2013年第4回都議会定例会一般質問
2013年12月6日
山内れい子
1.知事の政治姿勢について
猪瀬知事の資金問題については各会派から厳しい意見が出されたが、これまでの説明では都民を納得させることはできない。職員のトップにたつ知事には、より高潔性と危機管理能力が求められるのは当然であり、これなくして、職員の士気は下がる一方だ。
しかも、知事は政治家。政治資金規正法も公職選挙法も、政治の透明性を高めるためのものだ。こうした主旨をないがしろにする報告書を出すことについて恥ずべき。
例え、個人的借金であったとしても、悪質な選挙違反で強制捜査を受けている徳州会と5000万円ものお金を簡単に借りることができるような密接な関係を持ったということの道義的政治的な責任はまぬがれない。
生活者ネットワークは、知事は自ら辞職し、改めて都民に信を問うべきと考える。猪瀬知事は、失った信頼の回復、都民への説明責任をどのように果たすのか伺う。・・Q1
A1(知事) 今回の借入金の問題について、都民・都議会の皆様に多大な迷惑をかけたこと、借入金を資産等報告書に記載せず後日訂正したことをお詫びする。
5000万円を個人として借りる際、徳田毅氏の前でサイン、借用書を預け、返済したので借用書は返ってきた。そして先日公表した。自分にとっては、このプロセスは明快なものであり説明してきたつもりだが、まだ理解いただけるとは思っていない。できる限り説明する。
とにかく一生懸命仕事をすることが信頼回復に向けた最も近道であると考える。粉骨砕身働くことで示していきたい。
2.オリンピックとまちづくりについて
コンパクトなオリンピックをうたって勝ち取った2020年東京オリンピック・パラリンピックだが、ここにきて、新国立競技場の建設をめぐって、「巨大すぎて景観を損ねる」「お金がかかりすぎる」など専門家からも異議が噴出している。
新国立競技場のデザインは昨年11月に公募で決まった。しかし都はこの巨大な建築物が建つことを前提に、この地域にかけられている風致地区制度の15mの高さ制限を大きく超えて、現在の国立競技場の2倍以上の75mまで緩和した地区計画を、今年6月に都市計画決定した。
新国立競技場は国がつくるものだが、神宮の森は、都内の風致地区第1号として、都民が誇りに思い、90年近い年月をかけて守ってきた場所だ。それをオリンピックという国家的プロジェクトだからと、なし崩しにしていいものではない。迫りくる少子高齢社会を見すえ、将来世代に過大な負担を残さないコンパクトな施設づくりやまちづくりこそ重要と考える。
都は、都民の感性を重視した風致地区制度などを尊重して、現在、進めようとしている新国立競技場を含む神宮外苑地区のまちづくりを見直していくべきと考えるが、見解を伺う。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q2
A2(東京都技監) 新国立競技場の計画が具体化したことを受け、都は、本年6月、地区計画を決定。この計画では、まちづくりの目標として、外苑の風致と調和したスポーツ施設等の集積を図るとともに、絵画館を臨む歴史的景観を保全し、緑豊かでにぎわいある都市空間を創出。
さらに、この目標に則して、競技場の敷地等を対象に地区整備計画を定め、緑地や広場を拡充。今後とも、風格と活力を兼ね備えた世界に誇れるスポーツ・文化の拠点形成に取り組む。
3.省エネルギー対策について
福島原発事故直後、電気が足りなくなるという危機感から、その年の夏は、自治体や企業、個人も全力を挙げて節電に取り組んだ。その結果、東京電力管内の最大電力は、震災前に比べて18%削減となり、去年と今年は15%減となっている。また、東京エリアで1年間の電力消費量は、2011年度、2012年度ともに10%減となっており、節電の取り組みがある程度定着したと考えられる。
しかし、街には必要以上に明るい照明や自動販売機などが復活し、今年は特に暑い夏だったが、節電を呼びかけるマスコミ報道は見られず、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の格言のごとく、節電・省エネに取り組む意識が緩んだのではないかと心配。
電力不足対策のピークカットとともに、温暖化対策を推進するために電力消費量全体を減らす必要がある。無理なく省エネできる技術も進展しており、節電・省エネの取り組みをさらに進めていかなければならない。
そのためには、都が節電・省エネのノウハウや優れた事例を提供するなど、都民・事業者の節電・省エネの取り組みを促していく必要があると考えるが、所見を伺う。Q3
A3(環境局長) 都は、大規模事業所へのキャップ・アンド・トレード制度などを着実に運用し、事業所における省エネの取り組みを推進。また、事業者の優れた取り組み事例を収集し積極的に発信するとともに、家庭向けの省エネパンフレットも作成し、都民・事業者の節電・省エネの取り組みを促進。こうした取り組みにより、省エネ性能の高い機器の導入が大きく進展。
今後も、節電・省エネのノウハウや対策事例などの情報発信とあわせて、優れた省エネ技術の活用を促し、一層の省エネルギー化を図る。
4.空き家を活用したシェアハウスについて
今年9月国交省は、劣悪な脱法ハウスについて、建築基準法違反である旨通知を出した。しかし、この通知によって、安価で良質なシェアハウスまでも空き家活用の支障になることが強く危惧されている。
高齢者のグループリビングや、多世代のホームシェアなど、家族以外の人が集まり助け合って暮らす「新しい住まい方」が広がり、注目されている。空き家になった広い家やアパートを、こうした住まいに活用することを積極的に進める必要があると考える。低所得者の住まい確保の観点からも空き家の活用が期待されており、今後「シェア」して暮らすことは、ますます重要にる。
空き家活用型のシェアハウス、グループリビングなどを進めるために、地域の実情に即した取り組みが必要と考えるが、見解を伺う。・・・・・Q4
A4(東京都技監) 高齢者など住宅の確保に配慮が必要な方々に対して、空き家の活用など、地域の実情に応じたきめ細かな支援を行うためには、区市町村が中心となり、関係団体やNPO等と連携して取り組むことが重要。そのためには、区市町村が居住支援協議会を設置して主体的に活動することが効果的であり、区市町村における居住支援協議会の設置を促すこととしている。
5.食の安全・安心について
レストランなどでメニューの誤表示などが次々に明らかになった。事業者の責任は重大だが、消費者のブランド志向も誤表示の一因ではないかと思う。消費者庁は景品表示法に基づくガイドラインを早期に策定し、表示の適正化に向け、体制を強化する方針と報じられている。
一方、スーパーマーケットなどで販売されている流通食品の表示については、添加物は食品衛生法、原産地はJAS法、栄養は健康増進法と、様々な法律があり、今年6月、これら3法を一元化した食品表示法が公布されたものの、施行に向けて基準は2年以内に定めるとされている。
また、遺伝子組換え食品表示や加工食品の原料原産地表示の拡大、外食・中食の表示などは、食品表示法における今後の検討課題とされており、未だ詳細は明らかにされていない。TPPによる表示への影響も危惧される。
食品表示は、商品選択のための原産地表示や、安全確認のためのアレルギー表示など、消費者にとって必要な情報を正しく提供することが何よりも大切。
こうしたことを踏まえ、都は、流通食品の適正表示の推進に向け、どのように取り組んでいくのか、見解を伺う。・・・・・・・・・・・・・・・Q5
A5(福祉保健局長) 食品表示は、品質や健康被害の防止等に関する情報を、消費者に提供するという重要な役割。都は、事業者向け講習会を毎年開催し、これまでに適正表示を推進する人材を約5千人育成するとともに、調理冷凍食品の原料原産地表示を独自に義務づけ。
また、健康安全研究センターに専門監視班を設置し、食品表示対策を監視指導計画の重点事業に位置づけて、年間約21万件の立ち入り検査を実施。さらに、国に対しては、食品表示法の施行に向け、食品の表示が消費者や事業者にとってわかりやすい内容となるよう提案要求。今後とも、国の動向を注視しつつ、食品の適正表示に向けた取り組みを推進。
6.高次脳機能障がい者支援について
高次脳機能障害は、集中的な入院によるリハビリテーションを終了し、退院した後、改めて本人も家族も生活の困難さに直面するという声を聞いている。在宅生活の安定を図り、社会参加を促していくためには、障がい者手帳の有無に関わらず長期的・継続的なリハビリテーションを十分に行うことが必要と考える。
こうした状況を踏まえ、都では、2010年度から、高次脳機能障がい者に対応したリハビリテーションの普及モデル事業を実施し、地域における高次脳機能障がい者に対する支援体制の充実を目指していくとしていたが、現在の取り組みについて伺う。・・Q6
A6(福祉保健局長) 都は、地域においてリハビリテーションを提供できる体制を整備するため、平成22年度から2つの二次保健医療圏でモデル事業を開始し、昨年度から本格実施。
リハビリテーションの中核病院を圏域ごとに定め、専門スタッフが区市町村や地域の関係機関に対して技術的助言を実施。また、医療と福祉の連携強化のための圏域連絡会や症例検討会などを実施。取り組みは6圏域まで拡大。今後とも支援体制の充実に向けて取り組んでいく。
また、高次脳機能障がい者には若い人や子育て中の人もおり、復職あるいは就労への意欲は大変強く、一歩一歩懸命に時間をかけて求職活動に入る前の準備をしている。
そこで、高次脳機能障がい者の就労支援など社会参加への支援について、どのように取り組むのか、所見を伺う。・・・・・・・・・・・・・・・Q7
A7(福祉保健局長) 高次脳機能障がい者は、障害特性や回復の程度により状態が異なる。本人や家族が置かれている状況とニーズを適切に把握し、支援する必要。
都は、心身障害者福祉センターを支援拠点とし、専門的な相談支援や支援手法の研修を実施するほか、地域の支援機関の依頼に基づき、就労準備やサービス利用につなげる評価プログラムを実施。プログラムでは、パソコン入力の作業等の訓練を通じて作業能力等の評価を行うほか、就労希望者には職業能力の評価等を実施。今後とも、こうした取り組みにより就労支援など社会参加への支援に取り組む。
なお、障がい者手帳の有無にかかわらず、退院後在宅生活に移行する前に、入所による機能訓練や生活訓練を望む声がある。今後、地域で在宅生活を始める際の不安を軽減するような取り組みを進めていただくよう、要望する。
以上