2008年第4回定例会 討論

2008年12月17日
原田恭子

 私は、生活者ネットワークを代表して知事提出の全議案に賛成。議員提案の議案3件には議員提出議案第29号「東京都立学校の授業料等徴収条例の一部を改正する条例」、第30号「高齢者の医療費の助成に関する条例」、第31号「心身障害者の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例」に反対の立場から討論を行ないます。

首相自ら100年に一度の「未曾有の大不況」といい、国も第2次の緊急対策補正予算案を示していますが、ねじれ国会の中、実施までの現実性がなかなかみえてきません。
そうした中で、東京都は年度末・年度始めの端境期に対応するとして、総額508億円の補正予算を計上したことは、すばやい対応と評価するものです。
補正予算の3本の柱とされているのが、中小企業支援・雇用確保対策、福祉施設への特別融資や周産期医療への対応、中小企業活用のインフラ整備ですが、予算額の8割以上が中小企業対策です。融資枠を増大し、保証金補助を行い、公共工事で緊急事態に対応するなどで、資金繰りに苦しむ中小企業への支援として緊急的に必要な対策と考えますが、職を失い、住まいも失い、本当に支援の必要な人々にまで届くかどうかは疑問です。
世界的金融危機は、長期化するとの予測もあり、こうした対処療法的な救済だけでは解決できません。人への投資、能力開発に向けた投資を社会全体で考えていく時代に入ったことを行政は認識すべきだと考えます。
グローバル化に振り回されない地域に根ざした安定した働く場は、担い手や地域に安心をもたらします。
今後は、市区町村との連携でよりきめ細かな対応を要望するものであり、官民一体となって、一時的なものだけではなく、将来の安心が描ける誘導が求められます。

今回補正予算に組まれた総合周産期母子医療センター機能の強化や、医師確保については、都立病院、民間の病院と連携して周産期医療ネットワークを構築し、着実に成果を上げることを期待します。
また、NICU、GCUの確保のためには、施設整備だけでなく、長期入院児の地域の受け皿を充実し、重症心身障がい児の在宅医療のサポート体制を整備するよう、福祉保健局全体で取り組んでいくことを要望します。
さらに、ハイリスク出産への対応だけでなく、大多数の妊産婦が地域で安心して出産できるように、助産師との連携で、女性の生涯を通じての健康づくりの推進を提案します。

次に、議員提出議案3件について、仕事、住まい、年金、介護、医療などのセーフティネットがいずれも危うくなっている今、市民の負担を少しでも軽減し、安心・安全な社会の構築が求められています。
自分がリスクに陥ったときに、社会が救ってくれるという社会の信頼が前提です。この危機的な時代に年金・医療・福祉の領域を対症療法的に手当てするのではなく、将来に向けての長期的ビジョンのもと、体系的な施策が必要です。

始まったばかりの後期高齢者医療制度が、国において見直しが必至の状況の中で、福祉・医療全体を検証し、高齢者・障がい者に対しては、時代に対応した取り組みが求められています。
今、医療費助成だけを部分的に対応することでは混乱を招く恐れもあり、十分な議論が必要と考え、反対せざるを得ません。

都立高校の授業料の軽減についても、2007年(平成19年)度、経済的理由で退学を余儀なくされた子ども達が48人もいます。この不況の中で、さらに経済的に苦しくなる家庭が増えることが想定されます。
生活者ネットワークは、一律に授業料を下げるのではなく、むしろ、本当に苦しい家庭の子どもが退学することなく、年度途中でも、授業料減免を受けやすくし、卒業まで支援していくことが最も必要なことと考えます。
同時に、私学の子どもたちにも学ぶ機会を保証し、一人ひとりの子どもをしっかりと受け止める教育を求めるものです。
日本は、資源が少なく、人が資源の国といわれてきました。人間が成長していける社会こそ、希望を持つことができる社会だということを申し上げます。

最後に、一般質問でもとりあげた緑政策について申し上げます。
参議院宿舎建設問題は、白紙撤回となって、都心の貴重な緑が守られたと胸をなでおろしはしましたが、今後も守られるかどうかは予断を許しません。緑地を守るために知事のいっそうの尽力を願うものです。
雑木林や屋敷林は、長い年月をかけてできあがったものであり、いかに既存林を残すかが、まちづくりには欠かせない視点です。
東京都の独自の政策として保全地域制度での緑地確保が進んでいることを評価し、さらに、まだ既存林が存在している多摩地域で、都市計画法に基づく特別緑地保全地区の指定を支援する東京都の補助制度の創設を要望します。
校庭の芝生化は、教育環境にとっても有効であると、教育庁も認めています。公立小中学校の芝生化で300haの緑地確保は「10年後の東京」の目玉の事業です。この政策を進めるための大きな課題として、維持補修費の補助が必要なことを再度申し上げて、生活者ネットワークの討論とします。

以上