2011年第4回都議会定例会一般質問

2011年第4回都議会定例会一般質問

2011年12月8日

               星 裕子

 国難に立ち向かう子ども・若者について 

長く続く経済不況、未曽有の大災害に見舞われ、この国は厳しい状況が続いています。

先日、教育再生円卓会議が開催されましたが、厳しい国難に立ち向かっていくためにいまこそ、次世代の力を逞しく培うことが必要です。

子ども・若者に様々な体験の機会を与え、真の力を育む取り組みが重要だと思いますが、知事のご所見をお伺いいたします。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q1

A1:知事答弁

携帯電話、パーソナルコンピュータ、テレビのいわゆる「三つのスクリーン」は、若者の資質を大きく変えつつある。

情報の分析や評価を結局また情報に任せてしまうなら、それらの情報はただの情報でしかなく、真の教養とはなり得ない。

先の教育再生・東京円卓会議では、学生寮での共同生活や体験学習など、子どもたちに原体験を積ませることで、身体性を備えた真の教養が育まれる実践例が紹介された。

ボランティアや就業体験など、さまざまな機会を通じて社会的な体験を得ることは、子どもが、その後の逞しい人生を切り拓くための確かな手がかりを与えるに違いない。

今後、東京円卓会議においても、若者の知識や体験に身体性を付与するために、我々は何をしなくてはならぬかを議論していきたい。

 防災計画に子どもの視点を盛り込むことについて

東日本大震災から、もうすぐ9か月が経とうとしています。宮城・岩手県では、子どもたちが学校に戻り、日常を取り戻す取り組みが行われ、福島県相馬市では、「ふるさと相馬子ども復興会議」が設立され、子どもたちの復興への意見を出す取り組みが展開されています。セーブ・ザ・チルドレンが、7月に行った調査では、8割以上の子どもたちが、自分たちも地域の一員として、復興に関与したいと考えていることがわかりました。

一方、この震災による子どもの被災状況でわかったことは、学校で把握した児童・生徒に関する情報と、親の存在の有無でひとり親や孤児になったりした子どもの数だけでした。また、ようやく進み始めた国の復興計画案でも、子ども支援の内容は学校教育と心のケアのみであり、子どもの生活全体を支援する視点はありません。

地域防災計画の修正に当たっては、災害時の対応における子どもへの配慮の視点から、今回の震災で対応に当たった人の話を聞くなどの取り組みにより、防災対策に活かしていくことが必要と考えますが、都のご見解を伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q2

A2:総務局答弁

災害発生時には、乳幼児、児童、生徒等の子どもを含めた災害時要援護者に対し、その特性や実情に即した、きめ細かな対応が必要となることは当然であり、現行の地域防災計画においても、学校における災害時の対応や、災害時要援護者への安全対策等を盛り込んでいる。

今回の東日本大震災の教訓を踏まえて、長期に亘る避難生活等によって子どもに生じた課題や対応策について、被災地の自治体や現地でボランティア活動を行った方の生の声を聞くなど、さまざまな機会を捉えて実情の把握に努め、今後の地域防災計画の修正に反映していく。

 子どもと防災計画について

 災害によるトラウマは、持続的・慢性的な状態から引き起こされる方が、急性の体験によるよりも、子どもにとってこころの成長に大きく影響するといわれています。

都は被災地に臨床心理士や児童福祉司などの専門家を派遣しましたが、いずれも短期間で、不足する現地スタッフの一時的なサポートにとどまるものであり、継続的に子どもと直接関わるまでには至っていないのが現実です。

被災した子どもや保護者への支援を適切に行うため、児童相談所、子ども家庭支援センター等、関係機関による日常的な連携に加え、災害時における連携のあり方、事前協議など取り組みの強化が重要であると考えますが、都の所見を伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q3

A3:保健福祉局答弁

災害時に子どもや保護者への支援を迅速かつ適切に行うためには、日頃から、児童相談所や区市町村の子ども家庭支援センター、保健所等の関係機関の連携体制を構築しておくことが重要である。

そのため、都においては、これまで、児童相談所に地域支援を行う職員を配置するほか、区市町村ごとに関係機関からなる要保護児童対策地域協議会を設け、合同でケースを検討する場を定期的に開催するなど、情報の共有化と連携の強化に努めてきた。

今後とも、子どもや家庭からの相談に適切に応え、災害時にも、効果的な援助が実施できるよう、こうした取組を一層進めていく。

 農薬に頼らない農業について

食の安全は今、放射能問題に関心が集中していますが、もともと農薬の問題が大きくありました。生産性を高めるために使われる農薬は、適切な時期を選んで毒性の低いものを最小限使用するよう努力がされてきました。有機リン系農薬に替わって、毒性を低減すべく開発されたのがネオニコチノイド系農薬で、神経を興奮させ続けることで昆虫を死に至らしめるものですが、1990年代に開発されて以降、農業用だけでなく松枯れ防止、床下のシロアリ駆除、園芸用殺虫剤などにも多用されるようになり、昆虫のみならず、人、特に、胎児や子どもの脳への影響も懸念されています。

 そんな中、ミツバチの大量死や失踪が1994年以降、世界各地で報告され、この農薬が原因の一つではないかと推測されて、フランスでは規制の対象農薬となりました。

ミツバチは、銀座でも飼育されていることがメディアにも取り上げられましたが、都は養蜂ガイドラインを作って飼育の届けを出すよう指導しています。都内のミツバチ飼育の状況をどのように把握しているのか伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q4

A4:産業労働局答弁

養蜂業者は、「養蜂振興法」で届出が義務づけられており、都では平成23年1月1日現在、届出が58戸ある。

また、近年では、養蜂業者以外に、趣味などでみつばちを飼育する者も多いことから、都では平成22年に「東京都養蜂ガイドライン」を策定し、周辺とのトラブルや伝染病のまん延の防止のため、飼育届の提出について指導を行っており、72戸が届出されている。

  人類の食料の3分の1は植物に依存しており、ミツバチなどの昆虫は、これらの植物の8割の受粉に寄与しているとのことです。ミツバチの大量失踪が教えてくれているのは、生態系の危機であり、私たちの食糧自給率に大きく関わってくるものだということです。

農薬は、使用が進むと予期せぬ副作用や効き目の減衰で、使用中止になることがくりかえされてきました。近年、低毒性で多用されてきたネオニコチノイドも同じような時期を迎えたともいえますが、代替農薬はまだ見つかっていません。

人に対して低毒性といえども、できる限り使用を減らした農業を推進すべきと考えますが、見解を伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q5

A5:産業労働局答弁

現代の農業において、農産物の安定的な供給のためには、農薬の適正な使用が欠かせないが、農薬をできる限り減らす不断の努力が求められる。

特に、東京農業は住宅地に近接していることから、農薬の使用法にも格段の配慮が必要である。

そのため都は、平成6年から「東京都環境保全型農業推進基本方針」に基づき取り組みを開始し、都内全ての生産者が環境保全型農業に取り組むように促している。

具体的には、農薬を減らした病害虫防除技術の研究開発やその成果の農家への技術移転を実施し、環境保全型農業を推進する農家を支援してきた。

今後とも、環境に配慮し、安全・安心な農産物の生産を推進していく。

 廃棄物処理について

建築廃棄物のリサイクルの推進に伴い、アスベスト含有建材等がまぎれ込んでいるのではないかという不安の声が、市民から寄せられました。これを受けて、都では対策を強化したと聞いていますが、阪神大震災でもアスベスト被害が指摘されたことから、東京都に搬入された震災がれきについても、アスベストの混入が懸念されます。

実際に私も、震災後の6月に、名取市の閖上(ゆりあげ)地区に視察に行った際、海岸線に何もかにも混在したがれきの山や粉じんを巻き上げるトラックを見て、処理の困難さを実感しました。市民の不安に応える科学的実証データの開示など、市民が納得する説明責任を、都は果たすべきです。

都としてどのような説明などの対策をとっているのか。また、検査機器の整備や、目視でのチェックで確実に見分けられるような検査員の研修や安全対策などが必要であると考えますが、都の見解を伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q6

A6:環境局答弁

被災地の仮置き場と選別エリアでは、手選別作業でアスベストの含有する恐れのあるスレートやコンクリート塊等を取り除いている。

都が受け入れる廃棄物は木くずやプラスチックが中心であり、アスベストの混入の可能性は低い。

念のため、アスベストの判別研修を受けた東京都環境整備公社職員を現地に常駐させ、スレート等の除去を確認させている。

粉じん対策として防じんマスクを着用させ、アスベスト含有の有無を判断するため、拡大鏡を常備。

都内自治体の清掃工場等で受け入れる際の住民説明会では、現地でのアスベストの除去方法について丁寧に説明を行っていく。

 震災後、多摩地域の下水処理汚泥の焼却灰が大田区で処理されることになりました。また先行して受け入れた震災廃棄物も大田区と江東区の事業者が請け負うことになっています。放射能汚染については、受け入れの事前事後の入念な計測を行っていると思いますが、通常以上のごみ量を引き受けるので、その分、搬入と処理、処分によって環境負荷が増加することは否定できません。スーパーエコタウンについては、環境負荷の高い施設が集中しており、それぞれの事業で環境アセスはクリアしていても、全体としての環境負荷は高まります。アセスの対象要件を少し下回る計画が多いことなども問題です。

集中する地域では、アセスの要件を厳しくするなどの対応が必要ではないかと考えますが、ご見解を伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q7

A7:環境局答弁

環境影響評価は、条例等に定められた要件に基づき、環境への影響を予測評価。

事業者は、事業の実施に当たって、その地域において、すでに稼働している施設等の影響も含め予測・評価し、施設の集中による環境影響も評価。

なお、スーパーエコタウン事業は、資源循環型社会づくりに貢献しているもの。

事業者が設定した法を上回る自主管理値に基づき、施設が周辺地域の生活環境に及ぼす影響を審査。

災害廃棄物の受け入れはその許可された処理能力の範囲内であり、環境への影響は問題ない。

 子ども家庭総合センターと子どもの権利擁護事業について

最後に、本定例会に上程されている「東京都児童会館を廃止する条例」について伺います。

渋谷区にある児童会館で行われていた事業は、現在建設中の「(仮称)子ども家庭総合センター」に移行されます。

 この子ども家庭総合センターは、現在の福祉保健局の児童相談センター、教育庁の教育相談センター、警視庁の新宿少年センターおよび児童会館が集約されることにより、機能を強化させると、説明を受けています。

そこで、子ども家庭総合センターには、どのような目的があり、とりわけ、今回廃止する児童会館の事業が、どのような形で継承されることになるのか改めて伺います。・・・・・・・・・・・Q8

A8:福祉保健局答弁

このセンターは、児童虐待や非行など複雑・深刻な事例が増加している中、子どもと家庭を総合的に支援することを目的として設置するものである。

具体的には、福祉保健、教育、警察の各相談機関が専門性を活かして相談に対応するほか、いじめなどで傷ついた子どもの心のケア、児童虐待等により分離した家族の再統合の支援などを行うこととしている。

児童会館については、その機能をセンターに移転し、これまで蓄積してきたノウハウを活かして、遊びに関する情報提供や、科学や木工等に関する出前講座の開催、職員研修やシンポジウムなどによる人材育成等を行い、区市町村における地域児童館の取り組みを支援していく。

 子どもに関する相談は、児童虐待や子育てに関する相談、教育や進路に関する相談、非行問題や犯罪被害等に関する相談などがありますが、各機関の相談機能を集約し、子どもと家庭に関するあらゆる相談に、より一層適切に対応していくことが求められます。

 一方、児童相談センターの中では、子どもに対して虐待やいじめ等の権利侵害の問題が生じた場合に、外部の専門家が、子どもと関係機関との間に立ち、助言や調整を行う「子どもの権利擁護専門相談事業」が2004年度から実施されています。電話相談と専門家による調整活動等が一体となり、継続的にかかわりながら問題解決を図っていく有効な取り組みと評価しています。

 2010年3月には、携帯電話からの電話相談も可能となり、利便性が高まって相談件数が増加するなど、子どもにとって更に身近なものとなってきました。

子ども家庭総合センターでは、相談に対する対応はどのように行われるのでしょうか。また子どもの権利擁護専門相談事業については、センター設置後も、引き続き実施していく必要があると考えますが、都の見解を伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q9

A9:福祉保健局答弁

このセンターでは、福祉保健、教育、警察の三分野の相談機関が連携し、児童虐待のみならず不登校、非行など、子どもに関する様々な相談を幅広く受け止めるとともに、相談内容に応じて、最も適切な機関が専門的な対応を行い、総合的に支援していく。

また、現在実施している子どもの権利擁護専門相談事業は、センターが開設した後も、引き続き実施し、子どもや保護者からの悩みや訴えを、相談員がフリーダイヤルで直接受け付けるとともに、深刻な相談には弁護士などの専門員が適切に対応していく。

以上