2006年予算特別委員会締めくくり質疑

大西由紀子

食の安全について
2005年6月の「くらしの健康」(東京都発行)に、組み換え大豆の動物試験の結果が掲載されています。国内で同様な報告例のない中、世界的にもトップレベルにある都の研究機関が、行ったことを評価いております。

Q1.東京都における遺伝子組み換え関係の「検査」は、平年的には、どのような位置づけと内容で行っていますか。
A1.(福祉保健局長)
1.遺伝子組み換え食品については、平成13年4月から食品衛生法に基づき、国の安全性審査が義務付けられ、その審査を経たものについて、輸入や販売が認められている。
2.販売に当たっては、食品衛生法及びJAS法により、遺伝子組み換え食品を含む旨の表示が義務付けられている。
3.都は、都内に流通する大豆、とうもろこし及びそれらの加工品など年間約250検体について、DNAを検査することにより、安全性未審査のものが混入していないか、あるいは表示が適正に行われているかを確認している。

遺伝子組み換え食品の動物実験については、遺伝子組み換え食品が登場する段階から、私たちは「慢性毒性検査」の必要性を提案し、要請してきました。食品の安全については「市民が決めていく」という立場からの提案です。
遺伝子組み換えで作られたものが、既存の食品と比べて構成成分などにおいて実質的に同等と見なし得るかどうかが、判断の分かれ目であり、消費者が不安を感じている点です。見た目が同じでも、アレルギーを引き起こす恐れや、将来における変異の恐れなど、まだ不確定の要素が多いと考えております。

Q2.国が「実質的に同等」として実施しない動物実験等について、都が先行して行うことには限界があることは理解しますが、今後このような実験の必要性についてどのように考えていくのか伺います。
A2.(福祉保健局長)
1.遺伝子組み換え食品の安全性については、現在、国の食品安全委員会が安全性評価基準を定め、審査を行っている。
2.委員会においては、既存の食品と比較し、構成成分などにおいて実質的に同等と見なし得るかどうかの判断を基本としており、必要に応じて、各種試験の成績に基づく安全性の確認を行い、総合的に評価することとしている。
3.したがって、動物試験を含めた各種試験の必要性については、安全性の審査を行う国が判断することとなる。

先頃、オーストラリアでは国の研究機構が開発したGMエンドウ豆が、マウスにアレルギー反応を引き起こしたことを発表し、商品化直前だった同エンドウ豆の開発を中止しました。コーデックスの基準によるチェックではアレルギー性は確認されず、基準外の動物試験によって、初めてアレルギー性が確認されたことは注目すべきことであり、基準の見直しが求められます。
これからは、開発者が自らの責任において長期的な実験を行い、安全性を保障することは当然のことですが、同時に、国や都のような公的研究機関が、別の視点から動物によるGM食品の摂取試験を独自に実施することは大いに意味のあることです。これこそまさに「公の役割」です。今後も大いに研究に取り組まれるよう強く要望しておきます。

Q3.遺伝子組み換え問題は、消費者の問題であるとともに、生産者の側の問題でもあります。まかり間違うと、丹精こめた自分の作物が台無しになる。都は遺伝子組換え作物の花粉の飛散や種子による交雑・混入などの「汚染」の問題について高い見識を持って、現在「栽培指針」を策定中です。自治体としてやれることは「遺伝子組換え作物を栽培しようとする」ことに「高いハードル」を設けることです。例えば、都の消費者行政において「被害者救済訴訟支援制度」があるように、「汚染被害者」に対する支援制度なども検討すべきであると考え、見解を伺います。
A3.(産業労働局長)
○消費者被害に関する救済制度は、都民の消費生活に著しく影響を及ぼすような紛争について、事後的に解決に向け、都があっせん、調停等を行う制度である。
○一方、今回の指針策定に当たっては、都は未然防止の観点から、遺伝子組換え作物の栽培をしようとするものに対し、情報提供や交雑防止措置を行うなどの一定のルール遵守を求め、計画書を提出してもらうなど、事前に調整機能を果たしていく予定である。

遺伝子組換え作物の影響について、日本ではもっぱら「食べて安全か」という議論に集中しがちですが、ヨーロッパでは、それよりも環境への悪影響を懸念する声が大きくなっています。アメリカでもオオカバマダラという蝶への組み換えとうもろこしの影響が危惧されています。環境は一箇所を操作すれば、他に悪影響をおよぼす可能性があることをもっと周知する必要があると考えます。

Q4.今ヨーロッパを中心に、世界的に遺伝子組み換えフリーゾーン運動が広がっています。これは単に遺伝子組み換え作物を拒否する地域を作り出すのが目的ではありません。地域自治、地元の農業振興、地産地消、農家と消費者の連携というようなものを包含する、食と農に関する新しい思想ともいうべきものです。北海道や新潟県のような農業を主な産業としている地域だけではなく、生産と消費が身近にある大消費地東京において、有機農業が都市農業として位置づけられつつあります。都は、農業者が自主的にGMフリーゾーンを設定することについて、どのようにお考えですか。
A4.(産業労働局長)
○今回の指針では、遺伝子組み換え作物を栽培しようとするものに対して、指針に基づく一定のルールの遵守をもとめていくが、いわゆるGMフリーゾーンは、地域の農業者等が、遺伝子組換え作物を栽培しないという区域を自主的に設定するものである。
○都内では、町田市などで市民団体・農業者団体等が、個々の農地を対象に、遺伝子組み換え作物を栽培しないことを表明している。
○一方、都内には消費者の理解が得られれば栽培を行ってみたいという農業者も存在しており、いわゆるGMフリーゾーンの設定に当たっては、あくまで地域での合意に基づく、自主的な取組が前提となるものと考えている。

一日も早い「栽培指針」の公表を待ち望んでいますが、実行性を担保するため、指針にとどまらず、条例化をすべきであることを申し上げておきます。

住宅政策について
都の住宅政策審議会「東京都における新たな住宅施策の展開について」中間まとめが出され、住宅政策は量から質へと大きく転換しています。

Q5.既存の分譲マンションの多くが建て替え時期を迎え、建て替えを支援する施策の充実が求められています。2002年に作られた住宅マスタープランでもその必要性が示されており、都はマンションの建て替えにどのような支援を行い、また実際にどれくらいの実績が上がっているのか、伺います。
A5、(都市整備局長)
○都はマンションの円滑な建て替えに向けて、建て替え初動期の検討を支援するアドバイザーの派遣、都市居住再生促進事業による建て替え計画や工事費への助成、仮移転先としての都営住宅の提供など、さまざまな支援を行っている。
○平成14年に施行されたマンション建て替え円滑化法に基づく建て替え事業は、これまで約60の管理組合から相談が寄せられ、このうち現時点で9件を事業認可している。

大田区では築36年の5階建て8棟368戸の住宅供給公社の長期分譲住宅を、マンション建て替え円滑化法によって、最高18階建てを含む4棟534戸に建て替えました。新宿区では、築70年を経過した2棟258戸を、11階・7階・3階の3棟232戸へ建て替えが行われました。いずれも居住者の高齢化・建物の老朽化という問題を抱え、知恵をしぼっての大事業でした。資金力の弱い高齢者の同意を得られずして建て替えはできませんが、それぞれに新たな自己負担を伴う改築例となったことは今後の参考となります。

Q6.建て替え後の住宅に戻るための追加負担が困難な高齢者に対しては、共用施設としての住戸を設置し、低額な家賃で終身居住を可能にするしくみで「戻り入居」したという例もあります。建て替え後も高齢者の居住を支援する施策を、もっと豊かにすべきであると考え、見解を伺います。
A6、(都市整備局長)
○現在、高齢者の居住継続に活用できる制度としては、住宅金融公庫の融資において、元金については死亡時の一括返還とし、毎月の支払いは利息のみとする返済特例制度や、高齢者居住安定法に基づき、高齢者が生涯に渡り、住み続けることができる終身建物賃貸借制度がある。
○都は今後とも、こうした制度の利用について、区市や関連業界団体などと連携して普及を図り、高齢者の居住継続を支援していく。

Q7.お金の問題だけではなく、長年住んで築き上げた低層住宅ならではのコミュニティの良さをどうしたら残せるのか、と考えて建て替えを先延ばしにしている団地もあります。高層マンションとコミュニティの関係はまだ未知数です。超高層マンションにおけるコミュニティ形成について、どのように考えているのか伺います。
A7、(都市整備局長)
○都は昨年11月に公表したマンション管理ガイドラインにおいて、管理組合が取り組むことが望ましい事項として、居住者間のコミュニティ振興を取り上げたところである。
○マンションの良好なコミュニティの維持・形成に努めていくことは、超高層マンションを含め、適正な管理を行う上で、重要であると認識。
○今後とも、都は、このガイドラインを活用するなど、マンションにおけるコミュニティの振興について、関係業界団体や区市などと連携して普及啓発を図っていく。

超高層マンションにおけるコミュニティ形成は、これからの大きな課題です。子どもや高齢者が気軽に外出したり、人との関係性を築いていくために、すでに生活が始まっている超高層マンション入居者への調査などが必要ではないかと思います。ぜひ検討していただくことを要望します。

景観施策について
Q8.東京における今後の景観施策のあり方の答申が1月にだされました。今後は、景観条例の改正、景観計画の策定と進むとききました。現在、都と区市町村との連絡調整会議が持たれており、景観行政団体をどうするのか、23区や市町村も期待し、注目しております。都は、地域が主体的に景観行政団体として活動できるよう支援すべきです。
そこで東京の中心でもある日本橋の景観問題について伺います。日本橋上空を覆う首都高速を、ソウル市の清渓川(チョンゲチョン)のように取り払い、日本橋を復活させようという動きがあります。3000億円から5000億円もかかる事業となるようですが、現時点での都の見解をうかがいます。
A9.(都市整備局長)
○日本橋上空を覆う高速道路はさまざまな意見があることは承知。
○首都高を撤去・移設する場合には、交通機関の確保や事業費など、多くの問題がある。
○これらについて、国が懇談会を設置。
○今後も、検討動向を見ながら、適切に対応していく。