2009年第二回定例会 一般質問

2009年6月2日

山口文江

始めに高齢者福祉について伺います。

私は、福祉関係のNPOの副理事長を経て、都議会議員となり、始まったばかりの介護保険制度を根付かせ、介護の社会化を進めることをめざして活動してまいりました。しかし、保険料の見直しや制度改正のたびに、介護サービスは残念ながら充実とは逆の方向に向かっています。団塊の世代が65歳を迎えると、4人に一人が高齢者といわれています。特に、東京では、高齢者の独り暮らしや高齢者のみ世帯が増加しており、今後もその傾向が加速することは必至です。さらに、独身の子どもが仕事を辞めて親をみるシングル介護も増え、介護疲れによる自殺や心中なども後を絶ちません。今回、議員を交代するに当たり、世界に先駆けて超高齢社会を経験する東京に置いて、知事はどのような都市を作っていくのか、知事の見解を伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q1

 

A:(知事答弁)いわゆる「団塊の世代」が高齢期を迎え、元気な高齢者が8割を占める中で、これまでのように高齢者を「支えられる存在」として画一的にとらえるべきではない。

「10年後の東京」計画では「自らの経験や能力を生かして、社会を活性化させる存在」として、新たな高齢者像を描いている。

最先端技術の活用などにより、高齢者の健康で自立した生活を支えると共に、介護や子育て支援をはじめ様々な社会的課題の解決に、高齢者自らが活躍できる場を提供するなど、多様な社会参加を促進し、超高齢社会の都市モデルを実現していく。

 

群馬県渋川市の高齢者施設の火災を契機に、未届けの有料老人ホームや高齢者の生活保護受給者の実態が明らかになりました。私たちは住まいの確保は生活の最低条件と考えておりますが、都内に次々と作られる入居費等に月額十数万円もかかる有料老人ホームに入れるのはごく限られた人だけです。特別養護老人ホームは、介護度の軽い人は入居することができず、重い人でも2か月から1年の待機はあたりまえという状況です。在宅を支える新たな機能の小規模多機能施設も計画にはほど遠く、国や実施主体の自治体は、介護保険給付の抑制や介護保険料の抑制に傾き、介護サービスが使いにくくなったという声が後を絶ちません。さらに、この4月からの介護認定基準の変更等は、介護度が軽くなってしまう傾向があります。

都は「施設よりも在宅」に舵を切っており、本年3月策定された「東京都高齢者保健福祉計画」には、高齢者の自立と尊厳を支える社会の実現に向けて、と副題が付けられています。私たちが実施したアンケート調査では、介護度と介護の負担感は比例せず、むしろ、介護度の軽い人に対する介護ほど負担感を感じるという現実が明らかになりました。今後、この計画に基づき、住み慣れた地域や在宅での生活が継続できるよう、都として高齢者福祉の充実に取り組むべきであると考えますが、所見を伺います。・・・・・・・・・Q2

 

A:(福祉保健局長答弁)          都は本年3月、平成21年度から23年度までを計画期間として、高齢者施策の総合的・基本的計画である「東京都高齢者保健福祉計画」を策定した。

本計画では、医療・介護が連携した高齢者専用賃貸住宅のモデル事業を始め、高齢者が住み慣れた地域で、自分らしく、生き生きと暮らせる安全・安心な社会を実現するための施策を明らかにしている。

今後とも、区市町村をはじめとする関係者と十分連携し、本計画の着実な推進を図っていく。

 

次に行政サービスについて伺います。

東京都教育委員会は、この4月、都立永福学園に、教員と外部の専門家が連携した新たな指導体制による肢体不自由教育部門を開設しました。開設によって、都立光明特別支援学校などの通学区域が縮小され、都立永福学園に児童・生徒が転校することになりました。 しかし、あらたな体制を導入したにもかかわらず、医療的なケアを必要とする児童への体制が整わず、保護者が付き添いを余儀なくされる状況が2か月も続いているということです。開校時期は2年も前から決まっているわけですから、万全な指導体制を整えて、子供たちを迎えるべきではないのかと疑問に思わざるを得ませんが、都の見解と今後の対応について伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q3

 

A:(教育長答弁)都立永福学園の肢体不自由教育部門では、3月中から、転学者等の実態把握や保護者面談等を行い、個に応じた指導を行えるよう準備を進めてきた。

全児童・生徒65名中、医療的ケアを必要とする児童・生徒10名の保護者については、教員等が個々の児童・生徒の状況に応じた医療的ケアができるよう、引き続き登校をお願いしてきたが、「たんの吸引」が必要な児童・生徒3名については、5月中までに引き継ぎが完了し、保護者の登校は終了した。

「たんの吸引」と「チューブを通して栄養を補給する注入」が必要な児童・生徒7名については、徐々に保護者に登校していただく時間を縮小しており、今学期中には引き継ぎを完了する予定である。

今後は、今年度から導入した介護等の専門家を活用し、安全な環境の中で、専門性の高い教育を一層充実することにより、保護者が安心して子供を任せられる指導体制を構築していく。

私は、福祉や教育は最も重要な行政サービスであり、何より高齢者や子どもの立場に立って、サービスが提供されるべきだと考えます。職員はそのサービス提供者であることを常に自覚して仕事をしていただきたいと思います。知事はコスト意識の高い迅速かつ的確な行政執行を明言され、管理職対象に「コスト意識について」という研修会も催された様です。確かに都政は都民の貴重な税金の上に成り立っているのであり、無駄なお金を費やすことは戒めなくてはなりませんが、先日交付された公共サービス基本法の理念にもあるように、行政サービスは単純にコストだけではなく複合的な視野をもってすすめられるものと考えます。今後の職員に求める行政サービスとコスト意識について、都の見解をうかがいます。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q4

 

A:(総務局長答弁)都民の期待に応えるサービスを提供していく上では、「最小の経費で最大の効果」を挙げるというコスト意識の徹底が不可欠。

これまでも、民間の経営ノウハウの活用や、新たな公会計制度の導入、各種の研修の実施により、職員の意識改革を積極的に推進。

今後とも、行政サービスの質の確保とコスト意識を念頭に置いて仕事を進めていくことが必要であり、このバランス感覚を備えた職員の育成に、あらゆる機会と手段を通じ、取り組んでいく。

以上