2014年第1回都議会定例会一般質問
2014年3月6日
西﨑光子
1、女性が活躍できる社会について
ダボス会議を主催する世界経済フォーラムは、昨年 政治、経済、教育、保健の4分野で男女格差を測る「男女格差報告2013年版」を発表した。日本は、対象の136か国中105位で、一昨年よりもさらに4つ順位を下げ、2006年開始のこの報告では、過去最低となった。経済分野では、企業幹部の女性の割合が1割となり、104位。教育レベルは高いのに、女性が十分活躍できていないと指摘された。
舛添知事は、就任後「女性が活躍できる社会の実現」をめざすことを明言されているが、現実には、重要ポストに女性を起用すれば、女性活用が進むわけではなく、女性の活躍を阻む慣習や前例を破れるかどうかがカギになると考える。知事は、今後どのように進めていくのか、決意を伺う。・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Q1
A1:(知事答弁)
- 生産年齢人口が減少する中で、社会の活力を高めるためには、女性の活躍は不可欠。
- 女性の活躍推進に当たっては、見えない障壁を取り払うなど、社会全体の意識改革を促し、男女の別なく、意欲ある人が能力を十分に発揮し、確約できる環境をつくることが重要。
- 都は、企業経営者の意識改革を促すとともに、女性の活躍推進に向けた機運の醸成、安心して子供を預けられる環境の創出や企業における女性の登用・就業継続の後押しなど、女性の活躍推進に取り組んでいく。
厚生労働省の最新の調査によれば、全国の民間企業における男性の子育て休暇取得率は、1.89%とまだ低い状況である。さらに、超高齢社会の到来により、仕事と子育ての両立だけでなく、仕事と介護の両立も課題となっており、働く者にとって、ワークライフバランスの実現は、まさに社会的な要請である。
しかし、民間企業では、実際に仕事と子育ての両立を支援する制度があっても、「職場の上司の理解が得られない」ことや、「職場の同僚に迷惑をかけられない」といった不安があり、なかなか制度の利用に踏み切れない方が多いとも聞いている。
私は、これまでも、都職員の子育て支援策等に関する取組みや制度の利用実態について質問してきたが、待機児童の問題が深刻化している社会の中、都自らが職員の仕事と子育ての両立の模範になる取組みを実践していく必要があると考える。現在の取組み状況について伺う。・・・・・・・Q2
A2:(総務局長)
○平成17年3月に「東京都職員次世代育成支援プラン」を策定し、仕事と育児の両立を支援する勤務時間・休暇制度等の整備と周知を行った。
○女性職員の育児休業取得率は95%前後まで上昇し、男性職員については、2%前後とプラン策定時の倍となっている。
○両立支援制度は一定程度、定着したものと認識している。
○今年度は、都の部長級職員が、職場の核となる管理監督者に対して、働き方の見直しや効率的なマネジメント手法を講義。
○今後とも、両立支援制度の周知徹底、管理監督者の円滑な職場運営を支援し、職員が仕事と育児を両立しやすい職場づくりを実施。
2年前に生活者ネットワークで視察した京都「ジョブパーク」は、京都労働局「ハローワーク」との連携によるワンストップ機能で、職業紹介、就労後の定着支援まで行う全国でも珍しい総合就労支援拠点である。子育て中の女性やひとり親家庭への就労支援を行うために、同じ建物の中の男女共同参画センターの中に「マザーズジョブカフェ」があり、一人ひとりのニーズに応えるために、「ママさんコンシェルジュ」を設け、就業に伴う保育に関する相談や情報提供を行っている。さらに就職活動中及び就労決定後、子どもの預け先が決まらない場合の一時保育を確保する「安心ゆりかごサポート」や子どもを預けて受講できる職業訓練・講座を実施し、とても手厚い支援を行っていた。
東京都でも、東京仕事センターにおける就職支援に加えて、来年度から新たに女性の再就職窓口を設置し、出産、育児、介護等で離職した女性などを対象に、きめ細かい対応を行う予定にしているが、どこまでの支援体制をつくっていくのか、伺う。・・・Q3
A3:(産業労働局長)
○都はすでに、東京仕事センターにおいて、年齢や性別を問わず、きめ細かい就職支援を実施している。具体的にはカウンセリングやセミナー、パソコン講習のほか、ハローワークとの連携や民間事業者の活用による職業紹介等を行っている。出産等で離職した女性向けとしては、職場体験を取り込んだ就職支援プログラムや無料の託児サービスなど手厚い支援も実施している。
○来年度は、再就職を希望する女性向けの相談窓口を設置し、家庭生活と両立しやすい仕事の紹介や相談、保育情報の提供などの支援をワンストップで展開する。
2、保育待機児対策について
都内一の待機児童数を抱える世田谷区では、以前から国有地活用を進めており、最近では一昨年2園、今年1園が国有地を使って開設された。さらに今後開設を見込むところが5カ所もある。区内には省庁の宿舎など活用できそうな国有地はたくさんあるが、問題は借地料の高さである。一昨年開園の2ヶ所では年間1700万円と1300万円の賃借料で20年契約で約6億円にもなる。周辺の地価に比べ、2割程度は安いとは言われているが、5割減の都有地に比べ、割高である。首相も保育待機児対策に全力を挙げると言っており、知事もさっそく国に働きかけたということだが、減額幅を都有地並みにするよう更なる働きかけが必要である。見解を伺う。・・・・・・・・・・・・・Q4
A4:(福祉保健局長)
○都はこれまで、国に対し、国有地の貸付に当たって、土地の貸付料の減額をおこなうこと、また、現在利用可能な国有地情報だけでなく、将来利用が可能となる国有地情報についても、早期に提供することなどを、提案要求してきた。
○今後も、保育所の整備が促進されるよう、国に対して、国有地の活用に関する働きかけを行っていく。
世田谷区では、保育需要に応えるため、あらゆる可能性を検討し、小中学校の敷地の一部や区立公園の一部などに、認可保育園の分園を20カ所以上つくってきた。よくぞここまで見つけた、と思うほどである。特に学校敷地内にあっては本来の教育環境を阻害することなく、むしろ幼児が身近にいるプラス効果を評価する声も多いと聞く。ぜひ都立高校等でも同様の取組の検討を要望する。
都営住宅の建て替え等に伴い生み出された用地を使って、都有地の福祉インフラへの活用を積極的に行っていることは評価している。
知事は「使える都有地はもうほとんどない」と判断されたようだが、現在は活用されている土地でも、今後の建て替えや施設の統合などで新たに土地が出てくると思われる。そのような土地をできるだけ早い段階で福祉インフラとして活用できるようにすべきではないかと思うが、見解を伺う。・・・・・・・・・Q5
A5:(財務局長)
- 都有地は、都民から負託された貴重な財産であることから、福祉インフラ整備等、都政の喫緊の課題可決のために活用。
- 都はこれまで、当面の未利用都有地を活用し、認可保育園や高齢者向けの福祉インフラ整備等のため、都有地を貸し付け。
- 未利用の都有地にも限りがあるため、区市町村と連携し、都有施設の更新計画における早い段階から創出用地を検討、調整することで、福祉インフラ整備を進めていく。
保育待機児問題は、供給を増やしてもさらにそれを上回る需要を呼び起こしているのが現実だ。いったん待機児ゼロを宣言した横浜市も、潜在的保育需要が顕在化し、来年度に向けては、2月19日現在3353人が未だ保育園に入れるかどうか決まっていない状況。
待機児解消は、現在の需要に対応する施策では間に合わないと考えるべきである。「女性が働きやすい環境整備」を実現するために、全庁挙げて待機児解消に知恵を絞っていただくことを重ねて要望する。
3、高齢者福祉について
高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるようにするためには、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築が求められる。
また地域における医療と介護の連携や生活支援サービスの提供など、公的サービスのみならず、インフォーマルな社会資源も活用した包括的な支援が必要である。そのためには、区市町村において、多職種が連携し、高齢者個人に対する支援の充実とそれを支える社会基盤の整備を図る地域ケア会議の活用が有効と考える。
このような取組を推進するにあたって、地域包括支援センター職員の資質向上がこれまで以上に求められると思うが、所見を伺う。・・・・・・・・・・・・・Q6
A6:(福祉保健局長)
○地域包括支援センターは、高齢者や家族からの相談に応じるとともに、医療や介護サービスが適切に提供されるよう、関係者間の連絡調整を行う機関で、地域包括ケアを実現するために中心的な役割を果たす。
○そのため、職員の資質向上は重要。都はこれまでも、センター職員を対象に、医療や介護など多職種連携の手法や、地域ケア会議の効果的な開催方法など、業務を行う上で必要な知識や技術を習得する研修を実施。
○今来年度は、地域ケア会議に関するより実践的な演習を盛り込むなど、研修内容や研修時間を拡充し、センター職員の更なる資質向上を図る。
さらに介護保険の次期制度改正においては介護予防の見直しが大きな課題になっている。2017年4月までに新しい介護予防・日常生活支援総合事業をすべての区市町村で開始することになっているが、新しい介護予防・日常生活支援総合事業では、予防給付のうち訪問介護と通所介護が区市町村に移行し、地域住民やボランティアなど多様な地域資源を活用したサービス提供を行うことになる。そこで次期制度改正における介護予防の見直しに向けて、都は区市町村をどのように支援していくのか伺う。 Q7
A7:(福祉保健局長)
○区市町村の介護予防の取組について、都はこれまで、担当者連絡会を開催し、各地域の取組状況について情報共有を図るとともに、多様な地域資源の活用等に関し、専門的助言を実施。
○介護保険制度における介護予防の見直しは、国会での法案審議後、本年夏ごろに、国がガイドラインの素案を示す予定。都は連絡会を活用して、制度改正に関する情報提供や、効果的な介護予防の先行事例の紹介などを行い、区市町村を支援。
4、災害対策について
2週続けての大雪は、山間部の孤立集落や農業ハウスの倒壊など、思いがけない被害をもたらした。27センチを超える大雪は45年ぶりということだが、特に23区では、都民生活にもたらした想定外の影響は交通問題だった。企業では、早めに帰宅するよう呼びかけたところもあったが、帰宅途中で交通がストップし、バスやタクシーも対応できず、7時間以上電車に閉じ込められた人の中には女性も多くいた。
東京には海外からも含め、旅行者やこの季節特有の受験生など、一時的な滞在者も多く、長時間、電車や空港などに足止めされた人々はまさに帰宅困難者と言わざるを得ない。帰宅困難者対策では、交通事業者が一義的には責任を持ち、水や毛布等の支援をすることになっているが、地域防災計画には想定されていない大雪に対しても、都として、危機管理の観点から、都民の安全を確保するために、情報提供や一時滞在施設の開設等を検討してはいかがかと思うが、見解を伺う。・・・・・・・・・・Q8
A8:(総務局長)
○東日本大震災の際には、多くの人が一斉に帰宅を開始したため、車道に人があふれ、緊急車両の通行に支障をきたすなど大きく混乱。
○一時滞在施設はこの教訓を活かし、首都直下地震等において帰宅困難者の大量発生による社会の混乱を防止するため、確保を進めてきた。
○大雪等の場合には、あらかじめ備えておくことが可能なため、迅速・的確な情報発信が重要。この大雪の際には、ホームページやツイッターを活用して気象情報、鉄道の運行情報を提供。
○今後も、大雪等の際には、都民に対してきめ細かに情報提供を実施。
今回、都内ではカーポートやアーケードが倒壊し、青梅の中学校体育館や埼玉県の体育館の屋根が崩落する事故も発生した。震災時に避難所となる体育館には耐震性の確保は不可欠だが、積雪時の荷重も再検討する必要があるのではないかと思う。都は今回の様々な状況をしっかりと検証し、危機管理対策を充実させることを要望する。
5、環境エネルギー政策について
まもなく福島第一原子力発電所の悲惨な事故から3年を迎えようとしているが、いまだに福島県の13万人が避難しており、将来の目途が立たない状況である。これからのエネルギー政策は、二度とあのような惨禍と恐怖の体験を強いることのないものにしなければならない。
生活者ネットワークは、原発を即時ゼロにすべきと考えてきた。原発ゼロの実現に至る過程や速度に違いがあっても、「原発からの脱却」という意思は、今日に至るまで政治的立場や政党支持の相違などを超え、多くの国民に共有されている。まずは、その決断と方向性を示すことが重要ではないか。
知事は、今回の都知事選政策の中で「原子力発電に依存しない社会の構築、再生可能エネルギー20%計画の構築」を掲げた。その実現に向けて、省エネの推進と再生可能エネルギーの拡大が重要であるが、知事のエネルギー政策の推進に向けた見解を伺う。 Q9
A9:(知事)
○東京は、電力・エネルギーを最も多く消費する都市であることから、大消費地としての責務を踏まえ、一層の省エネ・節電とともに、再生可能エネルギーの普及拡大に努めていくことが重要と認識。
○このため、家庭や事業所における様々な取組をすすめ、日本の優れた省エネ技術も活用しながら、省エネルギーを積極的に進めていく。
○また、再生可能エネルギーの利用割合を拡大するため、その第一歩として都の内外における民間投資を促進する「官民連携インフラファンド」を創設することとした。今後さらに、専門家の助言を得ながら具体策を取りまとめ、再生可能エネルギーの普及拡大に向けた取り組みを強化していく。
知事は、「消費者としてできることから始める」と言っていますが、実際に市民共同発電所など地域でエネルギーをつくり出す取り組みが始まっています。公共施設の屋根貸しなど地域自治体と連携した動きも見られます。こうした都民の活動を都としても後押しすることが重要です。
地域で先進的に屋根貸し事業に取り組んでいる事例もありますが、こうした取り組みに対する都の見解を伺います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q10
A10:環境局長
○都は、太陽光発電の新たな導入手法である「屋根貸し」事業の推進に当たって、積極的に取り組む地域の自治体とも連携し、その普及拡大を図っていく。
○すでに今年度、多摩市と世田谷区でセミナーを開催し、事業者の具体的な取り組み事例等の紹介等を行っている。
○今後も引き続き、「屋根貸し」という新たな手法がより一層活用されるよう、区市町村との連携を広げていく。
リニア中央新幹線の環境アセスメントについては、昨年9月に出された環境影響評価準備書に対する都知事意見を近くまとめると聞いている。リニア新幹線は、超電導による磁気で浮上して時速500㎞の超高速走行を可能にし、東京―名古屋を最速40分で結ぶ計画である。全長の約8割はトンネル構造で、南アルプスの地下を掘りぬき、地下40m以下の大深度地下方式を用いるなど、地上の自然環境や地下水への影響や、磁場による乗客への健康影響も懸念される。
2011年9月に公告された環境影響評価方法書に対し、関係自治体から出された意見の中には、環境影響に対する多くの懸念が示され、事業者であるJR東海に対し、対策が求められている。今回の準備書では、特に健康被害が懸念される磁場に関する情報提供が不十分であるなど、根拠や調査の不備が指摘されている。都は、都民の懸念に応えるという観点で、環境影響評価準備書の審議を行う必要があると考えるが、見解を伺う。 Q11
A11:(環境局長)
○事業者である東海旅客鉄道株式会社から、昨年9月に、環境影響評価法に基づく環境影響評価準備書が送付され、30日間の縦覧を経て、現在、東京都環境影響評価審議会において、大気汚染、地盤、地下水、磁界などの22の項目ごとに、準備書の審議を行っている。
○今後は、沿線自治体である関係区市長の意見や、2月に開催された「都民の意見を聴く会」における沿線住民等の意見を勘案し、審議会での議論を踏まえ、東京都環境影響評価条例の主旨に基づき、より環境に配慮した事業となるよう、事業者に対し、3月末を目途に、知事意見を述べる予定である。
以上