都議会生活者ネットワーク
山口文江
石原知事3期目の施策がいよいよ具体化していくと考えられる第3回定例会でしたが、誰もが3選に向けての危機感を持った知事の選挙向けの公約と受け止めていた個人都民税の軽減案が、あっという間に撤回されました。もとより石原知事に最も似つかわしくないと思われた公約ではありましたが、公約のあまりの軽さと、選挙中に見せた反省の態度からの豹変振りには驚くばかりです。
この施策を実施すると、逆に不公平を生む恐れがあることや、実際に計算をしてみると一人当たりの軽減額が小さく効果が薄いなど、今回撤回理由に掲げられたことは、課税免除の問題点として、最初からわかっていたことです。
知事は、施策として手当てすることを公約の進化ととらえてほしいといわれますが、今回示された対策の効果予測を具体的に示すことでしか、撤回を正当化することはできません。
都民税の軽減案が期待された裏には、格差社会の進行が現実のものであり、将来への不安を招いているのです。そこに対しては、行政としての確かな施策が求められています。生活者ネットワークは、社会的弱者対策として、高齢者のみならず、将来の社会を支える若者、障がい者、シングルマザー等への、雇用対策を速やかに示していくことを求めます。
石原知事は温暖化が進行している現状を自らの目で確かめるために、ツバル・フィジーを視察しました。東京都における温暖化対策が飛躍的にすすむことに期待するものです。
しかし知事は施政方針の中で、国の温暖化対策を指して、大気汚染の問題の轍を踏むことなく行動すべきにも関わらず温暖化対策に実行性のある具体策がないと批判していますが、三環状道路をはじめとする道路ネットワークを強行に推進しようとしている石原知事こそ大気汚染問題の反省がないと写ります。渋滞解決のために整備した道路整備が新たな車を誘導していく現実を学習すべきです。
また、東京一人勝ち論に対して大都市のインフラ更新こそ東京の大きな負担になると弁明しながら新たなインフラを広げようとする姿勢はまた、次世代へ負の遺産を生み出すことになりかねません。持続可能な都市づくりの視点こそ求められていることを申し上げておきます。
国の中央防災会議は、東京湾北部地震が発生した場合、耐震性のない避難所の倒壊まで想定すると、最も被害の大きい23区内では避難所に入れない人が約60万人に達する見込みという結果を発表していましたが、この10月2日には、最大で162万世帯が家を失い、半年後も27万世帯が住宅を失ったままになるとの試算を新たに発表しました。
いよいよ震災対策はまったなしです。
東京都の震災対策は、自助と減災の方向性を打ち出していますが、そうであるならば、今最も必要な対策は、耐震対策と安全な避難所の確保と考えます。しかし、具体的な施策の実行はほとんど自治体の責務となっています。
今回の生活者ネットワークの一般質問で明らかになったのは、現在、見直しが検討されている「区市町村地域防災計画」の進捗状況を都はまったく把握していないことです。特に、学校や体育館は、日常は学習の場とし、災害時には避難所として、安全が最も求められています。
しかし公立小中学校の耐震化率は23区77.1%、多摩地域64.1%、全体で72.4%です。都の耐震化促進計画では、2015年(平成27年)度に100%と計画していますが、財政的裏づけもなく、区市町村に計画をつくって進めてくれとお願いするという情けない状態です。計画の実効性が疑われます。
現在、学校や、体育館の耐震は国と区市町村の負担でやるため、財政の厳しい区市町村の負担は重く、市長会も都独自の補助制度を要望しています。都の財政状況に余裕がある今こそ、市区町村の震災対策を財政支援とともに、進めていくことを重ねて要望しておきます。
最後に、安倍前総理大臣が1年で退陣を余儀なくされ、福田新総理が誕生しましたが、政権を揺るがせた「政治とカネ」の問題は一向に治まる気配もなく、政治家の資産公開や政治団体収支報告などでは、添付の領収書から、虚偽の記載や多重の使いまわしなどが明らかになりました。国民の政治家を見る目はますます厳しくなっているところから、事務所費については、与党もいよいよ1円からの領収書添付の方向で動き始めています。
都議会においても、継続審議となっている政務調査費について、生活者ネットワークは、「議会が一致して取り組むべき問題であり、自主公開では問題解決とはならない」と考えます。自民・公明・民主による非公開の協議では、公開に向けての協議が進められているようですが、領収書添付を1日も早く実行するべく、議論の公開と決着を求め、生活者ネットワークの討論とします。