2009年12月9日
星 裕子
1.オリンピック招致について
2016年オリンピック招致失敗の直後、石原知事は、2020年五輪への立候補については、「都民、国民がどうとらえるのか。私たちが一方的に決めるべきではない」と述べ,その後、広島市と長崎市が名乗りをあげたことについても、東京の経験を提供し、協力すると発言しました。ところが、11月9日、突如マスコミに再挑戦の意思を示し、都議会に公式表明したのは今議会の冒頭です。
Q1)オリンピック招致特別委員会の議論も緒に就いたばかりです。再挑戦を表明するならば、敗因分析や招致活動費の決算などをきちんと都議会に報告したうえで行うべきと考えますが、石原知事の見解を伺います。
A1)(知事)オリンピック・パラリンピック招致についてであるが、昨日も答弁したように、世界平和や地球環境の未来のため、また、若者たちに夢と勇気を与えるために、わが国がオリンピック招致に、再挑戦する意味と価値は十分あると確信している。もとより再挑戦については、都民・国民の意向を十分に忖度し、都議会の皆様との議論を踏まえた上で、東京としての結論を出していくべきものとの認識は、いささかも変わっていない。未来を担う若者たちに、良き遺産を残すためにも、今後、大いに議論を深めていただきたい。2016年の招致活動報告書については、現在まとめさせており、今年度中に公表していく。
次に基金についてですが、2016年オリンピック招致は10月2日の結果をもって終了し、オリンピック招致のための基金4000億円も今年度末でその目的を終えたと考えます。11年後のオリンピックは、その後の議会の結論を待つべきものです。一方、今年度都税収入は、当初予算額を5000億円も下回る4兆2600億円と発表され、景気の底が見えない経済状況がいつまで続くのか、さらなる警戒が必要となっています。格差拡大やワーキングプア問題などの貧困対策や雇用対策、中小企業支援など、待ったなしの緊急課題が山積しています。
Q2)役割を終えたオリンピック招致基金4000億円は、財政調整基金として、都民の緊急課題に使うべきと考えますが、見解を伺います。
A2)(知事)東京オリンピック・パラリンピック開催準備基金についてであるが、この基金の取り扱いについては、オリンピック・パラリンピック再挑戦についての、今後の議論などを見定めつつ、適切に対応していく。なお、都はこれまで福祉、医療、教育はもとより、中小企業対策や東京の都市機能の充実など、都民にとって必要な施策に的確に財源を振り向けてきており、また緊急課題にも的確に対応してきた。このことは今後も同様であり、厳しい財政環境の下にあっても都が為すべき役割をしっかりと果たしていく。
2.自然エネルギーの活用について
温室効果ガスの排出抑制に有効とされる再生可能エネルギーは、コストが高い、出力が低い、不安定であるなど、本格的な普及に向けて様々な課題をかかえていますが、性質の異なる複数の電源を組み合わせ、集中的に制御することによって効率的な利用を図ると同時に、再生エネルギーの利用普及を促進させようという試みも始まっています。
この視点から、脚光をあびているのが「スマートグリッド」など、電気、熱、ICTを融合することで低炭素社会を実現する試みです。コロラド州ボルダー市は「京都議定書」を市として独自採用し、低炭素・高効率なエネルギー消費環境の実現をめざす、世界で最初の本格的なスマートグリッドの実証プログラムを実施していますし、オランダのアムステルダム市では、2025年40%のCO2削減目標をかかげ、持続可能な住まい、職場、交通、公共スペースの4つの視点から、行政機関や企業のみならず、市民を巻き込んだ「スマートシティ」を中核にしたまちづくりをめざしています。
Q3)COP15での削減目標の合意を目前に、国内のエネルギー消費構造の抜本的な見直しが迫られていますが、都はどのように取り組むのか、知事の見解を伺います。
A3(知事)化石燃料の多量消費は、膨大なエネルギーを生み出し、便利で豊かな生活を実現してきたが、その一方で、地球環境の限界を遙かに超える二酸化炭素の排出により、深刻な気候変動の危機をもたらしている。化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を軸とする低炭素型社会の実現は、気候変動の危機を回避する最大の方策であり、多量のエネルギーを消費する都市こそ、再生可能エネルギーの利用拡大を主導するべきである。都は、こうした観点から、太陽エネルギーの普及をはじめとする先駆的な再生可能エネルギー施策を展開してきており、今後とも、低炭素型社会への転換を先導していく。
再生可能エネルギーの中でも、とりわけ太陽光発電は、国が補助制度を停止して以来、導入の伸びが鈍化し、世界一の座をドイツ、スペインに明け渡す状況になっていましたが、この11月からは、余剰電力を今までの2倍程度の価格で電力会社が買い取る制度が開始したことにより、さらに普及が進むと思われます。こうした太陽光発電ブームの中、一般家庭では、購入にあたって訪問販売の消費者トラブルも発生していると聞いています。
Q4)そこで、太陽光発電における都の補助制度もある中、一般市民への情報提供やさらなる普及啓発にむけてどのように取り組むのか、伺います。
A4)都民が安心して購入できるようにするためには、太陽光発電に関する十分な情報を得て、実物を見て購入を検討できるようにすることが大切である。このため、都は、家電量販店等での販売を促進するとともに、都の未利用地を活用した新宿住宅展示場において、全戸に太陽光発電を搭載するなどの取り組みを進めてきた。こうした取り組みの一方で、昨年秋から消費生活総合センターと連携を取り、訪問販売による消費者トラブルを未然に防止するため、区市町村への周知等を依頼するとともに、都のホームページでの注意喚起にも努めてきた。今後とも、このような情報提供や普及啓発を進めていく。
3.住宅政策について
2006年6月に成立した「住生活基本法」を受けて、東京都は同年12月『住宅基本条例』を制定し、「良好な住環境の下で、ゆとりある住生活を享受できる住宅を確保する」ことを目標として、住宅マスタープランも策定されています。しかし、実態はと言えば、いわゆる低所得者のみならず、中堅所得層と生活保護受給の間にいる高齢者、都営住宅入居水準の所得であっても都営住宅に入れない人、給与カットや解雇などで家賃や住宅ローンが払えなくなった世帯など、住宅確保の困難さを訴える声は増すばかりです。私たちは、「すまいの確保は生活の最低条件」と考え、具体的対策として都営住宅に入れない人への家賃補助を提案してきました。厚労省は10月、離職者向けに住宅手当を6ヶ月間支給する緊急措置を始めましたが、都は家賃補助に対しては前向きとはいえません。都営住宅の新設をストップする中で、今後、ますます低廉な住宅が求められます。
Q5)長期的視点に立って、今一度住宅政策を見直す必要があると考えますが、都の所見を伺います。
A5)住宅が量的に充足し、民間住宅市場が発達した今日において、少子高齢化の進展や居住ニーズの多様化に対応するためには、公共住宅に加え、民間住宅も含めた重層的なセーフティーネットの機能が必要である。これまでも、住宅に困窮する都民に対し、居住の安定確保を図るため、都営住宅などの公共住宅ストックを有効に活用するとともに、不動産業関連団体等とも連携し、比較的低廉な家賃の民間賃貸住宅に関する情報提供などに取り組んできた。今後とも、こうした施策の充実を図りながら、社会経済状況の変化に対応した住宅政策を展開していく。
4.精神障がい者の生活支援について
精神保健医療福祉施策が入院医療中心から地域生活中心へと大きく転換するなか、東京都ではいわゆる社会的入院の状態にある精神障害者の地域移行をすすめており、東京都障がい者計画では「精神障がい者退院促進支援事業」の実施などにより、平成23年度末までに2500人の地域移行を進めることとしています。このことについて医療、地域生活支援の両面でお聞きします。
Q6)まず医療面についてですが、退院後、地域生活を継続していく中において、服薬や通院などが中断し、症状が悪化し、再入院するケースがあると聞いています。精神障がい者の方々が、身近な地域で、継続して医療を受けられる体制が必要と考えますが、見解を伺いします。
A6)精神障がいの方々が地域で安定した生活を送るためには、適切な医療を身近な地域で継続して受けられるようにすることが重要である。このため、区市町村では、地域活動支援センターなどにおいて、医療機関の情報提供や、服薬中断を防ぐための助言を行なっている。また、都においては、精神保健福祉センターや保健所において、区市町村など関係機関に対する技術支援を実施している。さらに、都では、現在、地域における医療機関等の連携促進など、精神障がい者の地域生活を支える上で必要な医療提供体制の整備等について検討を行っている。
自立支援法の施行後、精神障がい者の相談、生活支援は区市町村の役割となりましたが、自治体によっては、サービス利用計画策定が進んでいません。地域活動支援センターⅠ型への委託内容も、障がい程度区分の認定調査、退院促進支援事業、ディサービス、一般相談など多種多様であり、委託契約予算もばらつきがあります。センターでの主な業務である生活相談においても利用者の課題を整理、解決するために、まずは同行、付き添いによる支援が必要とされ、専門職による十分な人的配置が求められています。また、退院後の居住支援のグループホームなども充足にはほど遠い現状にあります。
Q7)どの地域に住んでいても安心して福祉サービスが受けられるよう、東京全体の精神障がい施策の充実について、都としてはどのような立場で、どう底上げをはかっていくか、ご所見をお伺いいたします。
A7)区市町村では、地域活動支援センターに精神保健福祉士等の専門職員を配置し、本人、家族に対する生活や福祉サービスの利用に関する相談支援を実施している。また、グループホームや通所施設など精神障がい者の地域生活を支えるサービスについても、各区市町村が障がい者福祉計画に基づき、確保を図っている。都は、地域活動支援センターの運営費補助や、グループホームの整備に対する都独自の助成を実施するなど、サービス基盤の拡充に努めている。今後も、精神障がい者が地域で安心して生活できるよう、区市町村と連携して、その支援に取り組んでいく。
5.教育財産の活用について
都立高校改革推進計画の実施計画は23年度までが計画継続期間にあたりますが、この中に地域とのパートナーシップを築く学校づくりとして、都立学校の教育機能の地域・社会への提供ということをうたっています。現在、施設開放ということでグランドや体育館は大いに利用されているようですが、学習、文化施設についてはほとんど開放が進んでいません。地域においては高齢者を中心に生涯学習の高まりもあり、学習の場の確保は大きな課題です。
Q8)特に若者たちの音楽活動について練習場所に不足しており、市場の貸しスタジオなどは若者には手が出ません。施設開放に関しては、すでに一定のルールも定められており、全校に運営委員会も設置されているのですから、学習、文化施設の開放を一層、進めるべきと考えますが、ご所見を伺います。
A8)都立学校の施設開放は、現在、体育施設を中心に、工事中など特別な例を除き、ほぼ全校で実施している。一方、会議室や音楽室などについては、校舎内にあることや、使用が主に土日・夜間の無人の時間帯になることから、安全・防犯上、使用する施設のみを部分的に開放することが困難な場合がほとんどである。また、特に音楽活動として使用する場合、音量や時間帯に関し、近隣への十分な配慮が必要となる。学習・文化施設の開放拡大に向けては、こうした安全・防犯対策、近隣への影響、学校教育への支障の有無など、様々な課題を整理し、開放拡大の可能性を検討していく。