2016年第4回東京都議会定例会 一般質問

2016年第4回東京都議会定例会 一般質問

 

2016年12月8日

西崎 光子

 

都議会生活者ネットワークを代表して質問します。

  • 公文書管理について

豊洲市場問題では、都庁の隠ぺい体質が露呈し、都政への信頼が失墜する事態となりました。一連の件で、意思決定過程の文書の作成や保存がされていないなど、公文書管理のずさんさが明るみに出ました。「豊洲新市場整備方針」など重要な文書や、地下空間問題で、市場と日建設計との打ち合わせ記録がすぐに発見されなかったことは、非常に問題です。大きな工事で行政が受託者と打ち合わせするとき、記録をとらないことは考えられず、そうしたメモは組織的に使われるものであり、公文書としてきちんと管理しなければなりません。

公文書管理と情報公開は車の両輪であり、民主主義の根幹にかかわるものです。国は、公文書が国民共有の知的資源であるという認識のもと、説明責任を全うすることを目的に、公文書管理法を制定しました。ところが都は、情報公開条例においては、都民への説明責任を全うし都民の都政への参加を進めることを目的としていますが、文書管理規則には目的規定もなく、発生した文書を効率的に管理するという視点しかありません。今回のような事件を二度と起こさないためにも公文書管理が重要であり、文書の作成や保存をきちんと行う必要があります。

説明責任を果たすためには、意思決定過程の記録を残しておかなければなりませんが、文書を作成する義務は、どのようになっているのか都の見解を伺います。・Q1

A1(総務局長):都では、情報公開条例において公文書の適正な管理の必要性を規定するとともに、都の内部における文書の発生から廃棄までを統一的なルールで統制するため、文書管理規則等を整備。この文書管理規則においては、決定すべき事案について、電子または書面による起案文書として作成することとし、必要に応じて、起案の理由や事案の経過等を明らかにする資料を作成し、添付するように規定。

 

これまでの都の公文書管理には、多くの課題がありました。そこで、公文書管理条例を制定し、公文書が市民の共有財産であり説明責任を全うするという理念を示す必要があると考えますが、知事の見解を伺います。・・・Q2

A2(知事):豊洲市場の問題で失った都民の皆様からの都政に対する信頼を回復するためには、その一丁目一番地にあたる情報公開を徹底的に進め、都政を透明化していくことが重要。また、情報公開の推進にあたっては、その前提となる公文書の適正な管理を実現し、これを都庁の隅々にまで浸透させる必要。今回の豊洲市場における文書管理の問題を受けて、今後、同様の事態が発生することのないよう、まずは東京都文書管理規則を年度内に見直す。さらに、公文書の管理に関して来年度早期の条例化を検討。このような取り組みを通じ、都民の皆様からの信頼を回復し、都民とともに進める都政を実現。

 

  • 聴覚障がい者のコミュニケーション支援について

日本が「障害者権利条約」を批准して2年、この条約を具体的に生かしていくために「障害者差別解消法」が今年4月施行されました。障がいのある人が、日常生活や社会生活を送る上で、障壁となる一切のバリアを取り除き、皆が一緒に社会参加できるよう、行政や事業者が合理的配慮を行っていかなければなりません。知事は、所信表明で、「社会全体で障がいのある方々への理解を深め、差別をなくす取り組みを一層推進するための条例案について検討を開始する」と、述べています。

そこで、どのような理念で取り組まれるのか、知事の見解を伺います。・Q3

A3(知事):女性も、男性も、子どもも、高齢者も、障がい者も、誰もがいきいき生活できる、活躍できる都市、そのような「ダイバーシティ」が私のめざす東京である。今回検討を開始する条例案は、こうした考えに立って、社会全体で障がい者への理解を深め、差別をなくす取り組みをより一層推進することを目的としている。条例には、相談・紛争解決のためのしくみや、意思疎通のための配慮などを盛り込む考えであり、心のバリアフリーを一層進め、障がい者の社会参加を後押ししたい。

 

この夏視察した兵庫県明石市では、先駆的な障がい者施策を行っています。合理的配慮を提供するため「明石市障害者配慮条例」を今年4月に施行しました。昨年には「手話・言語・障がい者コミュニケーション条例」を施行しており、手話だけではなく、要約筆記や点字、音訳等多様なコミュニケーション手段の利用促進を規定しています。具体的には、聴覚障がい者向けのタブレットや音声を文字変換するシステムなどの設置、全小学校で手話体験教室の実施もめざしています。

都は、東京2020大会に向けて、手話の一層の普及を図るなど、聴覚障がい者のコミュニケーション支援を充実させる必要があると考えますが、見解を伺います。・Q4

A4(福祉保健局長):都はこれまで、手話通訳者や要約筆記者の養成研修、外国語手話の習得支援など、聴覚障がい者の意思疎通を支援する人材を育成。また、聴覚障がいに対する理解を促進し、手話人口のすそ野を拡大するため、手話に関するリーフレットを作成するほか、学生による手話パフォーマンスやワークショップ等を行うイベントを開催。さらに、今年度からは、ICTを活用したモデル事業として、観光情報センターや消費生活総合センターなど都内6か所にタブレット端末を配置し、遠隔手話通訳や音声を文字に変換するサービスを提供。今後も、東京2020大会に向けて、聴覚障がい者のコミュニケーション支援の充実を図る。

 

国に対して「手話言語法」の制定をめざし、全国の首長が動き始めています。「手話を広める知事の会」も設立されており、パラリンピックが開催される東京都もぜひ参加するよう要望します。

 

  • 男女平等参画について

東京都は、全国に先駆けて制定した「東京都男女平等参画基本条例」に基づき、行動計画を策定し、男女平等参画社会の実現に向けて取り組みを進めてきました。

この度、女性活躍推進法に基づき都の計画を策定する必要性が生じたことに伴い、「男女平等参画のための東京都行動計画」と「女性活躍推進計画」を一体的に策定し、「女性活躍推進計画」とすると聞いています。女性活躍推進法は、第1条で男女共同参画社会基本法に則るとされており、「女性活躍」が「男女共同参画」の理念のもとにあることを意味しています。都は、活躍推進計画と「配偶者暴力対策基本計画」の改定を合わせるとのことですが、男女平等参画の視点が低下するのではないかと危惧されます。

新たな総合的な計画においても、条例の理念を踏まえ、男女平等参画の視点をしっかりと盛り込んでいくべきと考えますが、都の所見を伺います。・・Q5

A5(生活文化局長):都はこれまでも、「男女平等参画のための東京都行動計画」に基づき、さまざまな施策を推進。男女間の実質的な機会の均等を確保し、男女平等参画社会を実現するためには、女性の活躍推進の観点が重要。そこで、今回の行動計画の改定にあたっては、「女性活躍推進計画」と「配偶者暴力対策基本計画」の2つの計画とし、男女平等参画の基本的な考え方や従来の施策をすべて盛り込んだ上で、両計画を合わせた全体を「男女平等参画推進総合計画」として策定する予定。

 

小池知事は、多様性の社会(ダイバ―シティ)東京をめざしています。東京は、約1300万人もの人々がおり、子ども、若者、高齢者、女性、男性やLGBTなど、あらゆる人達が生活しています。男女平等参画社会の実現に向けて、人権や多様性を尊重することについて、計画に位置づける必要性があると考えますが、都の見解を伺います。・・・Q6

A6(生活文化局長):都は、条例において、「男女が、性別により差別されることなく、その人権が尊重される社会」を基本理念に掲げ、その実現をめざして施策を推進。今回の総合計画の策定に向け審議会が取りまとめた「中間のまとめ」では、ひとり親家庭、高齢者、若年層等の中で、就業機会が不足していたり、地域とのつながりが乏しいなど、困難な状況にある人に対して、人権や多様性の尊重の観点から、支援が必要であると提言。計画の策定にあたっては、こうした視点に基づく審議会の答申を踏まえて、検討。

 

東京都地域防災計画の中で、災害対策や避難所運営にあたって、女性の視点で行うことが盛り込まれました。生活者ネットワークは、防災会議の女性委員を増やすことや熊本の震災でも緊急に輸入された液体ミルクの供給など、女性の視点で支援を積極的に行うよう求めてきました。今回の総合的な計画でも防災に関する分野の女性参画について盛り込んでいくべきと考えますが、都の見解を伺います。・・・Q7

A7(生活文化局長):都はこれまでも、「男女平等参画のための東京都行動計画」に基づき、防災分野における女性の参画促進に取り組んできた。審議会が取りまとめた「中間のまとめ」では、東日本大震災の際に、救援物質の配分や避難所の運営等で、男女のニーズの違いに応じた対応ができなかったとの課題が指摘されており、防災や復興に関する政策・方針決定過程の段階から、女性の参画を拡大すべきと提言。都は、審議会の答申を踏まえ、今後の計画策定において防災分野での女性の参画について検討。

 

  • アスベスト被害者への支援について

2006年、小池知事が環境大臣として提案した「石綿による健康被害の救済に関する法律」が制定され、認定されれば、医療費などを受けることができます。しかし、労働者だけでなく、周辺住民など広範囲にリスクがあることや、発症までの期間が長いため、因果関係がわかりにくい問題があります。

こうした中で、アスベスト救済法の認定患者について、国が調査をしています。この調査に基づく認定患者の都内における居住の状況を伺います。・・Q8

A8(福祉保健局長):同法に基づき被認定者に対する救済給付等を行う独立行政法人環境再生保全機構では、アスベストによる健康被害の実態把握のため、認定の申請・請求時に「出生時から申請時までの居住歴」などについて任意のアンケートを実施。2006年度から2014年度までのアンケートを取りまとめた報告書によると、申請時に居住歴が最も長い住所地が東京都であった回答者は累計で408名であり、兵庫県、大阪府に次いで多い。都内の住所地は、41自治体にわたっており、その8割以上が特別区。

 

かつて都内にも多くのアスベスト関連工場がありました。周辺住民などで、潜在的な患者も都内に多く存在すると考えられ、早期発見や治療の開始のための救済が必要です。

労働災害補償の対象とならない都民に対して、アスベスト健康被害への不安解消のため、都はどのような対応を行っているのか伺います。・・・Q9

A9(福祉保健局長):都では、アスベストに関するさまざまな疑問にお答えするため、アスベストの基礎知識や使用状況、健康への影響などをわかりやすくまとめた都民向けの「アスベストQ&A」や、保健所や企業の労働衛生部門などの相談担当者向けマニュアルを作成し、ホームページ等で広く情報提供。また、健康安全研究センターや保健所において健康相談を実施しており、相談内容に応じて、医療機関への受信や定期的な胸部レントゲン検査を勧めるほか、アスベスト健康被害救済制度などの情報提供を実施。今後とも、こうした取り組みを通じて、アスベストによる健康影響に関する都民の不安解消に努めていく。

 

アスベスト被害が認定されれば、患者は医療費などの助成が受けられますが、気づかない人が多い現状です。疑いのある市民が専門病院で胸部CT検査や問診を受けられるように、環境省は、2015年度から「石綿ばく露者の健康管理に係る試行調査」を進めています。この調査に自治体が名乗りを上げれば、検査費用が助成されるため、都はこの試行調査の対象自治体として積極的に名乗りをあげるよう要望し、質問を終わります。