2007年第3回定例会 一般質問

都議会生活者ネットワーク
大西由紀子

(質問部分抜粋)
温暖化対策とエネルギー施策について
Q1.今年春、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が気候変動の深刻さと世界的な対策の必要性について、科学的な知見を明らかにしました。石原知事もその深刻さを警鐘しておられます。また、今年の猛暑は、人々に地球温暖化の進行を実感させました。
一方、新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発は被災し、地震国日本の原発は取り返しのつかない被害をもたらす危険があることを思い知らされました。原発は、この数年間、数々の事故や不祥事で止まり、エネルギーを原発へ依存することの危うさは、もはや明らかです。現在、大量に消費するエネルギーの多くを他県に依存している東京は、高い目標をもって温暖化対策すすめると同時に、エネルギー自立都市をめざし、省エネや再生可能エネルギーへの転換をを推進すべきです。知事の見解を伺います。

A1.(知事)
○ 都は、「十年後の東京」でCO2排出量を2020年までに2000年比で25%削減するという目標を掲げ、戦略的、集中的に地球温暖化対策を実施している。
○ 今後とも、省エネの促進や再生可能エネルギーの導入など具体的で実効性のある対策に取り組むことにより、CO2削減を強力に推進していく。

Q2.都はこれまでも都有施設で、グリーンエネルギーの調達を図ってきました。再生可能エネルギー戦略で打ち出した2020年までにCO2を20%削減するという高い目標の達成のためには、グリーンエネルギーの導入の枠組みを思い切って広げることが必要です。
今年度、佐賀で行われた高校総体では、運営にかかるエネルギーの一部について、グリーン証書の導入によってカーボンオフセットが行われました。民間でも、環境に貢献する事業に融資を行っているAPバンクのコンサートで、グリーン電力証書が導入され、川崎市で行われたアメフトの国際大会、小平市主催のエコフェスティバルでの導入など、自治体の行うイベントでの導入事例も出てきました。しかし、新しい政策のため、グリーン電力の導入が再生可能エネルギーを育てることに繋がるということが、人々に理解されているとはいい難い状況です。東京都が行うイベントにも、グリーン電力証書を積極的に導入し、普及啓発に努めるべきです。
グリーン電力証書を取り扱っている企業やNPO団体との連携を図り、新たな導入のスキームを構築する必要があると思います。どのようにすすめていかれますか。

A2.(環境局長)
○ 都は、これまでも、率先して再生可能エネルギーの導入に取り組んできた。
○ 都の取り組みを全国の自治体や企業に普及させるため、本年6月5日に「グリーンエネルギー購入フォーラム」を発足させた。
○ 当初13団体で発足したこのフォーラムは、北海道から九州までの自治体を中心に、企業やNPO団体の参加も得て、現在46団体まで広がっている。

防災について
Q3.今年、東京都防災会議の被害想定の見直しを受け、「地域防災計画」を修正しました。これをベースに市区町村でも「防災計画」の見直しが行われています。
関東大震災では火事、阪神・淡路大震災では家屋の倒壊、新潟・中越地震では土砂崩れやエコノミークラス症候群等で多くの命が奪われたことを見れば、震災対策は、あらゆる状況を想定し、対策をたてなければなりません。特に東京では、超高層ビルをはじめとする巨大建造物があり、建物、その他人工物の倒壊による被害を最小にすることが課題です。学校、駅、鉄道等公共公益施設の耐震補強には、財政的支援が不可欠です。
都として、広域的視点で「地域防災計画」見直しについて、市区町村と協議し、早期に実効性ある震災対策を進めるべきと考えます。見解を伺います。

A3.
○ 都は、本年5月に地域防災計画を見直し、減災目標を盛り込むとともに、都市型災害への対応を強化。
○ 震災対策の推進には、都と区市町村の連携した取り組みが必要。
○ 都は、区市町村の計画見直しに当たり、都の計画との整合性が取れるよう十分協議するとともに、事業実施についても、区市町村と連携して取り組む。

Q4.都の防災計画では、避難所の設置は、市区町村の責務となっています。避難所の指定基準は、耐震・耐火・鉄筋構造を備えた学校、公民館等の公共建設物を利用し、避難所に受け入れる被災者は、3.3㎡当たり2人という計画です。東京湾北部地震が発生した場合、耐震性のない避難所の倒壊まで想定すると、最も被害の大きい23区内では避難所に入れない人が約60万人に達する見込みという結果を国の中央防災会議が発表しました。
耐震性のある安全な避難所確保にむけ、避難所の実態調査を市区町村に対し行うべきと考えます。見解を伺います。

A4.
○ 都は、広域的な観点から、避難所を含む区市町村防災事業の現況調査をしてきた。
○ 耐震化については、避難所全体を大括りに調査してきたが、近年、さまざまな施設が避難所にされており、これら施設の耐震性の確保が重要。
○ 今後、区市町村の避難所の調査についても、より詳細に行う。

化学物質対策について
Q5.欧州では、REACHと呼ばれる化学物質の登録や評価などの制度が今年6月から開始されました。また国連は、化学物質の危険性や有害性などを分かりやすく分類・表示するGHSという仕組みを、2008年を目標に運用することを、2003年7月に各国に勧告しました。有害化学物質削減の施策実施は世界的な流れです。
日本では、1999(平成11)年にPRTR制度が導入されましたが、この制度の目的や効果が市民生活の中で全く実感できないことは問題です。
例えば、家庭用の合成洗剤で一部使われているLAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩)も、生態系への有害性が懸念されるとして、PRTRの対象物質とされていますが、これを知る一般市民はほとんどいません。下水道の普及によってLASの河川への放出は減っていますが、水生生物に与える影響は石鹸などに比べ、決して無視できません。化学物質の削減に向け、市民自らも使用削減を行う必要があると思います。
都は、化学物質の年間取扱量1トン以上の事業所を対象としている国のPRTR制度に加え、小規模の事業所に対しても、人の健康に有害な物質の排出抑制を図るため、環境確保条例による独自の化学物質適正管理制度を設けています。まず、都の制度の特徴とこれまでの成果について伺います。

A5.(環境局長)
○ 都の制度の特徴は、国の制度に比べ、環境への排出抑制、有害性の少ない代替物質への転換、事故の防止などを目的とし、国の制度で求める排出量などに加え、適正管理に欠かせない使用料や製造量などの把握や報告を義務付けていること。
○ 制度の実施により、設備の改善や化学物質の使用の合理化などが図られた結果、約3,000の対象事業者からの排出量は、年々減少し、平成17年度は14年度に比べ、約3割削減。
○ 今後とも、条例の実施機関である区市と密接に連携しながら、化学物質の適正管理に努めていく。

Q6.都は、今年度から、市民、事業者、行政が連携してリスクコミュニケーションを推進する地域モデル事業を実施予定です。このモデル事業で、化学物質の情報を分かりやすく市民に提供し、市民自らが有害性の少ない製品を選択し、有害化学物質の使用削減を促す必要があると考えます。都の見解を伺います。

A6.(環境局長)
○ 都は、地域における環境リスクの低減を図るため、モデル地域を選定して、都民、事業者、専門家及び地元の区市町村とともに、リスクコミュニケーションの推進のための事業を今年度実施。
○ 本事業を通じて、化学物質に関する正しい情報を共有化することにより、事業者による化学物質の適正管理だけでなく、都民も日常生活において有害性の少ない製品を購入するなど、地域において化学物質を適正に使用する機運を高めていく。

基礎自治体への分権プロセスとしての包括補助金・交付金について
Q7. 9月、全国知事会、市長会が、更なる地方財政に対する国の関与、権限委譲を求めたことに対し、中央省庁の意見は分権に消極的なものが大半だったと報道されています。知事は小泉首相の時代の分権を指し、「国や地方の役割分担を明確にしない帳尻あわせの分権」と非難し、国に対して役割を明確にした上の地方分権の必要性を強く主張しています。東京都と基礎自治体の役割分担と、東京都から基礎自治体への分権について、基本的な考えを伺います。

A7.(総務局長)
○ 区市町村の役割は、地域の実情に応じて、住民に身近な行政を総合的に提供していくこと。
○ 都の役割は、広域的な行政課題への対応や、高度で専門性が求められる事業の実施など、広域的な自治体としての責任を果たすこと。
○ こうした視点に立ち、都はこれまでも、事務権限の移譲を積極的に進めてきた。
○ 今後も、区市町村が自らの責任と権限により、地域の実情に即した行政運営ができるよう、分権を進めていく。

Q8.国の補助金は大幅に見直され、一般財源化される中で、基礎自治体では従来、補助金でその存在が保障されてきた事業が不安定になっています。しかし、地方分権は地方自治体の主体的な事業展開を可能にするためのものであり、今後、基礎自治体は市民とともに自分達のまちづくりを考え、実践していくことが問われます。
東京都も、基礎自治体の裁量を広げる施策として包括補助金化、交付金化を実施してきました。自治体の独自性を引き出す仕組みとなっており、段階的な分権の手法として評価します。そこで先行して試行した福祉保健局の交付金、包括補助金についての現状を伺います。

A8.(福祉保健局長)
○ 福祉保健局における交付金、包括補助金の現状についてであるが、子育て推進交付金は、市町村が地域の実情に応じて、創意施策を行うことができるよう工夫により、子育て支援全般の充実を図るものであり、昨年度から実施している。
○ また、福祉保健区市町村包括補充事業は、区市町村の主体的な福祉保健施策を支援するしくみとして、今年度新たに創設したものである。現在、各区市町村から申請を受付け、内容の審査を行っているところである。
○ 今後とも、このような区市町村の自主的な取り組みを支援する制度により、地域からの発想を活かしながら、東京の福祉保健施策の充実を図っていく。

Q9.これから基礎自治体が主体的に事業展開できる体制作りは喫緊の課題です。最終的な分権はひも付きでない財源と権限の移譲ですが、その過程として東京都は包括補助金化、交付金化を進め、自治体の裁量の可能性を広げていくことが大切です。見解を伺います。

A9.(総務局長)
○ 本来、地方自治体が、主体的に施策を展開するには、それに見合う自主財源の確保が必要。このため、都では、国に対し、税財政制度の抜本的改革について強く働きかけている。
○ 区市町村への補助制度については、その意義、役割を踏まえつつ、自治体の自主性・自立性の向上を図るという視点に立って、小額補助金の統合や補助金のメニュー化、包括化などの見直しを進めている。
○ この結果、福祉等の分野で、地域の実情や区市町村の創意工夫を活かした事業展開が可能となった。
○ 今後とも、地方分権を推進する観点から都と区市町村との役割分担の明確化を図りつつ、補助金の見直しを進めていく。

DV被害者支援について
Q10.全国の配偶者暴力相談支援センターや警察が対応した配偶者暴力に関する相談等の件数は年々増加し、過去最高になっています。2007(平成19)年3月、政府の男女共同参画会議は、配偶者暴力防止の見直し等に向けた報告書を作成し、これを受けて今年の7月改正DV法が全会一致で成立しました。
これまで都では、東京ウィメンズプラザと東京都女性相談センターが「配偶者暴力相談
支援センター」としての機能を担ってきましたが、DV法の改正により、市区町村も相談センターの設置が努力義務になりました。身近な地域での相談や支援体制が求められており、市区町村における配偶者暴力相談支援センターの機能整備にむけて、今後都はどのような支援を行っていくのか、伺います。

A10.(生活文化局長)
○ 民間シェルター等においては、防犯カメラや窓の進入防止柵などの設置により、被害者の安全確保を図る必要性が高い。
○ DV防止等民間活動助成対象事業において、今年度からシェルターなどの安全対策のための設備に係る経費に対し補助を行うこととしており、今後とも被害者等の安全確保を支援していく。

今回のDV法改正で、保護命令制度を拡充し、生命等に関する脅迫をうけた被害者にかかる保護命令が出せるようになったほか、従来の接近禁止命令にあわせて、電話・メール等の禁止、被害者の親族等への接近禁止などが対象になりました。
DVは犯罪です。事件への未然防止のためにも、相談を受ける警察の対応は重要です。二次被害や対応の遅れのないよう、女性警察官の配置、職員研修などをさらに進めるよう要望します。
今年の夏、私の地元(国分寺市)で、警察官が女性を殺害し、拳銃で自殺した事件は、市民に衝撃を与えただけではなく、警察に対する信頼も揺るがせました。DVやストーカーなどの被害にあっている当事者にとり、警察は頼りにしたい相談窓口であり、被害者を犯罪から救う任務を警察は負っています。2度とこのような事件が起こらないようにするとともに、DVやストーカーなどの対応に万全を期するよう求め、質問を終わります。