2006年第2回定例会 一般質問

都議会生活者ネットワーク
原田恭子

米軍施設の返還について
Q.1 日米安全保障協議で、昨年合意した最終文書が今年の5月1日に発表されました。横田基地の管制空域の一部返還と共用化が進められていますが、生活者ネットワークは、あくまでも全面返還にむけての知事の強い姿勢を示すことが必要と考えます。
多摩市・稲城市にまたがる米軍の多摩サービス補助施設は、軍事目的のないレクリエーション施設であるにもかかわらず、今回の合意でも、返還については何も言及されていません。多摩サービス補助施設の全面返還にむけて、あらためて知事の決意をお聞かせください。
A1.(知事答弁)
・ 多摩サービス補助施設は軍事目的と関わりのないレクリエーション施設。
・ 直ちに返還され広く都民のために開放されるべき。
・ 多摩サービス補助施設の名をあげて大臣に返還を要請。
・ 引き続き強く全面返還を求めていく。

Q2. 返還までの期間も、都民が活用できるよう開放を強く願います。自然観察、バードウォッチング、弾薬庫跡地見学など、一定の目的を持った団体への開放を積極的にすすめるべきと考えますがいかがですか。
A2.(知事本局長)
・ この施設が、市主催事業など一部に開放されていることは承知。
・ 本来、直ちに返還されて全面的に都民の利用に供すべき。
・ 渉外知事会や、国への提案要求を通じて即時返還を国に求めている。
・ 都民への全面的開放に向け、粘り強く働きかけていく。

森林事業について
Q3. 東京都の総面積の約1/3は森林です。H14年度に都が行った「河川・森林に関する世論調査」では50%以上の都民が、森林がもつ大気の浄化作用、山崩れ・洪水の防止効果、水資源を貯える役割、温暖化防止への貢献などに期待感を示しています。
さらに今年度は、花粉症対策の取組が開始されたことで、森林行政が大きく注目され、一層の展開が期待されています。
ところで、杉を植え替える際に伐採される年間120ha分の木材は、全部利用できる訳ではなく、相当の端材や樹皮が生じます。こうした端材は十分に利用することで、資源循環型社会への転換の一助となり、地球温暖化防止への有効な一歩になります。
木材は再生可能な資源で、エネルギー利用においても化石燃料とは違い、大気中の二酸化炭素を一方的に増加させない環境にやさしい資源です。今回の対策を契機に、木材利用をすすめるともに、端材や樹皮の利用拡大をはかって欲しいと考えます。
花粉症対策の杉伐採で発生する端材、樹皮の発生量の見込みと、今後の活用についてお伺いします。
A3.(産業労働局長)
・ 花粉症対策では、向こう10年間の平均で年間18万本の杉を伐採する予定。
・ 現行の約8倍の伐採量にあたり、概算で、端材は年間4200トン、樹皮は1600トン程度発生。
・ 端材等については、製紙原料としての利用のほか、エネルギー源として、製材所の木材乾燥機の燃料や粒状の固形燃料に加工してストーブ等で利用。
・ 製紙原料等については、今後とも十分需用が見込まれ、これへの供給を拡大。
・ 家畜舎の敷料や果樹園の被覆材料等としての利用促進など、増大する端材等の需要拡大にも努める。

エネルギー政策について
Q4. 東京都には約5万haの豊かな森林資源が存在します。かたや、大消費都市として大量の生ごみや下水汚泥なども抱えています。持続可能なエネルギーとして、使われていないバイオマスに着目し、その活用を進めていくことがこれからの課題と考えます。東京都の考えをお聞かせください。
A4.(環境局長)
・ これまで、廃棄物埋め立て処分場などから発生するメタンガスで発電を行うなど、バイオマスを有効活用。
・ 食品廃棄物のバイオガス発電も開始。
・ こうしたバイオマスの他、樹木の枝葉など多様な資源が存在。
・ 今後、これらの活用について検討。

障がい者の就労について
Q5. 「障害者の地域における自立した生活を支援する体制づくり」の推進のため、障害者自立支援法がスタートし、身体・知的・精神の3障がいに対応するサービス体系が一元化されました。同時に、改正障害者雇用促進法が施行され、障害者雇用率の算定に精神障がい者が加えられ、在宅就業の促進と福祉施策との連携が盛り込まれました。
ノーマライゼーションの進展を踏まえ、地域でともに学び、ともに働く社会の実現のための施策を早急に展開しなければなりません。
従来の福祉的就労に留めない障がい者の一般就労に向け、東京都は、どのような取組を行っているか、福祉保健局、並びに産業労働局に伺います。
A5.(福祉保健局長)
・ 都では障がい者の就労機会の拡大を目指し、平成15年度から、身近な地域で就労面と生活面の支援を行う区市町村障害者就労支援事業を実施してきた。昨年度は28区市において事業を実施し、700人を超える障がい者の就労を実現した。
・ 今後は、新たに策定した「障害者地域生活支援・就労促進3ヵ年プラン」により、この就労支援事業を大幅に拡大するなど、希望する障がい者が一般就労へ移行できるよう積極的に支援していく。
(産業労働局)
・ 都はこれまで、障害者雇用ハンドブックの配布、第三セクター方式による重度障害者雇用企業の設立を通じた普及啓発に努めるととともに、東京障害者職業能力開発校等における職業訓練や、企業や民間教育機関等を活用した委託訓練を実施。
・ 本年度からは、他の企業のモデルとなる取組を行う企業等を支援する「障害者職域開拓支援事業」を開始。今後とも障がい者の一般就労の拡大に向けた取組を行う。

Q6. 平成7年策定の「都における身体障害者に関する基本方針」で、身体障がい者の雇用目標を雇用率3%と設定し、都内事業者による障がい者雇用を促進してきました。この基本方針には、採用試験・選考方法について、点字試験の範囲拡大、ワープロ試験、及び拡大文字試験の導入などが明記されていますが、一部の実施にとどまっています。なぜ、すべてに点字対応ができないのか、伺います。
A6(総務局長答弁)
・ 東京都職員採用試験等における点字対応についてであるが、現在、都において視力を要件としない業務としては、「相談業務」「指導業務」などがある。
・ これらの業務に就く職員を採用するための試験区分としては、Ⅰ類、Ⅱ類の事務、福祉Cなどがある。
・ このため、これからの試験区分については点字受験を認めている。

Q7. 東京都は一つの事業体として、民間に先駆け、積極的に障がい者の職員雇用を進める立場にあると考えます。しかし、都が雇用する障がい者は身体障がい者のみに限定されています。知的障がい者については、「就労の機会の提供に努める」とのみ記載され、精神障がい者とともに雇用の対象になっていません。都は、今議会で、都庁舎内での障がい者のインターシップ導入には積極的に取り組むことを明言しています。
障がい者の一般就労を推進する自治体として、都は、パートや嘱託等雇用形態にも創意工夫し職域を広げることを検討するべきと考え、見解を伺います。
A7.(総務局長)
・ 都における、知的障がい者等の雇用についてであるが、都職員の職務は多様な業務が複合的に組み合わさっている。
・ その中から知的障がい者等に適する業務だけを抜き出して、一つの新たな職として成立させることは困難である。
・ 都としては、都の関連団体を通じた知的障がい者等の雇用や、作業所等への業務委託を進めるなどにより、障がい者の就労促進に取り組んでいく。

臨海副都心開発について
Q8. 5月連休明け、東京都は、臨海第三セクターの民事再生手続きの開始申し立てを発表しました。昨年、東京ファッションタウンとタイム24の民事再生手続きが開始され、今年3月にビッグサイトによる吸収合併が成立した直後の出来事に、やはりという思いです。この時点で、東京都の債務免除と出資金の減資をあわせて84億円を負担していますが、今回はあわせて380億円というさらに莫大な損失を出した上に、民事再生法申請による法的処理という事態を招いたことは、当然、経営責任が問われるものと考えます。これまでに至る臨海三セクへの対策とその総括を伺います。
A8.(経済港湾局長)
・ 臨海三セクは、平成10年に策定した経営安定化策に沿って経営改善に着実に取り組んできた。
・ その結果、平成17年度では7年連続の営業黒字を達成し、借入金残高も減少するなど、一定の成果を上げてきた。
・ しかし、臨海三セクは、借入金の完済に50年以上を要することから、金融情勢の変化が今後の経営に与える影響等を勘案し、民事再生により、早期に債務を圧縮して経営基盤の強化を図ることとした。
・ 都としては、臨海副都心開発を推進するため、引き続き、臨海三セクを活用する必要があり、民事再生を選択することが現時点では、最善の方策と考えている。

Q9. 臨海副都心事業は、スタート時から様々な問題指摘があり、生活者ネットワークは、都民不在のまま、おおよそ事業費8兆円といわれた副都心開発に、一挙に資金を投資し、一挙に開発するという手法は問題だと指摘してきました。しかし、この18年間、都はその課題に本質的に取り組まず、「大丈夫です」と議会答弁を繰り返し、関連会計の統合で7000億近くの現物出資をするなど、都民の財産を浪費し危機を隠して問題をわかりにくくしてきました。そこに今回の臨海三セクの破たん処理です。都は、これは臨海副都心事業と関係なく、単なる三セクの問題であるとしていますが、到底納得できるものではありません。
今こそ、謙虚に臨海副都心開発事業の収支と、開発計画全体を根本的に総括し、今後の10年に向けてのスタートにすべきです。見解を伺い、質問を終わります。
A9.(経済港湾局長)
・ 臨海副都心は、これまでバブル崩壊という試練に直面しながらも、現在では交通アクセスも充実し、来訪者が年間4000万人を超えるまちとして着実に成長しており、今年度からは、まちづくり総仕上げの10年という重要な段階に入ったところである。
・ こうした中で本年3月、都は、臨海副都心の開発を着実に進めるため、今後のまちづくりと財政基盤強化のための取組に関する考え方をまとめ、「臨海副都心開発の今後の取組」として公表したところである。
・ 具体的には、職・住・学・遊の均衡のとれた複合的なまちづくりの考え方に加えて、新たに観光と交流の視点を取り入れるとともに、確固たる財政基盤の構築に向けて、収支両面からの更なる取組を行うこととしている。
・ 都としては、この中で示した様々な増収増益策や経費縮減策を、引き続き着実に進め、臨海副都心開発の一層の進展を図りたいと考えている。