られるものと認識。

・都は、事業者から相談を受けることがあれば、事業化のノウハウなどについて、発電機器メーカー等からなる関係団体を紹介するなど必要な協力。

以上