2007年第1回定例会 一般質問

都議会生活者ネットワーク
原田 恭子

(質問部分抜粋)
「10年後の東京」について
Q1.このたび発表された「10年後の東京」の都市像は、従来の価値観の延長上のもので新しい時代の社会像を示していません。自然との共生を視野に持続可能な資源循環型社会、多様な価値観を容認する人権の尊重される社会など「成熟した」地球市民としての暮らし方、社会のあり様を示すことが必要です。成熟化の視点も踏まえ、策定にあたっての知事の基本的な考えを伺います。

A1.「10年後の東京」では、東京が近未来に向け、都市インフラの整備だけではなく、環境、安全、文化、産業など様々な分野で、より高いレベルの成長を遂げていく姿を提示。
拡大・成長のステージを経て、成熟を遂げつつある東京が、さらに高いレベルの成熟を目指すためには、まず、交通渋滞の解消など、残された「20世紀の負の遺産」の克服が必要。また、ユニバーサルデザインのまちづくりを進めるなど、快適で利便性の高い都市生活を実現。さらに、美しい街、安全な街を実現して東京の価値や信用力を高め、そのレガシーを次代に継承。
東京が持つ有形無形の大都市力を存分に発揮しながら、魅力ある東京の近未来図を実現。

公共交通について
Q2.「10年後の東京」では、「道路」という言葉が全部で142回、「三環状」というかなり特殊な用語さえ、29回も登場し、道路整備への知事の入れ込みが現れています。逆に「鉄道」という言葉は、22回で、鉄道の役割を評価した記述は皆無に等しいものです。東京の交通体系の特徴は、発達した鉄道網にあり、特に都心部への通勤では四分の三の人が鉄道を利用しています。その結果、東京圏内の交通での消費エネルギー、あるいはそれに伴って排出される二酸化炭素の一人当たりの量は、工業国の中で、最も低い水準にあります。3300万人という世界最大の都市圏を、発達した鉄道網で支えている点で、東京はまさに巨大都市のモデルとなりえます。
そこで、今後の東京圏における鉄道と自動車交通の役割分担など、そのあり方について、運輸大臣も経験した知事の見解を伺います

A2.知事答弁
東京の鉄道は、大量輸送機関として、高密度で正確、安全なネットワークを形成。
自在性の高い自動車交通は、道路整備を上回る勢いで増加、渋滞は、東京の最大の弱点。
鉄道や道路による人や物の流れが、都市の活力の源であり、それぞれの特長を生かすことが重要。
都は、引き続き、道路整備の推進や鉄道の利便性向上などにより、東京の再生を推進。

Q3.東京では、発達した公共交通のおかげで、膨大な数の車がガレージで眠っています。走れるスペースが増加し、かつ経済性も高まれば、たちまち鉄道から自動車への利用の転換が起こりかねません。人口減少による公共交通の利用減少がすすむなかで、鉄道やバスなどの公共交通の利便性・快適性・安全性を高める努力を強めなければ、公共交通が客を失い、不便になるという悪循環に陥っていく恐れがあります。都は、自ら経営する地下鉄、バス、路面電車、新交通などのみならず、民営の鉄道やバス会社とも協力し、公共交通を中心とした東京の交通の質を向上させることを、最も重要な政策と掲げるべきと考え、見解を伺います。

A3.都はこれまでも、共通IC乗車カードの拡充などによる利便性向上、公共車両優先システム活用による定時性確保など、公共交通のサービス向上に努めてきた。
また、ユニバーサルデザインに配慮した駅施設や、駅前広場、自由通路など、交通結節点の整備を推進してきた。
今後とも、公共交通の質の向上を図るとともに、自動車交通と公共交通、それぞれの役割を踏まえ、総合的な観点から東京の交通政策を推進。

自転車政策について
Q4.警察庁・自転車対策検討懇談会が「自転車の安全利用の促進に関する提言」を発表し、これに基づき道路交通法の改正案が通常国会に提出される予定です。都もこの1月「自転車の安全利用推進総合プラン」を策定し、自転車利用者のルールやマナーの改善等に取り組む姿勢を明らかにしました。
しかし自転車は車道を走るのか、歩道を走るのか、この質問に正しく答えられる人はどれくらいいるでしょうか。日本以外の先進国で自転車が歩道を走っている国はありません。例えば、ロンドンでは、自転車とタクシー、バスだけの専用レーンがあり、フランスやドイツでは、自動車の速度を30キロに制限する「ゾーン30」という地域を市街地につくり、優先順位を人・自転車・公共交通機関・一般の乗用車などとする施策が実施されています。しかし、日本では、車道は自動車専用であり、自転車が歩道を走ることにより歩行者の安全が脅かされているのが現状です。
都市計画道路の計画過程において、自転車利用にも十分配慮することが必要と考え、見解を伺います。

A4.自転車は、身近で便利な交通手段として、その利用は増加傾向。
都市計画道路の計画や整備に際し、これまでも環状6号線、調布保谷線などで、地域特性を踏まえ自転車や歩行者の通行の確保に努めてきている。
今後とも、限られた道路空間ではあるが、誰もが安全で快適に利用できる交通環境の実現に向け、都市計画道路の整備に取り組む。

在住外国人支援について
Q5.現在都内には37万人の外国籍の方が生活していますが、地域で安心して暮らすための支援は十分とはいえません。特に、仕事や研修、結婚というかたちで東京に暮らす外国人にとっては、子どもの教育は大きな問題です。ある支援団体によると、「外国籍の生徒にとって、都内の公立中学から都立高校への進学は、言語のハンディが入試の大きなハードルになっている」とのことです。さらに、外国籍の子どもの3~4割は、学習困難などの理由で就学しておらず、日本語を読み書きできない子どもは就職もできません。東京に「今」いる外国籍の人たちに、日本の学校できちんと日本語を学び、職業支援も積極的に行うような人材育成型の施策が必要です。
そこで、「10年後の東京」で策定した在住外国人に対する施策の基本的な考え方と、今後の取り組みの方向性について伺います。

A5.経済のグローバル化の進展などを背景に、都内の外国人数はアジア諸国を中心に急増しており、在住外国人を地域社会の構成員として受け止めることが必要。
このため「10年後の東京」では、在住外国人を地域の活動へ積極的に受け入れ、多文化共生を推進していく考え方を明示。
在住外国人と日本人の相互理解・交流に向けて、様々な取り組みを区市町村と連携しながら展開し、在住外国人が地域の一員としていきいきと暮らすことができる環境を整備。

耐震改修について
Q6.阪神淡路大震災の犠牲者の8割が自宅の倒壊によるものでした。この教訓から、耐震化の大切さがわかり、耐震診断や耐震補強への関心が高まりました。しかし、耐震改修には、最低でも100万円必要といわれ、なかなか取り組みは進みませんでした。このたび発表された「東京都耐震改修促進計画の素案」では、想定される被害の半減を目指して、都内の住宅・建築物の耐震化を促進し、住宅については、2015年度までに耐震化率を90%とするとしています。
一方、リフォーム詐欺の被害は深刻で、2006年3月に生活文化局が行った、防災に関する世論調査では、耐震診断・耐震補強を行う条件として、信頼できる専門家による相談・助言を多くの人が望んでいます。
都民の不安を払拭し、安心して、耐震相談や補強を行えるように、身近な自治体の相談窓口の整備や、信頼できる専門家の紹介など、相談体制の充実をはかるべきと考え、見解を伺います。

A6.区市町村に対して、耐震診断・改修に関する相談窓口の充実を要請。
診断方法や改修工法に関する技術的な助言などを実施。
信頼できる建築士事務所を登録し、その情報を広く都民に提供。
今後とも、相談体制の強化に努めていく。

在宅医療について
Q7.介護保険制度、障害者自立支援法のいずれもが「地域生活」を重視しています。「東京の福祉保健の新展開2007」においてもキーワードのひとつが「在宅」です。また、昨年の医療制度改正における療養型病床の改変や、在宅療養支援診療所の創設などは、今後の在宅医療の必要性を浮き彫りにしています。
高齢化率がますます高まる中で、住み慣れた自宅で、できる限り自分らしく生きていきたいと願う人は増え続け、介護と同時に医療の必要性も高まってきます。国の指針に従って2007年度策定される「地域ケア整備構想」にも、在宅医療の在り方が検討課題として掲げられています。こうした状況の中で、患者や家族が自由意思で選択できる在宅医療の充実が求められると考え、見解を伺います。

A7.在宅での療養を希望する人が、必要な医療サービスを受けながら、地域で安心して暮らせるようにするためには、在宅医療の充実が重要。
都は、区市町村や関係団体とともに、訪問診療を行う在宅療養支援診療所や訪問看護ステーションなど在宅医療に係る様々な機関が、相互に連携して切れ目のない医療を提供する体制の整備に努める。

Q8.自宅などで療養している人が、安心して療養生活を送るためには、医療・看護・介護など多くの職種が関わり、連携をしていくことが不可欠です。また、生活の場で、切れ目なく質の高い医療が受けられる体制作りは、医療従事者はもとより、市民の力を活かすなど、地域全体で在宅医療を支える体制が必要です。具体的なシステム作りは、身近な自治体が、その実情に見合ったものを確立することが望ましいと考えますが、看取りを含めた在宅ケアをさらに普及・定着させていくために、今後、都は在宅医療の充実に向けて、どのような施策を展開していくのか伺います。

A8.在宅医療の充実のためには、医療従事者の資質向上が重要。都は、これまでも地域の医師等を対象とした実地研修などを実施。
平成19年度には、医師、看護師等の医療従事者に向けて、在宅医療マニュアルを作成するなど一層の支援に努める。
また、住民に身近な区市町村が、医療関係者や住民等の力を活かしながら、地域の特性を踏まえて実施する施策に対して、新たに創設する「包括補助事業」を活用して支援を実施。

多様な働き方について
Q9.自立支援法の成立以来、障がい者の一般就労は大きな課題です。
イタリアでは社会、保健、教育のサービスを提供するA型社会的協同組合と、身体ないし精神に障がいがある人、薬物やアルコール依存者、家庭問題を抱えている年少者、保護観察にある受刑者など、不利な立場にある人々の就労支援を行うB型社会的協同組合がすでに実働しており、全労働市場の少なくても30%にこのような立場の人の参加を義務付けています。
協同組合、ワーカーズコレクティブなどは、参加者自らが対等に出資、運営することで、対等で自立的な就労を可能にし、なおかつ社会の中で必要な事業を作り出しています。多様な就労の場として、このような協同組合型の就労を普及していく必要性を感じ、所見を伺います。

A9.近年、NPO,ボランティア、起業・創業など、都民の働き方は多様化してきており、働く人がともに出資、事業を行うワーカーズコレクティブも、その一つと認識。
都は、これまでも、しごとセンターにおいて、様々な働き方について、セミナーや相談窓口での情報提供等を実施。引き続き、これらの事業に取り組み、都民ニーズに応えていく。

障がい者就労支援について
Q10.滋賀県では2005年10月、障がい者参加という社会的目的のために作られた事業所を、社会的事業所として位置づけ、支援をはじめました。障がい者従業員は5名以上20名未満で雇用割合が50%以上、障がい者自身の経営への参加、労働法規の全面適用、などを要件とした「社会的事業所」に対し、職業訓練などの経費補助や、経営力を強化するための補助などを行い、福祉の枠組みを超えた労働の場の創設を打ち出した点で、画期的なものです。障がいのある人もない人も共に働く「社会的事業所」の試みは、多くの障がい者の共感を得、全国に波及しています。障がい者の就労の場として、「社会的事業所」も含め、多様な働く場の創出は大きな課題と考えますが、見解を伺います。

A10.都においては、これまで、障がい者雇用促進ハンドブックの配布等による事業者への普及啓発や、障がい者に対する企業合同説明会の開催などを通じて、働く場の確保に努めてきた。
本年度から、さらに、「障害者職域開拓支援事業」を開始し、障がい者の職域拡大につながるモデルとなる取り組みを選定し、助成や専門家派遣などの支援を実施。
お話の「社会的事業所」についても、本事業の要件を満たせば、審査の対象となりうる。
今後、選定された取り組みを優良事例として広く周知するなど本事業の充実に努め、障がい者の働く場の拡大に取り組んでいく。

臨海副都心事業について
Q11.2007年1月31日、東京臨海熱供給株式会社の単独株式移転により、株式会社東京臨海ホールディングスが設立されました。今後、臨海における監理団体が順次子会社化され、2009年度からは本格稼動する予定です。ゆりかもめとテレポートセンターは株式交換の手法で、ビッグサイトは株式の現物出資により、それぞれ子会社化し、設立したホールディングスの社長は熱供給の社長が兼任、と寄り合い所帯です。子会社が必ずしも利益追求でない場合もあります。特に、今まで公共性が強いとされてきた埠頭公社の民営化と子会社化のメリットについて伺います。

A11.国の許可などの規制緩和により効率的な経営体制に移行。
出資等による関連分野への事業多角化など財務体質強化。
取り組みによる成果を利用者に還元し、港湾コスト低減やサービス向上等を実現。港湾物流の高い公共的役割を果たす。
子会社化により、経営資源の相互融通などを通じた一層の物流機能強化に取り組む。
物流と都市機能の調和を通じて、臨海部のエリアマネジメントに貢献。

Q12.持ち株会社化で各子会社の経営の実態がますます見えにくくなるのは自明の理で、情報公開は大きな課題です。加えて、臨海地域全体を視野に入れたエリアマネージメント機能を発揮するための設立という責任は大きく、その上新たな50億円という都の無利子貸し付け金も用意されています。このようにホールディングスが担う責任の重さを考えると、今後、東京都の関与、責任の所在はどうなるのか、見解を伺います。

A12.持株会社グループは、臨海地域のエリアマネジメントを、都と一体となって担っていく重要な役割を担う。
都は、経営戦略の策定など、本社機能を担う持株会社を通し、グループ全体に適切な指導監督を実施。
透明性の確保については、グループ全体と、子会社の財務諸表についても、毎年度、議会にご報告することを既に表明。
Q13.不採算部門の精算の際には、都民に対し十分な説明責任を果たすことが必要です。事業内容を様々な段階で評価し、公共事業や税金の投入の是非を問う材料を公開していく姿勢が大事です。臨海第三セクターの民事再生手続きがほぼ終了した今、事業目的、経過などを含め東京都の関与について点検し、報告書を作成、公表するべきであると考え、見解を伺います。

A13.民事再生の実施に当たっては、これまで、議会において、事業の経過等につき報告を行い、審議を経た上で承認された。
また、再生計画案の概要等については、マスコミやホームページを通じて、広く公表、説明責任を果たしてきた。
新会社は持株会社グループに参加するが、引き続き説明責任を果たすため、今後とも経営状況等を適切に議会に報告。

以上